行け!稲中卓球部

行け!稲中卓球部

稲豊中学校の男子卓球部に所属する前野を中心とした生徒たちが、次々と現れるアクの強い変人たちと交流し、強烈な日々を過ごしていくギャグ漫画。第20回講談社漫画賞一般部門受賞(1996年)。作者古谷実の連載デビュー作にして代表作。

正式名称
行け!稲中卓球部
ふりがな
いけ いなちゅうたっきゅうぶ
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
レーベル
講談社漫画文庫(講談社)
巻数
既刊7巻
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概要・あらすじ

俺様系ワガママ大王の前野や『あしたのジョー』オタクの井沢ひろみ、見た目は幼いが超ムッツリスケベの田中など、学園の変人たちが集まる稲豊中学校男子卓球部。大会を控えながらもやる気を見せず、部長の竹田も意気消沈。そこに竹田の幼馴染、岩下恭子がマネージャーとして加わってハッパをかけ、大会で準優勝と大躍進を果たす。

それでも止まらない前野たちの馬鹿騒ぎに周囲の人々も巻き込まれ、爆笑必至の日々が続いていく。そして、変人が変人を呼ぶのか、よりアクの強い人々が続々と集まり、さらなる大騒動を起こすのだった。

登場人物・キャラクター

前野 (まえの)

稲豊中学校に通う中学2年生の少年。男子卓球部所属。6:4くらいで綺麗に分けた髪型と広いおでこが特徴。ワガママでへそ曲がりな性格をしており、非常に口が達者。自分は頭がよいと思っており、滅茶苦茶な持論を強引に押し通そうとするため、非常にたちが悪い。実はかなりの寂しがりやで、構ってもらえないと拗ねてしまう。 なお、弱者に対して情け深いところを見せる意外な面もある。学校中に変人として知れ渡っているため、悪い意味では人気者。ただ、ずば抜けた行動力の持ち主なので、一部の悪友たちからは慕われている。卓球の実力は今ひとつで下手の部類に入るが、前野に変装した卓球歴60年の実力者・岸本ありさが、大会で大活躍したため、周囲の学校からは強豪選手と勘違いされている。 ズボンの脇から性器を露出させて相手を動揺させるはみちんサーブなど、下品でくだらない技を開発した。同じ卓球部に所属する井沢ひろみや田中と行動することが多い。

井沢 ひろみ (いざわ ひろみ)

稲豊中学校に通う中学2年生の少年。男子卓球部所属。『あしたのジョー』が大好きで、毎朝ハードスプレー2本を使って長い前髪を前方に向けて尖らせて、矢吹丈になりきっている。尖った部分だけバッサリとカットされたり、自ら断髪式を行って坊主にしたりもしたが、結局元の髪型に戻した。皆で行った旅行の写真を自分の写りが悪かったからとネガごと焼き捨てるなど自分勝手な性格をしており、無気力で飽きっぽい面も見受けられる。 同じ卓球部に所属する前野と非常に仲が良く、帰り道が一緒ということもあってか、いつも一緒に行動して馬鹿なことばかりしている。卓球部によく遊びに来る神谷ちよこに惚れられており付き合うことに。 しかし髪型のせいで一緒に歩くのは少し恥ずかしいということを聞いてショックを受け、それ以降神谷ちよこに冷たく当たることが多くなった。卓球の腕前は、少し腕に覚えのある幼稚園児に負けるレベル。

竹田 (たけだ)

稲豊中学校に通う中学2年生の少年。男子卓球部所属で部長を務めている。坊主頭に近い前髪だけ少し伸ばした短髪姿で、いかにもスポーツ少年といった雰囲気。鬼と形容されるほどの巨根の持ち主でもある。部長を務めるだけあってリーダーシップがあり、卓球部全員のまとめ役。ただ、若干短気で意地っ張りかつ強引なところもあり、本などの影響を受けやすい。 よかれと思って実行したことで、周囲から迷惑がられることもしばしばある。卓球の腕前はかなりのもので、強豪校からも名の知れた存在。卓球部のマネージャーを務める幼馴染の岩下恭子に惚れており、デートに誘って告白する。前野と井沢ひろみの妨害を受けたため、返事はうやむやになっていたが、少しずつ関係が進展していき、やがて卓球部公認ともいえる仲になった。 スポーツや恋に悩みを抱えるもっとも等身大の中学生らしいキャラクターといえる。

田中 (たなか)

