仮面ライダーをつくった男たち

仮面ライダーをつくった男たち

特撮TVドラマ『仮面ライダー』シリーズを製作したスタッフたちの逸話や、映像化への過程などを描いたメイキングレポート漫画。『仮面ライダー』から『仮面ライダーZX』までの、いわゆる「昭和ライダー」に焦点が当てられている。さらに、巻末には平山亨や大野幸太郎など、仮面ライダーに携わったスタッフによる寄稿文も収録。「週刊少年マガジン」2007年6号から8号にかけて連載された。取材・脚本は小田克己。協力は東映株式会社、および株式会社石ノ森プロ。

正式名称
仮面ライダーをつくった男たち
ふりがな
かめんらいだーをつくったおとこたち
作者
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

時は高度経済成長期。「泣き虫プロデューサー」と呼ばれた平山亨は、自身の思い描くヒーロー像を具現化した特撮番組を作るべく奔走していた。そんな彼が目を付けたのは、『サイボーグ009』などで好評を博していた漫画家の石森章太郎。石森は紆余曲折を経たうえで、平山の求めるヒーロー像に対する答えとして「骸骨」をモチーフとしたラフ画を提出。

平山はこれを毎日放送に持ち込むも、評価は芳しくなく落ち込んでしまう。しかし、そんな平山の前に、石森が新たなモチーフ案として「バッタ」をもとにしたヒーローを描き上げる。平山の努力と、石森のアイデア。2つが結実することより、伝説のヒーロー『仮面ライダー』がここに誕生したのである。

登場人物・キャラクター

平山 亨 (ひらやま とおる)

東映株式会社でプロデューサーを務めている中年男性。感受性が強く、試写会では毎回、感激のあまり泣いてしまうため「泣き虫プロデューサー」と呼ばれている。太平洋戦争において、東京大空襲の復興に従事していた時、地獄のような光景から自分の無力さに苛まれるとともに、こんな地獄から皆を救ってくれるヒーローがいれば、と考えるようになり、それが現在の熱意を形作っている。 のちにオートバイに乗ったヒーローを主役とする番組のプロデューサーを任せられ、石森章太郎とともに『仮面ライダー』を生み出した。実在の人物である平山亨がモデル。本作「仮面ライダーをつくった男たち」の巻末には平山の寄稿文が添えられている。

石森 章太郎 (いしもり しょうたろう)

『サイボーグ009』など、数々の名作を世に生み出した漫画家の青年。貫禄があるが気さくな性格の持ち主で、その勇名を聞きつけた平山亨から新しいヒーロー番組のデザインを依頼された時も、仕事が押しているにもかかわらず快諾している。本人いわく「絵で考える」という、独特の感性を持ち、打ち合わせの最中にラフ画を描き上げ、平山を幾度となく感動させている。 また、石森章太郎本人も、架空の物語や人物に対し涙を流せると言う平山に強い好感を抱いており、『仮面ライダー』シリーズを代表するタッグとして長きにわたって活躍し続けた。のちにペンネームを「石ノ森章太郎」と改めている。実在の人物である石ノ森章太郎がモデル。

大野 幸太郎 (おおの こうたろう)

大野剣友会の創始者であり、初代座長でもある青年。優れた体格と強面を併せ持ち、その外見に違わない、血気に逸る性格をしている。幼い頃から時代劇を好んでおり、それが高じて殺陣師になることを志し、大内龍生が率いる大内剣友会へと入会。数々の殺陣を演じることで瞬く間に頭角を現し、大内剣友会の看板スターとなる。しかし、当時主流だった銀幕時代劇の衰退を憂え、殺陣師を作る殺陣師になりたいという心のうちを大内に明かし、大内剣友会を退会。 自らを座長とする大野剣友会を立ち上げた。その後、大野幸太郎の体格に興味を示した内田有作の誘いにより、スーツアクターとして『仮面ライダー』の世界に関わることとなる。実在の人物である大野幸太郎がモデル。 本作「仮面ライダーをつくった男たち」の巻末には大野の寄稿文が添えられている。

内田 有作 (うちだ ゆうさく)

