屍活師 女王の法医学

屍活師 女王の法医学

解剖中の遺体の生前の映像イメージを見る事ができる女性法医学者、桐山ユキと、彼女と同様の能力を持つ医学生、犬飼一。そんな二人が事件を解決に導き、残された者達の心を救う姿を一話完結方式で描く、法医学ミステリー。ユキと一の不思議な因縁や、天才脳外科医だったユキの過去等が繙(ひもと)かれていく連作としての要素もある。「BE・LOVE」に掲載の作品。2013年9月、2021年5月実写ドラマ化。

正式名称
屍活師 女王の法医学
ふりがな
しかつし じょおうのほういがく
作者
ジャンル
推理・ミステリー
関連商品
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あらすじ

第1巻

国立H大学医学生の犬飼一は、法医学研究室に配属される。その研究室の実務的な実権を握る準教授の桐山ユキは美人ながら、風変りで一筋縄ではいかないタイプ。ある日、一のバイト先である塗料工場の従業員、林倫恵が首を吊った姿で発見される。警察は、会社の金を横領した事を苦にしての自殺として片付けようとするが、ユキは倫恵のマニキュアが剥げている事に気づき、遺体を解剖する。ユキと共に解剖に立ち会った一は、解剖中、倫恵の生前の行動を映像として目にする。左右心室血液の色の違いから、倫恵が凍えて仮死状態となっていた事を知る。警察はマニキュアの欠片(かけら)から、同じマニキュアを塗っていた倫恵の同僚、高月を容疑者として特定する。(解剖FILE.1 自殺者Hの謎)

一の通うH大学で、国文科4年生の鈴原美弥子が左胸を刺されて死亡するという事件が発生し、国文科4年生の笠井和磨が容疑者として逮捕された。美弥子の解剖では、彼女が妊娠していた事が判明。その後、笠井の血液DNAと胎児とのDNA鑑定結果から親子関係が認められたものの、笠井の髪の毛根DNA鑑定結果では、親子関係は認められなかった。中学時代に骨髄移植を受けていた笠井の血液はレシピエントと同じものになり、髪の毛根DNAは骨髄移植前の笠井本来のものになるという。結果、美弥子の胎児は笠井の子供ではない事が証明され、本当の父親は笠井に骨髄を移植したドナーである事が判明する。(解剖FILE.2 容疑者Kの策謀)

車でノーブレーキのまま電柱に突っ込んで死亡した男性、甲元正治を解剖したユキは、彼の手に小さな歯の跡を見つける。これにより甲元が、小児糖尿病でインスリンのコントロールが必要なという少年を誘拐した犯人だった事が判明する。弘の居場所を突き止めるため、さらに検死を進めたユキと一は、頭頂部の骨折により、甲元が咳き込んだ時の体勢で電柱に突っ込んだと判断。そして気管を検分した結果、金属粉「ぺリリウム」に過剰反応していた事を突き止める。(解剖FILE.3 謎多き死体)

老人ホームでアルバイトをしていた一は、墓参りに来ていたユキと村上衛に出会う。ちょうどその時、老人ホームでは美枝という老女が亡くなった。ユキが彼女を死体検案をしたところ、腕に縛られた跡を発見。その後のユキの手による解剖で、美枝には大動脈破裂と脳内出血が同時に起こっていた事が判明し、医療関係者が薬剤を静脈注射したことによる殺人という可能性が浮上する。元看護師の律子という老女が警察に同行を促されるが、一の「律子さんの体に美枝の爪痕がなければ無実が証明される」という言葉を聞いた途端、律子は逃亡してしまう。(解剖FILE.4 永遠の痛み)

