ライジングガール! ~人見絹枝物語~

ライジングガール! ~人見絹枝物語~

「女性が運動する」というというのがまだ珍しかった時代。激しく熱くそして華やかに疾走した、実在の日本人女性初のオリンピック・メダリストである人見絹江の人生を描いた物語。「フィールヤング」2005年1月号から6月号に掲載された作品。

正式名称
ライジングガール! ~人見絹枝物語~
ふりがな
らいじんぐがーる ひとみきぬえものがたり
作者
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

人見絹江は小さい頃からお転婆で、岡山高女では父親や祖母に隠れてテニスに熱中していた。岡山高女の校長の推薦で岡山県陸上大会に出場、走り幅跳びで日本女子新記録を出し、陸上選手としての道を歩み始めた絹江は、日本女子体育大学の前身である二階堂体操塾に進学。その後、木下に熱心に口説かれて大阪毎日新聞社に入社し、日本初の女性スポーツ選手兼新聞記者となる。

当時は女性がスポーツをすることが一般的ではない時代であり、絹江は陸上競技に参加して女性に対する偏見に立ち向かっていく。ついには女子日本陸上競技界では敵なしとなった絹江に、木下は万国オリンピックに出て世界を舞台に戦うことを勧めるのだった。

登場人物・キャラクター

人見 絹江 (ひとみ きぬえ)

岡山県出身、女子日本陸上競技界の先駆者で日本人女性史上初のオリンピック・メダリスト。岡山高女時代、岡山県陸上大会に出場、走り幅跳びで日本女子新記録を出したことがきっかけで陸上選手としての道に進む。日本初の女性スポーツ選手兼新聞記者でもある。日本人女性としては非凡な身体能力を持ち、世界を舞台に活躍するも、いつも仲間がいない孤独感を感じていた。 また女性が足を出して運動することへの時代的な偏見もあり、のちに続く女子選手のために自分が道を切り開くしかない、と孤軍奮闘する。大きな試合前にはプレッシャーに悩まされる繊細さもあるが、いつもギリギリで乗り越える強さを持つ。実在の人物、人見絹枝がモデル。

人見絹江の父 (ひとみきぬえのちち)

人見絹江の父親で、農業を生業としている。そもそも絹江を岡山高女へ行かせたのは学問をやらせるためであり、彼女がテニスの大会へ出場することになった際には難色を示すが、絹江の余りの気迫に負けてしまう。のちの陸上大会への出場についても渋い顔をするが、校長の熱意に負ける。いつしか反対することは諦め、絹江を日本女子体育大学の前身である二階堂体操塾に進ませることにも同意し、陰ながら応援するようになる。

人見絹江の母 (ひとみきぬえのはは)

人見絹江の母親。家に持ち帰るなという約束のもと、人見絹江の父や祖母に内緒で、絹江にテニスのラケットを買い与えた。絹江のお転婆に困りながらも笑って許す懐の深さを持つ女性。オリンピック出場前にナーバスになった絹江に対し、悪気なく「勝って日の丸を挙げてくるのが奉公じゃ」と更にプレッシャーをかけてしまうなど、少々古い考え方の持ち主。

校長 (こうちょう)

岡山高女の校長。人見絹江のずば抜けた運動能力を見込んで、岡山高女の名誉がかかった岡山県第二回中等学校陸上競技大会への出場を頼みに、絹江の家に直談判に来る。脚気の兆候が出ていた絹江のため、特別に医者同伴で出場することを条件に、人見絹江の父から承諾をもらう。

木下 (きのした)

スポーツ生理学の権威者で医学博士。人見絹江に自身が部長を務める大阪毎日新聞への入社を熱心に口説いた。絹江に万国オリンピックの出場を強く勧め、世界の舞台を前に自信喪失する絹江に「つらい時は日本の神様に拝め」と勇気づける。大会当日には絹江のいるスウェーデンの方角に向けて気合を送るが、方向が違うと部下につっこまれるお茶目な面もある。

梶 耕作 (かじ こうさく)

湊新聞の記者。生意気な女は大嫌いだと豪語し、注目される人見絹江に対して「本当に女なのか」というような下世話なネタを進んで執筆する。絹江と藤田テルの同性愛に関する記事を書き、激怒した絹江に社まで乗り込まれ「同じ新聞記者として恥ずかしい」と啖呵をきられる。絹江とは犬猿の仲だが、いつも絹江の動向を気にしている。

藤田 テル (ふじた てる)

日本女子体育大学の前身、二階堂体操塾で人見絹江の後輩だった女性。二階堂体操塾では一番足が遅く、勝ち負けがはっきりする競技生活は自分に合わないと、スポーツをする女性を応援する側になる道を選ぶ。新聞記者となった絹江の世話をするため、大阪で一緒に暮らすことになったものの、絹江が拾ってきた猫や犬、九官鳥の世話をしている時間の方が長いと嘆いている。

黒田 (くろだ)

大阪毎日新聞社のモスクワ特派員。人見絹江の世話係としてスウェーデンのイェーテボリに同行することになる。運動選手のマネージャーを務めるのは初めてで、国の代表である絹江のために運動生理学の勉強をしながらサポートする。絹江のロシア人記者に対しての態度や発言、日本人の体を強くするため欧米から取り入れるべき公共施設や生活習慣を考察する姿勢を目の当たりにし、並の人間ではない器の大きさを感じる。

ガン

万国オリンピックに出場したイギリス人女性選手。走り幅跳びの世界記録保持者で、人見絹江と走り幅跳びの優勝を争う。結果的に絹江に敗れるも、快く絹江を祝福する気のいい女性。以降、絹江とは小包や手紙を送りあうなど友好的な関係を築き、アムステルダムオリンピックに出場する前、絹江がロンドンに立ち寄った際には観光案内役を引き受ける。

藤原 清幸 (ふじわら きよゆき)

大学生の槍投げ選手で、オリンピック候補生の男性。新聞記者として取材にきた人見絹江に注目し、恋人がいるかどうかを逆取材する。ただし育ちの良いボンボンで、それ以上のことについてはウブ。絹江をデートに誘って活動写真を見に行ったものの、練習をしていないことが落ち着かない絹江に途中で帰られてしまう。

谷 三三五 (たに ささご)

日本で初めて100メートル10秒台を記録した短距離陸上の名選手だが、表舞台に立った記録は少ない。オリンピックに出場する人見絹江のコーチを務める。天才と言われている絹江が、決して器用ではなく陰でどれだけの努力をしてきたかを見抜き、かつて選手として十分な環境を与えらえなかった自分の経験から、女性である絹江の苦労は計り知れないはずだと必死でサポートする。

寺尾 文、寺尾 正 (てらお ふみ、てらお きみ)

人見絹江を負かした双子のスプリンターで、絹江に憧れていた。絹江が日本で初めて負けた選手であるが、悔しさよりも切磋琢磨し合える仲間ができたことを喜んだ絹江が、スプリンターとしてさらなる飛躍を誓うことに一役買った。恋愛小説の題材にされたことで、母親に「あんな恥ずかしい姿で走り回るからだ」と陸上を続けることを反対された際には、絹江が実家まで説得に赴いた。 実在の人物、寺尾正、寺尾文姉妹がモデル。

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