力を抜いて

力を抜いて

「大人の恋愛を楽しむための、力の抜きどころ」をテーマにしたオムニバス作品集。表題の「力を抜いて」を含む、全5エピソードで構成されている。「シルキー」1989年6月号から1990年3月号にかけて、不定期に掲載された。

正式名称
力を抜いて
ふりがな
ちからをぬいて
作者
ジャンル
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あらすじ

力を抜いて

浅沼あやかは、長い交際期間を経て八木真からプロポーズを受ける。しかし、簡単な言葉でランチのあいだに告げられたプロポーズの言葉を手抜きと感じ、だらだらとした交際を続けたくないと拒否してしまう。すっきりしない気持ちを抱えて職場の美容室に戻ったあやかは、シャンプーを担当したスマートで遊び慣れた雰囲気の男性客、秋元からの誘いに乗り、一夜を共にする。その際、自分でも驚くほど感じてしまい、あやかは罪悪感から真をますます避けるようになってしまう。そんなある夜、真はつれない態度を取り続けるあやかの部屋を訪ね、心変わりの理由を尋ねる。

ここに触れなきゃ

今村知香は、3年交際している恋人の高志との関係に疑問を抱く。結婚も考えているとの答えに満足しつつも、心の片隅では自分の事をわかってもらえていないと、満たされなさも感じるようになっていたのだ。知香のそんな気持ちに拍車をかけるように、セックスの時にも、自分の触れてほしいところに触れてもらえず、もどかしさが募る一方だった。やがて知香は、お互いが同じくらいの熱量で最初から思い合っていたため、つい大事な言葉を省きがちになっているのではないか、という事に思い至る。

ベッド・サイド・テクニック

水泳のインストラクターのまりえは、セックスで感じないと言ってしまった事で、恋人のと気まずくなってしまう。まりえからセックスについての相談を受けた同僚のまゆみは、後日、まりえを自宅での映画鑑賞会に誘う。意味深なまゆみの誘い方に違和感を感じながらも、彼女の家に向かったまりえは、そこでまゆみがアダルトビデオを流すのを目の当たりにして面食らう。アダルトビデオについてどう思うかと問われたまりえは、言葉を濁すが、そんなまりえに対してまゆみは、女も感じるために努力する必要があると忠告する。

道をおたずね下さい

由紀は、川上雄二との結婚を控えてナーバスになっていた。結婚は人生のゴールであり、結婚相手である雄二を愛すればいいとわかっているものの、それが本当に唯一無二の存在なのか確信が持てない、と迷い始めていた。そんな気持ちを抱えた由紀は、街中で見かけた、ボクシングジムに通う名前も知らない男性に一目惚れしてしまう。奈緒はそれを社内の友人に相談し、自分に芽生えた恋心に従い、名前も知らないボクサーの男性に声をかける。

ラブレター

吉田奈緒は、ランチに使う店でよく見かける、外資系の企業に勤めるエリート社員の哀川征仁が気になっていた。実は以前、通勤電車で貧血を起こして倒れそうになったところを支えてもらい、フルーツ牛乳をおごってもらった事があったのだ。しかし、哀川目当てで店の女性客が日ごとに増えるほど、哀川は多くの女性のあこがれの的だった。そんな中、奈緒はダメもとで、会いたい日時を指定したラブレターを投函する。哀川は来ないだろうと思いながら、奈緒が待ち合わせの場所に立っていると、そこに予想に反して哀川が現れる。

登場人物・キャラクター

浅沼 あやか (あさぬま あやか)

エピソード「力を抜いて」に登場する。若い女性で、美容室でチーフを務めている。髪を長く伸ばしているが、職場では乱れないように結ってまとめている。普段は新人に任せるシャンプーを気分転換に買って出て、担当した男性客の秋元に、それがきっかけで声をかけられた。長く交際をしている恋人の八木真からプロポーズされたが、その際の簡素な言葉を手抜きと感じ、惰性で事を進められるのは嫌だと、真と距離を置くようになる。 本音では真が好きなのは変わっていないが、真の態度に物足りなさを感じ、真が自分への気持ちが冷めている事から手抜きしているのだと、思い込んでいる。

今村 知香 (いまむら ちか)

