俺にもくれ

俺にもくれ

幸福だが平凡な暮らしから、10年だけ家出することを決めた40歳の男と、行き場をなくした元ヤクザの25歳の男。2人が東京でひょんなことから共同生活をすることになり、そこから始まる人間模様を描いたヒューマンドラマ。新宿の歌舞伎町を舞台に、物語は思いも寄らぬ方向へ展開していく。

正式名称
俺にもくれ
ふりがな
おれにもくれ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

新潟で事業を営む佐々木秀夫は、2人の子供に恵まれ、誰から見ても幸福な成功者だった。しかし、このまま田舎の片隅で残りの人生を過ごすことに、言い知れぬ不安を感じた秀夫は、40歳の誕生日を家族から祝福された翌日、家族に置き手紙を残し、10年間だけの家出を実行して上京する。一方所属していた暴力団が解散し、行き場をなくした25歳の青年、安藤正雄も、静岡から単身、上京する。

ひょんなことから新宿の歌舞伎町で出会った秀夫と正雄は、トラブルに巻き込まれた結果、共同生活を始めることになる。秀夫は歌舞伎町の小さな事務所で、人々の悩みを聞く相談所を開く。新しい生活を始めた2人の人生は、さまざまな人との出会いを通じて、思いもしない方向へ動き出す。

登場人物・キャラクター

佐々木 秀夫

新潟でガソリンスタンド5軒、自動車整備工場3軒、印刷工場1軒を経営する40歳の男性。身長165センチ、体重60キロ。田舎でこのまま残りの人生を終わらせたくないと考え、10年間という期限付きの家出を計画し、弁護士と相談していた。40歳の誕生日を迎えた翌日、10年後に戻るという置き手紙を家族に残し、その計画を実行する。 その際、自分は現金2000万円のみを持ち、残りの全財産は妻に譲った。いたって普通の中年男性だが、面倒見が良くて正義感が強く、いざという時の胆も据わっている。また、酒が好きで、誰にも負けないというほどの酒豪。誰しも人には言えない悩みを持っており、それを他人に話すだけでも楽になる、という考えから、歌舞伎町で人生よろず相談室を開く。

安藤 正雄

静岡にある形水興産という暴力団に所属していた25歳の男性。身長181センチ、体重80キロという大柄で二枚目。酒もタバコもやらないが、大食漢。所属していた組が解散して行き場をなくし、組長から餞別としてもらった拳銃を持って新宿の歌舞伎町へやって来る。ひょんなことから出会った佐々木秀夫と、歌舞伎町で共同生活を開始。 バーのボーイとして働くかたわら、ボクシングジムに通う。

大家 (おおや)

安藤正雄が入居したアパートの大家。背の低い、禿げた老人。アパートでは行き場をなくした年寄りたちが暮らしていたが、地上げで立ち退きを迫るヤクザが放火したため、大家と正雄以外の住人は死亡。絶望した大家も死のうとするが、佐々木秀夫に止められる。その後、人生よろず相談室を開くという秀夫の考えに賛同し、自身が持つ歌舞伎町の小さなビルを提供してくれた。 そこで秀夫、正雄とともに暮らし、彼らの食事も作ってくれる。しかし、アパートの仲間を失ったことから立ち直れずにいる。

やよい

バー「やよい」のママ。「やよい」は、佐々木秀夫が始めた人生よろず相談室の近所にある。口元のホクロがセクシーな、和装の美人。「溺れる者はワラをもつかむ」のワラになりたい、という秀夫の考えに感動し、ファンになる。以降、相談室に花を飾ってくれたり、掃除をしてくれたりと、世話を焼いてくれる。

立石 和三

48歳の男性。佐々木秀夫が入居したマンションの隣室で暮らす若い女性と、無理心中を試みた。愛人である女子大生が、他の男を寝ることに耐えられず、ガス栓を開いて火をつけた。その爆発によって愛人は重体、立石和三は重傷、秀夫も入居早々行き場をなくすことになる。はぐれ中年として共感を感じた秀夫が、病院に見舞いにやって来た際、その苦悩を打ち明けた。 退院の際、人生よろず相談室を営む秀夫に、悩みやグチを聞いてあげるだけでなく、たまには叱ってやることも必要だと助言する。

野山 修

佐々木秀夫が開いた人生よろず相談室に相談に訪れた中年男性。2年前に妻子を捨てて蒸発したが、残してきた家族が気がかりで、様子を見てきてくれないかと秀夫に頼む。

大門

新宿にある大門興業の社長。社長という肩書だが、ヤクザの親分。人生よろず相談室のビルが、他のヤクザから地上げ目的の立ち退きを迫られたため、佐々木秀夫から相談を受ける。秀夫の目を見て、ヤクザになれば大親分になれる逸材だと惚れこんだ。地上げ屋の件で話をつける代わりに、娘の西崎秀美に父親として会ってほしいと頼む。

西崎 秀美

結婚式を間近に控えた美しい女性。20年ほど前、大門が2年間一緒に暮らしていたホステスとの間にできた子供。母親は、当時チンピラだった大門に愛想をつかして、西崎秀美を連れて出て行った。そのため、秀美は父親の顔を知らない。結婚式の前にどうしても父親に会いたいと母親に泣きつき、大門から頼まれた佐々木秀夫が父親と偽って会う。

桜木

大門組の若頭補佐。20年間も仕えてきた自分を差し置いて、若頭となった佐々木秀夫が気に入らず、組員を使って佐々木組をつぶそうとする。「蟒蛇の桜木」と呼ばれ、歌舞伎町で知らないヤクザはいない、と言われるほどの酒豪。秀夫と飲み比べ勝負をすることになる。

ヤクザの若者。佐々木秀夫の男気に惚れこみ、子分にしてくれとやって来た。頬にキズがあり、ファッションを含めて見るからにヤクザという外見。所属していた組を指を詰めてまでして辞め、強引に秀夫の子分となる。のちに、大門組傘下の暴力団となった佐々木組の一員となる。

池山

眼鏡をかけた気弱そうな風貌のサラリーマン。佐々木秀夫が開いた人生よろず相談室に、酔っぱらって不満を言いに訪れた中年男性。酔いつぶれて相談室の2階に一晩やっかいになり、そのまま会社を辞めてしまう。のちに、大門組傘下の暴力団となった佐々木組の一員となる。

その他キーワード

人生よろず相談室 (じんせいよろずそうだんしつ)

佐々木秀夫が新宿の歌舞伎町に開いた悩み相談所。看板の下には「あなたのグチ・悩み ここで発散して下さい」と書かれている。誰しも人には言えない悩みを持っており、それを他人に話すだけでも楽になる、という考えで開いた。営利目的ではないため料金は無料だったが、無料では逆に怪しまれる、という意見から相談料を500円とした。 一時はホステスたちのグチのこぼし場所となり、他の人が入りづらくなったため、苦肉の策として、女性の客は夜5時から7時までの限定とした。

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