空のキャンバス

空のキャンバス

主人公北野太一は子供のころに負った大ケガがもとで、命に関わる病を抱えている。時折発症する麻痺に悩まされながら、名も知らぬ少年と交わした「男と男の約束」を守るため、体操競技に情熱を注ぐ。

正式名称
空のキャンバス
ふりがな
そらのきゃんばす
作者
ジャンル
体操競技
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概要・あらすじ

子供のころ、主人公北野太一は見事な月面宙返りをしてみせた少年に負けまいと特訓に明け暮れていた。しかし、ライバルと見込んだその少年が橋から落ちたのを助けた際に、背中に大ケガを負ってしまう。少年が実は赤城榛名という少女であったことを知らないまま月日は流れ、太一榛名の家に身を寄せて体操競技に邁進する。

一見するとケガによる全身麻痺を克服したかに見えた太一だが、病気は今も彼の体に潜んでいた。

登場人物・キャラクター

北野 太一 (きたの たいち)

明るくて天真爛漫だが、負けず嫌いの努力家。そしてちょっぴりスケベ。子供のころ、「あいつ」と呼んでいた少年との「男と男の約束」を守るために、清流体操クラブに入り、赤城榛名の家に下宿する。橋から落ちた「あいつ」をかばうため木の切り株に背中を打ち、破片で神経を損傷して全身麻痺になるが、「あいつ」との約束を果たすため、リハビリによって体操競技ができるまでに回復した。 だが、星状の傷の奥にある破片は今も神経に残っており、それが何度となく彼を苦しめる。後に全日本ジュニアの強化選手に選ばれるも、合宿中に古傷が再発してしまう。しかも、成功率30%の外科手術は成功するが、記憶喪失になってしまった。元体操選手で現在はスポーツ記者の鳴海の特訓によって体操選手として復活し、オランダのロッテンダムで行われた体操競技世界選手権に参加。 団体では銀メダルに終わるが、個人戦では後方伸身3回ひねりという難易度の高い技を決めて金メダルに輝いた。赤城榛名のことが好きだが、彼女が「あいつ」であることは世界大会直前まで気づかずにいた。

赤城 榛名 (あかぎ はるな)

体操の日本女子ジュニアチャンピオンで、ポニーテールの勝ち気な少女。子供のころに出会い、橋から落ちた自分を助けてくれた「こぶだらけのヒーロー」をずっと想い続けている。その一方、下宿生として家に転がり込んできた北野太一のことは、初対面からずっとエッチなトラブル続きとあって、最低男という評価である。 だが、彼こそがこぶだらけのヒーローで、昔の自分を少年のライバルだと信じてることを知ると、その心境は変化し、いつも太一の体を心配するようになる。体操のジャパンカップでは日本代表として参加し、決勝でソ連のエレナ・シュトロワと同点優勝し、女子で初の体操世界チャンピオンとなる。その後、第24回体操教義世界選手権では個人総合優勝かつ全種目制覇を成し遂げるが、この大会をもって体操を引退し、コーチとして後進の育成に力を注いだ。

赤城 山太郎 (あかぎ やまたろう)

赤城榛名の父親で、清流体操クラブのコーチ。北野太一を清流体操クラブに招いて、自宅に下宿させる。かつて自身が肘を痛めて通院していたとき、全身麻痺で入院しつつもリハビリにはげんでいた太一と出会い、病気が治ったら自分の体操クラブに来るよう勧めていた。太一の病状のことは知っており、それでも彼のためだと思って体操をやらせるが、太一の体に麻痺が見られるときは問答無用で競技を止めさせる厳しさもある。 かつて全日本選手権で優勝した鳴海という選手を育てたが、彼が事故で半身不随になってからは娘の榛名以外は名のある選手を育てられず、世間からは低い評価を受けていた。

賢苦労 (けんくろう)

