火の鳥 太陽編

火の鳥 太陽編

7世紀、百済国王余豊璋の一族ハリマは、戦に敗れ、顔の皮をはがされオオカミの皮をかぶせられて、獣の顔をもつ男となる。倭国へ渡り、産土神である狗族の娘と出会ったハリマは、土地に根付いた産土の神々が仏教勢力に押されて没落の道をたどっていることを知る。伝奇ロマンとストレートなSFを火の鳥という枠で昇華させた手塚治虫晩年の傑作。

正式名称
火の鳥 太陽編
ふりがな
ひのとり たいようへん
作者
ジャンル
怪談・伝奇
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概要・あらすじ

7世紀、百済国王余豊璋の一族ハリマは、戦に敗れ、顔の皮をはがされオオカミの皮をかぶせられて、獣の顔をもつ男となる。仙術を行うおばば、倭国の将軍阿倍比羅夫とともに倭国へ渡り、その地の産土神である狗族の娘と出会ったハリマは、土地に根付いた産土の神々が仏教勢力に押されて没落の道をたどっていることを知る。

倭国で犬上宿宿の名と領地を手にしたハリマだが、夢に現れる見たこともない世界の幻影に悩まされる。それは、火の鳥を神として崇めると呼ばれる宗教組織に支配された1000年後の世界であった。仏教を利用して国を統一しようとした中大兄皇子の死後、権力の座を巡る戦いは、神々をも巻き込む霊界戦争と発展する。

登場人物・キャラクター

犬上 宿宿 (いぬがみ の すくね)

倭軍とともに唐に破れた百済国の国王余豊璋の一族。もとの名はハリマ。顔の皮をはがされオオカミの皮を代わりにかぶせられて、獣の顔をもつ男となる。おばばは腐狗と呼ぶ。腐狗は物語の時代の朝鮮で「ろくでなし」という意があった。オオカミの顔を持つことで獣の言葉を解し、霊界と人間界の両方に通ずるものとなる。 阿倍比羅夫を救ったことから、倭国で犬上宿宿の姓と領地を手にする。

おばば

虎と戦って傷ついたハリマを独自の秘法で治療する。医者であり、陰陽師であり、仙術も身につけた老婆。占いに従って犬上宿宿とともに倭国へ渡る。

阿倍 比羅夫 (あべ の ひらふ)

阿倍引田比羅夫(あべのひけたひらふ)とも。27000人の兵を従え、百済国とともに唐と戦った倭軍の将。かつて王(おおきみ)の詔勅(みことのり)により蝦夷(えみし)を平らげた英雄。歴史上の実在の人物、阿倍比羅夫がモデル。

マリモ

狗族の長老ルベツの娘。命を救われて以来、犬上宿宿に思いを寄せ、オオカミの姿で付き従う。

大海人皇子 (おおあまのみこ)

中大兄皇子の弟。産土の神々を敬い、仏教によって国をまとめようとする中大兄皇子に対立する。兵を率いて近江に向かう途上、太陽神の聖地を通り、日の神とあがめるようになる。歴史上の実在の人物、大海人皇子がモデル。

大友皇子 (おおとものみこ)

中大兄皇子の息子。壬申の乱で大海人皇子の軍に敗れる。歴史上の実在の人物、大友皇子がモデル。

中大兄皇子 (なかのおおえのおうじ)

仏教によって国をまとめようとした。歴史上の実在の人物、中大兄皇子がモデル。

壱伎史韓国 (いきのふびとからくに)

唐から渡ってきて帰化した武将。同じ帰化人として犬上宿宿に親近感を抱く。歴史上の実在の人物、壱伎韓国がモデル。

ルベツ

狗族の長老。娘の命を救った犬上宿宿の危機をたびたび救う。

ノビル

狗族の長老ルベツの息子。地獄を地上にもたらすという四天王の脅しに負け、人々を救うために我が身を差し出して人質となる。

訳語渟足 (おさのぬたり)