第2巻

県下一の進学校であるS学院高校2年生の山中修介が、先端の尖った刺器で胸を一突きにされた死体で発見された。現場に残された所持品と山中の友人、東堂の証言から、中学2年生の小山田アリスが事件にかかわっている事が疑われるが、アリスは行方不明になっていた。売春の噂があったアリスは、後日、溺死体で発見される。桐山ユキの検死解剖から、アリスは首を絞められて瀕死状態になったところを、誰かに川に放り込まれた可能性が浮上。そんな中、ユキと犬飼一はアリスの生前の映像を目にし、彼女が服作りに没頭していた事を知る。(解剖FILE.5 死者の汚名)

配達のアルバイトで行った「倉科植物園」で、一は植物の言葉が映像イメージで見えるという田宮真佐子と親しくなる。しかし後日、田宮は遺体で発見され、ユキは遺体解剖の要請を受ける。腰に皮下出血が見られた田宮は、エコノミークラス症候群で死亡した事が判明。そこに蘭の窃盗販売事件を追っている村上衛が現れ、田宮が蘭の横流しをしていた可能性が高いと語る。すべての情報を集めて感覚を研ぎ澄ましたユキが、死体に問いかけると、そこには狭い場所で柱に拘束された田宮の映像イメージが現れるのだった。(解剖FILE.6 被害者Tの想い)

80億円もの資産を持つ老夫婦、瓜生公造瓜生節子が何者かに殺害された。これに対し息子の瓜生淳は、二人同時に亡くなったので、資産はすべてが自分のものだと主張する。節子には連れ子の仁史がいたが、彼は養子縁組がされていなかった。そんな中、ユキによる検死解剖で、公造の腕に骨折の跡があり、また節子の指輪からは敦の血液反応が出る。さらに解剖を進めると、公造だけが気温の高い部屋に放置されていた事が判明する。(解剖FILE.7 欠けたピース)

ある日、一は近所の公園で、町内の地主の嫁、植松が、桜の木の下に鯉の死体を埋めている場面に遭遇する。その後、一は東京での就活がうまくいかなかった幼なじみの川田裕司と再会。一は彼を町内会の花見に誘い、準備を手伝ってほしいと、公園の倉庫の鍵を渡す。その翌日、近所で飼われていたオウムや、公園猫のコウが立て続けに死んでしまう。不審に思った一は、血液検査でコウの血中にトリカブトに含まれるアコニチンという毒が含まれていた事を突き止める。さらに一が鯉とオウムの死体を掘り出して検査すると、コウと同じくアコニチンが検出される。一はユキの力を借りてコウの解剖を行い、胃の中から、花見で使う緋毛氈(ひもうせん)の赤い繊維を見つけるのだった。次のターゲットは人間だと察知した二人は、町内会の花見会場へと駆けつける。(解剖FILE.8 桜舞う日の殺意)

H市のホテルで、人気モデルの沙羅がぺティナイフで胸を刺し自殺した。ユキは死体検案ののち、沙羅が専属モデルを務めていたジュエリー「Kano」の代表、叶丈司の反対を押し切り、解剖を開始する。沙羅には全身整形の跡があり、胸の傷にはナイフの一部が残されていた。さらに沙羅の生前の映像を見たユキは、彼女が死亡時にネックレスをしていた事を突き止め、そのネックレスを、モデルのKasumiのカバンの中から発見する。だが、Kasumiには確固としたアリバイがあった。(解剖FILE.9 永遠の美)

第3巻

犬飼一の弟、犬飼五空が通う講談中学の階段の下で、柔道部の3年生、猪狩誠の遺体が発見された。死体検案で死因となるような傷は見つからず、桐山ユキは解剖に回すよう指示。死因は急性硬膜下血腫と断定されるが、五空は自分が猪狩を突き落としたと名乗り出る。だが、現場に落ちていた携帯プレーヤーは石灰で汚れており、その日の五空の体には石灰がついていなかった。五空は猪狩がいじめのターゲットにしていた滝沢をかばっていたのだ。再び遺体に対峙したユキは、事件は階段で起こったのではないと、柔道部の道場に向かう。(解剖FILE.10 許されぬ過ち)

