G戦場ヘヴンズドア

G戦場ヘヴンズドア

人気漫画家の息子・堺田町蔵と、敏腕編集者の息子・長谷川鉄男が、それぞれ原作担当と作画担当として漫画家コンビを組み、漫画制作を通じて人間としても作家としても成長していく姿を描いた青春漫画家ストーリー。日本橋ヨヲコの別作品『プラスチック解体高校』『バング スタイル ア ゴー ゴー』『少女ファイト』と世界観を共有しており、この3作品の一部キャラクターは、本作にも登場する。「ビッグコミックススピリッツ 増刊IKKI」第1号から、誌名を変えた「月刊IKKI」'03年8月号にかけて連載された作品。

正式名称
G戦場ヘヴンズドア
ふりがな
じーせんじょうへゔんずどあ
作者
ジャンル
作家・漫画家
関連商品
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あらすじ

第1巻

高校生・堺田町蔵は、父親である人気漫画家の堺田大蔵(ペンネーム:坂井大蔵)に強いコンプレックスを抱いており、鬱屈した日々を送っていた。そんなある日、町蔵は漫画を描いている同級生・長谷川鉄男と出会う。町蔵は大蔵のファンだという鉄男に思わず攻撃的な態度を取ってしまうが、これをきっかけに実は小説を書いていることを鉄男に打ち明ける。さらに鉄男は町蔵の作品に感銘を受け、町蔵が原作、自分が作画を担当して、いっしょに漫画を描きたいと提案する。一度は断る町蔵だったが、その直後、鉄男の過去の作品を読んで衝撃を受ける。鉄男は、今でこそ描きたいテーマを見つけられずにいるが、昔は離婚した父親にあてた作品を多数描いており、その実力は天才的だった。同時に長谷川家の苦しい経済事情を知った町蔵は、鉄男と組むことを決意。作家名義を鉄男の名前にすることで自分の存在を伏せ、処女作を雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」に応募することになる。しかし締め切りまであと2週間に迫り、町蔵は焦る。さらに鉄男の父親が、「少年ファイト」の編集長・阿久田鉄人であることが発覚。町蔵は、鉄男の作品を鉄人に読ませるためにもいいストーリーを書き上げ、クラスメイトたちと共に、鉄男のアシスタントとして漫画原稿制作に励む。

第2巻

堺田町蔵長谷川鉄男の初めての作品は無事完成し、「第35回新人漫画大賞」の佳作を受賞した。しかし町蔵は鉄男に、自分が堺田大蔵の息子であることを未だに打ち明けられずにいた。そして授賞式の日、町蔵は壇上で漫画家として大蔵と再会し、自分の作品が賞を取ったことで大蔵に認めてもらえるのではないかと期待する。しかし、大蔵の目に留まったのは鉄男だった。二人は6年前に一度だけ会ったことがあり、その時に鉄男の作品を読んだ大蔵は、ずっと彼を気にかけていたのである。さらに阿久田鉄人は、今回の賞の受賞者はくじ引きで決めたことを明かし、受賞者九人にこれから1か月のあいだに単行本一冊分の連載漫画のネームを描くよう命じる。そして、最も優秀な作品を仕上げた者に、「少年ファイト」での連載権を与えると告げるのだった。今回は合作が認められないため、町蔵は鉄男に自分が大蔵の息子であることを打ち明けて訣別。そして受賞者の一人である猪熊宗一郎を頼り、彼と共に、漫画家・町田都のアシスタントとして絵の修業を始める。一方その頃、鉄男は入院中の母親、長谷川枝美子の意向もあり漫画家の道を断念しようとしていた。だが夏のある日、枝美子が亡くなってしまう。

