ふしぎ遊戯 玄武開伝

ふしぎ遊戯 玄武開伝

渡瀬悠宇のSF『ふしぎ遊戯』のスピンオフ作品。『ふしぎ遊戯』ではあまり語られなかった初代巫女である奥田多喜子のストーリーが描かれる。「少女コミック増刊」で掲載された後、「凛花」など掲載雑誌の変更を経て、最後は「増刊フラワーズ」で連載された。小説、ドラマCDの他、ゲーム化もされている。

正式名称
ふしぎ遊戯 玄武開伝
ふりがな
ふしぎゆうぎ げんぶかいでん
作者
ジャンル
タイムパラドックス
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊12巻
関連商品
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概要・あらすじ

時は大正時代、奥田多喜子は東京を離れて盛岡の女学校に通っていた。病気の母の療養のためというのがその理由だったが、母は持病が悪化し他界してしまう。くしくもそれは、多喜子の父、奥田永之介が多喜子の母の病気を治すため、中国で見つけた書物「四神天地之書」を翻訳し「四神天地書」を完成させたのと同時であった。

失意の多喜子は母がつらい時に家を不在にしていた永之介を責め、「四神天地書」を破こうとするが、その時本から不思議な光が発せられ、彼女はそのまま本の世界に吸い込まれてしまう。多喜子が吸い込まれた世界、そこは北甲国と呼ばれる国だった。そこで自分が「玄武の巫女」であると告げられた多喜子は、北甲国を救うため玄武七星士を集めて玄武を召喚することを決意する。

登場人物・キャラクター

奥田 多喜子 (おくだ たきこ)

薙刀が得意な女子学生。母の療養のために知人のいない盛岡にやってきた。正義感が強く、寂しがりやであるが、人にうまく甘えることが苦手でなんでも自分で解決しなくてはいけないといつも頑張っている。仕事で家を空けがちな父に自分は必要とされていないと感じ、反発する。「四神天地書」の世界に入ってからは初めて自分が必要とされていると感じ、必要としてくれた北甲国を巫女となって救うことを決意する。

女宿 (うるき)

玄武七星士の一人。高額賞金首として山の中で捕らえられているところを奥田多喜子と出会う。風を操る能力を持つ。力を使うと胸に「女」の文字が浮かび上がり、女性の体に変化する。多喜子に出会ってからは無意識に多喜子を心配している自分に動揺する。息子である自分の命を狙う父親を憎み、倒すためだけに生きてきたため、はじめは玄武を召喚することに興味がなかったが、多喜子と出会って徐々に心の変化が現れる。

虚宿 (とみて)

玄武七星士の一人で可族(ハゾク)の出身。氷を操る能力を持つ。力を使うと背に「虚」の文字が浮かび上がる。賞金稼ぎとして女宿を追っている時に奥田多喜子に出会った。おっちょこちょいなところもあるが、やんちゃで明るく、玄武七星士のムードメーカー。

室宿 (はつい)

玄武七星士の一人。全身から針を出し攻撃する能力を持つ。力を使うと足の裏に「室」の文字が浮かび上がる。人を傷つけてしまったことで、捕まることを恐れ、山の中でフェンに匿われていた。小さい頃から運動神経はあまり良くなく臆病であったが、奥田多喜子と出会い変わっていく。危険を感じるとカゴの中に身を隠して身を守る。 このカゴには本人以外も匿うことができる。植物に詳しく、薬草などを見つけるのが得意。

壁宿 (なまめ)

石人という星命石から生まれた精霊で、玄武七星士の一人。土を操る能力を持つ。力を使うと後頭部に「壁」の文字が浮かび上がる。普段は小さい人形の形をしているが、土人形になったり、馬になったりと多彩に変化することが可能。出会ってはじめは奥田多喜子と会話することができなかったが、多喜子と旅をするうち、わずかながら思念で多喜子と意思疎通できるようになった。

斗宿 (ひきつ)

玄武七星士の一人。汗族(カンゾク)の出身。水を操る能力を持つ。そのほかに「視鏡監(しきょうかん)」という力を持ち、目を見た相手の心の奥を引き出して見せる力を持つ。力を使うと右目に「斗」の文字が浮かび上がる。その能力ゆえに自分の民族から疎まれ、民族が移住する際に、玄武七星士の力を恐れられて妹と共に取り残された。

牛宿 (いなみ)

玄武七星士の紅一点。自らの髪を自在に操る能力を持つ。力を使うと下腹部に「牛」の文字が浮かび上がる。キセルのような形の武器を持つ。紅南国の遊郭で女将代理をしている時に奥田多喜子と出会った。

危宿(ハーガス) (うるみや)

玄武七星士の一人。ウルタイ族の出身。危宿(テグ)の双子の弟。他者の能力を吸い取り、自らの物にできる。力を使うと額に「危」の文字の半分が浮かび上がり、これを隠すため普段は顔に装飾をつけている。テムダン=ロウンの命令を受け女宿の命を狙う刺客であり、七星士でありながら他の七星士と対立していたが、それには深い事情があった。

