愛がゆく

愛がゆく

生まれてすぐ、未来から現代世界に送り込まれた少年・愛。育ての親である北条松五郎や周囲の人間たちの愛情を受けて成長し、最後には己に備わった超人的能力で、未来人の侵略から大切な人たちを守るため戦うというSF長編大作。

正式名称
愛がゆく
ふりがな
あいがゆく
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

天涯孤独の身である北条松五郎は、街を歩けば子供が泣き出してしまうほど、恐ろしい人相をした大男。おまけにとんでもない数の前科もちであったため、働き場所が見つかるワケもなく、ただフラフラと生活を送っていた。ある雪の降る寒い夜、松五郎は生まれたての赤ちゃんが捨てられているのを見つける。自分以外には懐かないその子にと名付け、親になる決意をした松五郎だったが、はなんと未来から現代に送られた子供だったのだ。

そんなことはつゆ知らず、松五郎は本当の親子のように絆を深めていく。

登場人物・キャラクター

北条 愛 (ほうじょう あい)

生まれてすぐ、母親によって未来から現代に送り込まれ、浮浪者の北条松五郎に拾われた。幼い頃から動物と会話ができたり、瞬間移動や超回復の能力を持つ。未来から一緒に送られてきた帽子を通して母親と交信することができ、自分がなんらかの事情で未来人から追われる身であることを知る。小さい時から、父親である松五郎にも内緒で未来からの刺客と戦っている。 大きくなるにつれて、人の記憶を消去したり未来に時間移動できるまでになってしまう。

北条 松五郎 (ほうじょう まつごろう)

北条愛の育ての親。登場時35歳。傷害の前科を17も持つ浮浪者で、鬼のような人相を持つ大男。14歳の時に天涯孤独の身になり、自分のことを「男一匹松五郎」と名乗っている。雪の降る寒い夜、一人の赤ん坊を拾い、愛と名付けて育ててきた。すぐに手が出る乱暴者だが、不器用で心優しく正義感の強い男。

秋本 涼 (あきもと すずか)

北条愛の理解者。婦人警官。北条松五郎が街で暴れて牢に入った際、愛の面倒を見ることになる。愛が松五郎以外で懐いた唯一の人物であり、それ以降、家族のように見守ってきた。愛の不思議な能力に本人より先に気づき、愛が抱える孤独や不安を誰よりも理解して苦しんできた。つねに身を挺して愛を守ろうとする。

葵 未来 (あおい みき)

北条愛の恋人。愛が幼稚園で出会った美少女。賢くませた少女だが、イジメられっ子の愛を守るため男の子に立ち向かっていく勝気な強さも併せ持つ。海に流され死にかけたところを愛に救ってもらい、それからずっと愛のことを想っている。中学ではスポーツ万能の秀才美女として学校のマドンナ的存在になる。 秋本涼とともに、愛の能力や境遇を知る数少ない人物。周囲を危険に巻き込まないよう孤独に戦う愛に、自ら寄り添い、命を投げ出してでも一緒にいようとする。

秋本 善喜 (あきもと ぜんき)

北条愛の理解者。秋本涼の実父。男手ひとつで涼を育てた。ヤクザの親分で大きな屋敷で暮らしている。人相は悪いが、心優しく大の子供好き。愛の本当の両親を探した方がいいという涼とは反対に、松五郎が育てるべきだと勧めた。愛のことを孫のように可愛がり、サンタに扮してお金のない松五郎宅に食べ物やおもちゃをこっそり送っていたが、本人たちにはバレていた。

近藤 狂平 (こんどう きょうへい)

北条愛の仲間。現代に生まれた超能力者。IQ230の天才でありながら、退屈な日々を紛らわすために暴走族のリーダーをしたり、自衛隊の駐屯地に忍び込んでは武器を持ちだしている。警察に追われている最中、入った喫茶店で居合わせた未来を人質するが、そこに現れた愛に自分に備わった超能力のことを聞かされ、地球の歴史を変革しないかという愛の誘いに乗る。 とくに透視能力が優れている。

