日出処の天子

日出処の天子

高い才知と美貌、そして超能力を持って生まれた厩戸王子は、それゆえ余人の理解を絶する孤独の中に生きながらも、朝廷政治においてその才能を花開かせようとしていた。そんな彼を唯一理解し敬愛する蘇我毛人に次第に惹かれていく厩戸王子だったが、二人にはやがて破局が訪れる。第7回(1983年度)講談社漫画賞少女部門受賞作品。

正式名称
日出処の天子
ふりがな
ひいずるところのてんし
作者
ジャンル
怪談・伝奇
 
同性愛
レーベル
KADOKAWA / 花とゆめコミックス(白泉社)
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概要・あらすじ

敏達12年(西暦583年)、朝廷第一財力を持つ大臣蘇我馬子の長子蘇我毛人は、池で水浴びをする少女と出会う。それは少女と見まごうほどの美貌を持った厩戸王子だった。厩戸の持つ不思議な力を恐れつつも、彼に惹かれていく毛人と、そんな毛人に心を許していく厩戸。しかし大王となった厩戸の父橘豊日大兄が亡くなり、揺れ動く政情は朝廷で権力を二分する蘇我氏と物部氏の戦へと二人を巻き込んでいく。

登場人物・キャラクター

厩戸 (うまやど)

天才的な才知と美貌、そして仏や魔の世界と行き来する超能力を持って生まれた王子。政的な洞察力の高さや仏教への深い理解から、蘇我馬子や#額田部女王などの有力者から次代の大王と目されている。厩戸が超能力を持つことを知っているのは、母親である穴穂部間人媛と蘇我毛人のみ。 間人媛には恐れられ、避けられさえいるため、厩戸もまた彼女に息子として愛されることを諦めており、他人行儀な関係となっている。自分の超能力を知っても自分を恐れず、親身になってくれる毛人のことを、最初は訝しく思っていたが次第に惹かれるようになっていった。策謀を巡らす時には手段を選ばず、非情な手段も使う。 時には女装などの変装をして自ら工作をすることもある。実在の人物聖徳太子をモチーフとしたキャラクター。

蘇我 毛人 (そが の えみし)

朝廷一の財力を持つ大臣蘇我馬子の跡取り息子。実直で純朴、真面目な性格。色恋には鈍感。14歳の時、池で水浴びをしている厩戸王子と出会う。その時は厩戸を女性と勘違いし、恋に近い思いを抱く。その後朝参で厩戸に会い、その大人びた言動に驚きつつも次第に親しくなっていく。 厩戸と共に異界へ行くなど、怪異な体験をするが、厩戸に対する敬愛の念は変わらなかった。物部氏との戦の後、物部の一族である石上斎宮布都姫に偶然出会い、恋に落ちる。実在の人物蘇我蝦夷をモチーフとしたキャラクター。

穴穂部 間人媛 (あなほべ の はしひとひめ)

厩戸王子の母親で、橘豊日の妻。穏やかで優しい性格だが、実子厩戸の持つ超能力に気付き、彼の存在自体を恐れ遠ざけている。実在の人物穴穂部間人媛をモチーフとしたキャラクター。

橘豊日 (たちばなのとよひ)

厩戸王子の父親。穏やかな性格。異母妹である穴穂部間人媛を妻としている。訳語田大王亡き後、大王となる在位わずか二年足らずで瘡にかかり死亡する。実在の人物用明天皇をモチーフとしたキャラクター。

来目 (くめ)

厩戸王子の同母弟の王子。心優しく、人の機微に敏感な性格。母である穴穂部間人媛に可愛がられて育てられたが、その母が兄厩戸を疎み遠ざけていることに気付いており、葛藤している。蘇我毛人を慕い、よく宮に招いて遊んでもらおうとする。実在の人物来目皇子をモチーフとしたキャラクター。

田目 (ため)