第3巻

堺田町蔵は、ネームの提出日が迫っていたがいいアイデアが出なくて悩んでいた。そこで偶然出会った菅原久美子をデートに誘った町蔵は、つねに長谷川鉄男のために無理をしている久美子に、これからは自分らしく生きるよう諭す。そして自分も無理に誰かと張り合うのをやめ、自分らしく生きようと決意するのだった。迎えた結果発表の日、ついに鉄男は連載を勝ち取ることに成功する。そして同時に、「石波修高」という作家の意向により、町蔵が読み切り掲載権を得ることとなる。修高と面識のない町蔵は混乱するが、町田都梨井裕美子にしか見せていない町蔵の作品のネームをなぜか持っていた修高が、それを阿久田鉄人に読ませたことで、町蔵の処遇が決まったのだという。これを聞いた町蔵は、修高の正体が裕美子であることを確信し、自分が人間としても作家としても周囲に愛され、見守られて来たことを実感する。こうして町蔵は読み切りの原稿制作に励むが、一方の鉄男は自分が人気漫画家になった途端姿をくらますという方法で、鉄人に復讐しようと企んでいた。

コラボレーション

本作『G戦場ヘヴンズドア』は、日本橋ヨヲコの別作品『少女ファイト』『プラスチック解体高校』『バング スタイル ア ゴー ゴー』と世界観を同じくしている。例えば、長谷川鉄男菅原久美子の娘である長谷川留弥子は『少女ファイト』のメインキャラクターとして登場するほか、人気漫画家となった堺田町蔵や、その担当編集者となった鉄男などが登場する。また、本作においてはサブキャラクターとして登場する町田都蔵田三成は『プラスチック解体高校』の主要人物で、千葉リナの上司として登場する女性は、『バング スタイル ア ゴー ゴー』の登場人物でもある。

登場人物・キャラクター

堺田 町蔵 (さかいだ まちぞう)

飴屋高校2年B組に在籍する男子で、人気漫画家・堺田大蔵の息子。前髪を長く伸ばして真ん中で分け、額を見せた黒のもじゃもじゃの短髪で、眼鏡をかけている。身長184センチ、体重は73キロ。ひねくれた性格の皮肉屋だが、根はまじめで心優しく、物語作りには真摯に取り組んでいる。しかし、辛いことがあると性的なことをして気を紛らわせようとする癖があり、大蔵に秘密で大蔵の秘書である梨井裕美子と肉体関係を持っている。また自分は他人に興味を持たれず、好きになった人にはいつも愛されないという意識があり、強い孤独感を感じている。飴屋高校には1年生の終わり頃、引っ越しを理由に転校して来た。そして高校2年生の春に長谷川鉄男と出会い、当初は大蔵のファンである鉄男に攻撃的な態度を取るが、鉄男に自作の小説を褒められ、自分も鉄男の作品に衝撃を受けたことで考えを改める。その後、鉄男と組んで雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」への応募を決意する。大蔵は、自分に関心を持ってくれないうえ、安っぽい商業主義的な作品を描いている作家と捉え見下しており、まじめに作品を読もうともしていない。しかし「第35回新人漫画大賞」に応募するにあたり初めて真剣に向き合い「俺達の挽歌」をはじめとする全作品を読んだ。以降、人間的に成長するほどに、大蔵の作品の素晴らしさを理解していくことになる。血液型はO型。

長谷川 鉄男 (はせがわ てつお)

飴屋高校2年B組に在籍する男子で、阿久田鉄人と長谷川枝美子の息子。前髪を両目が完全に隠れるほど伸ばした亜麻色の短髪にしている。身長は154センチ、体重は45キロ。両親は離婚しており、枝美子は「菅原総合病院」に長期入院中のため、実家の「長谷川商店」で祖父と二人暮らししている。祖父からは「鉄」、市原悦夫からは「鉄ちゃん」と呼ばれている。穏やかで落ち着いた性格で、周りの意見に流されない、しっかりとした価値観を持っている。将来は医師も夢ではないほど、成績は優秀。子供の頃から絵を描くことが非常に得意で、描くスピードも非常に速い。そのため、当時は「図画番長」の称号をほしいままにしており、鉄男の友人はみんなが彼の描いたイラストや漫画を見たり、プレゼントしてもらったりした経験があるほどの人気だった。しかしある日、鉄人あてに描いた作品を枝美子が読んだところ、鉄男の作品は恐ろしいと言われたうえ、枝美子が倒れたことで、絵を描くのをやめてしまう。しかし高校2年生の春、枝美子の容体がなかなか回復せず、いつまでも幼なじみの菅原久美子の実家である菅原家に頼りきりではいけないと考え、漫画でお金を稼ぐため、雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」への応募を決意する。しかし、自分には描きたい題材がないので、堺田町蔵に合作を持ちかけ、コンビを組むことになる。血液型はA型。特技は手品。

