逃亡花

逃亡花

最愛の夫を何者かに殺され、その濡れ衣を着せられた女性は、亡き夫のためにも真犯人を自分の手で探しだすことを決意して逃亡する。美しいヒロインが命懸けで、まだ見ぬ敵へと迫るドラマティック・サスペンス。「週刊漫画ゴラク」2008年8月から2009年9月にかけて掲載された作品。

正式名称
逃亡花
ふりがな
のがればな
作者
原作
ジャンル
推理・ミステリー
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あらすじ

第1巻

生まれながらに身寄りのない小園井咲子は、最愛の夫である小園井綱男とつつましくも幸せな日々を過ごしていた。そんなある日、咲子がパートから帰宅する途中に、ずぶ濡れの服を着た刺青の男とすれ違う。違和感を覚えながらも咲子が自宅に到着すると、刺殺された綱男の遺体を目にする。綱男は最後の力を振り絞って警察に通報した際、「咲子に刺された」という旨を話しており、咲子は犯人扱いされてしまう。さらに咲子の自宅を訪れた警察官も、何者かによって無残に刺殺される。咲子は警察に無実を訴えるも聞き入れてもらえず、夫と警察官殺しの罪で、懲役20年の判決を受ける。しかし咲子は綱男の敵を討つため、光一の力を借りて地方裁判所から逃亡する。こうして逃亡犯となった咲子は、おそらく犯人であろう刺青の男を知っている竹田修治と接触するが、あっさりと裏切られてしまう。一方、県警本部の特別捜査本部に所属する伊崎は、逃亡中の咲子を発見するが確保せず、単独で尾行を始める。

第2巻

小園井咲子小園井綱男との子供を妊娠していることが判明し、黒木香苗の紹介で、女医の五所川原一子のもとに身を寄せていた。それから2年後、咲子は竹田修治が住んでいたマンションを訪れる。既に竹田は転居していたものの、咲子が必ず戻って来ると踏んでいた竹田は、大家に金を握らせて、自分を訪ねて来る者がいればすぐに連絡するように伝えていたのだった。咲子を逃したことで暴力団「十五図組」の組員から暴行を受け、脚が不自由になり、金銭的にも困窮していた竹田は、すぐに咲子の情報を山元に売る。一方の咲子は竹田を巧みに利用し、山元と対面する。山元は「綱男の殺害を指示した相手は、咲子と一度だけ面識のある人物」という真実を明かして咲子に襲い掛かるが、竹田によって返り討ちに遭い殺されてしまう。こうして咲子と竹田は奇妙な再会をし、自分を守るためにケガを負った竹田の療養のため、一時的に同居生活を始める。そんな中、咲子は以前売春を持ちかけた市川と再会する。当時は性行為には至らなかったものの、すっかり咲子に恋をしてしまった市川は、少しでも咲子の力になりたいと訴える。

第3巻

小園井咲子は、同居生活をしている竹田修治と、咲子に惚れ込んでいる市川の二人の味方を得る。さらに県警本部の特別捜査本部に所属する伊崎は、独自に咲子とコンタクトを取っているうちに、彼女は潔白であることを確信し、真犯人解明のために協力を申し出る。こうして咲子、竹田、市川、伊崎は四人で小園井綱男を殺害した真犯人を探っていく中で、竹田はとある人物へと行き当たる。そのことを咲子に伝えようとした竹田だったが、時を同じくして山元を殺害した容疑で逮捕されてしまう。さらに市川と伊崎も逃亡している咲子に手を貸したことで、犯人蔵匿罪の疑いで警察へと連行される。こうして再び一人になってしまった咲子だったが、このチャンスを見計らっていた竹田から、テレビ画面越しに小堺の名を告げられる。咲子は小堺へと接近し、綱男を殺害した犯人とのつながりを問う。しかし咲子が接触した際、小堺は既に口封じのために毒物を飲まされており、発作を起こしてそのまま死亡する。死の直前、自らが利用されたことに憤りを覚えた小堺は、真犯人へとつながる人物の名前を咲子に託す。

第4巻

伊崎は自由の身になったものの、小園井咲子に手を貸したことで警察官を解雇されてしまう。しかし、現役時代の伝(つて)を活かして、伊崎は小園井綱男を殺した真犯人を確実に追いつめていく。一方の咲子は、小堺が残した最後のメッセージを受け、谷津大次郎が綱男の殺害を指示した犯人だと確信する。咲子は谷津の情報を仕入れようと偶然立ち寄ったネットカフェで、万時山瞬と知り合い親しくなる。咲子は飄々としたキャラクターの万時山をすっかり信用し、行動を共にするだけでなく、自らが逃亡していることや夫が殺害された過去を打ち明ける。しかし、万時山は十五図あきらとつながりを持つ人物で、咲子に接近したのも暴力団「十五図組」から依頼を受けたからであり、真の目的は咲子を殺害することだった。さらに「十五図組」は谷津を護衛するなど強いつながりがあり、咲子の復讐は困難を極めていく。

