図書館の主

図書館の主

私立の児童書専門のタチアオイ児童図書館で、司書を務める御子柴貴生は、口は悪いが本に関する知識が非常に豊富で観察力に優れ、対象となる人物が必要とする本を示し、問題解決に貢献する。また、現在の社会における図書館のあり方を考える内容も提議されており、本と人のあり方の再考を促すヒューマンドラマ漫画となっている。連動企画として『読売KODOMO新聞』に御子柴による「児童書書評」が掲載されたり、朝日新聞出版からノベライズ、『小説 図書館の主 塔の下のライブラリアン』が刊行された(作者は真堂樹)。

正式名称
図書館の主
ふりがな
としょかんのあるじ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

中小企業の課長で、すさんだ生活をしていた30代の男、宮本は、忘年会の帰りに、まだ照明が明るく点った私立のタチアオイ児童図書館に入り込んでしまう。そこで出会った口の悪い男、御子柴貴生と話をし、本の整理を手伝わされる途中で宮本は自分が抱えている心の問題を深く理解させてくれる物語に出会う。以後、彼はその図書館の常連となり、様々な人々が自分の心の中にためてしまったわだかまりを、御子柴が示す児童書で解きほぐしていくのを見る。

物語が進むに連れ、現代日本社会と図書館が抱える諸問題や、御子柴自身が抱える屈折も明らかになっていく。

登場人物・キャラクター

御子柴 貴生 (みこしば たかお)

私立の児童書専門のタチアオイ児童図書館で、司書を務める青年。口は悪いが知識が非常に豊富で観察力に優れ、人を見てその人間にあった児童書を示すことができる。眼鏡をかけ、オトガイがとがっていて、いつも黒いエプロンをしている。マッシュルームカットで頭の後ろを刈り上げにしているため、利用者の子供たちから「キノコ」、「キノコさん」と呼ばれる。 家業(商社)の継承を拒否して司書になってしまったことから、父や妹に関して複雑な感情を抱いている。大学では「ご隠居」と陰で呼ばれていた。

宮本 光一 (みやもと こういち)

30代なかばの男性で、独身。中小企業で課長をやっている。学生時代はバンド活動、会社に入ってからは競馬にハマる。競馬の借金や見通しの立たない生活で、すさんでいたとき、偶然、タチアオイ児童図書館に入って御子柴と出会い、 新美南吉の『うた時計』という短編を見つけ、自分の境遇と重ねあわせて反省し、以後、心の平静を得て、児童書を読むようになる。 同時に御子柴とタチアオイ児童図書館のファンになり、休みのたびに入り浸る。父は地方で事業をやっており、継承を求められていたが、それに反発して東京に出たという過去がある。

板谷 夏夜 (いたや かよ)

タチアオイ児童図書館職員。若い女性で、気っ風の良い性格。就職活動中にオーナーを空手で助けたことが縁で、同館で働くことになる。高卒で陸上自衛隊に入り、士長で退官。司書の資格を持っておらず、取ろうと考えているが、過程が大変なので中断している。父親に関して、トラウマがあった。

神田 みずほ (かんだ みずほ)

タチアオイ児童図書館司書。若い女性で、控えめでやさしい性格。眼鏡をかけ、茶色のウエーブのかかった髪を一本太めに編んでいる。司書の資格を持っている。就職活動で連敗中に、同館の人材募集の張り紙を見て就職を決める。三姉妹の次女で、スペックの高い姉のさなえに対して劣等感を持つ。 宮本に好意を抱いている。

神崎 翔太 (かんざき しょうた)

初登場時は、小学4年生の男児。仲間の清水健志らと、退屈しのぎに同級生の野口をいじめていたが、宿題のため入ったタチアオイ児童図書館で、御子柴から『宝島』を勧められ、以後本の虜となり、それが縁で野口とも仲良くなる。その後も様々な出来事に立ち会ったり関わったりして、小学6年に進級したときは図書委員になっている。

徳間 (とくま)

御子柴が子供の頃、地元の公共図書館で司書をやっていた中年男性。伝法な口調で話す。御子柴に児童書の楽しさを教え、司書のあり方を指し示してくれた人物。図書館が建て直されるため、定年間近で市役所に戻される。御子柴は徳間を目標にして、今も努力を続けている。

吉川 響子 (よしかわ きょうこ)