橘豊日大兄王子と蘇我馬子の妹蘇我石寸名の間に生まれた王子。厩戸王子にとっては、かなり年の離れた異母兄にあたる。橘豊日亡き後、穴穂部間人媛の再婚相手として泊瀬部大王に推される。飛鳥時代、異母の兄弟姉妹との結婚は通常のことであったが、血のつながりこそ無いものの母と息子の婚姻はあまり聞こえの良いものではなく、目障りな厩戸王子の血を穢そうという目的の再婚案だった。 銀山を所有しており、資産家。実在の人物田目皇子をモチーフとしたキャラクター。

蘇我 馬子 (そが の うまこ)

物部氏と勢力を二分する有力豪族蘇我氏の当主。朝廷第一の財力を持ち嶋大臣と呼ばれる。大臣として朝廷の財政を司ると共に、仏教信仰を広めようと考えている。厩戸王子の才気を当初は恐れていたが、成長するにつれて政治手腕の高さや洞察力の高さに心酔し、後ろ盾として力を貸すようになっていく。 実在の人物蘇我馬子をモチーフとしたキャラクター。

刀自古 (とじこ)

蘇我馬子の娘で、蘇我毛人の同母妹。元気ではっきりした性格、男顔負けのじゃじゃ馬娘だったが、父馬子が物部氏との対立を深めるにつれ、物部一族である母十市郎女と共に、物部の里に帰される。その時に数人の男に乱暴をされる事件が起き、自らの手で堕胎を行った。戦の後、馬子の邸に戻ったが、過酷な事件を経て厭世的で影のある性格となってしまった。 実兄毛人を慕う。後に厩戸王子に嫁ぐ。実在の人物刀自古郎女をモチーフとしたキャラクター。

十市郎女 (といちのいらつめ)

蘇我毛人と刀自古郎女の母親で、蘇我馬子の妻。蘇我と敵対する物部の出身。わが子ふたりの行く末を常に案じている。

河上娘 (かわかみのいらつこ)

蘇我毛人の異母妹。境部摩理勢の正妻の姉妹を母に持つ。異母姉である刀自古郎女にライバル心を抱いている。泊瀬部大王に嫁ぐ。実在の人物河上娘をモチーフとしたキャラクター。

境部摩理勢 (さかいべのまりせ)

蘇我馬子の弟。蘇我毛人の叔父にあたる。当時は長子相続よりも兄弟相続の方が有力であったため、馬子の財産を継ぎたいと望んでいるが、馬子は長子毛人に継がせる腹積もりだった。実在の人物境部摩理勢をモチーフとしたキャラクター。

雄麻呂 (おまろ)

境部摩理勢の息子。蘇我毛人、刀自古郎女の従兄弟にあたる。子供の頃から刀自古郎女に片思いをしていた。

淡水 (たんすい)

新羅との外渉にあたった難波吉士氏の遠戚にあたる日系新羅人の青年。新羅の王族や貴族で作られた組織花郎の一員。厩戸を弥勒菩薩の生まれ変わりである弥勒仙花と信じ、崇拝を捧げる。吉備海部羽嶋の伝手を頼って彦人王子の舎人となり、迹見赤檮を名乗って働くようになるが、厩戸のところへ頻繁に出入りしており、厩戸の謀略のため諜報、暗殺などを非情にこなす。 調子麻呂の異父兄であり、百済にいたときはそれを利用して新羅に百済の情報をもたらす間諜の役目を担っていた。

調子麻呂 (ちょうしまろ)

百済からの渡来人。聖明王の宰相の息子であったが、政変により祖国にいられなくなり、秦河勝を頼り来日。秦河勝の紹介で蘇我毛人を訪ね、舎人として雇ってもらおうとするが、毛人の提案により厩戸王子の世話をする舎人となる。馬を操る手腕の他、料理の腕なども高い。 寡黙だが心優しく、労わり深い性格。淡水の異父弟であり、百済にいた頃は彼を非常に慕っていたが、淡水が新羅の間諜であったと知りショックを受ける。

膳美郎女 (かしわでのみのいらつめ)

厩戸の三人目の妻となる、知的障害の少女。近隣の子供たちにいじめられていたところを厩戸に見出され、厩戸贔屓の豪族膳臣の養女とされた後、厩戸に嫁ぐ。穴穂部間人媛に似た面差しを持つ。実在の人物膳部菩岐々美郎女をモチーフとしたキャラクター。