東映株式会社の東京製作所で、事業室長を務めている中年男性。平山亨とは京都撮影所からの付き合いで、彼の2つ下の後輩にあたる。東映の映画が赤字続きであることを憂えており、既存の枠に当てはまらない番組を求めている。そこで平山の才能を見込み、新たなヒーロー番組の成功を強く求めた。また、スーツアクターとしての役割を大野剣友会に任せることで、のちに『仮面ライダー』と呼ばれるようになるこの番組は大きな成功を収めることとなった。 実在の人物である内田有作がモデル。本作「仮面ライダーをつくった男たち」の巻末には内田の寄稿文が添えられている。

渡辺 亮徳 (わたなべ よしのり)

東映株式会社のテレビ部で、次長を務めている中年男性。平山亨の番組に期待を寄せている人物の1人で、平山から、石森章太郎から受け取った案の1つであるという「クロスファイヤー」のラフ画を見せてもらった時は、「これは当たる」と確信に近い信頼を見せた。実在の人物である渡辺亮徳がモデル。

廣瀬 隆一 (ひろせ りゅういち)

東映株式会社に依頼を発注したテレビ局である毎日放送の編集局で、次長を務めている中年男性。平山亨とは知り合いで、彼が担当しているヒーロー番組を楽しみにしている様子を見せる。戦時中に滞在していた満州で、スクーターに乗っていた姿を現地の子供たちが目を輝かせて見ていたという思い出を持ち、それをきっかけとして、子供たちの憧れとなるヒーローの放送を心待ちにしていることを平山に語った。 実在の人物である廣瀬隆一がモデル。

藤岡 弘 (ふじおか ひろし)

『仮面ライダー』の主演を務める俳優の青年。その鍛え上げられた体格と身のこなしにより、当時の視聴者を釘付けにするアクションをこなし続けていた。しかし、10話のバイクシーンにおける撮影中に事故が発生し、左足大腿部を骨折するという重傷を負ってしまう。東映株式会社では藤岡弘の降板を考えていたが、平山亨の必死の説得により、仮面ライダー2号に一時的に主役を交代することを決める。 そして、40話で藤岡は復活を果たし、2人の仮面ライダーが活躍するというシナリオによって、仮面ライダーはさらなる人気を博すことになった。実在の人物である藤岡弘、がモデル。

大内 龍生 (おおうち りゅうせい)

殺陣師を務める壮年の男性で、大野幸太郎の師にあたる人物。無声映画の時代より時代劇の基礎を作り多くの弟子を輩出している。大野が弟子入りを志願した際には、銀幕の時代劇が終わりつつあることを忠告しつつも、その才能を見込み、大内龍生自らが主宰する大内剣友会へと招き入れる。のちに大野が殺陣師を作る殺陣師になりたいと申し出た際には、彼の器の大きさに感嘆し、剣友会の主催を勧めた。 この結果、大野剣友会が誕生することとなる。実在の人物である大内龍生がモデル。

岡田 勝 (おかだ まさる)

日本タレント養成所に所属していた青年。16歳という若さで、1つのグループを束ねるほどのカリスマを持つ。大野幸太郎によって大野剣友会に誘われるが、最初はすげなくあしらってしまう。しかし後に、養成所における成長に限界を感じ、自ら弟子入りを志願。大野の直弟子にあたる4人の1人となる。さらに、『仮面ライダー』におけるスーツアクターの1人として、長きにわたり活躍を見せる。 実在の人物である岡田勝がモデル。

高橋 一俊 (たかはし いっしゅん)

劇団ひまわりに所属していた青年。大野幸太郎から直々に、殺陣と演出の才能があると見込まれ、弟子になるよう持ち掛けられる。高橋一俊本人もそれを光栄に思い、即座に承諾。大野の直弟子にあたる4人の1人となる。実在の人物である高橋一俊がモデル。

中村 文弥 (なかむら ぶんや)

劇団フジに所属していた青年。舞台などに出演していたが、アマチュア止まりでいることを良しとせず、大野幸太郎に直接、弟子にしてほしいと持ちかけ、大野の直弟子にあたる4人の1人となる。のちに『仮面ライダー』のスーツアクターの1人として活躍を続けた。また、ヒーローショーに息子を呼び、彼の前でアクションを見せるなど、父親としても立派な人物。 実在の人物である中村文弥がモデル。本作『仮面ライダーをつくった男たち』の巻末には文弥の息子である中村昌弥の寄稿文が添えられている。

中屋敷 鉄也 (なかやしき てつや)