菅原 久美子 (すがわら くみこ)

飴屋高校2年B組に在籍する女子で、長谷川鉄男の幼なじみ。実家は地元の大地主であるお嬢様で、父親は医師、母親はデザイナーを務めている。そのため地域の有力者とも親しく、実家の副業の一つである高級料亭「菅原庵」の手伝いをすることもある。前髪を額が見えるほど短く切ったベリーショートヘアにしている。身長168センチ、体重は51キロ。スタイル抜群で胸が大きく、いつも露出度の高い服装をしている。歯に衣着せぬ気の強い性格で、鉄男に対して偏執的な愛情を抱いている。そのため、鉄男に危害を加える人間には容赦がないが、根は繊細で傷つきやすく、ストレスが頂点に達すると奇行に走ってしまう。中学時代まではバレーボール選手として活躍していたが、ある日手首を故障し、チームから追い出されてしまう。その時自殺しようとするが、それでもなお変わらずに自分を受け入れてくれた鉄男に救われ、現在に至る。右手首には自殺しようとした際の大きな傷跡があり、いつもリストバンドで隠している。高校2年生の春、鉄男が堺田町蔵と出会った際、当初は鉄男の作品を軽んじる町蔵を敵視していた。しかし町蔵の作品を読み、鉄男が町蔵に惹かれる理由を理解してからは、特技の料理などで二人を支えるようになる。だが同時に、鉄男と町蔵に対して精神的な距離を感じ、悩むようになる。最終的には町蔵の言葉がきっかけで、自分の美貌を活かせる道を歩むことを決意し、女優となる。芸名は「組子」。のちに鉄男と結婚し、彼とのあいだに娘の留弥子をもうける。血液型はB型。

梨井 裕美子 (なしい ゆみこ)

堺田大蔵の秘書を務める若い女性。以前は人気漫画家として活躍しており、ペンネームは「石波修高」。前髪を真ん中で分けて額を見せ、胸の高さまで伸ばしたロングヘアにしている。左目尻にほくろが一つある。8年前はショートウルフカットで眼鏡をかけ、現在より地味な印象だった。身長は164センチ、体重は48キロ。8年前、当時交際していた出版社「株式会社 高学館」の編集者・吉谷といっしょに暮らす生活費を稼ぐために漫画を描き始め、プロデビューする。その後高学館の雑誌で活躍し、やがて大蔵とツートップで雑誌を支える人気漫画家となった。しかし同時期に編集部の勢力争いが起き、敗北した阿久田鉄人が異動となり、大蔵が予定していた新連載もなくなってしまう。そして、これにショックを受けた吉谷が、多くの人を振り回す修高の作品、つまり梨井裕美子が怖いと言って去ったことで、漫画を描くのをやめてしまった。その後、事情を知った大蔵に拾われ秘書として働くようになる。しかし、堺田町蔵には大蔵の愛人であると嘘をつき、わざと町蔵のコンプレックスを刺激するような行動を繰り返していた。漫画を描くのをやめれば吉谷と復縁できると考えて待ち続けていたが、同時にもし自分が、どれだけ傷ついても前向きに戦う立派な男性と出会えたら、その時は考えを改め、もう一度漫画を描こうと考えていた。そして町蔵が長谷川鉄男との出会いを経て変わっていく姿を見て、陰ながらサポートを続け、やがて町蔵こそが自分の探していた男性だったと確信。最終的に正体を打ち明け、吉谷のことを吹っ切って漫画制作に復帰した。血液型はAB型。

堺田 大蔵 (さかいだ だいぞう)