額田部女王 (ぬかたべのひめみこ)

訳語田大王の大后。母堅塩媛は蘇我馬子の姉。穴穂部間人媛の異母姉で、厩戸の伯母にあたる。長く大后の位にいたことから、訳語田大王死後も強い発言力を持つ聡明かつ妖艶な美貌を持つ女性。厩戸を気に入っており、彼が将来の大王になると見込んで、娘の大姫を嫁がせた。 後に自ら女帝として即位し、厩戸を政治補佐役大兄とすることとなる。実在の人物推古天皇をモチーフとしたキャラクター。

大姫 (おおひめ)

訳語田大王と額田部女王の間に生まれた皇女。気の強く、自尊心の高い性格。額田部女王の肝いりで厩戸に嫁がされるが、生まれたときから大王に嫁ぎ大后となるための教育を受けてきたため、当初は反発を隠せずにいた。しかし、次第に厩戸に惹かれていくようになる。実在の人物菟道貝蛸皇女をモチーフとしたキャラクター。

泊瀬部 (はつせべ)

穴穂部間人媛、穴穂部王子の同母弟。厩戸にとっては伯父にあたる。享楽的な性格。王子時代は、兄穴穂部王子の影に隠れ、大王となる目は無いものと考えていたが、穴穂部王子が暗殺されたことから、その無能さから毒にも薬にもならないだろうと考えた厩戸によって蘇我馬子に推薦され、物部氏討伐後、大王となる。 即位後は次第に横暴さが目立つようになり、厩戸、蘇我馬子や額田部女王たちから次第に見放されていく。実在の人物崇峻天皇をモチーフとしたキャラクター。

大伴糠手 (おおとものぬかて)

泊瀬部大王が娘小手子を妃としたことから、弱小豪族ながら大王の相談役として、共に謀略をめぐらし、蘇我氏や厩戸の力を削ぎ、朝廷第一の豪族になろうと企む。実在の人物菟道貝蛸皇女をモチーフとしたキャラクター。実在の人物大伴糠手をモチーフとしたキャラクター。

小手子 (おでこ)

大伴糠手の娘。泊瀬部大王の妃の一人。泊瀬部大王との間に蜂子皇子、錦代皇女の二子を設ける。蘇我毛人も蘇我馬子に言われて彼女に文を送ろうとしていたが、泊瀬部に先を越されてしまう形となった。実在の人物小手子をモチーフとしたキャラクター。

布都姫 (ふつひめ)

物部守屋の兄大市御狩の末娘で、十市郎女の異母妹。蘇我毛人にとっては叔母にあたる。石上斎宮。幼い頃から神に仕える巫女斎姫として育てられた。物部の敗戦後、蟄居している物部贄子のところへ行く途中、足をくじいて襲われそうになっているところを蘇我毛人に助けられる。 当初は毛人を一族を滅ぼした蘇我の頭領息子として恨んでいたが、次第に彼の真心にほだされ、惹かれるようになっていく。しかし毛人を愛する厩戸の策略によって、雨乞いを失敗させられ、泊瀬部大王の第三妃となってしまう。実在の人物布都姫夫人をモチーフとしたキャラクター。

白髪女 (しらかみめ)

布都姫の侍女である老婆。彼女が幼い頃から仕えている。布都姫が泊瀬部大王に輿入れするにあたり、その前に一度彼女が愛する蘇我毛人との逢瀬を遂げさせようと画策する。

物部守屋 (もののべのもりや)

軍事力を持って朝廷に仕える有力豪族物部氏の頭領。大連の位を持つ。熱心な神道派で、崇仏派である蘇我馬子とは激しい対立を見せている。「八十物部(やそもののべ)」と呼ばれるほど同姓氏族が多く、軍事に熟達している。訳語田大王、橘豊日大王の亡き後、穴穂部王子を大王に擁立しようとするが、穴穂部が暗殺されて失敗。 次策として彦人王子擁立を目指し、蘇我との決戦のため兵を集める。実在の人物物部守屋をモチーフとしたキャラクター。

物部贄子 (もののべのにえこ)