百済国から来た王仁(わに)に百済語を学んだ父をもち、八池邑(やちのむら)でただひとり百済語を解する、口数の多い男。

板東 スグル (ばんどう すぐる)

シャドーの一人。光のシンボルである火の鳥を盗み出すという命をうけ、総本山に侵入。祀られている火の鳥がまがい物であることを突き止める。捕らえられて黒潮教宣塾へ送られた。小沼ヨドミが自分と戦って致命傷を負いつつ奇跡的に命を取り戻したことを、光のシンボル、火の鳥の生き血を飲んだためだとして、黒潮教宣塾生を煽動しクーデターの端緒を作る。

おやじさん

シャドーのリーダーで、反乱軍を指揮する。光に勝利した後、新たな宗教不滅教で人々を支配しようとする。猿田彦の子孫。

小沼 ヨドミ (こぬま よどみ)

光の女戦闘員。板東スグルに服を奪われ、その侵入を許した罪で黒潮教宣塾に入れられる。板東スグルに再会し、一騎打ちを挑んで致命傷を負うが奇跡的に命を取り戻した。

大友 (おおとも)

惑星探査船の乗組員だったが、火の鳥を捕獲して戻り、その血に不老不死の力があると判明すると、火の鳥を崇める宗教組織光を作り、自らはその教祖となる。

十市媛 (とおちのひめみこ)

大海人皇子の娘。兄二人を近江から逃がしたことを知られ、大友皇子に斬られる。歴史上の実在の人物、十市皇女がモデル。

火の鳥 (ひのとり)

太陽の化身として犬上宿宿の前に姿を現し、彼が夢に見る1000年後の未来で繰り広げられる宗教戦争を垣間見せる。また、『火の鳥 宇宙編』で登場したフレミル星人の姿で、戦いに傷ついた産土の神々の前に現れ、『火の鳥 異形編』で登場した八百比丘尼のもとへと案内する。

小熊 (おぐま)

八池邑(やちのむら)の長。炎隆寺七人衆の内の火壇、木壇に命ぜられて犬上宿宿をとおばばを焼き殺そうとしたため、二人に恩を受けた阿倍比羅夫に首を刎ねられる。

四天王 (してんのう)

ボサットウの四天王。仏教の尖兵。広目天、増長天、多聞天、持国天の4神を指す。

炎隆寺七人衆 (えんりゅうじしちにんしゅう)

炎隆寺の僧たち。月壇、火壇、日壇、土壇、木壇、水壇、金壇の七人。犬上宿宿を抹殺しようと襲いかかる。

ナンブ

光の教宣局長で板東スグルの義兄。とらえた板東スグルを黒潮教宣塾へ送る。

産土の神々 (うぶすなのかみがみ)

狗族をはじめ、天狗(あまきつね)、亥族(いぞく)、鬼族など、地霊、あるいは国つ神と呼ばれ人間とともに生きてきた精霊。

シャドー

『火の鳥 太陽編』に登場する地下生活者。光信仰を拒んだため地下生活を強いられている人々。

(ひかり)

火の鳥をシンボルとして所有し、日本を光とシャドーに色分けして地上の世界を支配している宗教組織。火の鳥を捕獲した惑星探査船の乗組員が側近を務める。光を信じない者をシャドーとして地下世界へ追いやった。

集団・組織

狗族 (くぞく)

近江の産土神(うぶすながみ)。仏教に追い立てられて獣の姿で隠れ住むようになる。

場所

黒潮教宣塾

『火の鳥 太陽編』に登場する収容所。日本海溝の深海1000メートルに作られた収容所。人々を光の信者として洗脳するための施設。

関連

火の鳥 (ひのとり)

火の鳥と呼ばれる超生命体が見守る古代から超未来にわたる人類の叙事詩。 関連ページ:火の鳥

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