神様はサウスポー

神様はサウスポー

父に先立たれ、アメリカの修道院で育った少年・早坂弾が、帰国して井上美鈴、旭兄妹のジムに所属し、ボクシングの世界チャンピオンを目指す。信心深く善良な弾が、対戦相手たちの人生に関わりながら精神的に救済していくという、人情譚の一面も持つ。

正式名称
神様はサウスポー
ふりがな
かみさまはさうすぽー
作者
ジャンル
ボクシング
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概要・あらすじ

ボクシングジムを運営する井上旭井上美鈴の兄妹は、互いの父がボクシングのライバルかつ友であった縁から、アメリカより帰国した少年・早坂弾を引き取る。アメリカで父を失い、幼少期から修道院で育ったは、世俗からかけ離れた善良で慈悲深い心と、ボクシングのチャンピオンを目指す強い意思、そして凄まじい左腕のパンチ力を持って帰国する。

善良すぎるが故の奇妙な言動で美鈴たちを困惑させながら、はプロテスト合格、デビュー戦を経て、次々と勝ち抜いていく。大手ジムからのスカウトを断わり、雷鳳院会長から目をつけられるが、の真摯なボクシングはその会長も含め、多くの人々を惹きつける。国内タイトルを取ったはアメリカ遠征、世界ランカー達との対戦を経て、ジョン・フェニックスとの世界タイトル戦、そして宿命のライバル・北村友樹との世界統一戦を実現させていく。

登場人物・キャラクター

早坂 弾 (はやさか だん)

幼い頃、父の早坂仁と共に渡米し、仁の病死で修道院に引き取られた少年。父の遺志をついでプロボクサーとなり、世界チャンピオンになることを目指す。渡米から十年後に日本へ帰国し、井上旭、井上美鈴兄妹の運営するボクシングジムに所属した。この経歴ゆえ英語は堪能だが日本語は片言のような口調で、むしろ幼少期よりも下手になっている。 極めて善良かつ優しい性格だが、他人を傷つける者や、人の大切な物を奪おうとする者には強い怒りを示す。ボクシングにおいても強敵への敬意や感謝を忘れない一方、全力で相手を打ち倒す事こそ礼儀と考え、傍からは非情とさえ思える攻撃をくり出すこともある。幼少期、左腕がしばしばマヒする持病を抱えていたが、修道院のキリスト像の左腕が破損するのと同時に、驚異的なパンチ力を備えて突然全快した。 弾本人はこのパンチ力を「神様にもらった力」として、正しい行いのために使うと誓っている。数々の強敵との戦いを経てバンタム級の世界統一チャンピオンとなり、その後、父と同じライト級に転向する。

井上 美鈴 (いのうえ みすず)

兄・井上旭が経営するボクシングジムを手伝い、家計を切り盛りしている女子高校生。父親はプロボクサーで、ライバルであった早坂仁との試合後に死去。母親とも死に別れており、兄妹のみで暮らしてきた。十年ぶりに帰国する早坂弾を居候させ、彼がボクサーとして世界チャンピオンになるよう尽力する。 父の最後の試合で満足して死んだ父の意を汲み、対戦相手の仁にも感謝しているため、早坂親子へのわだかまりはない。日常生活では弾の奇妙な言動に振り回されることが多いが、ボクサーとしての彼には強く期待しており、次第に異性としての好意も抱き始める。弾の海外遠征や世界統一戦にも同行したため高校卒業の出席日数が不足するが、春休み期間の補習で卒業を果たした。

井上 旭 (いのうえ あきら)

妹の井上美鈴と二人暮らしでボクシングジムを運営しており、帰国した早坂弾を迎え入れる。ただしジムの収入は乏しく、主に運送業で生計を立てている。自身もプロボクサーだが芽が出ず、左目の視力を失っているもののそれを秘密にしている。父の最後の試合では満足して死んだ父の意を汲み、対戦相手の仁にも感謝しているため、早坂親子へのわだかまりはない。

早坂 仁 (はやさか じん)

早坂弾の父で、元プロボクサー。階級はライト級。世界チャンピオンを夢見るが国内タイトルも取れなかった。妻は存命だが離婚している。井上旭、美鈴の父とは良きライバル同士だったが、最後の試合で死に至らしめてしまう。その後トレーナーを目指して弾と共に渡米するが、志半ばにして病に倒れ、行き倒れのようになって死去した。 他人への思いやりが強く、弾への気づかいはもちろん、デュラン・マイケルの父とトレーナー職の座を争うも自ら身を引くなど自己犠牲的な面があった。時々左腕がマヒする持病を抱えており、それは弾にも遺伝しているとされた。

北村 友樹 (きたむら ゆうき)