エピソード「ここに触れなきゃ」に登場する。エステティックサロンに勤める女性。年齢は25歳。恋人の高志と3年付き合っており、結婚もきちんと考えている高志に大きな不満はないものの、小さな引っかかりを感じていた。セックスの時に触れてほしいところに触れてくれない事も、不満の一つになっている。肌に関する事はプロだと自負しており、高志の気持ちも肌から読み解く事ができると思っている。

まりえ

エピソード「ベッド・サイド・テクニック」に登場する。水泳のインストラクターを務める若い女性。恋人の保にセックスが感じないと打ち明けてしまい、関係が気まずいものになってしまう。その事を職場の同僚で学生時代からの友人でもあるまゆみに相談するが、まゆみからは、解決策として積極的になるように提案される。

由紀 (ゆき)

エピソード「道をおたずね下さい」に登場する。会社勤めの女性で、年齢は24歳。同じ会社に勤める恋人の川上雄二との結婚を控えている。結婚を目前にして雄二を人生の伴侶と決めていいのか迷い始め、雨宿り中に見かけたボクサーの青年に、一目で恋心を抱いてしまう。

吉田 奈緒 (よしだ なお)

エピソード「ラブレター」に登場する。会社勤めの若い女性。自分の行きつけの店に、いつも昼食にやって来るエリート会社員の哀川征仁に恋心を抱いている。そのきっかけは、朝食が取れずに通勤電車で倒れそうになっていたところを支えてもらい、フルーツ牛乳をおごってもらった事から。せめて気持ちを伝えようと、会いたい日時と場所を指定したラブレターを書いて投函した。

八木 真 (やぎ まこと)

エピソード「力を抜いて」に登場する。浅沼あやかの恋人で、証券会社に勤める若い男性。恋人のあやかの前でリラックスした姿を見せる事は親しさの証で、大人の男の余裕でもあると考えていた。だがあやかにプロポーズを拒否された事がきっかけで、余裕のある態度が、あやかには手抜きだと勘違いされている事を知り、きちんと言葉と態度で愛情を示した。

秋元 (あきもと)

エピソード「力を抜いて」に登場する。ファッション誌の編集者を務める若い男性。美容室でシャンプーされた浅沼あやかを気に入り、あやかの勤める美容室の退勤時間を見計らって現れ、夜の食事に誘った。あやかの同僚は、秋元がスマートでイケメンなため、誘われたら直ぐに付いて行ってしまうと絶賛している。

高志 (たかし)

エピソード「ここに触れなきゃ」に登場する。会社勤めで、商品開発を担当している若い男性。恋人の今村知香との時間を大事にしようとしているが、知香といっしょに見ていたビデオの途中で、寝てしまうほど仕事で疲れている。そんな日々を繰り返してしまい、知香に不満と不安を感じさせている。しかし「もっと言葉がほしい」という知香の思いを聞いて、すぐにそれを受け入れた包容力のある人物。

(たもつ)

エピソード「ベッド・サイド・テクニック」に登場する。社会人の若い男性。恋人のまりえにセックスの時に感じられないと言われて傷つくが、どうしたらこの問題を解決できるか二人で考えようと、すぐに歩み寄る姿勢を見せた。まりえの感情を汲んで、優先する包容力のある人物。

まゆみ

エピソード「ベッド・サイド・テクニック」に登場する。水泳のインストラクターを務める若い女性。まりえの学生時代からの友人で、職場の同僚。まりえの恋愛相談を受け、解決策として映画鑑賞会を開いて、アダルトビデオを見せ、女性側も積極的になるべきだと助言した。

川上 雄二 (かわかみ ゆうじ)

エピソード「道をおたずね下さい」に登場する。会社勤めの若い男性。同じ会社に勤める恋人の由紀との結婚を控えている。引き出物の品を選びに行こうと自分から由紀を誘うなど、結婚の準備にも余念がない。義母の誕生日も覚えているなど細やかな気遣いのできる人物。最近由紀がぼんやりしてる事が多いのを気にしている。

哀川 征仁 (あいかわ せいじ)

エピソード「ラブレター」に登場する。外資系企業に勤める若い男性。哀川征仁の使うランチ店の女性客が目に見えて増えているほど、異性に好感を抱かせる整った容姿をしている。しかし本人は注目されているとは感じておらず、昼食を共にする同僚から朴念仁と評されている。叔母から見合い写真をしつこく送られているが、征仁自身は出会いは自然に任せたいと考えている。 吉田奈緒からのラブレターの文面に、これまで受けた事のない必死さを感じて誘いに応じた。

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