物部守屋の弟。蘇我との戦いに敗れた後は蟄居させられていた。一時布都姫の面倒を見ていたが、苦しい台所事情もあり、泊瀬部大王への輿入れを積極的に進める。実在の人物物部贄子をモチーフとしたキャラクター。

中臣勝海 (なかとみのかつみ)

朝廷の宗教的職分を司る臣。神道派で、物部守屋の強力な一派。訳語田大王、橘豊日大王、穴穂部王子の死後彦人王子を擁立するため、王子の宮を訪れたところを淡水によって暗殺される。実在の人物中臣勝海をモチーフとしたキャラクター。

司馬達等 (しばのたつと)

南梁からの帰化人一族司馬氏の頭領。熱心な崇仏派。珍しい調理方法から建築方法まで、さまざまな最新知識を持った博識な一族。池に入った厩戸を助けた蘇我毛人が厩戸を連れてきたことから、厩戸や蘇我と親しく交流を持ち、寺院建立などを請け負うこととなる。実在の人物司馬達等をモチーフとしたキャラクター。

鞍作止利 (くらつくりのとり)

司馬達等の孫。5、6歳ながら工作技術に天才的な才能を持ち、厩戸と親しく付き合うようになる。無邪気な性格。実在の人物鞍作止利をモチーフとしたキャラクター。

善信尼 (ぜんしんに)

司馬達等の娘。日本で最初に出家した三人の女性のうちの一人。物部の奴に乱暴されそうになったところを調子麻呂に救われ、お互いに淡い思いを寄せる間柄となる。実在の人物善信尼をモチーフとしたキャラクター。

阿倍毘賣 (あべのひめ)

蘇我毛人が結婚を前提に通っている、有力豪族阿倍氏の姫。地味な容貌ながら、心優しい女性。

吉備海部羽嶋

蘇我毛人と親しい豪族の武人。百済に渡り、百済王を説得して高僧日羅や淡水を帯同して帰国した。武人としても非常に腕が立つ人物。淡水が彦人王子の舎人となった後も、一緒に盗賊狩りなどの警備を行うなどしている。実在の人物吉備海部羽嶋をモチーフとしたキャラクター。

日羅 (にちら)

百済から吉備海部羽嶋に伴われ、来日した高僧。女装して前に現れた厩戸を見て、「人ではない」と断ずる。淡水によって殺害されてしまう。

穴穂部 (あなほべ)

穴穂部間人媛の同母弟である王子。年若いの厩戸の実力を見抜き、対等なライバルとして扱う野心家。訳語田大王死後、物部守屋によって大王候補に擁立されるが、厩戸に暗殺される。実在の人物穴穂部王子をモチーフとしたキャラクター。

彦人王子 (ひこひとのおうじ)

訳語田大王と亡くなった妃との間に生まれた第一王子。病弱で臆病な性格。物部守屋、中臣勝海たちによって大王候補に擁立されるが、蘇我と敵対関係になることを恐れ、非協力的な態度を取る。実在の人物彦人王子をモチーフとしたキャラクター。

書誌情報

日出処の天子 完全版 7巻 KADOKAWA

第1巻

(2011-11-22発行、 978-4040682648)

第2巻

(2011-12-22発行、 978-4040682655)

第3巻

(2011-12-22発行、 978-4040682662)

第4巻

(2012-02-23発行、 978-4040682679)

第5巻

(2012-02-23発行、 978-4040682686)

第6巻

(2012-04-23発行、 978-4040682693)

第7巻

(2012-04-23発行、 978-4040682709)

日出処の天子 11巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉

第1巻

(1980-08-20発行、 978-4592112310)

第2巻

(1980-12-20発行、 978-4592112327)

第3巻

(1981-04-20発行、 978-4592112334)

第5巻

(1982-04-20発行、 978-4592112358)

第6巻

(1982-09-20発行、 978-4592112365)

第7巻

(1983-03-19発行、 978-4592112372)

第8巻

(1983-08-19発行、 978-4592112389)

第9巻

(1984-02-18発行、 978-4592112396)

第10巻

(1984-07-19発行、 978-4592112402)

第11巻

(1984-12-17発行、 978-4592112419)

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