灼熱カバディ

灼熱カバディ

元サッカーのエースストライカーだった少年が、カバディの世界に入門。その力強さと奥深さに魅了され、自身とチームをトップに押し上げるために奮闘していく。カバディのルール改定を実際に漫画の中でも取り入れており、連載中の2017年に日本の大会でも採用されるようになった「サードレイド」などが、のちに作中の大会でも新ルールとして採用されている。「裏サンデー」で2015年7月9日から配信の作品。

正式名称
灼熱カバディ
ふりがな
しゃくねつかばでぃ
作者
ジャンル
部活動
レーベル
裏少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
既刊26巻
関連商品
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あらすじ

能京高校カバディ部(第1巻)

能京高校に通う宵越竜哉は、中学時代にサッカー部で活躍をしており、そのフットワークの軽さから「不倒の宵越」と称えられていた。しかし、メディアや監督などの勝手な期待や、チームメイトとの不和にうんざりした彼は、高校入学後はスポーツから離れ、放課後は動画配信サイトで生放送の配信を行っていた。そんな中、宵越の部屋に畦道相馬が現れ、カバディ部に勧誘してくる。スポーツが嫌になっていた宵越は断ろうとするが、畦道は一歩も引かない。そこで宵越は、彼の先輩であり、自身を勧誘する大本である井浦慶に話をつけようとする。ネット業界にも詳しい井浦は、宵越に対し、カバディで畦道と水澄京平伊達真司を相手に宵越が攻撃を成功させれば、井浦が宵越の生放送の宣伝を行い、逆に宵越が攻撃に失敗したら、カバディ部に入部するよう迫る。かつて誰かに倒された事がなく、カバディをネタスポーツだと甘く見ていた宵越はこれを受け入れるが、畦道の執念の前に敗北。カバディ部に入部し、スポーツの世界へと舞い戻る事になる。

宵越と畦道の特訓(第1巻)

カバディ部に半ば強引に入部させられた宵越竜哉。しかし決して練習に手を抜く事はなく、密かに井浦慶を感心させていた。ルールを学ぶにつれて、自らの持ち味である背の高さやフィジカルの強さを活かそうと模索する宵越。しかし、もともと連携を苦手としていたためか、畦道相馬と組んで、先輩である水澄京平伊達真司を相手に練習試合を組んでも、連戦連敗を喫してしまっていた。宵越と畦道はこの現状を打破するべく、守備において暗号化された掛け声を用いる作戦を考案。敗れこそしたものの、あと一歩のところまで水澄達を追い込む。負けず嫌いの宵越は、相変わらず不満を口にこそするものの、次第にカバディの魅力に取りつかれつつある自分に気づくのだった。

王城正人、帰還(第2巻)

宵越竜哉は、自分に筋力が足りない事を懸念しており、優れた体格を誇る伊達真司に相談をする。これに対して伊達は、カバディの公式戦に出場するには体重が80キロ以下でなければならないため、筋力をつける事に反対しつつ、むしろ持ち味であるスピードを活かすように助言するのだった。そんな中、能京高校カバディ部の部長である王城正人が、足のケガが完治した事により退院する。偶然にも王城と出会った宵越は、小柄な彼が部長であるなどとは露知らず、スポーツをやっているとだけ語る彼に、遠まわしに宵越自身も躓きの連続である事を語る。そこに伊達と水澄京平が現れ、宵越はそこで初めて、その小柄な人物が部長である事を知る。小柄なためカバディで大事になる腕の長さにも恵まれず、腕相撲も弱い王城に、宵越は彼の強みがどこにあるのか測りかね、何故部長をやっているのかを単刀直入に尋ねる。それに対して王城は不敵に笑い、「一番強いから」と断言。それを証明しようと、宵越と畦道相馬の1年コンビに対して勝負を持ち掛ける。王城の、行動への予備動作がまったく見えず、幾度もタッチを奪われる宵越。反射で避けるしかないと判断するものの、無意識の動作によって王城のタッチをかわす事に成功する。自分自身でも何をしたか理解できない宵越に、自分と同じ技を使われたと喜びを見せる王城。勝負自体は宵越、畦道の惨敗に終わったが、宵越はこの勝負の中で新たな手ごたえを摑んだのだった。

練習試合~能京高校カバディ部VS奏和高校カバディ部(第2巻~第3巻)

宵越竜哉畦道相馬に確かな資質を見出した王城正人は、彼らに試合を経験させる事を画策。王城の世界組の仲間である六弦歩が部長を務め、関東ナンバー4の実績を誇る奏和高校カバディ部との練習試合を取りつける。六弦の個人としての実力は王城に僅かに及ばないものの、奏和高校カバディ部のチームとしての実力は非常に高く、さらに、かつて水泳でトップに立っていた高谷煉も、六弦に匹敵するエースプレイヤーとしてマークされていた。サッカー部の監督である竹中をはじめ、宵越本人に注目するギャラリーも見守る中、試合が始まる。

宵越は、王城から伝授されたロールキックを用いて3点を奪取。しかし、高谷もまたトリッキーな攻撃で宵越を翻弄し、即座に逆転。伊達真司の攻撃も六弦に潰され、その後も高谷の猛攻の前に、能京高校カバディ部は守備を全滅させられてしまう。さらに畦道が軽いケガを負ってしまったため、今回は見学に徹するつもりでいた王城が畦道と交代してコートに入る。王城はカウンターを駆使して、瞬く間に奏和高校カバディ部の守備を全滅に追い込む。

そして後半。王城の活躍で15点あった得点差も4点にまで縮まるが、その中で王城の身体には疲労が蓄積していた。それがケガにつながりかねないと危惧した井浦慶の進言により、王城は自らの代わりとして、高谷の打倒を宵越に託す。宵越は仲間達から学んだ戦術をフルに駆使して、ついに高谷をコートから追い出す事に成功する。そして試合終了間際。2点リードの奏和高校カバディ部は六弦を攻撃手に据え、トドメを刺すべく挑みかかるが、宵越と王城、そして、六弦に密かにライバル心を燃やしていた井浦が六弦に食らいつき、攻撃を失敗させる。能京高校カバディ部は、1点差で敗れこそしたものの、関東4位に迫る実力を持つ事をここに証明したのだった。

新メンバー、入部(第3巻)

負けず嫌いの宵越竜哉は、奏和高校カバディ部に敗北した結果を重く受け止めていた。畦道相馬も最後まで戦えなかった事に悔しさを覚えていたが、宵越の無器用な激励を受けて立ち直る。そんな中、二人を注視するいかつい男子生徒の姿があった。畦道に因縁があるに違いないと言って譲らない宵越だったが、翌日、畦道から伴伸賢と名乗るその生徒が、能京高校カバディ部への入部を希望している事を聞かされる。伴を不良だと考える宵越は入部に反対するが、その放課後、伴が友人である人見裕希を伴って現れる。三人は、先日の奏和高校カバディ部との試合を観戦して興味を抱き、さらに伴は、サッカー部時代から宵越にあこがれを抱いており、再びスポーツを始めた事を喜んでいた。伴達は王城達にも入部を認められ、能京高校カバディ部は、晴れてフルメンバーで試合をできるようになった。

能京高校カバディ部VS王城正人(第3巻)

改めて、3か月後の関東大会に向けて練習を重ねる宵越竜哉達。しかし、初心者である伴伸賢人見裕希と、宵越達は連携がままならず、苦労していた。そこで王城正人は、水澄京平畦道相馬、伴の三人と、伊達真司、宵越、関の三人を2グループに分け、井浦慶と人見が両方のチームで守備を行うという変則的な練習を提示。しかも練習内容は、二つのグループでぶつかるものではなく、お互いのチームが王城を相手に守備を行うというものだった。全国区の力量を持つ王城の激しい攻撃に、なすすべもなく失点を重ねていく宵越達。別のチームに分けられた水澄と伊達は、出会った頃の事を思い出しつつ、お互いに依存してしまっていた事に気づき、宵越も、関と人見の強みと弱点を把握し、彼らを活かすための戦術を構築していく。また、畦道はこの練習において、感覚を自分の周りに張り巡らせ、ギリギリ触れられる距離を本能で悟る、センサーという才能を有している事が判明する。結局どちらも王城を止める事はできなかったが、一同には確実な上達が見られると共に、各々の持つ強みが明らかになっていく。王城はこれを踏まえて、大会までに「自分の1番」を見つけるよう指示するのだった。