人気漫画家の中年男性。堺田町蔵の父親で、堺田澄子の夫。澄子とは町蔵が高校2年生の春に離婚するが、その後再婚の話が出る。前髪を長く伸ばして真ん中で分け、ウェーブの短髪にしている。顎ひげを長く伸ばし、眼鏡をかけている。身長は181センチ、体重は75キロ。ペンネームは「坂井大蔵」で、デビュー当初は本名で活動していた。しかし「さかいだだいぞう」と濁音が続くと、子供の読者は名前を呼びにくいという理由で、現在のものに変えた。主に出版社「株式会社 高学館」の雑誌で活躍しており「俺達の挽歌」をはじめとする数々のヒット作を持つ人気漫画家。まじめで心優しい性格の持ち主で、特に漫画に対しては非常に真摯に取り組んでおり、読み手を問わない内容を心掛け、少しでも多くの読者に作品を届けようとしている。しかし、不器用でいつも言葉が足りないため、周囲から誤解を受けることが多い。結果、町蔵からは読者の涙を誘う、安っぽい作品ばかり描く漫画家だと思われている。6年前、漫画家を辞めようと思い詰めるが、河原にいた少年・長谷川鉄男が自作の漫画を川に捨てようとしているのを目撃。これを止め、鉄男の作品を譲り受けたことで、彼のあまりにも自分を殺した作風に衝撃を受ける。これによって漫画家を続ける決意をし、自分がいい作品を描き続ければ、いつか鉄男に届き、鉄男が自分らしい作品を描けるようになれるのではないかという希望を抱いて活動している。血液型はO型。現在は活動をやめている漫画家「黒石卓」のファンで、彼の影響で漫画家を志した。

阿久田 鉄人 (あくた てつひと)

出版社「株式会社 高学館」で、編集者を務める中年男性。長谷川鉄男の父親で、長谷川枝美子の元夫。社内の勢力争いに敗れ、6年ほど本社を離れて海外にいたが、漫画雑誌「少年ファイト」の編集長に就任する。前髪を口元まで長く伸ばして真ん中で分け、灰色の短髪にしている。身長は170センチ、体重は58キロ。まじめで嘘のつけない性格のため、周囲からは冷徹な変わり者だと認識されている。かつては阿久田鉄人自身も漫画家であり「黒石卓」のペンネームで活動していた。しかし、完璧主義のため、手首を切って連載を途中で投げ出す形で活動をやめてしまった。その後は編集者となり、以前とは違う形で漫画作りにすべてを捧げている。しかし、家族よりも漫画の方が大切であるという理由で離婚し、現在も家族のことを嫌っているわけではないが、鉄男の連絡にも応じずにいる。その結果、6年前までの鉄男は、いい漫画を描けば鉄男に届くのではないかと考え漫画を描き続けたが、これが枝美子が倒れる原因となってしまった。堺田大蔵とは古くからの付き合いで、大蔵が新人漫画家だった頃に担当編集を務めていた。現在も衝突を繰り返しながら、お互いを大切な存在として認めている。

堺田 澄子 (さかいだ すみこ)

社会人として働く中年女性。堺田町蔵の母親で、堺田大蔵の妻。大蔵とは町蔵が高校2年生の春に離婚するが、その後再婚の話が出る。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分け、肩につくほどまで伸ばしたウルフカットヘアにしている。明るく気さくで、豪快な性格。大蔵のことを愛しているが、関係の修復は難しいという理由で離婚を決意した。しかし町蔵が高校2年生の夏に、長谷川枝美子が亡くなって大蔵が深く落ち込み、堺田澄子には長生きしてほしいと言われた際には、もしお互い年を取っても一人のままだった時は、またいっしょに暮らそうと励ました。

長谷川 枝美子 (はせがわ えみこ)