北野太一の幼なじみ。髪型はモヒカンで、上半身裸に皮のベストを着用と『北斗の拳』のザコ悪役みたいな風体をしている小男。太一のマネージャー志望で、清流体操クラブに行った彼を追ってきた。太一が追い求めている「あいつ」が赤城榛名であることを早々に知ってしまうが口にはせず、色々と彼のケアをする。 太一が全日本ジュニアの特別強化選手として合宿入りするとあまり姿を見せなくなるが、体操競技世界選手権は榛名の家で赤城コーチらと一緒に観戦していた。

蓼科 沙織 (たてしな さおり)

一昨年の体操日本女子ジュニアチャンピオン。4年前に足をケガしたとき、入院中でリハビリに励む北野太一と出会い、そのがんばる姿に一目惚れ。彼がライバルの「あいつ」に勝ったらお嫁さんにしてと強引に約束してしまう。一方、赤城榛名とは小さいときからの体操のライバル。そして、太一が追い求める「あいつ」が榛名であることも知っている。 榛名が男の子のような姿をしていた写真も持っており、それを太一に見せようとするが、沙織の恥ずかしい写真を持っている榛名に直前で釘を刺されてしまう。

鳴海 (なるみ)

かつて清流体操クラブに所属しており、赤城榛名にとっては兄代わりのような存在だった。全日本選手権でも優勝したが競技中の事故で半身不随になり、一時自暴自棄に陥っていた。しかし、全身麻痺からリハビリにはげむ北野太一の姿を見て自身もリハビリを行い、日常生活は送れるまでに回復した。その後、雑誌「体操ジャーナル」の記者となり、体操の素質のある少年五十嵐俊を世界的な名コーチクリーフ・ドロノワに紹介した。 その後、太一が手術のショックで記憶喪失になると、彼のコーチを買って出て、後方伸身3回ひねりという自身の大ケガにつながった難易度の高い技を伝授した。

五十嵐 俊 (いがらし しゅん)

子供の頃は女の子に間違われたこともある、天涯孤独の美少年。美咲という少女の手術費用として大金を盗んだ青年の身代わりで南崎少年院に入っていたが、出所後に鳴海に見いだされて体操選手となる。コーチは世界的に名の知られるクリーフ・ドロノワ。当初は自分が北野太一が追い求める「あいつ」だと称し、彼に挑戦的な態度を取っていた。 だが、床運動の側方3回宙返りにひねりを加えようとしたところで倒れてしまい、足の複雑骨折とアキレス腱断裂という重傷を負ったときに「自分は太一が探しているあいつではない」「でも、公園でムーンサルトを決める太一はあこがれの存在だった」と明かす。その後、奇跡的に回復して第24回体操競技世界選手権の一員となった。

クリーフ・ドロノワ (くりーふどろのわ)

「チャンピオンメーカー」とも呼ばれる世界的な体操の名コーチで、現役時代は赤城山太郎のライバルだった。日本体操協会にコーチとして招かれたが、「日本の体操界は層が薄すぎる」と当初はコーチを拒否する構えだった。しかし、雑誌「体操ジャーナル」の鳴海記者が推薦した五十嵐俊に光る才能を感じ、専属コーチとして彼を鍛え上げた。

滝 浩太郎 (たき こうたろう)

立国病院(たちくにびょういん)の医師で北野太一やあずさの主治医。橋から落ちて全身麻痺になった太一の主治医としてリハビリから通院まで見守っている。しかし、その一方で、太一の回復が精神的な要素が強いことを自覚しており、いつまた眠っていた病気が再発するか怖れている。全日本ジュニアの強化合宿中に太一が倒れたときは飯島総合病院(いいじまそうごうびょういん)まで出向いて、再手術を受けるよう説得に赴いた。 再手術は成功し、もう一度太一の脊髄に残っている木の破片を取り除く手術をすれば全回復だというところまで来たかと思われたが、世界選手権のテレビ観戦中に太一の病気が末期に来ていることに気付き、競技を止めるよう現地に電話した。 だか、その声は届くことはなかった。