危宿(テグ) (うるみや)

玄武七星士の一人。ウルタイ族の出身。危宿(ハーガス)の双子の兄。歌を歌うことで能力者の能力を無効化し、さらに歌でダメージを与えることができる。力を使うと額に「危」の文字の半分が浮かび上がる。北甲国の首都、特烏蘭の地下に幽閉されているが、その場所は代々の北甲国皇帝しか知ることができない。

ソルエン

代々、女宿の母親の家に仕える従者で、女宿が生まれた時から女宿に仕える。女宿が城を追われてからはずっと女宿と行動を共にし、女宿を護ってきた。穏やかな風貌で玄武七星士ではないため能力は使えないが武術に長けている。火薬使いでもある。

ボラーテ

虚宿の母親。優しい女性で、母親を亡くしたばかりの奥田多喜子を慰めた。玄武の巫女を好意的に受け止めており、人から必要とされていないという多喜子に、多喜子は玄武の巫女として皆が必要としている人間であると告げ勇気を与える。倶東国から襲撃を受けた際、多喜子をかばって怪我をする。

フェン

室宿をかくまって暮らしていた女性だが、その正体は玄武七星士を狙う刺客。山に隠れ住む室宿を見つけたものの敵わなかったため、室宿を洗脳し、味方のふりをして命を奪うチャンスをうかがっていた。

テムダン=ロウン (てむだんろうん)

女宿の父親で、北甲国皇帝テギル=ロウンの兄。領土の王でありながら、宮殿裏の森奥深くに住む。徐々に全身が腐ってしまう「天罪病」という奇病に侵されているため、北甲国の皇帝にはなれなかった。ひそかに倶東国に通じ、北甲国を裏切ろうとしている。

テギル=ロウン (てぎるろうん)

北甲国皇帝で、テムダン=ロウンの弟。権力に執着し、帝位に固執する。民のことを考えない政治を行っており民心が離れている。幼かった危宿の片割れを幽閉し、自らのためだけに働かせようとたくらむ。

エフィンルカ=ロウン (えふぃんるかろうん)

ナサルの森に住む長い髪の少女。重傷を負った女宿を助けかくまったことから、奥田多喜子と出会う。いつも堂々としており、物おじせず度胸がある。一年前に家出をしてナサルの森に住むようになったが、危宿とも面識がある様子。

アユラ王妃 (あゆらおうひ)

女宿の母。西廊国より嫁ぎ、テムダン=ロウンの妻となった。生まれたばかりの女宿の身を案じ、ソルエンの父、タウルに託す。その後病死したといわれている。

アンルウ

巫師の中で最も大きい力を持つ巫尊師。転節の石原に住み、星命石からできた壁宿を守っている。奥田多喜子を信じ、星命石から作られた不思議な力を持つアンルウの首飾りを彼女に託した。年齢不詳だが幼い少女のような見た目をしている。話し方に特徴がある。

太一君 (たいいつくん)

童子の姿をしているが、「四神天地書」の世界の中心にある大極山に住む仙人であり、神力でこの世界すべてを見守っている。ふいに奥田多喜子や玄武七星士の前に現れ、助言を授ける。さらには、ほとんど生き残りのいない貴重な地竜を多喜子に授けた。

アイラ=チェン (あいらちぇん)

斗宿の妹。虚宿によって、一年以上氷の中に閉じ込められていた少女。いつも笑顔の少女で斗宿と仲が良い。虚宿のことも昔から知っており、虚宿を慕っている。

シュヌ

牛宿が住む遊郭の女将。かつて牛宿を助けた命の恩人。死んで行った遊女たちに申し訳ないという思いから人間の念、怨魔にとらわれてしまう。そのため、奥田多喜子が紅南国に来た時にはすでに長く病床に臥していた。

紫義 (しぎ)

倶東国、玄武七星士討伐隊の隊長。男性とも女性ともとれる中性的な見た目で、一見穏やかな笑顔をしているが、自らが仕える玻慧のため、残虐で冷徹に命令を遂行する。過去に大きな秘密があり、それが玻慧への忠誠心の源となっている。

緋鉛 (ひえん)

倶東国、玄武七星士討伐隊の副隊長。隊長である紫義と行動を共にしている。気性が荒く好戦的で、すぐに戦闘をしたがる。女宿との戦いで腕を失ってからは戦闘用の義手を与えられ、装着している。

玻慧 (はけい)

倶東国皇太子で皇帝である憲揮帝の子。玄武召喚をはばむため、玄武七星士と奥田多喜子の討伐を紫義と緋鉛に命じた。テムダン=ロウンと密かに手を組み、北甲国への侵略をもくろむなど謀略家でもある。

奥田 永之介 (おくだ えいのすけ)