早坂弾のデビュー戦の相手を務めたプロボクサー。中南米の小国生まれで、父は日本人の報道カメラマンだった。度重なる内乱で母、ついで父を失い、唯一の肉親となった姉とは生き別れになる。過酷な体験から言葉を失っており、ボクシングにおいては衝動のまま敵を倒していた。弾との対戦以前は、16戦全敗ながらもほとんどは相手を打ちのめしての反則負け。 棟方善造にはKO負けを喫していた。音のしない「無音のフットワーク」を得意とする。弾との対戦によって感情が芽生え、親友のひとりとなる。生き別れの姉に見つけてもらうためパナマに渡って、現地でボクサーとして活躍。弾とは別団体の世界チャンピオンとなり、世界統一戦で弾との再戦を果たす。

雷鳳院会長 (らいほういんかいちょう)

大手ボクシングジム・雷鳳院ジムの会長を務める、高齢の女性。日本のプロボクシング界に強い影響力を持っており、特にバンタム級王者や上位ランカーを自分のジム所属のボクサーで独占することに強く執着している。早坂弾の才能を見て引き抜こうとするが断わられ、以後は弾に期待しながらも強敵をぶつけ続ける立場を取る。 バンタム級へのこだわりは、戦争で失った夫がこの階級にいたため。

棟方 善造 (むなかた ぜんぞう)

既に引退した、バンタム級の元日本チャンピオン。引退後は事業家として成功していた。苦戦からの逆転を見せるボクサーとして人気を博していたが、その秘訣は緊張が高まるほど冴える勝機へのカンと、序盤は相手に攻めさせてクセを見切るというファイトスタイルによるもの。北村友樹にも逆転KOで勝利したことがある。 雷鳳院会長の要請で、弾と戦うためカムバックしする。現在の妻とはボクシングをめぐって破局寸前まで行った事があり、そこを早坂仁の助言でよりを戻した。そのため早坂仁、弾親子には感謝の心を抱いている。

氷室 平 (ひむろ たいら)

早坂弾が挑戦した、バンタム級の日本チャンピオン。大手スポーツクラブの御曹子で、最新鋭設備によるトレーニングを積む。千分の一秒のシャッタースピードでも撮影しきれない、超高速のパンチが武器。傲慢な性格だが、弾との対戦に備えて猛特訓を積むような、勝負への執念を備える。

工藤 ゆかり (くどう ゆかり)

週刊誌の女性カメラマン。亡き父の形見だった古いカメラを愛用する。取材の過程で早坂弾に興味を持ち、当時日本チャンピオンだった氷室平を挑発して弾との対談に持ち込んだ。弾に恋心を抱き、日本タイトル戦後もしばしば弾を誘惑して井上美鈴の嫉妬心を煽ったが、弾には効果がなく不発に終わった。

ジミー

早坂弾がアメリカ遠征中に知り合い友達となった、孤児の少年。クッキーという名のリスを飼っている。秘かにボクサーとなる夢を抱いており、弾が別れ際に父の形見のトランクスを縫い直して贈ったことで、改めてその夢を目指す。弾とジョン・フェニックスのタイトル戦でも会場に駆けつけた。

デュラン・マイケル (でゅらんまいける)

世界ランク5位の選手として、早坂弾と対戦したアメリカのプロボクサー。実は弾の幼少期、互いの父親がトレーナーの職を争ったことがきっかけで知り合った少年・リッキーであった。早坂仁と弾から「真心」を教わったとして、その借りを返そうと父のアンソニーと共に全力で弾との試合に挑む。 荒鷲にも喩えられる、高速の踏み込みからのアッパーカットが武器。実は体を病に冒されており、苦痛を押し切って弾との試合を続けた末、KO負け。弾とジョン・フェニックスの試合に合わせて手術へ踏み切り、命を取り留めた。以後、ボクサーとしては引退するが、弾の専属トレーナーとなる。

ジョン・フェニックス (じょんふぇにっくす)

バンタム級世界チャンピオンのプロボクサー。デビュー以来32戦全勝という圧倒的な強さを誇り、強敵がほとんどいない状況を嘆いて酒に溺れていた。唯一、判定に持ち込まれた相手のデュラン・マイケルだけは強敵と認め、彼と早坂弾の試合を観戦しに日本を訪れる。激闘の末にデュラン・マイケルを破った弾に注目し、タイトルマッチを組もうとプロモーターのデビッド・ハーンズを動かそうとした。 弾との試合に臨んでは、酒を断ち、山奥でピューマと戦う特訓を積んで、傷だらけの姿で試合会場に現れた。弾と北村友樹の王座統一戦では、解説席に座った。

デビッド・ハーンズ (でびっどはーんず)

世界ボクシング界の超大物とされる男性。その影響力には、雷鳳院会長でさえ及ばない。ジョン・フェニックスと早坂弾のタイトルマッチをなかなか実現させようとしなかったが、その原因は亡き兄の夢であった「世界チャンピオン」という座へのこだわりであった。

矢神 京介 (やがみ きょうすけ)

ウェルター級新人王となったプロボクサーで、早坂弾のライト級転向に対し、自らライト級に減量して初戦の相手となった。当初は弾を敵視していたが、実は弾の母が仁と別れた後に生まれた子、すなわち弾の実の弟と判明する。仁と弾が母と自分を捨てたと誤解し憎んでいたが、母から真相を聞かされてわだかまりを解き、弾との試合に臨む。

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