最強を目指すもの達(第4巻)

関東大会の責任者である水堀新の呼びかけにより、世界組のメンバーが取材を受ける事が決まった。さらに、ほかのスポーツで実績を残したという事で、宵越竜哉高谷煉も呼ばれる事となり、宵越は六弦歩のほか、英峰高校カバディ部神畑樹など、名だたる世界組のメンバーと顔を合わせる事となる。中でも、7年間全国制覇を成し遂げているという星海高校カバディ部の存在感は圧倒的で、特に部長である不破仁は、宵越の目から見ても圧倒的としか言いようのない存在感を放っていた。勝つ事が使命だと即答する不破と、カバディへの愛がモチベーションの原動力になると答える王城正人。これに対して宵越もまた、強者のすべてを倒してトップに立つ事を宣言するのだった。

部活対抗騎馬戦(第4巻)

能京高校カバディ部が練習場として使っていた旧体育館が、使えなくなるかもしれないという悲報が舞い込んだ。能京高校の中でも特に勢力が強いとされる能京高校野球部が、部員の増加に伴い、備品置き場として旧体育館を使いたいと言い出したのである。能京高校野球部のエースである安堂は、部員が七人しかいない能京高校カバディ部に、旧体育館を使わせるのはもったいないと主張。これに対して宵越竜哉は憤慨するが、そこで井浦慶が、週末に行われる体育祭の、部活対抗騎馬戦で勝った方が旧体育館の使用権を得るよう提案する。安堂はほかの部活も抱き込み、全力で能京高校カバディ部を倒そうと目論むが、宵越と王城は練習場の確保のため騎馬のメンバーと共に高い士気を保っていた。襲い来るほかの部活の騎馬を蹴散らしていき、勝負は宵越と安堂の一騎打ちにもつれ込む。戦いの中で己の意思を示す安堂に対し、宵越もまた、カバディというマイナーなスポーツが生み出す未知の世界を進みたいと主張。そしてカバディで培った連携を活かす事で、ついに宵越は安堂を撃破する。能京高校カバディ部は旧体育館を引き続き使用可能となり、能京高校野球部の提案により、トレーニング器具を使わせてもらえるようになるのだった。

合同合宿開始(第4巻)

夏休み。能京高校カバディ部のメンバーは、他校と共同で行う合同合宿のために埼玉へ向かっていた。主な目的は、他校の選手の力を目の当たりにする事で、宵越竜哉畦道相馬に刺激を与える事だった。到着したメンバーを、合宿の主催者である紅葉高校カバディ部佐倉学右藤大元が出迎える。佐倉は、世界組に在籍しているあいだに王城正人に基礎から応用までを深く学んだ、いわば弟子と呼べる存在だった。さらに、合同合宿に参加するのは能京高校カバディ部と紅葉高校カバディ部だけでなく、関東2位の実績を持つ英峰高校カバディ部も参加している事が明らかになる。早速練習場で顔を合わせる参加校の面々。最初に宵越の目を引いたのは、元世界組のエース攻撃手である、英峰高校カバディ部の部長、神畑樹だった。一方、神畑自身も、奏和高校カバディ部との練習試合でも結果を出した宵越を注目している事を語る。さらに英峰高校カバディ部には、神畑に匹敵する高身長を誇る八代一馬君嶋拓、そして、彼らとは対照的なほど小柄な2年生である若菜剛が、それぞれスターティングメンバ―として名を連ねていた。彼らや、佐倉達紅葉高校カバディ部の実力を知るべく、早く試合をしたいと、やる気をみなぎらせる宵越。王城と神畑もそれに同意し、4対4のミニゲーム形式の練習試合がここに幕を開けるのだった。

合同合宿 4対4のミニゲーム(第4巻)

4対4のミニゲームを行うため、それぞれ散っていく合同合宿の参加メンバー達。井浦慶神畑樹は、データ収集のため見学する事になり、能京高校カバディ部は、宵越竜哉畦道相馬水澄京平伊達真司のAチームと、王城正人伴伸賢人見裕希のBチームにそれぞれ分割。Aチームは八代一馬君嶋拓若菜剛を含めた英峰高校カバディ部のチームと、Bチームは佐倉学右藤大元らを加えた紅葉高校カバディ部のチームと、それぞれ対戦する事になる。

英峰高校カバディ部は攻撃手に若菜を選択する。若菜の圧倒的なスピードに、宵越と畦道はストラグルを奪われるが、水澄がブロッキングを用いて足止めをし、そのスキを伊達がつく事で攻撃は失敗に終わる。Aチームの攻撃手は、本人の希望もあって畦道が担当。王城との練習で会得したセンサーを利用した攻撃に出るが、八代を摑んだと思った瞬間、何故か逆に倒され、攻撃は失敗してしまう。その後も宵越が若菜を狙うが、今度は八代と君嶋に止められて失敗。Aチームは英峰高校カバディ部の守備を攻略できずに終わってしまう。

一方、Bチームと紅葉高校カバディ部のミニゲームは、ほぼ王城と佐倉による攻撃手同士のワンマン対決となっており、わずか5分足らずで11対11のハイスコアゲームが展開されていた。佐倉はひたすらに王城の行動を模倣し、彼の強みを活かしたプレーで王城自身に食い下がっていた。王城もカウンターで佐倉を翻弄するが、対する佐倉も回転を使う事で逆に王城を欺き、攻撃に成功。Bチームもまた、紅葉高校カバディ部に敗れてしまう。ミニゲームが終了し、それぞれのチームの強みや問題点が浮かび上がる中、宵越と畦道もまた、ここで技術を磨いて佐倉や八代を超える事を誓い合うのだった。

合同合宿 修練の日々(第5巻)

合同合宿2日目。一同は食事を済ませると、紅葉高校カバディ部の誘いにより、野外ロードワークコースを使った、走り込みを兼ねたレースを行う。続いて行われたのは、英峰高校カバディ部の先導による守備練習。水澄京平は、その中で自分達の動きにまだまだ無駄がある事を思い知るが、王城正人の指示で練習していたブロッキングの巧みさを若菜剛からも認められ、自らの成長を実感する。一方畦道相馬は、センサーを利用した守備を八代一馬に改めて賞賛されるが、その一方で、技術は教わるものではなく盗み出すものであると、忠告も受ける。畦道は無意識に他者に頼っていた事を痛感し、さまざまな選手を観察し、その長所を吸収する事を志す。また、ダイエットに苦心していたは、神畑樹の過酷減量を目の当たりにし、彼のカバディに対する熱意を聞く事によって、改めて80キロを切るよう努力する事を決め、初心者の域を抜けられない事を悩む人見裕希も、若菜とコンプレックスを語り合う事で一皮むける。

合宿の日々は過ぎていき、参加メンバー達は順調に、それぞれに課せられた課題をこなし、新たな技術を手に入れつつあった。6日目の朝、レースのために野外ロードワークコースに出た宵越は、佐倉学が1年半ものあいだ、カバディから離れていた事を知る。他者の事情に干渉する事を基本的に好まない宵越だったが、王城に匹敵する技量とカバディへの熱意を持つ彼が、何故一時的に離れていたのか気になり、お互いにレースで本気を出すためとして、宵越が勝ったらその理由を話すよう佐倉に迫る。レースでは一度として負けた事がない佐倉もこれを受け入れ、一同は最後のレースに臨む。宵越はサッカーで培った脚力を活かし一時は佐倉を追い抜くが、僅差で敗れてしまう。佐倉が途中で辞めていた理由を聞けずじまいの宵越だったが、佐倉の思いが本物である事を改めて実感。やはり負けてはいられないと、最終日となる明日に行われる練習試合に向けて意気込むのだった。

合同合宿 能京高校カバディ部VS英峰高校カバディ部(第5巻~第6巻)