稲豊中学校に通う中学2年生の少年。男子卓球部所属。他者の腰ほどまでの低身長で坊主頭という、小学生低学年にしか見えないほど幼い外見をしているため、女子運動部のマスコット的扱いを受けている。だが、実は計算高く腹黒い性格をしており、24時間スケベなことばかり考えているムッツリスケベ。 地味で大人しそうに見えて、時に大胆になることもあり、前野や井沢ひろみも密かに恐れているほど。また、基本的には無口だが、機嫌が悪くなると容赦なく辛辣な言葉をつぶやく。寝ている女性のパンツを気付かれないように脱がしてしまう技の使い手でパンツ職人と賞される。卓球にはそれなりに取り組んでおり、田辺・ミッチェル・五郎とダブルスを組んでいる。 田辺・ミッチェル・五郎とは普段の付き合いも多いが、内心では小馬鹿にしている。

木之下 ゆうすけ (きのした ゆうすけ)

稲豊中学校に通う中学2年生の少年。男子卓球部所属。髪の毛を真ん中から分けた笑顔の爽やかな色男。非常に社交的で、考え方が大人。空気も読めるいわゆるいいヤツで、アクの強い人物が多い卓球部の中ではもっとも常識人と言える。イケメンで性格もいいため女子人気が高いが、付き合っている女の子はいない。 本命は3年生の北条理恵と語っているが、大勢の女の子と仲良くしたいタイプで、所持しているメモ帳には彼女たちの名前と電話番号が控えてある。まだ陰毛が生えていないのが悩みで、下半身の話になると、急に口を閉ざしてその場から去ろうとする。卓球の腕前は部長の竹田には敵わないものの、実力的にはかなりのもので、県の選抜メンバーに補欠として選ばれた。

田辺・ミッチェル・五郎 (たなべみっちぇるごろう)

稲豊中学校に通う中学2年生の少年。男子卓球部所属。長身で筋肉質のハーフで、デベソに剛毛と強烈な見た目をしている。自分ではイケていると思っているが、ファッションセンスは最悪。また、腋臭がひどすぎるため、周囲にいる人達は鼻栓必須となる。ただ、ナイーブで傷つきやすいため、皆が気を遣って欠点を直接指摘されることは少ない。 なお、プールの消毒槽に浸かると腋臭が消え、その状態を「田辺2」と名付けられた。周囲が殺意を覚えるほどのひどいダジャレを時折披露する。キレると凶暴になり、そのナチュラルなパワーを活かして大暴れを見せるが、本人は暴力が嫌いなため、そのあと自己嫌悪に陥ってしまう。卓球に対しては部活として普通に取り組むレベル。 田中とダブルスを組んでおり、その腋臭で相手を苦しめるため、作中での勝率は高い。

岩下 京子 (いわした きょうこ)

稲豊中学校に通う中学2年生の少女。男子卓球部のマネージャーを務める。茶髪のロングヘアーを伸ばしたクールな雰囲気の美少女。先生の前でも平気でタバコを吸う不良娘で、非常に口が悪く暴力的な性格をしており、前野や井沢ひろみたちをパシリとしてこき使っている。ツンツンしているが意地っ張りなだけで素直なところもあり、追い詰められると弱い部分を見せてしまう。 竹田とは幼稚園の頃からの付き合いで、最初のデートで告白され、やがて付き合うことになった。その見た目から性にはオープンに見えるが、実はおっかなく思っており、貞操を守っている。マネージャーの仕事はまったくしていなかったが、神谷ちよこが手伝いに来るようになってからは、まじめに作業する姿も見せるようになった。 運動神経がよく、変装して「町田ひろし」を名乗り、男子の卓球大会に参加したこと。

神谷 ちよこ (かみや ちよこ)

稲豊中学校に通う少女。眼鏡姿の地味な優等生という雰囲気だったが、井沢ひろみのレクチャーにより変身を遂げて垢抜けた。巨乳の持ち主で、のちに89.9cmにまで成長する。明るくて真面目な性格で、井沢ひろみのことを教官と呼ぶ。最初は木下のファンのひとりだったが、自分に自信をつけたために告白。 しかし、あまりにも井沢ひろみの趣味に偏った告白方法だったため振られてしまう。その後、愛のダブルス大会に井沢ひろみとペアを組んで出場。ある女性の奴隷のようになっていた男性サンチェを助けるために必死になる姿を見て、井沢ひろみに惹かれてしまう。それを機に男子卓球部にも足繁く通うようになり、マネージャーの仕事も手伝うようになる。 岩下恭子のあと押しを受けて井沢ひろみに告白し、付き合うことになった。

柴崎 (しばざき)

稲豊中学校の教師で男子卓球部の顧問。まったく覇気のない薄毛で初老の男性で、体育教師の間では「おまかせ柴ちゃん」と呼ばれ、パシリ同然の扱いを受けている。卓球部のメンバーからも見下されており、本人がいたとしても、その呼び方は「ゲーハー」といったあだ名や呼び捨てである。岩下恭子のクラスの担任でもあり、学園生活をつまらなそうに過ごしている彼女に卓球部のマネージャーになるよう薦めた。