長谷川鉄男の母親の中年女性で、阿久田鉄人の元妻。前髪を目が隠れるほど長く伸ばし、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。菅原久美子の父親が勤める「菅原総合病院」に長期入院中で、体型は非常に痩せており、目はうつろで頬がこけている。鉄人と久美子の父親とは学生時代からの友人で、仲がよかった。鉄人が高校3年生の時、漫画家デビューした際は献身的に支えたが、鉄人が漫画にのめり込むあまり心身共に疲弊し、最終的には筆を折ったのをずっとそばで見ていたため、漫画を恐れるようになる。その後、鉄人は出版社「株式会社 高学館」の編集者になり、長谷川枝美子や鉄男よりも漫画を選び離婚。以来父親と鉄人の三人で「長谷川商店」で暮らしていた。しかし6年前、鉄男もまた漫画家を志していることを知り、ショックで倒れてしまった。鉄人を深く傷つけた漫画から鉄男を遠ざけたいと願っており、鉄男の漫画家になりたいという夢に反対している。久美子とは家族ぐるみの仲で、久美子の鉄男への思いも知っている。しかし、久美子が女性として幸せになりたいのであれば、鉄男との恋愛は勧められないと考えている。鉄男が高校2年生の夏、亡くなった。

猪熊 宗一郎 (いのくま そういちろう)

漫画家アシスタントの男性で、年齢は25歳。雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」準大賞受賞者でもある。阿久田鉄人が上位8組の漫画家からくじで決めたと公言しているが、ただ一人、猪熊総一郎に関しては、その前に行われた正式な選考結果も同じだった。坊主頭で口ひげと顎ひげを生やし、左眉や左耳、唇の左側にピアスをいくつも付け、サングラスをかけている。あだ名は「イノさん」で、オネエ口調で話す。明るく世話焼きな性格で、将来有望な作家の手助けをしたいという気持ちが強い。また、自分には漫画家としての才能が欠けると感じており、自分で作品を作ることよりも、漫画家アシスタント業務を中心に生活している。結果、すでにいくつもの新人賞に応募し入賞しているが、賞金稼ぎとしての意味合いが強い。堺田町蔵とは「第35回新人漫画大賞」の授賞式で出会い、すぐさま町蔵の才能を見抜き、困ったことがあればいつでもサポートすると声を掛けた。その直後、受賞者たちが新作のネームで競うことになり、絵を描いた経験の少ない町蔵を修行させるため、ふだん自分が世話になっている町田都にアシスタントとして紹介する。のちに受賞者の一人である岸部シロノと結婚し、プロアシスタント派遣会社「猪一番(いのいちばん)」を立ち上げる。

小手崎 ユウ (こてさき ゆう)

新人漫画家の男性で、年齢は19歳。雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」佳作受賞者でもある。阿久田鉄人が上位8組の漫画家からくじで決めたと公言しており、小手崎ユウの実際の選考結果は準優秀新人賞だった。実家は裕福で、クラブオーナーの息子として悠々自適の生活をしている。リーゼントの髪型をしている。チャラチャラした印象に反して絵柄は萌え系で、特に美少女のイラストを得意としている。のちに編集者となった稲葉誠を担当編集につけ、連載漫画を持つことになる。

岸部 シロノ (きしべ しろの)

新人漫画家の女性で、年齢は23歳。雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」期待賞受賞者でもある。阿久田鉄人が上位8組の漫画家からくじで決めたと公言しており、岸部シロノの実際の選考結果は準優秀新人賞だった。前髪を眉上で切り揃え、顎の高さで切り揃えたボブヘアにしている。漫画制作の傍ら幼い子供を育てるシングルマザーで、子供のためにも漫画で稼ぎたいと考えている。のちに猪熊宗一郎と結婚し、少女漫画雑誌に連載を持つようになる。好きなファッションブランドはヴィヴィアン・ウエストウッド。

稲葉 誠 (いなば まこと)

新人漫画家の男性で、年齢は21歳。雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」大賞受賞者でもある。阿久田鉄人が上位8組の漫画家からくじで決めたと公言しており、稲葉誠の実際の選考結果は準優秀新人賞だった。前髪を眉上で切りそろえた刈り上げの短髪にしている。鼻の周囲にそばかすがいくつもあり、丸眼鏡をかけている。まじめな理論派で、漫画に対する意識が非常に高い。そのため、つねに漫画を描き未発表作品のストックを用意しており、急に新作を提出しろと言われても対応できるようにしている。家は漫画だらけで、それらの本はすべて初版でそろえるほどの凝り性。特に堺田大蔵が好きで、大蔵の作品はボロボロになるほど読み込んでいる。のちに編集者となり、小手崎ユウの担当編集となる。