第5巻

小園井咲子は、谷津大次郎が出席するパーティーが開催されることを知り、会場のホテルへと潜入する。そこで咲子は伊崎と再会し、伊崎より万時山瞬を信じてはいけないと告げられ混乱する。伊崎の存在に気づいた万時山は、咲子を殺害するために排除する必要があると彼に近づき、二人は死闘を繰り広げ、お互いにナイフで刺し合い相打ちとなる。一方の咲子は、少しでも早く小園井綱男の復讐を遂げたいと、高級コールガールに扮して谷津が宿泊する部屋に忍び込もうとする。そこで谷津を殺害しようと決心していた咲子だったが、万時山との闘いで満身創痍の伊崎に遭遇し、救護を優先させる。そこで伊崎に、復讐をしても罪になるだけで何も変わらないと説得された咲子は、動揺し始める。そんな中、自らが十五図あきらとつながりのある人物だと咲子にばれてしまった万時山は、本来の目的であった咲子殺害へと動き出す。しかし万時山は、咲子と伊崎のチームプレイの前に敗れる。万時山の魔の手から逃れた咲子と伊崎だったが、伊崎は想像以上の傷を負っており、咲子は五所川原一子のもとで彼の療養に付き添うことになる。

第6巻

小園井咲子を逃した万時山瞬は、雇い主である十五図あきらから制裁を受けると思っていたものの、不問にされて終わる。これにより万時山は、おそらく何者かが咲子を殺害し、自分はその犯人役にされるのだろうと悟る。また、万時山は偶然にも交際相手で将来を誓い合っている明菜が咲子の親友であると知り、十五図に謀反しつつ、谷津大次郎から金を巻き上げる計画を立てるのだった。一方、一日でも早く咲子を始末したい十五図は、一樹を誘拐する。そんな中、咲子は伊崎と共に谷津の事務所に潜入したところ、夫を殺害した実行犯であろう刺青の男と再会する。そして谷津は刺青の男は部下であり、自らが小園井綱男の殺害に関与していることを語り始める。

登場人物・キャラクター

小園井 咲子 (こぞのい さきこ)

小園井綱男と結婚し、幸せに暮らしていた若い女性。夫と警察官を殺害した罪で捕まるが、夫を殺した真犯人を自らの手で探し出すため、裁判の判決言い渡し期日に逃亡する。児童養護施設で育ったため天涯孤独の身の上だが、一途で心根が優しく、健気な性格。基本的に冷静に振る舞うが、必要とあらば大胆な行動を取ることもある。男好きのするタイプで、出会う男性に何かと惚れられてしまうことが多い。

小園井 綱男

小園井咲子の夫。植木職人を務めている。ある雨の日、自宅で何者かに刺されて殺害された。黒木香苗から仕事を請け負っていた縁で、黒木の世話役をしていた咲子と知り合った。天涯孤独な咲子を誰よりも幸せにすると誓ってプロポーズした、優しく男らしい性格。

警察官 (けいさつかん)

若い警察官。刺された小園井綱男から連絡を受け、現場に駆けつけた。綱男が通報時に「刺された、咲子に」と口にしたため、犯人は小園井咲子だと思っていた。しかし、咲子が刺青の男を探している間に、何者かに刺し殺されてしまう。

小堺

国選弁護人の中年男性。小園井咲子の弁護をすることになった。咲子に対し、実際に殺害したかどうかに関わらず、刑期を短くするため罪を認めるべきだと説得。そのため、信頼関係が築けないと確信した咲子に解任された。弁護士としては県でトップを争うやり手。

仲田

小園井咲子の国選弁護人となった初老の男性。咲子が小堺とは信頼関係を築けない旨の上告書を提出したため、小堺に代わって咲子の弁護を担当することになった。小園井綱男に対するお悔やみの言葉を誰にもかけられていない、「妻」としての咲子を気遣う慈愛に満ちた人物。

刺青の男 (いれずみのおとこ)

小園井綱男が殺害された日に、小園井咲子が帰宅途中にすれ違った男性。咲子は彼が夫の綱男を殺害した犯人だと確信している。雨に濡れていたため、背中に能の女面の刺青があるのが透けて見えていた。その正体は雇われの殺し屋で、のちに咲子を殺すため再び姿を現す。

光一

小園井綱男のもとで植木職人として働いていた若い男性。小園井咲子に食事をご馳走になるなど、小園井夫婦に日頃から世話になっていた。咲子が裁判の判決言い渡し期日に逃走するのを手助けする。長髪を後ろで一つに束ねた今時の若者だが、小園井夫婦への忠誠心は厚く、肝が据わっている。

伊崎

県警本部の特別捜査本部の警部補。胸躍らせる捜査を追い求めており、逃亡したと思われた小園井咲子を、裁判所内で見かけて興味を抱き、単独で尾行する。咲子と接触し、彼女が夫を殺していないことを確信。その後、調査に協力するうちに、一途な咲子に心を奪われていく。腕っぷしは強いが、幸せを奪われた咲子の悲しみに共感する繊細な一面も持つ。