愛の母 (あいのはは)

北条愛を未来から現代に送り込んだ人物。一緒に送った帽子を通して愛と交信することができ、愛が未来の人間から追われる身であることや、備えている特殊な能力について教える。

辰巳 (たつみ)

北条愛を抹殺するため未来からやってきた追手。未来で悪魔の子とされる愛を消し去るため、未来から送り込まれる。平和な現代を好み、それに馴染もうとしている自分に戸惑うなど、他の追手と比べて人間味があった。偶然親しくなった愛が自分のターゲットであることに気づかず情を持ってしまうが、最後は使命をまっとうするため愛を殺そうとする。

周 小龍 (ちょう しゃおろん)

戦争で地獄に落ちた未来を変革するため、過去である現代にやって来た指導者。未来から現代に来る転送コースで船体が飛行機と衝突してしまい肉体が消滅してしまうが、飛行機の乗客で唯一生き残った赤ん坊の肉体に魂を収めた。奇跡の生存者であることや、赤ちゃんながら自らを「人類の救世主で神の子」であると宣言したことで世界中に注目される。 優秀な人間だけの世界を作ろうとしている点では、追手たちと同じ思考をしている。

スーザン

北条愛に恋した未来人。未来を変革するため現代にやってきた、周小龍の同志。追手に襲われ気を失っていた愛をかくまう。初めは自分たちの敵である未来人と戦うため愛の能力を頼ろうとしていたが、愛との時間を過ごす内に、これまで知らずに生きてきた「愛」という感情が芽生えていく。

レイ

北条愛を狙う未来からの追手。新地球計画の指揮官。はじめは愛を抹殺するため一般人を装って近づくが、その桁外れの能力に興味を抱き、処分を遅らせる。そのことが上部の人間にバレて組織から追放されてしまうが、そのあと愛や北条松五郎、秋本涼等にかくまってもらい、「家族」という概念を知っていく。

ジョイ

北条愛を狙う未来からの追手。「愛」という概念のない未来人ながら、上司であるレイに対して特別な想いがあり、組織に刃向い追放されたレイをかばって死んでいった。

ナサニエル

北条愛を抹殺すべく未来からやってきた追手のひとり。新地球計画における日本統治の最高権限者。選ばれし者のみで構成された世界統一国家をつくるため、巧みな言葉で日本人に語り掛ける。傲慢で冷血な男。部下のレイが愛の抹殺を渋ったためジョイにレイの処刑を命じる。

俊太/博/順子 (しゅんた/ひろし/じゅんこ)

北条愛が完全に能力を失ってしまった時、知らないうちに愛の能力を引き継いでしまった子供たち。不思議な引力で北条松五郎のもとまで流れつき、一緒になって愛を未来人の攻撃から守った。

剣持 (けんもち)

秋本善喜の子分。チンピラだった頃、秋本に拾われ30年以上も可愛がられてきたことから、「おやっさん」と呼んで誰よりも忠誠を誓っている。秋本が未来人から愛を守ると決断した時も、全力で愛の逃亡を援助した。

総理 (そうり)

日本の総理大臣。侵略者である未来人に服従して新地球計画に合意するか、それとも反対して戦争をするかという究極の選択を迫られる。国民の命を守りたいという気持ちはあるが、自分の命をなげうってまで国民を守ろうという行動力はなく、いわれるまま新都市計画に合意し、下等人間の処分を許可してしまう。

アゴちゃん

北条愛が幼い頃出会った人物。山奥のダム工事現場で働く北条松五郎の同僚。北条親子と3年間寝食をともにした。ワケあって妻子と離れて工事現場で働いており、ちょうど息子と同じ年齢の愛に対して家族同然に接している。ケンカっ早くて態度は悪いが、心の優しい人物。

インテリ

北条愛が幼少期に出会った人物。山奥のダム工事現場で働く北条松五郎の同僚。北条親子と3年間寝食をともにした。愛には教育と同世代の友達が必要だと思い、松五郎に山を降りて愛を幼稚園に通わせるよう勧めた。愛と別れたくない作業員たちから反感を買ったが、最後まで愛の将来を考え訴え続けた優しい男。