合同合宿は、いよいよ最終日の目玉となる練習試合を迎える。初戦で能京高校カバディ部と対戦する事になった英峰高校カバディ部は、減量のため練習に本格的に参加できなかった神畑樹を加えたフルメンバーで試合に臨む。能京高校カバディ部は、神畑に癖を悟られている王城正人ではなく、宵越竜哉が攻撃手を任される。英峰高校カバディ部の盤石な守備に苦戦を強いられる宵越だったが、アイソレーションを利用したカーブを用いて3点を奪う。これに対して神畑は攻撃の際にあえてスキを作る事で能京高校カバディ部の動きをあやつり、宵越から点を奪い、コートから追い出す。王城は宵越をコートに戻すために大量得点を狙おうとするが、神畑はこれを逆手に取り、王城が自軍に戻る前に奇襲をかけ、さらに英峰高校カバディ部全員で追撃。無敵の攻撃力を誇る王城がまさかの攻撃失敗という事態に陥り、能京高校カバディ部は全滅の危機を迎える。しかし、そこで畦道がセンサーを活かした先読みと日々培ってきた粘り強さを活かし、3点を獲得。宵越と王城をコートに戻す事に成功する。

畦道の攻撃によって、能京高校カバディ部はコートの中に六人が揃い、対して英峰高校カバディ部は二人と、あとがない状態になっていた。しかし、無理な減量がたたって疲弊したように見えた神畑が、執念によって常軌を逸した動きを見せ始める。王城もまたこれに対抗すべくカウンターを駆使して点を重ねていくが、逆転を果たせないまま一進一退の攻防が続く。そんな中、神畑に報いようと気迫を見せる若菜の攻撃で、王城は再びコートから追い出される。能京高校カバディ部が再び絶体絶命のピンチに陥る中、攻撃手を委ねられた宵越は、アイソレーションの真髄と言えるバックダッシュを使い、神畑からストラグルを奪う。しかし帰陣の途中でわずかに足を滑らせてしまい、そのスキを猛追する神畑に抑え込まれ、宵越の攻撃は失敗。能京高校カバディ部は最後まで逆転する事なく、英峰高校カバディ部に敗れ去ってしまう。

合同合宿 英峰高校カバディ部VS紅葉高校カバディ部(第6巻)

能京高校カバディ部は、英峰高校カバディ部との練習試合に敗れたものの、宵越竜哉アイソレーション合同合宿参加者達に強い印象を残していた。しかし、宵越の心には最後の失敗が重くのしかかっており、練習場から出て一人で考え込んでいた。そこに王城正人が現れ、かつて王城もアイソレーションの修得を目指したものの、体格に恵まれなかったためあきらめるしかなかったと語る。王城が目指した道を自らも進んでいる事を認識した宵越は、その心の中で更なる飛躍を誓うのだった。

宵越が練習場に戻ると、英峰高校カバディ部と紅葉高校カバディ部の練習試合は前半の山場を迎えていた。試合は10-4で英峰高校カバディ部がリードしていたが、前半終了間際、佐倉は回転を使う事で3点を獲得する。ようやくエンジンがかかったかに見えた佐倉を、紅葉高校カバディ部のチームメイト達も激励する。リードを保つ英峰高校カバディ部だったが、既に神畑はプレーに影響を及ぼすほどの疲弊を見せていた。

そして後半。神畑を欠いた英峰高校カバディ部は若菜剛を攻撃手に据えるが、彼の動きは佐倉にことごとく読まれており、攻撃は失敗に終わる。リードこそしているものの、危機感を覚えた英峰高校カバディ部は警戒心から守備を万全に整え、その後しばらくは若菜と佐倉が少ない点を取り合う状況が続く。そして残り1分。若菜の攻撃で点差は広がり、さらに英峰高校カバディ部は最後の守備に、限界を迎えていたはずの神畑を再起用。執念による連携攻撃で佐倉を地に伏せ、試合は決着。英峰高校カバディ部のメンバーは1点差で2試合目を制し、全勝する事で関東2位の面目を示すのだった。

合同合宿 能京高校カバディ部VS紅葉高校カバディ部(第7巻)

英峰高校カバディ部に一歩及ばなかった、能京高校カバディ部紅葉高校カバディ部佐倉学は、あと一歩足りなかった事に悔しさを覚えつつも、師匠である王城正人に挑める瞬間に強い喜びを感じていた。そんな中、迎えた合同合宿最終戦。宵越竜哉アイソレーションを利用したバックダッシュで2点を獲得するが、これに対して右藤もドゥッキを使って攻撃を成功させるなど、一進一退の攻防が続く。王城もまた紅葉高校カバディ部の守備をカウンターで振り切り、それを読んでいた佐倉のタックルを受けるが、そのままラインをタッチして4点を獲得する。しかし王城はこの攻撃で頭部に軽いケガを負い、血が止まるまでのあいだと交代する。一方、残り二人になった紅葉高校カバディ部は自ら全滅を宣言。4点を犠牲にして佐倉をコートに戻し、攻撃手を任せる。佐倉はこれに報いるべく、猛攻を仕掛けて6点を奪取。宵越を抑える事で全滅に追い込み、3点の追加得点を得る。これによって能京高校カバディ部は瞬く間に逆転されてしまい、4点ビハインドの状態で後半を迎える。

そして後半戦。出血が止まって復帰した王城と佐倉による点の取り合いはエスカレートし、ハイスコアゲームの様相を呈していく。しかし、残り時間が1分半となったところ、佐倉の攻撃によって王城がコートの外に追い出されてしまう。攻撃手として宵越が出撃し、果敢に攻め込んで2点を獲得するが、逆転はできないまま、能京高校カバディ部は絶望的状況に追い込まれていく。3点リードのまま佐倉がトドメを刺すべく襲い掛かるが、水澄がこれ止める事に成功し、2点差にまで追いつく。そして残り15秒。能京高校カバディ部、そして宵越最後の攻撃が始まろうとしていた。

登場人物・キャラクター

宵越 竜哉 (よいごし たつや)

能京高校に通う1年生の少年。中学時代はサッカー部で活躍を重ねており、全国ベスト4にまで進出している。さらに、その巧みなフットワークで、他者からほぼ接触される事がなかったため「不倒の宵越」と呼ばれていたが、監督やマスコミなどによる無責任ともいえる期待や、チームメイトの嫉妬などの軋轢によって、サッカーはおろかスポーツ自体が嫌になってしまい、高校入学後はネット配信動画で、「ナイトレイド」と名乗って生配信を行う日々を過ごしていた。 しかし、畦道相馬に誘われた事で、半ばなし崩し的に能京高校カバディ部に入部し、再びスポーツに取り組む事となった。カバディを知る以前は、本気で取り組む価値のあるスポーツなのか疑問に思っていたが、入部してからは、フィジカルとテクニックが物を言う世界に徐々に魅せられていく。 そして、部長である王城正人の助言もあり、やがてサッカーで成し得なかった日本一の座を、カバディで獲得しようと志すようになる。強気で意地っ張り、なおかつ極端な負けず嫌いでムキになりやすい。また、たとえ先輩が相手であってもあまり敬語を使わないが、これは、ただ先輩というだけで勤勉な人も怠惰な人も敬うのは不平等であるという、宵越特有の考えに基づくものである。 また、容姿はいいため女性の人気も高いが、女性と付き合うには性格に難があり過ぎるため、実際に彼女ができた事はなく、ほかの誰かが女性に騒がれると途端に不機嫌になる。しかし、助言を素直に聞き入れたり、失敗した際には自身を改めるなどの潔さを持ち、何より強くなるためにはいっさい努力を惜しまないため、その事を熟知している能京高校カバディ部の部員達とは良好な関係を築いている。 身長が高く、体格もいいため、摑まれても簡単に倒れる事はない。さらに、サッカー選手時代に培ってきたフットワークや反射神経や、試合の流れを読み切る優れた判断力など多くの長所を持ち、プレッシャーに強く、気負いもしない事から、特に序盤で優れた力を発揮する。 能京高校カバディ部では主に攻撃手として活躍しており、その活躍から早いうちから多くの選手に注目されている。一方、守備に関しては苦手なのか、滅多に活躍を見せられず、上達するために練習を続けている。合同合宿においては、王城からヒントを得て修得したアイソレーションを用いて、英峰高校カバディ部の守備を一気に追い抜くといった活躍を見せた。

畦道 相馬 (あぜみち そうま)