定尾 和幸 (さだお かずゆき)

新人漫画家の男性で、年齢は20歳。ふだんは解体業に就いている。また、雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」準優秀新人賞受賞者でもある。阿久田鉄人が上位8組の漫画家からくじで決めたと公言しており、定尾和幸の実際の選考結果は優秀新人賞だった。前髪を上げて額を全開にした、ポニーテールのドレッドヘアにしている。顎ひげを伸ばし、目が細いためにいつも目を閉じているように見える。穏やかでおっとりとした性格をしている。ふだんは物を壊す仕事をしている分、少しずつ絵を描いて作品を完成させていく漫画の作業が好き。のちに長谷川鉄男を担当につけ、青年マンガ誌で連載を持つようになる。

千葉 リナ (ちば りな)

人気イラストレーターの女性で、年齢は18歳。雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」優秀新人賞受賞者でもある。阿久田鉄人が上位8組の漫画家からくじで決めたと公言しており、千葉リナの実際の選考結果は準優秀新人賞だった。前髪を左寄りの位置で分けて額を見せ、いくつものヘアピンで留め、髪全体をツンツンに立てたショートヘアにしている。高い画力を持つがやや社会性に欠けており、クライアントの注文を無視して好きなイラストを納品してしまう、マイペースな性格。しかし、会社の主戦力であるため、人間的に未熟な面は見逃されている。のちに彫師となる。

井川 春樹 (いがわ はるき)

漫画家アシスタントの男性で、年齢は28歳。雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」期待賞受賞者でもある。阿久田鉄人は上位8組の漫画家からくじで決めたと公言しており、井川春樹の実際の選考結果は準優秀新人賞だった。前髪を左寄りの位置で分けた、ふんわりとしたショートヘアにしている。体型はやや小柄で、眼鏡をかけている。受賞者の中では年長で、漫画業界にいるのも長い。そのため、鉄人の提案をめちゃくちゃだと捉えつつも挑戦することになる。

町田 都 (まちだ みやこ)

人気漫画家の若い女性。出版社「株式会社 高学館」の漫画雑誌「少年ファイト」で連載を持っている。蔵田三成と梨井裕美子の友人。前髪を目が隠れるほど伸ばしたショートヘアにしている。穏やかでマイペースな性格で、自分の作品に対して絶対の自信を持っている。新人アシスタントが入り、多少原稿の質が落ちたとしても、自分の作品のよさは変わらないと考えている。堺田町蔵とは、町蔵が高校2年生の夏、猪熊宗一郎の紹介で出会った。宗一郎から町蔵の境遇を知り、総一郎といっしょに町蔵をアシスタントとして雇うことになる。裕美子とは8年前に阿久田鉄人の紹介で出会うが、裕美子は正体を伏せていたため、彼女が「石波修高」であることは知らなかった。しかし、その後修高が行方をくらました際、修高が以前唯一の女性の友人として町田都の名前を出していたことで、二人が同一人物であることを悟った。その後、漫画家をやめて容姿を大きく変えた裕美子と再会し、漫画を描けなくなったこと、現在は堺田大蔵の秘書として働いていることを知った。裕美子の正体を知る前から、修高のファンだった。

市原 悦夫 (いちはら えつお)

