さびたナイフ

さびたナイフ

学校生活に不満を持つ高校生の島崎美乃と田代哲也、家出少年の北田勇は、優等生の島崎愁一が妄想した犯罪計画を実行する。逃亡の末に4人のうち2人は命を落としてしまう破滅的な物語。生きていた実感があった青春を、7年後に回想するスタイルになっている。

正式名称
さびたナイフ
ふりがな
さびたないふ
作者
ジャンル
犯罪
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概要・あらすじ

父とは音信不通で母を亡くした島崎美乃は従兄弟の島崎愁一宅で暮らしていた。叔父と叔母から両親の悪口を聞かされ、学校生活はつまらないと、もやもやした想いを発散させる場所を探していた。何回か町で会った田代哲也と家出少年の北田勇と知り合い、愁一の部屋で見つけた犯罪計画ノートを見せる。愁一がストレス発散のために妄想した計画を書きつけたものだったが、哲也らが実行すると聞き、共犯にされるので指揮役として参加。

12月14日の午後、N駅北口の三田銀行からボーナス支給のために運び出される現金を奪った。だが、新札で番号も揃っていたため、使わずに隠すことにする。勇たちが警察に追われだしたため、愁一が受験勉強のために借りたことのある別荘に隠れる。

近くに現金を埋めたが、同時に時効を迎えるであろう7年後に再会することを誓った血判状を制作。哲也のナイフとともに埋める。元日に破傷風を発症した愁一が倒れ、医者を呼びに行った勇が警察に保護されて、別荘に潜んでいると発覚。警官に追われた哲也は威嚇射撃の銃弾を受けて死亡。

愁一は警官突入時には破傷風で死んでいた。7年後、美乃と勇は誓いの通り、海岸で再会。1週間後に美乃は父からの連絡があってギリシアへ渡航、勇は来春結婚するという。勇は愁一がギリシア行きを考えていたと伝える。

登場人物・キャラクター

島崎 美乃 (しまざき みの)

父がギリシア人のハーフで栗色の髪をした少女。高校二年生。父とは音信不通で、母の死後、従兄弟の島崎愁一の家に同居している。叔父や叔母から両親の悪口を聞かされてきたため、独立してギリシアに行ってみたいと考えている。平凡な日常に不満があり、刺激を求めていた。愁一の部屋で犯罪計画ノートを発見。 田代哲也に見せたことから、犯罪を実行することになった。犯行時の役目は銀行の警備員に話しかけ、注意を逸らすこと。事件後、学校の友人に犯人ではないかと詰め寄られ、シラを切り通そうとしたが哲也が介入して事実上の自白に。さらに状況の悪化で、愁一の借りた別荘に隠遁。だが、ついに発見されて逮捕された。7年後、父との連絡がついてギリシアへの渡航を一週間後に控え、別荘近くの海岸で北田勇と再会。 4人の血判状を掘ると、哲也の錆びたナイフの下にまったく読めなくなった血判状が出てきた。愁一のことを特別に意識はしていなかったが、どこかで惹かれていた。そのためか、仲間うちでの口論などでは愁一の味方をしてしまう。

田代 哲也 (たしろ てつや)

くせっ毛を少し長くしている男子。都立三沢高校の二年生。水商売をしている母はあまり帰らないため、マンションで独り暮らしも同然の生活を送っている。悪い素行で校内でも目立つ。ゴーゴー喫茶で島崎美乃に惹かれ、家出少年の北田勇絡みで数回会って友人となる。美乃に迫っているところを目撃した愁一に詰問され、二人の関係に気づく。 美乃が持ってきた愁一の犯罪計画ノートの実行を提案。犯行時の役目は標的の銀行の駅の反対側で騒ぎを起こして警官を集め、銀行の裏にまわって現金輸送車に積み込まれる直前の現金を発煙筒で脅して奪うこと。事件後、美乃を詰問した友人を脅したり、逃走用の盗難車でスピード違反と白バイへの当て逃げをしたり、問題を起こす。 隠遁生活中は不安から勇と遊びまくり、別荘の周囲に草を結ぶトラップをしかける。警察に見つかり、逃げようとして草のトラップで転んだところに足元を狙った警官の威嚇射撃が命中。死亡する。

島崎 愁一 (しまざき しゅういち)

髪を真ん中で分けたメガネ男子。メガネを外していることもある。都立三沢高校の三年生。元生徒会長で医者を目指して勉強中。従兄弟の島崎美乃のことを気にかけている。ストレス発散のためにさまざまな犯罪計画をノートに記していた。そのノートを美乃が見つけて田代哲也に見せたことから実行の話になり、ノートの存在で共犯になるため指揮を執ることにする。 犯行時の実行役にはなっていない。事件後、現金が新札で番号が揃っていたため、使わずに隠すことを指示。さらに状況の悪化により、夏休みに受験勉強で借りた別荘を隠れ家として選定。隠遁生活に入り、受験勉強を続ける。北田勇が美乃に夜這いをかけたことに怒り、感情を露にする。 周辺を散歩中に草のトラップにかかり転倒して負傷。体調を崩し、症状から破傷風だと気づくが居場所の発覚を恐れて我慢して倒れる。警察が別荘に踏み込んだとき、すでに病死していた。勇には、奪った金で美乃の父の国ギリシア行きを考えていると言っていた。

北田 勇 (きただ いさむ)

田舎から東京に家出してきた中学生。なにか大きなことをして、周囲の人間を驚かせたいという。警官に追われてたり、ヤクザに勧誘されていたりするところを田代哲也に助けられ、マンションに居候することになった。いずれの場にも居合わせた島崎美乃とも知り合う。美乃が従兄弟の島崎愁一が作った犯罪計画ノートを哲也に見せたことから、実行に話が進み計画に参加する。 犯行時の役目は、標的の銀行の入り口でひったくりをして警備員を店外に誘導すること。ひったくりで顔を見られ、哲也宅への出入りをマークされた。隠遁生活では哲也と田舎育ちならではの遊びを満喫。周囲に草を結んだトラップをしかける。美乃が気になっていて、哲也にけしかけられて夜這いをかけ、愁一の怒りを買う。 倒れた愁一のために医者を呼びに行き、警察に保護される。7年後、来春の結婚を前に、別荘近くの海岸で島崎美乃と再会。4人の血判状を掘ると、哲也の錆びたナイフの下にまったく読めなくなった血判状が出てきた。

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