能京高校カバディ部に所属している1年生の少年。能京高校に入学する以前は山奥の田舎に住んでおり、訛り言葉とスキンヘッドが大きな特徴となっている。身長は宵越竜哉よりふたまわりほど低いが、実家の手伝いで毎日のように筋トレ同然の生活をしていたため優れた筋力を誇り、王城正人から直々に勧誘を受けていた。宵越の入部をかけた練習試合では、それを証明するかのように、不倒と呼ばれた彼を見事に倒し、入部するきっかけを与えている。 気さくで親しみやすい性格だが、宵越には馴れ馴れしいとも思われており、多少の苦手意識を抱かれていた。しかし、水澄京平と伊達真司を相手取った、2対2の練習を続けていくうちに互いの長所を把握し、次第に気が合う様子を見せるようになる。 しかし、互いのプレイスタイルが原因で、守備に関する連携は長らくうまくいっておらず、長期にわたる課題となってしまっている。カバディ部には宵越より1か月前に入部したばかりで、それ以前はまったくスポーツの経験がない素人だった。優れた筋力と、のちにセンサーと呼ばれる優れた感覚を応用する事で、攻撃および守備共に優れた活躍を幾度も見せるようになり、やがて宵越や王城同様に、世界組からも注目されるようになっていく。 合同合宿では、英峰高校カバディ部の守備が得意とする、あえてタッチ「させる」戦術を学び取り、練習試合において披露。若菜剛や八代一馬といった強敵から得点を奪うなどの活躍を見せ、やがて英峰高校カバディ部や紅葉高校カバディ部から、宵越に匹敵する脅威と認識されていく。 田舎に彼女がおり、しかもとても美人であるため、宵越からはヤキモチを焼かれている。

王城 正人 (おうじょう まさと)

能京高校カバディ部の部長を務める3年生の少年。元世界組の一人で、カバディ歴は10年というベテラン。宵越竜哉が入部した時は、練習中のケガがもとで入院していたため、しばらく顔を合わせる事ができていなかった。しかし、宵越の事はサッカー選手の時から注目しており、井浦慶から彼が入部した事を聞かされた際は喜びをあらわにしている。 小柄な体格で、筋力もさほどではなく、見た目からはあまり強そうな印象は受けない。そのため、宵越が初めて対面した時は、どういった点に秀でているのかまるで判断できず、本当に強いのかと疑われていた。しかし、その直後の練習では、病み上がりにもかかわらず、その実力を遺憾なく発揮し、宵越や畦道相馬を完膚なきまでに翻弄している。 相手の呼吸や予備動作などから次の行動を読み、それに対応して動くカウンターを得意としており、ひとたび攻撃に出れば、関東4位の奏和高校カバディ部や、関東2位の英峰高校カバディ部を相手にしても、一度に4点以上の得点を獲得する事が多い。そのため世界組でも最強クラスの攻撃手として知られている。 穏やか性格で面倒見もよく、能京高校カバディ部の主力、および精神的な支柱として機能しており、部員達からは強い敬意を向けられている。また、世界組でも、王城正人から直接技術を学んだ佐倉学や同学年の六弦歩、そして、現在もチームメイトとして共にプレーしている井浦などからは、絶大な信頼を寄せられている。一方、カバディという競技に対して、「愛している」と迷わず言ってのけるほどのめり込んでおり、試合においては普段の温和な様子が噓のように、不気味かつ狂暴な姿を見せてくる。 また、料理が得意で、宵越は王城の作るものを何度か食べた事があるが、その度に「美味い」と口にしている。

井浦 慶 (いうら けい)

能京高校カバディ部の副部長を務める3年生の少年。元世界組の一人。王城に誘われてカバディを始めて、既に6年になる。腹黒い性格の持ち主だが、学業の成績が優秀で、中学時代はさまざまな塾を渡り歩いて試験で1位を取る、という「塾荒らし」なる事を行っていた。そのため、進学校の英峰高校カバディ部からは、カバディとは別の意味で脅威の目を向けられている。 また、パソコンなどの扱いも得意で、ネットや撮影などに興じては、相手の弱みを握り、それをネタにカバディ部へ半ば強引に勧誘する事もある。ただし人を見る目があるうえに指導力も確かで、実際に強引に勧誘した宵越竜哉や水澄京平は、現在はすっかりカバディに夢中になり、強力なプレイヤーとして成長している。 この事から、部長である王城正人からは、能京高校カバディ部を育て上げたのは王城ではなく井浦慶であると断言されている。また、王城の影響か、カバディへの情熱も本物で、世界組ではスタメンに上がれなかったものの、自身の実力が高くない事を知りつつも、データ収集などで力を発揮する。また、試合においても、王城を見習ったプレーをする傾向がある六弦歩や佐倉学の動きを先読みして止めるなど、選手としての能力も決して低くはない。 約束を守らない人と天才が嫌いと公言。神畑樹や不破仁など、世界組のスタメンの弱点をつねに探っており、実際にそのデータが能京高校カバディ部に貢献する事も多い。

水澄 京平 (みすみ きょうへい)

能京高校カバディ部に所属する2年生の少年。頭にパーマがかかっているため、時折ほかのチームの選手からは「パーマ頭」と呼ばれる事がある。暴走族だった母親の影響で、中学生の頃は不良としてケンカに明け暮れており、部活動の練習を見ても、何が楽しいのか理解できなかった。能京高校に入学した際には、とりあえずおとなしくしようとは考えたものの、部活動を行うつもりは微塵もなかった。 しかし、かつて不良だった過去を井浦慶に握られてしまい、半ば脅される形で能京高校カバディ部に入部する。当時は正式な部員が井浦と王城正人のみで、自分より小柄な人達に何ができるのかと考えていた。しかし、次第にカバディの魅力に感化されていき、本気で取り組むようになる。 それでも経験の差はどうにもならず、運悪く初めての公式大会で星海高校カバディ部と対戦する事になり、その時の悲惨な結果から、一時は自分がいない方がまだ健闘できたのではないか、とすら考えた事もあった。しかしそれでも練習は怠らず、2年に進級した際には、伊達真司と共に能京高校カバディ部の守備として、なくてはならない存在にまで成長している。 1年の時の敗戦の記憶から、足手まといになりたくないという強い思いを秘めるようになる。紅葉高校カバディ部との対戦では、同学年でありながら王城の薫陶を受けた天才攻撃手である佐倉学に幾度も一蹴され続けたが、試合終了間際においても根性で食らいつき、見事に失点を阻止。逆転のチャンスを生み出している。

伊達 真司 (だて しんじ)

能京高校カバディ部に所属する2年生の少年。目が細く、黒目がほとんど見えないため、時折ほかのチームの選手からは「白目」と呼ばれる事がある。1年の前期は野球部に所属していたが、手のケガによって部活から離れており、放課後などを使って黙々とリハビリをしていた。そこにクラスメートであった水澄京平に勧誘され、能京高校カバディ部に入部する事を決める。 入部したばかりの頃は素人だった事もあり、水澄と共に強豪に得点を奪われる事が多かった。また、水澄とも考えが合わず、口喧嘩に発展する事もあった。しかし、水澄のほか、部長である王城正人や、副部長である井浦慶と練習を重ねていくにつれて、能京高校カバディ部の守備としてなくてはならない存在となる。 さらに、水澄との関係も改善され、部活では唯一の同級生として、相棒的存在となる。宵越竜哉に比べると背は低いが、その分体格に恵まれており、パワーを求められる状況で活躍する事が多い。また、守備においては水澄との連携を得意としており、水澄がブロッキングで敵の攻撃手を足止めしたところで押さえつけて、攻撃失敗に追い込む事が多い。 英峰高校カバディ部とのミニゲームでは、実際にこの連携を使用して、相手のエースである若菜剛の阻止に成功している。

伴 伸賢 (ばん のぶたか)

宵越竜哉よりあとに能京高校カバディ部に入部した1年生の少年。強面だが、実際は無口で、引っ込み思案な性格の持ち主。小学2年生の時、少年サッカーをしていた少年達に無理やりリーゼントにされるなどの嫌がらせを受けていたが、彼らが宵越一人に翻弄されているところを見て、宵越に憧れを抱くようになる。宵越がサッカーを止めてしまった時も、スポーツの世界に復活すると信じて疑わず、彼が能京高校カバディ部に入部して、奏和高校カバディ部と練習試合を行うと知った時は、友人である人見裕希や関を伴ってそれを観戦。 宵越を夢中にさせたカバディへの興味と熱意が増していき、伴伸賢本人も共にプレーしたいと志し、人見、関と共に能京高校カバディ部に入部する。 試合においては守備を担当する事が多く、現在は経験不足もあって水澄京平や伊達真司、畦道相馬には及ばないが、攻撃手の宵越を守りたいという一心で、敵の攻撃手から彼をガードした事もあった。なお、宵越は伴本人の事を覚えておらず、伴自身も、宵越にあこがれを抱いている事を能京高校カバディ部の部員達に話していない。