タチアオイ児童図書館の利用者の若い母親。怜央という名の幼い息子をいつも連れており、彼に少しでも接触しようとするものに対し、過剰な警告を与えて怒っていた。姑や夫の無神経な言動から、神経が疲弊した結果だったが、御子柴が勧めた本によって心の平穏を取り戻す。このエピソードの後に夫のケント(日本人、漢字は不明)が、タイでの長期出張を終えて帰ってきている。

小手川 葵 (こてがわ あおい)

タチアオイ児童図書館のオーナー。元気ハツラツな老女。不動産を中心に、デベロッパーとしても手を広げる小手川グループの会長。三年前、社長を退き会長になった際、暇を持て余して公立図書館に入り浸り、そこで出会った御子柴の勧める本に感銘を受け、読んだあとあらためて購入した本でタチアオイ児童図書館を設立した。 この際に御子柴を引きぬいている。現在も同館が購入する児童書は、オーナーの読後でないと書架に並べない。「不治の病であと何年生きられるかわからない。生きる力が得られる本がほしい」といつも口にするが、真偽は不明。

伊崎 守 (いさき まもる)

街の本屋(谷岡書店)で児童書担当として働きながら、絵本作家を目指す小柄な青年。熱血で、情熱的に本を勧める。「図書館があるから本屋で本が売れない」とタチアオイ児童図書館に怒鳴り込んだことがあったが、居合わせた書店の上司、高坂に説明されて反省する。後に自作の絵本を同館で読み聞かせる機会を持ち、「悪キノコ」というキャラクターを得る。 髪の毛が天然パーマなので、子供から「とりのすのおにいちゃん」と呼ばれる。

金子 (かねこ)

宮本の部下である、美人のシングルマザー。名前・年齢は不明。ものすごく腹黒で打算的で、宮本との再婚を狙っていた。タチアオイ児童図書館の常連の一人となる。しかし、宮本に全くその気がないので、みずほに譲っても良いと考えるようになった。娘の名は理沙。伊崎の高校の同級生で、彼が絵本作家を目指すきっかけを作った。

津久井 桂 (つくい かつら)

桐ヶ谷高校3年生で、児童文化研究会(「児文研」)としてタチアオイ児童図書館のクリスマス会にボランティアを行うためにやって来る。実は御子柴の妹で、御子柴と会うために一時的に児文研に入った。両親が離婚したときに別々に引き取られたために姓が違っている。 御子柴並みかそれ以上にスペックが高く、高校では生徒会長を務め、大学進学後は父の商社を継承するべく、秘書のようなことをしている。商社経営の継承を自分勝手に捨てて司書となった兄に、複雑な感情を抱いている。

森下 美波 (もりした みなみ)

桐ヶ谷高校2年生で、児童文化研究会(以下「児文研」)としてタチアオイ児童図書館のクリスマス会にボランティアを行うためにやって来る。3年生が受験で退部したあと、児文研が自分一人になってしまったので焦っている。子供に見せるパネルシアターや人形劇が上手い。 のちに、入部した西野和佳にバトンを渡し、保育士になるため短大に進学した。

取手 (とりで)

宮本の大学時代からの友人。出版社で編集をしている。名前は不明。前はビジネス書担当で、家にほとんど帰らず仕事をしていたが、児童書担当に配置転換され、昇進はしたものの鬱屈している。仕事のヒントをつかもうと小学2年生の娘、聖奈と宮本とタチアオイ児童図書館を訪れる。 そこで、かつて取手が、持ち込み原稿を否定した伊崎と再開。伊崎の自作の読み聞かせに聖奈が魅せられ、それに関連して御子柴から重要なアドバイスをもらい、停滞していた仕事に光明を見出す。

竹花 由多加 (たけはな ゆたか)

大学時代、御子柴と同じ講義(司書の資格をとるためのもの。講師は相模原)を受けていた。書店勤務をしていたが、書店が図書館の管理委託を行うことになり、竹花は公立図書館で司書となり、児童書を担当することとなった。そして先輩の八重樫明日香に勧められて、タチアオイ児童図書館に見学に行く。 そこで御子柴と出会うが、御子柴は竹花のことを忘れていた。のんびりとしたタチアオイ児童図書館の雰囲気に竹花は苛立ち、御子柴をなじる。

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