竹田 修治

フリーライターの男性。小園井咲子の裁判を頻繁に傍聴していた。逃亡した咲子が真犯人の手掛かりをつかむために、最初に接触した人物。何度も咲子を裏切るが、それでも自分のことを見捨てなかった咲子の人柄に心を打たれ、のちに咲子の復讐に手を貸すようになる。

黒木 香苗

小園井咲子が「大奥様」と慕う老女。咲子と綱男を結び付けた人物。かつて咲子が世話係をしていた華道の大御所で、咲子を信頼しており、彼女の逃亡を資金面から手助けする。咲子よりも先に彼女の妊娠に気付き、近しい関係である五所川原一子を紹介するなど、鋭い洞察力を持つ。

市川

小太りの男性。逃亡生活の資金稼ぎに、身体を売ろうと決意した小園井咲子の最初の客になった。市役所の戸籍係と身分を偽って、女を買うことを趣味としているオタク。実はFX(外国為替証拠金取引)などで相当稼いでいる。咲子が逃亡犯だと知った後、彼女のすべてを調べ上げ、咲子が一途な女性であることを理解して想いを寄せるようになる。

五所川原 一子 (ごしょがわら いちこ)

田舎で小さな診療所を営む年老いた女医。黒木香苗の紹介で、逃亡中の小園井咲子が五所川原一子の診療に訪れた。ジョークが好きなユーモアあふれる人物で、いつも咲子を笑わせている。医者としての腕は確かで、妊娠している咲子の世話を一手に引き受け、咲子の復讐を見守る。

山元

竹田修治に裁判を探れと指示した男性。裏社会と表社会の中間に属する人物で、ヤクザとも通じている。姑息で抜け目のない性格をしている。竹田から事情を聞き出した小園井咲子が、真犯人に関する情報を聞き出そうとする。

みどり

小園井咲子の売春仲間の女性。ロングヘアに濃い目の化粧が特徴。一目見て、咲子が誰にでも分け隔てなく接する人間であると見抜き、深い事情を追求せずに刺青の男捜しに協力する。咲子が握ってくれたおにぎりに涙する情に厚い性格。

ペンキ屋 (ぺんきや)

ペンキ屋で働いていた職人の男性。小園井咲子が、港で自分の人生を振り返っていた時に知り合う。18歳から30年間、刷毛(はけ)を持ち続けて懸命に働いてきたが、勤めていた会社が若社長に代替わりした際に、クビになって落ち込んでいた。気のいい性格で、お互いの身の上話をするうちに打ち解け、咲子が小堺に近づく手助けをする。

十五図 あきら (じゅうごず あきら)

大柄な40歳手前の男性。暴力団「十五図組」の組長を務めている。県議の谷津大次郎と親密な関係にあり、逃亡犯である小園井咲子を殺害しようと狙っている。ワンマンで気性が荒いが、仕事には用意周到に臨み、失態を犯した部下には容赦しない。万時山瞬を殺し屋として雇っている。

谷津 大次郎 (やつ だいじろう)

県の議員を務める中年男性。暴力団の十五図あきらと密接な関係にある。小園井咲子が小堺から得たヒントにより、たどり着いた人物で、警察方面にも顔が利く。人を愛することは負けることだ、という信念を持つ。出世と金に貪欲な性格。

万時山 瞬 (まんじやま しゅん)

金髪ロングヘアの謎の青年。小園井咲子がネットカフェで知り合った。両親に虐待されて施設で育ち、少年時代には、老人を半殺しにする愉快犯事件の犯人として警察に捕まった過去がある。偶然を装って咲子に何度も近づき、あの手この手で咲子の信用を勝ち取ろうとする。のちに自分の彼女である明菜の親友が、咲子であることを知る。

あおい

黒木香苗の娘。離婚歴があり、どこか影がある女性。母親の黒木が病に倒れた時に、小園井咲子を助けていることを告げられ、「今度はあなたが手を貸してやって」と頼まれた。だが、仕事の忙しさを理由に、咲子への金銭的援助を断ってしまう。

明菜

小園井咲子の幼なじみで親友。咲子が逃亡した際には、真っ先に自分が助けるつもりでいた友達想いの女性。万時山瞬と付き合っており、万時山と結婚して2人で美容院を持つのが夢。カエルが好きで、子供の頃から自分のトレードマークにしている。

一樹

小園井咲子が逃亡中に産んだ息子。父親の小園井綱男が植木職人だったので、「一樹」と名付けられた。五所川原一子の知人の農家宅に預けられており、その居場所は一子と黒木香苗しか知らない。咲子は、一樹が小学生になる前に、復讐を終えようと決意をしている。

由美

黒木香苗の世話係をしている細身の若い女性。陽気でおしゃべり好きで、茶目っ気にあふれている。場の空気を読み、黒木と小園井咲子が密会できるように配慮するなど世話係として優秀で、黒木に高く評価されている。

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