人見 裕希 (ひとみ ゆうき)

宵越竜哉よりあとに能京高校カバディ部に入部した1年生の少年。美容院を営む一家の末っ子で、四人の姉がいる。人見裕希本人も女性と見まごう容姿をしているため、家族にかわいがられているほか、学校でも男らしさとはまったく縁のない生活を送ってきた。しかし、友人である伴伸賢に誘われ、能京高校カバディ部と奏和高校カバディ部の練習試合を見学した際に、その力強さにあこがれを抱くようになる。 その後、伴や関と共に、能京高校カバディ部に入部する。もともと運動が得意というわけではなく、食も細いため、体格には恵まれていなかった。カバディを始めた理由もコンプレックスの払しょくが目的だったが、思うように結果が出せないため、後ろ向きな考えに陥る事もあった。 しかし、合同合宿で、若菜剛からコンプレックスは誰もが抱いている事を聞き、改めて自分にできる限りの事をやろうと決意を固めている。

(せき)

宵越竜哉よりあとに能京高校カバディ部に入部した1年生の少年。かつて相撲をやっており、「首堕としの関」と呼ばれて恐れられていた。ある時、友人である伴伸賢に誘われ、能京高校カバディ部と奏和高校カバディ部の練習試合を見学した際に、その力強さにあこがれを抱く。その後、伴や人見裕希と共に能京高校カバディ部に入部した。 社交的な性格だが、食いしん坊で太り気味の体格をしている。そのため、80キロの体重制限があるカバディの試合に出られない可能性も危惧されており、練習のほかに減量も求められている。なかなか食べる事を止められずにいたが、合同合宿で神畑樹の減量する様を偶然ながら目の当たりにし、その必死な様子に感化されていき、本気で減量を志すようになった。 そういった変化もあり、関東大会の約2週間前には無事にダイエットに成功し、晴れて大会に出られるようになる。技量はまだ粗削りだが力は強く、入部前の体験練習では、攻撃手である宵越を止める活躍を見せた事もあった。

六弦 歩 (ろくげん あゆむ)

奏和高校カバディ部の部長を務める3年生の少年。元世界組の一人。まじめな性格で向上心が高い。中学1年の時から既に、身長175センチ、体重78キロと非常に大柄で、世界組の中でも一際目立つ存在として注目されていた。その体格に加えて、攻撃手も守備もこなす器用さを持つため、世界組では不破仁、神畑樹と並んで、つねにスタメン入りしていた実力者。 ただし王城正人と1対1で対戦した場合は8割近く負けており、六弦歩自身とは比較にならないほど小柄な王城の持つテクニックに強い興味を示している。一方、よくも悪くも大雑把な面があり、同じ世界組ながら一軍入りできなかった井浦慶に対しては、「王城の友人」という認識しか持っておらず、六弦本人が知らないところで、彼に軽いコンプレックスを植え付けてしまっている。 ある時、王城から能京高校カバディ部と奏和高校カバディ部の練習試合を提案され、これを二つ返事で承諾。練習試合では、六弦に匹敵する優れた体格を誇る伊達真司を抑えたり、王城の攻撃からただ一人逃れるなど、部長としての実力を遺憾なく発揮して見せた。

高谷 煉 (たかや れん)

奏和高校カバディ部に所属する2年生の少年。中学時代は水泳をやっており、全国大会で1位に入賞した事もある。しかし、一度トップを取った事で水泳に興味を失ってしまい、高校に入ってからは、道具を使わずに楽しめるカバディを始めるようになった。軽い性格で、傲慢でこそないものの、いつも一言多く、六弦歩によく怒られている。 優れた聴覚を持っており、「聞く」事で相手の動きを把握し、それに対応するという戦法を得意としている。特に攻撃手として優秀で、能京高校カバディ部と奏和高校カバディ部の練習試合では、相手の動きを翻弄する事で、王城正人のいない能京高校カバディ部の守備を瞬く間に全滅に追い込んで見せた。しかし、敵にモーションを見抜かれないように特訓を重ねてきた王城には通用せず、終始劣勢に立たされていた。 練習試合終了後は王城や宵越竜哉に興味を抱くようになる。また、関東大会の優勝常連チームである星海高校カバディ部や、2年のみの編成でありながら関東大会ベスト8まで勝ち進んだ紅葉高校カバディ部も注目しており、中でもエースである佐倉学に対しては、同い年という事もあり、ライバル心を抱いている様子を見せている。

不破 仁 (ふわ じん)

星海高校カバディ部の部長を務める3年生の少年。元世界組の一人。日本の高校カバディ選手の中でも最強と目されている人物で、宵越竜哉は一目見るなり、圧倒的な奴だと認識するほどの威容を秘めている。勝つ事に対して誰よりも貪欲で、カバディに出場して勝利する事を自らの使命とまで公言している。自他共に厳しく妥協を許さない性格で、成長を促すためとはいえ、部員達が感じている迷いや甘えなどをはっきりと指摘し、その内容が無茶であると思われる事も多い。 それにもかかわらず反感を買わないのは、不破仁なら、そんな無茶も簡単にやってのけると信じられているからである。その強さと、厳しさを含んだカリスマ性から、志場命をはじめ、すべての部員から圧倒的な支持を受けている。 また、カバディが団体競技である事を強く意識しており、世界組に在籍していた時、監督の水堀新から、世界組で一番強い選手は誰かと尋ねられたところ、水堀を含んだ多くの人が不破であると考えていたが、不破本人は個人の力や技以上に、率いるチームがトップを得られる人物こそが、もっとも強い選手であると答えている。 これをきっかけとして、世界組のメンバーは高校入学を機に一度解散し、王城正人は能京高校カバディ部を、神畑樹は英峰高校カバディ部を、そして、不破は星海高校カバディ部を、それぞれ率いるに至っている。

冴木 銀 (さえき ぎん)

星海高校カバディ部の副部長を務める3年生の少年。元世界組の一人。星海高校カバディ部の中でも長い身長が特徴で、それを活かした守備を得意とする。しかしそれ以上に、さまざまな作戦を瞬時に考えつき、それを実行させるだけの頭脳の明晰さを買われているなど、井浦慶に似た長所を持っている。データ収集にも余念がなく、能京高校カバディ部と奏和高校カバディ部の練習試合が行われた時には、真っ先に宵越竜哉や高谷煉に注目。 そのポテンシャルを見抜くと共に、不破に対して警告していた。井浦同様シニカルな性格だが、ふざけた言動を取る事も多い。英峰高校カバディ部の神畑樹とは、共に世界組に在籍していた時はよくつるんでいたが、現在は互いに刺々しい様子を見せあっている。 一方で、神畑との対決を期待している素振りも見せているなど、その内心は計り知れない。

早乙女 幹也 (さおとめ みきや)

星海高校カバディ部に所属する3年生の少年で、元世界組の一人。不破と同等の体格を誇る守備の要で、星海高校カバディ部でも不動のスタメンに数えられている。強面な外見同様に性格も攻撃的で、練習中に相手をケガさせてしまう事も少なくない。主にその荒々しさは冴木銀に向けられているが、彼からは適当にあしらわれる事が多い。 もっとも、冴木からも守備面では頼られているなど、普段の関係は悪くない。

志場 命 (しば みこと)

星海高校カバディ部に所属する1年生の少年。1年生では唯一のスタメン選手として選ばれている。元世界組だが、星海高校カバディ部以外には、それを知られていない。宵越竜哉や高谷煉同様、かつては別のスポーツを行っていた。そのモーションから、高谷はバレエをしていたのではないかと推測しているが、志場命本人はそれについての回答を控えている。 物静かで穏やかな性格だが、不破仁をはじめとした先輩達に高い敬意を払っており、その反面、宵越のように、先輩に敬語を使わない人間には難色を示している。また、かつては攻守を両立させていた不破が、守備に適した肉体改造を施しており、王城正人は志場が攻撃手として入ったためであると推測している。

神畑 樹 (かみはた いつき)