飴屋高校2年B組に在籍する男子。長谷川鉄男と菅井金治の友人で、三人でよく行動を共にしている。鉄男や金治、菅原久美子とは、小学生の頃からの幼なじみ。前髪を目の上で切った刈り上げヘアにしている。眼鏡をかけており、唇が分厚い。身長162センチ、体重89キロ。やや臆病でひねくれた性格だが、なんだかんだで面倒見がいい。漫画が大好きなオタク気質で、堺田大蔵の「俺達の挽歌」の大ファン。そのため「俺達の挽歌」の単行本を買う時は、自分で読む用、人に貸す用、保存用の三冊を購入している。堺田町蔵とは高校2年生の時に同じクラスになり、当初は大蔵の作品を見下し、鉄男にも攻撃的な態度を取る町蔵のことを快く思っていなかった。しかし、町蔵と鉄男がコンビを組んで漫画を描くことになり、友人として漫画制作の手伝いをすることになる。また、これがきっかけで鉄男が町蔵と急速に距離を縮め、逆に自分とは距離ができてしまったことを淋しく思っていた。自分には創作する才能はないと思っていたが、高校2年生の秋、学園祭で「ロミオとジュリエット」をコメディ風にアレンジした脚本を書いたことをきっかけに脚本家となる。のちに久美子と共に、劇団「松屋文庫」を立ち上げた。血液型はO型。

菅井 金治 (すがい きんじ)

飴屋高校2年B組に在籍する男子。長谷川鉄男と市原悦夫の友人で、三人でよく行動を共にしている。鉄男や悦夫、菅原久美子とは、小学生の頃からの幼なじみ。前髪を長く伸ばして真上に立てた刈り上げショートヘアにしている。頬にそばかすがいくつもある。身長176センチ、体重53キロ。非常に痩せた体型で、頬がこけている。穏やかでおっとりとした性格をしている。のちに大地康子と結婚する。血液型はA型。

大地 康子 (だいち やすこ)

飴屋高校2年B組に在籍する女子。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、セミロングヘアを耳の高さで二つに結んだツインテールにしている。身長は158センチ、体重は43キロ。明るくさっぱりとした性格をしている。密かに堺田町蔵に思いを寄せており、さりげなくアプローチをしていたが、町蔵にはまったく気づかれずに終わってしまった。のちに菅井金治と結婚する。

蔵田 三成 (くらた みつなり)

飴屋高校2年B組の担任教師を務める若い男性。町田都の友人。前髪を目が隠れるほど伸ばして真ん中で分けた短髪で、眼鏡をかけている。まじめで心優しい性格をしている。堺田町蔵が高校2年生の夏、突然学校に来なくなったことを心配し、家庭訪問を考えていた。しかし、その直前に友人と共に都に会いに行ったところ、なぜか都のもとで働いている町蔵を発見する。この時、町蔵が漫画家になるための修業の一環として都のところにいることと、忙しさのために学校に行くのも忘れていたことを理解。以降は町蔵の行動を認め、都に彼の事を一任する。

山田 (やまだ)

出版社「株式会社 高学館」で、編集者を務める若い男性。漫画雑誌「少年ファイト」で、堺田大蔵の作品「俺達の挽歌」の担当をしている。前髪を目の上で切って真ん中で分けて額を見せた、癖のあるショートヘアにしている。目が細く、いつも目を閉じているように見える。穏やかで落ち着いた性格だが、漫画に対しては強い情熱を抱く熱血漢。漫画作りには作家の人間性が大切だと考えており、ある日堺田町蔵が大蔵に見下した態度を取った際には、どんなに才能のある作家でも、町蔵のような態度を取る人間とは仕事をしたくないと叱責した。しかしその後、町蔵が雑誌「少年ファイト」の「第35回新人漫画大賞」への応募を決意した際には、通常の送付では締め切りに間に合わなくなってしまった町蔵と長谷川鉄男の作品を直接受け取って手助けしたり、鉄男がかつて描いた作品を町蔵に読ませたりとサポートするようになる。

その他キーワード

俺達の挽歌 (おれたちのばんか)

出版社「株式会社 高学館」から発行されているコミック雑誌「少年ファイト」で連載されている人気漫画作品。著者は堺田大蔵。雑誌の看板作品になるほどの人気作で、長谷川鉄男や市原悦夫、稲葉誠も「俺達の挽歌」のファン。しかし、単行本7巻の発売直後、阿久田鉄人が高学館に戻り「少年ファイト」の編集長となったことで打ち切りが決定し、読者を驚かせた。

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