あずさ

立国病院に入院している少女。北野太一と同じ病気を患っていることもあり、彼とは親しい間柄。太一の場合は木の切り株に刺さったものだが、あずさの場合は交通事故によるものである。入院期間はあずさの方が長いが、緊急手術+入院という太一の方が当時は容態が悪かった。それでも体操ができるまで回復した太一に想いを寄せ、ライバルの「あいつ」探しも応援していた。 毎日、折り紙で鶴を折っているが、それは「安らかに天国に行けるように」というものであり、自分が長く生きられないことは覚悟していた。太一が共演会に出たときに病気は末期となり、最後の願いとして病院を抜け出して会場へ向かう。紆余曲折の末、会場に着いたあずさは太一をはげまし、赤城榛名には「太一のライバルとして、世界チャンピオンになって」と告げて息を引き取った。

鶴巻 公次 (つるまき こうじ)

体操の日本男子ジュニアチャンピオン。取り巻きも多く、少しお山の大将的なところがある。弟の代わりに北野太一が全日本ジュニアの強化選手に選ばれたため、合宿当初は彼に辛く当たっていた。だが、太一が体に重い病気を抱えており、いつ体が動かなくなってもおかしくないと知ってからは太一を追い出そうとせず、逆に仲間としてサポートすることを誓った。 その後、体操競技世界選手権に太一や五十嵐俊とともに日本代表に選ばれた。

倉崎 麗華 (くらさき れいか)

倉崎重工会長の娘で、北野太一や赤城榛名らが通う清流学園中等部のマドンナ的な存在。派手な顔立ちの美少女で、橋から落ちた榛名を助けた太一に一目惚れする。その色気で何度となく太一にアタックし、榛名にもゆさぶりをかけるが、朴念仁なところのある太一の心は奪えなかった。

エレナ・シュトロワ (えれなしゅとろわ)

女子体操のソビエト連邦代表。母親は日本人だが、彼女が幼少のときに失踪した。父親の「体操で有名になればママも見に来てくれる」という言葉を信じて体操にはげみ、やがて国の代表になるまで上りつめたが、体操はあくまで母親を探す手段であり体操そのものは愛していなかった。だが、赤城榛名というライバルと出会ったことにより、体操選手として一皮剥けた。 その後、日本体操協会会長の奥さんが自分の母親だと確信するが、あえて娘だとは名乗らなかった。かくして、公私ともに満たされたエレナはジャパンカップにて4種中、2つの競技で10点満点を出して優勝。赤城榛名もやはり同点で単独優勝はならなかったが、世界大会での再戦を誓った。

場所

木駄町 (きだちょう)

幼少時に北野太一や赤城榛名、賢苦労や五十嵐俊らが住んでいた町。太一が榛名をかばった際に突き刺さった木の切り株は、後に撤去された。背中の神経の手術の後遺症で一時的に記憶喪失になった太一は、鳴海コーチに連れられて、しばらくの間木駄町でトレーニングをしていた。

その他キーワード

マント

『空のキャンバス』に登場したマント。幼少時の北野太一が「あいつ」こと幼少時の赤城榛名からもらったもので、太一にとってはなによりも大切な宝物。元々は無地だが、太一が榛名をかばったときに穴が開いてしまい、榛名がハートに「S」の字のアップリケを付けた。木駄町から榛名たちのもとに来たとき、全日本ジュニアの強化合宿のとき、そして手術の後遺症で記憶を失ったときも太一はマントを常に手放さずにいた。

後方伸身三回宙返り三回ひねり (こうほうしんしん3かいちゅうがえり3かいひねり)

『空のキャンバス』で披露された体操の技。かつて鳴海が挑戦するが失敗し、半身不随の重傷を負った。のちに第24回体操競技世界選手権で北野太一が成功させた。ちなみに現実の体操競技では、未だにこの技は披露されていない。

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