立川 盛夫 (たちかわ もりお)

稲豊中学校の教師で女子卓球部の顧問。目付きが悪く陰湿な性格をしている。女子卓球部が大会で優勝するような強豪であるため、練習場所が足りず男子卓球部の部室の奪取を狙っていた。せこい嫌がらせを続け、幾度か男子卓球部を廃部の危機にも追い込んだが、その度に失敗する。さらなる備品増強のため、月に3000円の部費を生徒から取るようになり女子卓球部の部員が減少。 これにより練習場所の増設を必要としなくなったため、男子卓球部への嫌がらせもなくなり、途中からほとんど出番がなくなった。

相馬 紀子 (そうま のりこ)

稲豊中学校に通う中学3年生の少女。女子卓球部所属で部長を務めている。男子卓球部の部室を奪おうとする顧問の立川盛夫を快く思っていないため、男子卓球部に協力的。愛のダブルス卓球大会では木之下ゆうすけとペアを組むはずだったが、強制的に入れ替わった前野と組むことになり、準優勝の成績を残した。

鬼頭 (きとう)

稲豊中学校の教師で水泳部の顧問。超体育会系で、前野や井沢ひろみ、田中ら変人たちに対してもまったく物怖じしないハートの強さを持つ。真空飛び膝蹴りが得意技で、女子部員たちにセクハラ行為を働こうものなら、容赦なく鼻面に膝を叩き込む。本人もかなりの変人で、男子卓球部員を鵜飼いの鵜扱いして魚を獲らせる鵜飼い道楽に興じたたことも。 男子卓球部の臨時顧問を任された際には、大自然の中にナイフ1本で3日間放置するサバイバルを体験させるなど、滅茶苦茶な教育方針を実践した。

上原 (うえはら)

柴崎の旧友。旅館を経営しており、男子卓球部の合宿先として利用していた。チンパンジーのような外見で、それをネタに前野に遊ばれていた。旅館に卓球の設備が備えられているが、遊興施設レベル。強化合宿用には程遠い。

岸本 ありさ (きしもと ありさ)

卓球歴60年で、驚異的な実力を有する老婆。曰く「卓球とは戦争」。自宅の表札には「卓球界のカールゴッチ」と書かれている。卓球の凄技だけでなく、シワシワの乳房を使った数々の芸を披露し、前野を驚愕させた。前野に変装して中学生の大会で全勝し、前野が実力者だと勘違いさせる要因を作ってしまう。 その後も前野の度胸試しにより、男と女の関係になりかけるなど、交流は続いた。

サンチェ

井沢ひろみが夏休み中に世話するはずだった稲豊中学校のニワトリを食べて、ニワトリの飼育小屋で寝泊まりしていたホームレスの男性。ニワトリの代わりに井沢ひろみに飼われることとなり友情を育む。謎の書き置きをして消えたが、ある女性に拾われて奴隷のように躾けられ、愛のダブルス卓球大会で井沢ひろみと再会。 第2回愛のダブルス卓球大会にも出場し、その時には子供が誕生していた。

渋谷 純一 (しぶや じゅんいち)

毎回優勝候補に上がる強豪校岸毛中学校卓球部のエース。竹田のライバルだが、大会では前野に変装した岸本ありさと対戦して手も足も出ずに完敗する。第2回愛のダブルス卓球大会に付き合っている彼女と出場し、1回戦で前野と対戦。だが無様に敗北した過去を突かれて棄権した。

末松 カオル (すえまつ かおる)

稲豊中学校の教師で、産休した石坂先生に変わって前野のクラスの担任になった。顔が異常に大きくて涙もろく、愛を声高に叫ぶ熱血教師。乳輪が大きいのが特徴だが、それを指摘されても笑い飛ばす器の大きさを持つ。完全に学級崩壊していたクラスを暑苦しいほどに真っ直ぐな教育で立て直し、最後まで抵抗した前野を孤立させた。

北条 理恵 (ほうじょう りえ)

稲豊中学校に通う中学3年生の少女。井沢ひろみと木下が憧れている先輩。井沢ひろみが策を弄していいところ見せようとするが、その役目をラグビー部の沢田に奪われ、沢田と付き合うようになる。のちに沢田とは別れて長い髪をバッサリと切った姿で再登場した。

田原 年彦 (たはら としひこ)

稲豊中学校に通う中学1年生の少年。非常にインパクトの強い顔をしているいわゆるブ男。田辺雪という氷のような鋭い目つきにおかっぱ頭のこれまたインパクトの強い外見を持った彼女がいる。卓球部に入部希望だったが、くだらない条件を突きつけてくる前野や井沢ひろみを、田辺雪とともに小馬鹿にして激怒させた。 のちにブ男同士を見せ合い、笑ったほうが負けという対決する話で、前野の切り札として再登場を果たす。

