夜明け城

夜明け城

松ノ木宗治が豊臣秀吉より秘かに命じられた城の建築を巡り、敵味方入り乱れながらそれぞれの思惑が交錯していく。戦の世に翻弄されていく人々を描いた歴史ストーリー。「中学一年コース」1959年9月号から1960年3月号まで、「中学二年コース」1960年4月号から1961年3月号まで掲載された作品。

正式名称
夜明け城
ふりがな
よあけじょう
作者
ジャンル
時代劇
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

松ノ木緑丸は、松ノ木城城主を務める父親の松ノ木宗治が老人を切り捨てようとしている場面を目撃する。止めに入って事情を聞くと、老人は宗治が豊臣秀吉から秘かに築城を命じられた、新しい城の設計をしている雨月斎という人物だった。秘密裏に進められていたこの建設計画は、工事開始と共に家臣に明らかにされ、紫籐之介が普請奉行を任せられる。

しかし工事のために住んでいた土地を立ち退かされる領民も、無理やり駆り出される工夫も、城が造られることを喜んではいなかった。それを知った緑丸は、城を造る必要があるのかと迷い始める。そんな折に、工事予定地にある学校で先生をしていたお妙に出会った彼は、城の建設中止を宗治に訴えることを決める。一方で徳川方の本多佐渡守が送り込んだスパイが工事を妨害するさまざまな工作を巡らしたことで、多くの怪我人や死人が出ていた。

スパイの企みを探る緑丸は、城内に入り込んでいた敵の正体に迫っていく。

登場人物・キャラクター

松ノ木 緑丸 (まつのき みどりまる)

松ノ木宗治の一人息子。正義感の強い真っ直ぐな性格で、間違っていると思えば父親にも意見をぶつける。女嫌いだったため、自分に思いを寄せている彌生に冷たくあたり、ケンカばかりしていた。しかし調査中に工事予定地で先生をしているお妙と出会い、子供たちを思い、また戦争を嫌う彼女に共感を覚え、城の建設中止を訴える手紙を残して姿を消す。 その後は城下に身を隠し、工事現場で事故を起こして妨害を行うスパイの正体を探る。

松ノ木 宗治 (まつのき むねはる)

松ノ木緑丸の父親で、松ノ木城の城主。豊臣秀吉より秘密のうちに新しい城の建設を申しつかり、一生をかける覚悟で天下の奇城「夜明け城」の工事を始めた。5年をかけて天守の建立を残すのみとなった時に秀吉が亡くなり、淀君から喪に服するために工事を取りやめて建設中の城を壊すように命じられてしまう。しかし松ノ木宗治はこれに応じず、工事の鬼になると宣言する。

彌生 (やよい)

松ノ木城の家老である藪蛇の娘。松ノ木緑丸にほのかな想いを抱いているが、強情な性格のため素直に表すことができない。緑丸と急速に仲を深めるお妙に嫉妬し、お妙を切り捨てようとする。スパイによって父親の藪蛇が殺された後は、姿を変えて仇を追うようになり、その中で親しくなった紫籐之介に心を寄せ始める。

雨月斎 (うげつさい)

松ノ木宗治の命令により、新しい城の設計を請け負った老人。極秘任務だったため、いつも設計図を杖の中に入れて持ち歩いていた。建設が始まる前の地鎮祭で、城の図面の秘密を守るために人柱として埋められることになった。

藪蛇 (やぶへび)

松ノ木城の家老。城の建設計画当初は、松ノ木宗治と雨月斎、藪蛇だけが計画を知っていた。頑固な老人で城内ではあまり人気がなく、紫籐之介に人望で劣ることを面白くないと思っている。籐之介が工事でミスをしていないかを調べに来た際に城を爆破しようとしているスパイに遭遇し、切り殺されてしまう。

紫 籐之介 (むらさき とうのすけ)

城内一の人望があり、松ノ木宗治から城の建築の責任者である普請奉行を任された。松ノ木緑丸の先生でもある。真面目で誠実な人柄で、地鎮祭での人柱には強く反対していた。実は徳川方の本多佐渡守が差し向けた隠密で、宗治のために城を完成させたいという思いと、城を破壊するという本来の任務とに引き裂かれて思い悩む。父親の仇を追う彌生と触れ合ううちに、次第に魅かれ始める。

お妙 (おたえ)

城の工事予定地にある学校で、子供たちに勉強を教えている少女。松ノ木緑丸が徳川方の放った忍者を斬り殺すのを見てしまい、その際に忍者が遺した言葉から城の建設と戦争が起きることを知る。子供思いで芯が強く、城主の松ノ木宗治に城の建設を止めてくれるよう直接訴え出た。

旗ノ 権六 (はたの ごんろく)

徳川方の本多佐渡守が、城の建築を妨害するために送り込んだ隠密。ひそかに紫籐之介を操り、工事を邪魔している。工事現場に潜入していたところで松ノ木緑丸と遭遇し決闘となった。この時は緑丸を仕留める寸前まで追い詰めるが、彌生が撃った短銃により邪魔される。正体を知られそうになった籐之介をかばうため、緑丸と再び対決することになる。

場所

夜明け城 (よあけじょう)

徳川家康をはじめとする関東方の怪しい動きを察知した豊臣秀吉が、松ノ木宗治に建設を命じた城。雨月斎の設計によりイギリスの築城法を取り入れており、西洋風の塔がいくつもそびえ、すべての窓に備えられた大砲が四方の町に狙いを定めている。

SHARE
EC
Amazon
logo