ダム工事現場のおばちゃん (だむこうじげんばのおばちゃん)

山奥のダム工事現場で、作業員たちの世話をする女性。仕事を求めてやってきた北条松五郎のことを受け入れ、同時に愛の成長を3年間優しく見守った。ワケアリで心の荒んだ男たちが多いなか、周囲を笑顔に変えていく愛のことを本気で天使の子だと考えていた。

江口 (えぐち)

葵未来が惚れた男性。甘い言葉で涼に近寄っててきたが、実は何人も恋人がいる遊び人。仲間とともに涼を襲おう企んでいたが、それに気づいた涼が逃げ出し計画は失敗に終わる。その直後、乗り込んできた北条松五郎に返り討ちにされた。

木戸 (きど)

北条愛の中学の担任。不登校である愛のIQや身体能力の高さに気づき、父親である北条松五郎を呼び出して学校に来させるよう説得する。

未来の母 (みきのはは)

葵未来の実母。夫が浮気したことで錯乱し、自殺未遂を犯す。世間体を気にする性格で、未来が未来人から標的にされている愛をかくまった時は激しいヒステリーを起こした。

未来の父 (みきのちち)

葵未来の実父。未来が幼稚園の頃、外に愛人をつくり妻を自殺未遂に追いやる。そのことが原因で現在でも夫婦間には大きな溝がある。

新生人間 (しんせいにんげん)

『愛がゆく』に登場する生態系。未来の世界に存在した生物。より優秀な人間を作ろうした人類が、人工母胎を使い、遺伝子に人為的操作を加えてつくりだした最強の生物。人間が到底及ぶことの出来ない能力を持ち、しまいには人間の上に立とうという動きが強まったため、ほとんどは抹殺されてしまうが、スーザン、周小龍をはじめ数十名が現代に逃亡した。

三ちゃん (さんちゃん)

秋本善喜の子分。モヒカンのような髪型が特徴の小柄な男。もともとは捨て子であり、自分に親身になってくれた秋本に忠誠を誓い、どんな時も行動を共にしている。未来人による新地球計画では最も低い遺伝子ランクをつけられ、秋本や松五郎が見守る中、消滅していった。

白倉 和人 (しらくら かずと)

自衛官。未来人による新地球計画では93という最高の遺伝子レベルにランク付けされるが、人間を遺伝子の優劣で区別する未来人のやり方に反発し、人々を引き連れて新国家の建設を阻止しようと動く。最高司令官であるナサニエルの前に自力でたどり着き、排除予定の命を救う方法を問い詰めるが、無残に殺されてしまった。

集団・組織

未来人 (みらいじん)

『愛がゆく』に登場する人類。現代世界を侵略するため、巨大UFOに乗ってやってきた人々。その時代には既に「愛」や「家族」という概念がないため、人間味のないロボットのような人格を持つ。超人的能力を持ち、自分たちの力を遥かに上回る「愛」が、将来人類を滅ぼすという予知をしており、北条愛の命を執拗に狙っている。

場所

未来【時間】 (みらい)

北条愛が生まれた世界。親子や家族という関係性は存在せず、「各自が一家」という認識を持つ世界。戦争を繰り返した後、世界統一国家を築いたが、増え続ける人口を管理するため、下等な人間を排除し、優秀な人間のみに生きる権利や出産の権利が与えられた。また、より優秀な人間を増やすため人工母胎を使い、遺伝子に人為的操作を加えた新生人間をも作り出してしまう。

その他キーワード

新地球計画 (しんちきゅうけいかく)

『愛がゆく』に登場するプロジェクト。現代に侵略してしてきた未来人たちが推し進める一大計画で、下等な人間を排除し、優秀な人間のみで構成された世界統一国家をつくろうとするもの。日本の統治権を持つ最高責任者はナサニエル。

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