校長 (こうちょう)

稲豊中学校の校長先生。スキンヘッドに口髭&サングラスという、教育者にしてはアバンギャルドなファッションの老人。周囲からクレームがあったため、変人揃いの男子卓球部を何とかするよう顧問の柴崎に注意を促していたが、本人自身は卓球部を気に入っている。定年を迎えて学校を去った。 その際に抱きつくふりをした前野に膝蹴りを入れられ、肋骨を折ってしまう。

(はま)

稲豊中学校の教師。大きな顔と吸い込まれるような怪しい目が特徴。心にゆとりを持てるでっかい妄想話をするため、前野や井沢ひろみからの信頼が厚い。脳の授業の時に宗教的とも言えるあまりにも行き過ぎた妄想話をするため、PTAから目をつけられて監視されている。

若林 貴子 (わかばやし たかこ)

稲豊中学校に通う中学3年生の少女。前野に惚れている頭脳明晰な才女。だが、恋する相手が変人故に好きという言葉では片付けられないと感じており、前野を監視してデータを収集し、パソコンで分析している。虹をきっかけに前野に話しかけ、虹の理論を理科的に解説したが、真っ向から否定されてしまった。 その後、卓球60年のベテラン・岸本ありさから卓球を学び、真正面から行けという助言を受けて、前野に第2回愛のダブルス卓球大会にペアを組んで出場するよう要請。卑怯な策を使い続けて準優勝を果たす。だが、前野からはまったく相手にされることなく、その関係は平行線を辿った。

松沢 (まつざわ)

有名進学校に通う高校生の少年。クールな色男で、世の中に対して冷めた目で見ているが、実は内心では熱くなれるものを求めている。電車の中で前野と出会って騒動を起こし、熱血教師の末松を紹介される。その後、知人とチームを組んでカンチョーワールドカップに出場。決勝戦で前野、井沢ひろみ、田中のチームと激突して敗北した。 だがその際、前野から自分とは友達であるという言葉を聞いて満足する。

集団・組織

稲豊中学校 (いなほうちゅうがっこう)

『行け!稲中卓球部』に登場する中学校。某県稲豊市にある中学校で、物語のメイン舞台となる。卓球部の強豪校で、特に女子は常連優勝校としても有名。男子も劇中で団体戦準優勝を果たし、県選抜メンバーとして前野、竹田、木下ゆうすけの3人が選ばれた。

イベント・出来事

愛のダブルス卓球大会 (あいのだぶるすたっきゅうたいかい)

『行け!稲中卓球部』で開催されたイベント。稲豊市卓球強化連盟が主催する男女ペアで組んでの参加が条件の卓球大会。計2回開催され、優勝賞金は50万円+副賞として第1回はグアム旅行、第2回はオーストラリア・ニュージーランド旅行が授与された。多数の参加者が集まったが、クイズやじゃんけん大会など強引な方法でふるいに掛け、不満の声が続出した。 竹田&岩下恭子ペアが連覇を果たしている。

カンチョーワールドカップ

『行け!稲中卓球部』で開催されたイベント。稲豊市かんちょー連盟が主催する3人ひと組で参加するカンチョー競技大会。前半15分、後半15分を3対3で戦い、相手チームメンバー全員を指先で肛門を突き刺す技カンチョーでノックアウトすれば勝ち。手や足を出すと反則となり、一方的にカンチョーを受けるP・K(ペナルティカンチョー)となる。 同点のまま試合終了となった場合は先攻超有利のP・K戦で勝負を決する。装甲を平等にするため、下半身はブルマ姿が義務付けられている。ウンコを漏らしたり、地面に座るだけで相手が攻撃できなくなるなど、ルールに穴が多い。優勝賞品はしむらケンと殴り書きされた怪しいサイン色紙。前野、井沢ひろみ、田中のチームが苦戦の末に優勝を果たした。

場所

河原 (かわら)

『行け!稲中卓球部』に登場した土地。詐欺師の現れる危険な場所で、前野や井沢ひろみが警戒している。男の道を説いて20000円の金を騙し取る空手家のテッシンや、劣等感のある人達に対して都合のいいことばかりを語る集会を開いて、月々2000円の月謝を毟り取る子供に真実を教える会の会長、鈴木朝夫が出現した。

書誌情報

行け! 稲中卓球部 7巻 講談社〈講談社漫画文庫〉

第1巻

(2011-04-12発行、 978-4063707922)

第2巻

(2011-05-13発行、 978-4063707977)

第4巻

(2011-07-12発行、 978-4063708028)

第5巻

(2011-08-12発行、 978-4063708066)

第7巻

(2011-10-12発行、 978-4063708141)

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