英峰高校カバディ部の部長を務める3年生の少年。元世界組の一人。世界組の中でも一番の長身で、そのリーチの長さを武器に、攻撃や守備においてはほかを圧倒する活躍を幾度も見せている。また、相手のデータを取ったり、対策を講じたりする事にも長けており、井浦慶や冴木銀のような参謀的役割もこなしている。創立1年の紅葉高校カバディ部が、関東ベスト8まで勝ち残った要因である佐倉学や、能京高校カバディ部が奏和高校カバディ部と接戦を演じた際に活躍した宵越竜哉に注目して、英峰高校カバディ部を合同合宿に参加させるなど、つねにチームの先を見据えた行動を見せる事が多い。 その一方で、長身故に、カバディに出場する際の制限体重の維持に難儀しており、合宿中は水すら満足に飲まないほどの減量を行っており、同じく減量中だった関に影響を与えている。 また、合同合宿最終日における、能京高校カバディ部や紅葉高校カバディ部の練習試合では、そんな状態で挑んだにもかかわらず、本調子そのものの様子を見せて、王城正人や佐倉を戦慄させた。

八代 一馬 (やしろ かずま)

英峰高校カバディ部の副部長を務める3年生の少年。神畑樹に匹敵する身長を誇り、攻撃手として参加する事は少ないが、英峰高校カバディ部が誇る守備の要として機能している。物腰が穏やかで、後輩に対しても敬語を使う。合同合宿初日における、能京高校カバディ部と英峰高校カバディ部のミニゲームでは、畦道相馬のセンサーを早期から警戒。 あえて攻撃手にタッチさせて、そこを崩すという手段で彼を抑え込んだ。その技術に興味を抱いた畦道からアドバイスを求められ、彼の素直さや向上心を称賛しつつも、技術というものは教わるものではなく、盗み出すものであると主張した。しかし畦道は独断で、英峰高校カバディ部の守備を見抜き、合同合宿最終日の練習試合では、コート内に一人残された畦道の攻撃に、英峰高校カバディ部全体が脅かされる事になる。 八代一馬はこれを自身のアドバイスによるものと考えたため、落とし前を付けるため、あえてタッチさせる攻撃への対策を披露し、畦道を苦戦させた。

君嶋 拓 (きみしま たく)

英峰高校カバディ部に所属する3年生の少年。神畑樹や八代一馬同様の長身の選手。育ちのいいお坊ちゃんで、合同合宿の最中に行われた野外の飯盒炊飯では、簡単に火を起こして見せるなどの器用な一面も見せていた。八代とは対照的にやや軽めの性格で、よく若菜剛をからかっている。しかし、八代との相性自体はいいため、共同で守備に当たる事が多い。 合同合宿最終日に行われた能京高校カバディ部と英峰高校カバディ部の練習試合では、王城正人の攻撃に対して真っ先に飛び込んでいくが、カウンターによって倒されている。しかしそのスキをついた神畑樹、八代、そして若菜が連続して飛び掛かり、王城の攻撃を失敗に追い込んだ。

若菜 剛 (わかな ごう)

英峰高校カバディ部に所属する2年生の少年。英峰高校カバディ部はおろか、合同合宿に参加した選手の中で最も背が低く、神畑樹、八代一馬、君嶋拓と比べると大人と子供くらいの差がある。背が低い事はリーチの低下につながり、特に攻撃手にとっては障害となるが、若菜剛はこの欠点を、凄まじい速さのスタートダッシュで飛び出し、相手が反応する前にタッチするという戦法で補っている。 その初速は宵越竜哉や畦道相馬すら追い切れないほどだったが、走る軌道や攻撃の癖を読まれないようにする技術などは世界組に及んでおらず、王城正人との練習でその技術を培った能京高校カバディ部に追い込まれた事もあった。技術以上に、その精神力を神畑から認められており、佐倉学など、若菜を上回る技術を持つ相手を前にしても、一歩も引かずに戦い続けている。

右藤 大元 (うとう ひろもと)

紅葉高校カバディ部の部長を務める2年生の少年。元世界組の一人で、佐倉学や王城正人からは「ヒロ」と呼ばれている。親友である佐倉や、世界組で一軍に選ばれた選手ほどの才能には恵まれていないものの、明るく社交的な性格で、人を見る目と戦術を構築する才能に秀でている。右藤大元本人も、自分が中心になるのではなく、佐倉を中心に据えて、彼が活躍できる環境を作り上げる事が、紅葉高校カバディ部が勝利する道であると考えている。 そもそも、紅葉高校カバディ部を設立したのも、家庭の事情によって一度カバディを止めてしまった佐倉を呼び戻すため、という理由によるものである。もっとも、プレイヤーとしても十分に優秀で、世界組が海外遠征に向かった先で、さまざまな選手の技術や戦法を吸収していき、その経験が現在の強さを培っている。 合同合宿最終日の、能京高校カバディ部と紅葉高校カバディ部の練習試合では、日本ではあまり使われない技の一つであるドゥッキを用いる事で、宵越竜哉や畦道相馬を欺いて得点を重ねる事に成功しており、宵越からは侮れない選手だと警戒されている。

佐倉 学 (さくら まなぶ)

紅葉高校カバディ部に所属する2年生の少年。元世界組の一人。1年生の時、創立したばかりの紅葉高校カバディ部を関東ベスト8にまで導いたという、途方もない実力者。もともとは気弱な性格のおばあちゃん子で、中学生の時にカバディを始めたのも、祖母に心配をかけられないよう、運動をして身体を鍛えるためだった。しかし、その天性の感覚から、世界組の二軍では早々に注目されており、ある時、一軍と合同で練習を行うが、まったく歯が立たない事に愕然とする。 そんな中で王城正人と出会い、佐倉学より細い身体であるにも関わらず、一軍で活躍している様子を見ると共に、練習を重ねれば、肉体も精神もどこまでも強くなれると説かれて、より高みにのぼろうと決意するようになる。 それからは王城の練習を観察する事が日課になっていき、いつしか彼から直接に技術を教わる、いわば師匠と弟子のような間柄となる。これがきっかけとなってさらなる成長を遂げていくが、そんなある日、大好きな祖母が認知症を発症してしまい、その介護に徹するために、後ろ髪を引かれる思いでカバディから退く事を決める。しかし、紅葉高校に進学後、かつての世界組の仲間で親友でもある右藤大元が、佐倉のためにカバディ部を創立させている事を知り、再びコートに戻る事を決意した。 王城を誰よりも強く尊敬しており、ひたすら彼を模倣する事が、佐倉のカバディにおける基本スタイルとなっている。それも、ただ技術を真似るのではなく、「王城ならこの場面ではこうする」という思考を瞬時に巡らせ、それに即した行動を取るという芸当もやってのけている。 さらに、王城を上回るフィジカルや、回転などといった独自の技も持ち合わせており、宵越からは王城の下位互換とはとても言えないと、強く警戒されている。一方で、井浦慶をはじめとした能京高校カバディ部の面々からは、常日頃から王城を相手に練習を重ねているためか、ある程度対応される場面も見受けられた。 しかしそれでも、合同合宿最終日の、能京高校カバディ部と紅葉高校カバディ部の練習試合では、攻撃手として大いに活躍し、幾度も能京高校カバディ部を追い詰めている。このように、王城に迫る非凡な才能を持っている事から、英峰高校カバディ部の神畑樹や、奏和高校カバディ部の高谷煉など、佐倉に注意を払う選手は非常に多い。

水堀 新 (みずほり あらた)

日本のカバディ協会会長。高校大会の責任者を務めている男性。王城正人達が世界組にいた頃の監督でもあるため、王城や不破仁、神畑樹達は教え子にあたる。かつてインドのプロリーグで活躍していた守備の名手で、現在においても万年筆を指で破壊するなど、卓越した力を持っている。日本でカバディがマイナー扱いされている現状を快く思っておらず、インタビューをした時も、威圧感をあらわにしながら無様な試合を許さないと迫っている。 ただし一方で、教え子達に多大な信頼も置いており、実際に無様な試合をする事はないと信頼もしている。不破の父親とは個人的な知り合いでもあり、その関係で、星海高校カバディ部の練習に顔を出す事が多い。

竹中 (たけなか)