戦前映画界の名優・嵐寛寿郎の弟子である嵐寛童の紹介で、大野幸太郎のもとを訪れた青年。最初に大野を見た時は、体格の良さと強面から、ヤクザか何かと勘違いしていた。びっくりして一度は逃げ出すも、改めて大野剣友会への入会を志願。大野の直弟子にあたる4人の1人となる。のちに、『仮面ライダースーパー1』までの、すべての仮面ライダーのスーツアクターを担当し、ファンや後輩からは「ミスター・仮面ライダー」と呼ばれるようになる。 実在の人物である中屋敷哲也がモデル。

浅野 ポチ (あさの ぽち)

『仮面ライダー』の収録スタジオの近所に在住している漫画家。副業という形で、仮面ライダーのサブタイトルのレタリングや、スタジオの警備などを行っている。仮面ライダーに出てくる怪人の着ぐるみに興味を抱いており、内田有作から、怪人のスーツアクターにおける活躍を聞かされ、その壮絶さに感慨を抱いていた。実在の人物である浅野竜がモデル。

シロ

『仮面ライダー』の収録スタジオの番をしている白い犬。浅野ポチとはともにスタジオ内を見回ることが多い。仮面ライダー本編への出演経験があり、7話や11話の劇中では、実際にシロの姿を確認することができる。

滑川 広志 (なめかわ ひろし)

大野剣友会に所属する青年。岡田勝の弟弟子で、『仮面ライダー』では、実に40体以上もの怪人を演じている。しかし、60話の収録において危険なスタントを行った際に、母親がショックを受けてしまい、危険なことをやめるようにと強く説得されてしまう。母子家庭であり、母親を大切にしていた滑川広志は、未練を残しながらも大野剣友会を去る決意をする。 これを受け、大野幸太郎からは最後の晴れ舞台として主役である仮面ライダーのスーツアクターを任された。実在の人物である滑川広志がモデル。

荒木 茂 (あらき しげる)

『仮面ライダーストロンガー』の主演を務めるアクション俳優の青年。我の強い岡田勝とはしばしばぶつかることがあり、彼を見返そうと必死にアクションの訓練に精を出すこともあった。しかし、ともに撮影を重ねていくことで、大野剣友会が常に命がけでいい映像を取ろうとしていることを身をもって実感し、岡田とも信頼し合うようになった。 実在の人物である荒木茂がモデル。

菅田 俊 (すがた しゅん)

『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』などで、「仮面ライダーZX」へと変身する人物を演じたアクション俳優の青年。『仮面ライダーZX』は、他の仮面ライダーと異なり、石ノ森章太郎の手により当初は漫画として執筆されていた。しかし、平山亨の必死に努力により、スペシャル番組という形で出演できるようになり、菅田俊はそのことを平山から直接聞かされる。 その際に涙を流していた平山を見て、思わずもらい泣きをしてしまった。実在の人物である菅田俊がモデル。

城谷 光俊 (しろや みつとし)

大野剣友会に所属する青年。岡田勝から突如として「仮面ライダーZX」のスーツアクターを指名されたため、プレッシャーに悩んでいた。しかし、中屋敷鉄也から、『仮面ライダー』のスーツアクターを務めた者たちの逸話を聞き、「仮面ライダーは皆で作り上げた勲章」という言葉に感銘を受け、立派にやり切る決意を固めた。 実在の人物である城谷光俊がモデル。

集団・組織

東映株式会社 (とうえいかぶしきがいしゃ)

昭和26年に創立された、映像制作会社。平山亨や内田有作などの実力者が多数在籍している。テレビ局「毎日放送」より、新たなヒーロー番組制作のオファーがあり、それに応えて製作した『仮面ライダー』は、数十年の長きにわたって展開するビッグタイトルとなっている。実在する企業である「東映株式会社」がモデル。

大野剣友会 (おおのけんゆうかい)

大野幸太郎が立ち上げた、演劇、殺陣などを専門とするアクション俳優の会。大野を始め、岡田勝、中村文弥、中屋敷鉄也など、名だたる俳優が名を連ねている。「殺陣師を作る殺陣師」を育成することを目的の1つとしており、のちに『仮面ライダー』の主役から怪人までのスーツアクターを、長きにわたって一手に引き受けている。 実在する演劇集団、大野剣友会がモデル。

クレジット

取材

小田克己

協力

東映株式会社 , 株式会社石ノ森プロ

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