奥田多喜子の父で、作家。家を留守にしがちなせいで多喜子と確執があるが、娘を愛している。自らが翻訳した本に多喜子が吸い込まれてからは、本の外から多喜子を見守っている。「四神天地書」が不思議な力を持った危険な書物であると気づき、処分しようと試みる。

大杉 高雄 (おおすぎ たかお)

奥田永之介の作品を慕っている青年。出版社に勤めており、8歳の娘がいる。奥田多喜子の初恋の相手。奥田家とは学生の頃からの10年以上の長い付き合いをしている。多喜子を心配し、しばらく盛岡に滞在すると申し出る。

及川 (おいかわ)

奥田多喜子の母が東京にいた際にかかっていた医者の、助手を務めていた穏やかで優しい青年。その頃から多喜子を慕っており、医者となった後に盛岡まで多喜子を訪ねて求婚した。多喜子の想いを知り、彼女を支えようとする。

場所

北甲国 (ほっかんこく)

四正国の一つで北に位置する国。守護神は玄武。奥田多喜子が本の中に現れた場所。民の皇族への不満や継承問題などの内政不安に加え、近年気候が寒くなり、作物が取れにくくなってきている。

倶東国 (くとうこく)

四正国の一つで東に位置する国。守護神は青龍。強大な軍事力を持つ大国で北甲国を侵略し星命石を奪うため、皇太子・玻慧を差し向ける。前作『ふしぎ遊戯』の主な舞台となった国。

特烏蘭 (とうらん)

北甲国の首都。皇帝の居城がある大きな街。危宿の片割れが幽閉されている場所。かつて、女宿が一人で特烏蘭の城に乗り込もうとしたが、不思議な力で阻まれてしまい、玄武七星士の力が無効化されてしまう鬼門の場所であることが分かった。

紅南国 (こうなんこく)

四正国の一つで南に位置する国。守護神は朱雀。牛宿は北甲国から逃れ、この地に移り住んでいた。前作『ふしぎ遊戯』の主な舞台となった、気温が高く暑い国。

転節の石原 (てんせつのせきげん)

壁宿が生まれ、アンルウと共に暮らしていた場所。神聖な場所であり、人が亡くなってから次の転生をする場所ともいわれている。

ナサルの森 (なさるのもり)

奥田多喜子がエルフィンカ=ロウンに出会った場所。太一君の神力が働き、招かれざるものは入ることができないといわれる神聖な場所。星護(オド)族が隠れ住む。

その他キーワード

四神天地之書 (しじんてんちのしょ)

中国の寺院に保管されていた四神についての伝説、そして『ふしぎ遊戯 玄武開伝』の舞台となる世界のことが書かれた書物。奥田永之介は、病気の妻を救うためにこの書について研究をしていた。

四神天地書 (しじんてんちしょ)

オリジナルの「四神天地之書」を奥田永之介が和訳したもの。この本の世界に奥田多喜子が吸い込まれてからは、本の中で多喜子が経験したことが次々と綴られていく。なお、本の中の世界は現実世界とは時間の流れが異なる。本そのものが不思議な力を持っており、本を傷つけたり、燃やすことができない。

アンルウの首飾り (あんるうのくびかざり)

アンルウが奥田多喜子に託した不思議な力をもつ首飾り。玄武七星士の居場所を指し示す。また、壁宿と意志を伝えやすくする役目もある。

星命石 (せいめいせき)

生命の再生の源となる不思議な力を持った石。北甲国の皇族が代々守る門外不出の宝といわれ、壁宿はこの石から生まれた。

玄武七星士 (げんぶしちせいし)

国が滅びようとする時に異界より娘が現れ玄武の巫女となる。巫女は体に星の名を持つ玄武七星士を集め、神獣・玄武を呼び出し願いをかなえるという言い伝えがある。その一方で、国が亡びる前触れであり、不吉の象徴であるともいわれ、その存在を忌み嫌っている人もいる。

ベース

ふしぎ遊戯 (ふしぎゆうぎ)

不思議な本の世界で運命の恋人・星宿と出会った中学三年生の女子・夕城美朱。四神を巡る戦いに巻き込まれながら、美朱は神獣・朱雀の力を借りて世界を救っていく。渡瀬悠宇の代表作。 関連ページ:ふしぎ遊戯

書誌情報

ふしぎ遊戯 玄武開伝 12巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2003-10-25発行、 978-4091384713)

第2巻

(2004-05-26発行、 978-4091384720)

第3巻

(2004-11-26発行、 978-4091384737)

第4巻

(2005-05-26発行、 978-4091384744)

第5巻

(2005-11-25発行、 978-4091384751)

第6巻

(2007-03-26発行、 978-4091308696)

第7巻

(2007-09-26発行、 978-4091311962)

第8巻

(2008-03-26発行、 978-4091315571)

第9巻

(2008-09-26発行、 978-4091318497)

第10巻

(2011-06-24発行、 978-4091338082)

第11巻

(2012-06-26発行、 978-4091344762)

第12巻

(2013-05-17発行、 978-4091353474)

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