能京高校サッカー部の監督を務めている男性。中学時代に「不倒の宵越」として活躍していた宵越竜哉に目をつけており、彼がカバディ部に入部する以前から、部員達と共にサッカー部に勧誘していた。宵越がカバディ部に入ってからもあきらめておらず、その熱意は、宵越目当てで能京高校カバディ部と奏和高校カバディ部の練習試合を部員達と共に観戦にいくほどである。 しかしその中で、サッカーでは誰にも接触された事のない宵越が幾度も倒されるという現状、そして、カバディという種目に全力を傾ける宵越の姿を目にする事で、次第にカバディ選手としての宵越を応援するようになる。ただし、彼をサッカー部に勧誘する事はあきらめていないという素振りも見せている。

錦野 (にしきの)

能京高校野球部の部長を務める3年生の少年。王城正人や井浦慶とは友人の間柄。野球部は能京高校の中でも特に勢力が強く、安堂が加入した事で甲子園を目指せる状態になっており、錦野本人もそれを目標に努力を重ねている。しかしある時、能京高校カバディ部が練習場として使っている旧体育館を賭けて、体育祭の騎馬戦で能京高校カバディ部と対決をする事になる。 騎馬戦では、王城や井浦に対するうしろめたさこそあるものの、野球部への情熱がそれを上回っており、いっさいの手心を加える様子を見せなかった。

安堂 (あんどう)

能京高校野球部に所属する2年生の少年。野球部の中核を成すエースで、部長の錦野からも多大な信頼を寄せられている。一方で、カバディをネタスポーツと馬鹿にしきっているうえに、能京高校カバディ部の努力を一笑に付すなど傲慢な面があり、宵越竜哉から敵視されている。とはいえ、相手を軽く見る事はせず、能京高校カバディ部の練習場である旧体育館を賭けた対決では、ほかの部にも連携を呼びかけるなど用心深い面もある。 また、野球に対する熱意は本物で、同じくカバディへの情熱を燃やしている宵越に対して、次第に親近感を抱くようになる。騎馬戦で敗れた時は、野球部のトレーニング器具を旧体育館に運び込むが、その器具をカバディ部も使えるように計らうなど、ある程度認めるような行動を見せた。

集団・組織

能京高校カバディ部 (のうきんこうこうかばでぃぶ)

東京都立能京高等学校のカバディ部。創立してからわずか3年と歴史が浅く、部員も宵越竜哉が入部する以前は、部長の王城正人と副部長の井浦慶、2年生の水澄京平と伊達真司、そして、宵越より1か月先に入部していた畦道相馬の僅か五人で、畦道と宵越が入部する以前は、ほかの部活から助っ人を募って試合に臨んでいた。 しかし、今年になって、畦道と宵越の他、宵越に憧れる伴伸賢や、その友人である関や人見裕貴を加え、常にフルメンバーで試合に臨めるようになった。王城と井浦以外は、入部する以前はカバディの経験のない素人で、大会では万年1回戦負けを経験していた。しかしこれは実力不足だけではなく、1回戦の相手が星海高校カバディ部などの強豪に当たっていたためという点も大きい。 部長の王城が世界組という事で、強豪との人脈が構築されているという強みがあり、関東ベスト4の奏和高校カバディ部と練習試合を組んだり、関東ベスト8の紅葉高校カバディ部、および関東準優勝の英峰高校カバディ部と合同合宿を行ったりと、レベルの高い練習を続けて、これらに劣らない強豪として成長しつつある。 しかし、あと一歩で及ばない事が多く、現状は奏和高校カバディ部と英峰高校カバディ部と練習試合を行っているが、いずれも敗北している。王城のワンマンチームと認識される事が多いが、ほかの部員もそれぞれの長所を見つける事で力を付けており、現状で、もっとも急成長を遂げているチームと言っても過言ではない。

奏和高校カバディ部 (そうわこうこうかばでぃぶ)

奏和高等学校のカバディ部。日本でカバディ部の大会が発足する前から存在していた歴史ある部活で、「東京でカバディをやるなら奏和」といわれているほど。最近低迷していたが、元世界組の六弦歩が入ってから勢いを取り戻し、さらに、水泳から転向してきた高谷煉が加わる事で、昨年の大会では関東ベスト4に入っている。 現在部長になった六弦が王城にライバル意識を抱いている事から、彼の頼みを受けて能京高校カバディ部と練習試合を行う。その際も、高谷の攻撃で前半だけで10点の差をつける事でベスト4の強みを見せつけたが、後半、能京高校カバディ部に王城が入ると、とたんに猛追される。さらに、ノーマークだった宵越竜哉の活躍もあり、1点差にまで詰め寄られるが、最後に六弦が意地を見せ、逆転を許さず勝利している。 なお、能京高校カバディ部のほか、優勝常連の星海高校カバディ部はもちろん、関東大会で早期に当たる事になった紅葉高校カバディ部の事も強く意識している。

星海高校カバディ部 (せいかいこうこうかばでぃぶ)

星海高等学校のカバディ部。関東大会はおろか全国を7回にわたって制覇している最強のチームで、宵越竜哉も星海高校カバディ部のメンバーを見ただけで、彼らが最強である事に感づくほどの貫禄を誇っている。最強だけあって練習は厳しく、特に部長の不破仁は、誰に対しても決して妥協を許さないが、それを覚悟で食らいついていく気概を持った選手が数多く存在している。 また、世界組が在籍している事が多く、不破と同期で、別のチームを率いる決意をした王城正人や六弦歩、および王城の友人である井浦慶など、限られたメンバー以外は、ほぼ全員がこのチームを選んでいる。

英峰高校カバディ部 (えいほうこうこうかばでぃぶ)

英峰高等学校のカバディ部。星海高校カバディ部に次ぐ強豪で、過去7回準優勝をしている。しかし、万年2位という状況は英峰高校カバディ部にとって不名誉であり、星海高校カバディ部の打倒が至上の目標とされている。部長の神畑樹をはじめ、八代一馬や君嶋拓など長身の選手が多い。純粋な強さとしなやかさを併せ持つ守備が特徴で、英峰高校カバディ部に倒されるまで攻撃を失敗した事がなかった高谷煉は、通常のチームの守備が鎖なら、英峰高校カバディ部の守備はワイヤーであると語っている。 また、小柄ながらすさまじい瞬発力を誇る若菜剛や、攻守の両方を得意とする神畑の存在から、攻撃力も非常に高い。夏休みは、自然を使った練習を望み、なおかつ注目している選手が存在する事から、能京高校カバディ部や紅葉高校カバディ部と共に、合同合宿に参加している。 その際も、最終日の練習試合において関東No.2の実力を遺憾なく発揮しており、能京高校カバディ部と紅葉高校カバディ部の両方を相手に勝利を収めている。

紅葉高校カバディ部 (こうようこうこうかばでぃぶ)

埼玉紅葉高等学校のカバディ部。創立してから1年しか経っておらず、部員も2年生のみ。しかし、創立した年の冬季関東大会では、1年生だけのチーム、それも、部長の右藤大元と、その友人の佐倉学以外は未経験者のみのチームでありながら、いきなりベスト8まで進出している。そのため、英峰高校カバディ部や奏和高校カバディ部など、注目しているチームは数多い。 エースの佐倉は王城正人から技を教えられた、いわば弟子に近い存在で、その縁もあって能京高校カバディ部と合同合宿を行っており、二つのチームに興味を持つ英峰高校カバディ部もこれに加わっている。佐倉のワンマンチームであるという印象は否めず、特に守備は能京高校カバディ部とほぼ大差なく、英峰高校カバディ部には遠く及ばない。 しかし、佐倉がコート外に追いやられても、右藤がうまく流れを作って呼び戻す事が多く、チームとしての結束も確かなものがある。合同合宿最終日における、英峰高校カバディ部との練習試合では、神畑の疲弊が追い風となり、終盤に同点まで追いついたが、最後の佐倉の攻撃が失敗し、1点差で惜敗している。

世界組 (せかいぐみ)

日本の中学選抜によるカバディのチーム。実際に所属しているメンバーや、高校のカバディ関係者達からは世界組と呼ばれる事が多い。12名の一軍と、その他の二軍に分かれており、一軍には星海高校カバディ部の不破仁をはじめ、能京高校カバディ部の王城正人や奏和高校カバディ部の六弦歩、英峰高校カバディ部の神畑樹など、名だたるメンバーが顔を揃えている。 また、二軍の井浦慶や右藤大元、途中で一度カバディから離れた佐倉学なども、広く知られている。一軍のメンバーは能力も我も強かったが、海外遠征の際には1勝もできずに終わっており、まだまだ発展途上の段階にあると言われている。ある時世界組の中で誰が一番強いかという話題になり、その際に、最強候補と目されていた不破が、強いチームを率いる者こそが最強と発言。 これによって不破の同期メンバーは、そのほとんどが星海高校カバディ部以外を率いる道を選んでいる。その目論見は功を奏しており、元世界組はそれぞれのチームの要となっただけでなく、個人としての爆発的な成長も促した。 現在、日本のカバディ協会会長、および高校大会の責任者を務めている水堀新は、世界組の監督としても知られていた。

イベント・出来事

合同合宿 (ごうどうがっしゅく)

夏休みの初期に開催された、3校による合同の合宿。部員が少なく思うように練習できていなかったという紅葉高校カバディ部の右藤大元に対して、能京高校カバディ部の井浦慶が提案した事で実現した。さらに開催が決定したあと、英峰高校カバディ部から参加の打診を受けた事で、3校が参加する大規模なものとなった。 6泊7日のスケジュールで、初日に4対4のミニゲームが行われ、2日目以降は、紅葉高校カバディ部が提案したロードレースや、英峰高校カバディ部がつねに行っている練習にそれぞれが打ち込み、最終日は3校総当たりの練習試合が行われた。なお、能京高校カバディ部と紅葉高校カバディ部が参加したのは、人数の問題と、それぞれの部員達への刺激とするためであるが、英峰高校カバディ部はほかの2チームの偵察を主な目的としている。

その他キーワード

ロールキック

攻撃手が複数の守備をタッチするために多用される技。守備の前で屈み、大きく足を出して、回し蹴りの要領で足の先を守備にかすらせるというもの。うまく決まれば二人以上から同時にストラグルを奪う事ができるが、敵との距離感が摑みづらく、バランスを崩しやすいという欠点がある。奏和高校カバディ部との練習試合で宵越竜哉が使用し、3点を獲得するファインプレーにつなげた。 また、志場命や神畑樹もロールキックを得意としており、特に神畑は、ロールキックを使う際に、足を摑まれないよう素早く膝を曲げて回避する、といった攻防一体の動きを見せている。

アイソレーション

宵越竜哉が使用する攻撃用の技。「分離」「独立」「絶縁」などを意味する英単語だが、カバディにおいては高度なフェイントの事を指す。首、肩、腕、足、腰など、通常は連動して動いてしまう部位を分離して動かし、相手の守備を欺く。ブレーキをかけずに直角に曲がる事なども可能となり、守備を行う側は攻撃側のモーションを読めなくなるため、相手の行動予測や対応などが非常に困難になる。 アイソレーションの真髄はバックへの応用で、宵越は英峰高校カバディ部との対戦において、バックダッシュを応用したヒットアンドアウェイを披露した。しかし、アイソレーションを使いこなすには、強靭な脚力と完璧なバランス感覚が不可欠とされており、少しでもボディコントロールを怠れば、即座にバランスを崩してしまう。 並の守備なら、多少バランスが悪くても抜ける可能性はあるが、神畑樹のような優れたプレイヤーには通用しなくなってしまう。かつて王城正人もこの技をマスターしようと練習を重ねていたが、足の筋肉が耐えられないという理由で、修得せずに終わっている。

センサー

畦道相馬の所有する、特殊な体質に近い能力。体性感覚と呼ばれる、自分の身体の位置を把握する感覚を、自分の周りの物体や人物にまで張り巡らせて、自らが触れる事が可能な距離と、相手から触れられる範囲を一瞬で見出す。相手に触れる事と、相手から触れられない事に応用できるため、攻撃と守備の両方に活用できる。畦道はこのセンサーに、合同合宿で八代一馬が利用していた相手にタッチさせる戦術を応用させる事で、英峰高校カバディ部との練習試合において、鉄壁の守備陣から幾度も得点を奪っている。

カウンター

王城正人が使用する技。主に攻撃のために用いるが、守備にも応用する事ができる。呼吸や予備動作などから、次の相手の動きを予測。その動きを利用して逆に相手を倒すというもの。カウンターの対象は必ずしもタッチや摑みかかるための動作である必要はなく、近づくための足の運び、方向転換のための姿勢制御など、あらゆる動作を瞬時に分析し、王城本人の攻撃に繋げる事が可能となっている。 体格に恵まれなかった王城は、たゆまない努力でこれを修得し、少ないパワーで次々と攻撃を成功させており、この技そのものが、王城が世界組の面々から最強の攻撃手の一人と認められる所以となっている。ただし弱点がまったくないわけではなく、一度カウンターで守備を倒したら、その後0.5秒ほどのあいだ、空中に浮いてしまう。 のちに王城はこの弱点を克服するべく、横跳びになるよう練習を積み、滞空時間を短くする事に成功している。

ブロッキング

水澄京平が使用する守備用の技。攻撃手の進行方向に腕を出し、その走行を妨害する。たとえ腕を避けたとしても、一時的な足止めの効果があり、そのスキをついてほかのプレーヤーが攻撃手を摑んだり倒したりできるようになる。細かい思考を要求されないため、とっさに放ったとしても十分な効果が期待できる。水澄は、自らがブロッキングで敵の攻撃手の足止めをし、その間にフィジカルに秀でた伊達真司が攻撃手を倒すというパターンを得意としている。 入部したばかりの宵越竜哉や畦道相馬を幾度となく倒し、合同合宿における、英峰高校カバディ部とのミニゲームでも、この方法で俊足の若菜剛を止めて見せた。なお、ブロッキングという名称は、のちに若菜から教えられたもので、それ以前は名称を知らないままブロッキングを使っていた。

ドゥッキ

右藤大元が使用する攻撃用の技。守備の選手の股下を潜り抜けるという、一種の不意打ちに近いもので、いくら素早い人間でも下には加速できないため、あらかじめ予測しておかなければ対応する事は難しい。また、一度相手の股下を潜り抜ければ、その相手自身を壁として利用する事が可能になるというメリットが存在する。神畑樹は、世界組に在籍していた際に、海外における練習相手から幾度かこの技を受けており、右藤もまた、合同合宿における能京高校カバディ部との練習試合でとっさに使用し、宵越竜哉と畦道相馬の二人からタッチを奪っている。

回転 (かいてん)

佐倉学が使用する攻撃用の技。ロールキックを発展させたもので、主に摑まれた際に身体を捻って回転させ、守備の選手を引き離すために使用する。この技の一番の長所は、引き離した際に自分と守備の選手の位置を入れ替えられる事にあり、ドゥッキ同様、この技で入れ替えた選手を、ほかの守備の選手の壁にできる。佐倉はロールキックの基礎を王城正人から学んだものの、この回転については独学で発展させた結果身につけたもので、合同合宿におけるミニゲームで能京高校カバディ部と対戦した時は、王城と伴に摑まれるが、回転を使用する事で二人を振り払い、得点に結びつけている。

書誌情報

灼熱カバディ 26巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2016-02-12発行、 978-4091270276)

第2巻

(2016-05-12発行、 978-4091272577)

第3巻

(2016-10-12発行、 978-4091274465)

第4巻

(2017-02-17発行、 978-4091275301)

第5巻

(2017-07-12発行、 978-4091277190)

第6巻

(2017-09-19発行、 978-4091278159)

第7巻

(2018-01-12発行、 978-4091281197)

第8巻

(2018-05-18発行、 978-4091282972)

第9巻

(2018-08-17発行、 978-4091284648)

第10巻

(2018-11-12発行、 978-4091287199)

第11巻

(2019-04-19発行、 978-4091291073)

第12巻

(2019-09-12発行、 978-4091293954)

第13巻

(2020-02-12発行、 978-4091295842)

第14巻

(2020-07-10発行、 978-4098501960)

第15巻

(2020-10-12発行、 978-4098502912)

第16巻

(2021-03-18発行、 978-4098504800)

第17巻

(2021-04-12発行、 978-4098504992)

第18巻

(2021-05-12発行、 978-4098505685)

第19巻

(2021-07-12発行、 978-4098506194)

第20巻

(2021-12-17発行、 978-4098508372)

第21巻

(2022-04-19発行、 978-4098510795)

第22巻

(2022-08-10発行、 978-4098512294)

第23巻

(2022-12-12発行、 978-4098514441)

第24巻

(2023-04-18発行、 978-4098520107)

第25巻

(2023-08-09発行、 978-4098526673)

第26巻

(2023-12-12発行、 978-4098530540)

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