ある県の湖底から白田征治というH市在住の男性が死体で発見された。彼は結婚記念日に妻の白田美弥を置いて失踪した人物だった。一は屍蠟化死体のひどさに困惑し、こんな遺体を解剖する意味があるのか、と発言した事でユキに解剖室から追い出されてしまう。さらに法医学研究室の教授、丹羽嗣仁に「君はなにも見えていない」と指摘された一は、征治の左手薬指に傷跡のようなものがあった事を思い出し、解剖室に戻る。他殺の線が見えてきた中、ユキと一は遺体から浮かび上がる生前の行動の映像を見る。その後、征治の胃の中からは美弥に送るつもりだった結婚指輪が見つかり、肺などから刃の痕が見つかる。(解剖FILE.11 遺る想い)

第4巻

H大学医学部衛生学研究室の川越教授と衛生学研究室の秘書、藍田満里の遺体が見つかり、車に排気ガスを引きこんだ心中だと処理された。死体検索に訪れた犬飼一高嶺霞は、川越の妻に不倫を罵られた満里の母親から、解剖を依頼される。満里には利き腕の右手に睡眠薬を注射した痕があり、事件性を感じた一は、火葬場で川越の妻に、川越を解剖するよう説得する。そこに休暇中だった桐山ユキも駆けつけ、川越は青酸ガス中毒で亡くなった事が判明。その結果、別々の遺体を誰かが心中に見せかけた偽装殺人である事が発覚する。(解剖FILE.12 2体の遺体)

K市でマンションから墜落死した壇上要の死体検案に訪れた一は、様子のおかしい男性、佐伯裕也とぶつかる。要の自殺を信じない父親は、裕也が要を突き落としたのではと疑っていた。半年前、「壇上鉄鋼」の女性社員である佐伯裕香が心筋梗塞で突然死した事件があり、裕香の兄である裕也は、いっしょにいた上司の要を逆恨みしていたのだ。裕也は裕香が要にセクハラを受けていたという噂を聞き、壇上家と懇意の医師が裕香の検死をした事から、警察に再捜査を依頼しに来ていたという。ところが、要が死ぬ前にマンションで会っていた人物は、要と因縁のあるH県警察本部刑事部の村上衛だった事が判明する。(解剖FILE.13 憎しみの心)

ユキは、アパートの一室で財布を握りしめて亡くなっていた平塚晃靖という男性を検死解剖した。転倒によるくも膜下出血が死因だと判明するが、ユキは遺体の生前の映像イメージにより、平塚が車に当て逃げされた事実を導き出す。さらに平塚の腹部にあった妙な傷跡と、現場近くで人待ち顔をしていた少年がリンクしたユキは、平塚がその男の子をかばって、車に轢かれた事実を知る。彼の傷跡は少年が持っていたヒーローのフィギュアの角が刺さったものだった。少年は平塚が落とした洋装店の引換券を返そうと、彼を待っていたのだ。(解剖FILE.14 皮肉な愛)

第5巻

国立H大学医学部の脳外科医を務める狩谷弓弦准教授の手術した患者、本田耕太が術後に死亡、遺族の依頼で桐山ユキが司法解剖する事になる。一時は院内感染の疑いが浮上するが、死者の情報を収集し、再び解剖に取り掛かったユキは、死者が幼い頃から何度も肺炎にかかっていた映像イメージを見る。そしてユキは、耕太が3歳になる前に脾臓を失い、遺伝子の異常である鎌状赤血球症だった事を突き止める。この遺伝子を持つ人物は強度なストレスにさらされると、鎌状赤血球ができて自らを攻撃してしまうのだ。さらに、耕太の子供も同じ遺伝子を持っている事が判明してしまう。(解剖FILE.15 死者の光)

3年振りに新刊を出した小説家の栗栖英臣が首吊りで亡くなった。その状況から、本人の意思に反した事件や事故の可能性があり、司法解剖に回す事になる。外傷の状態等からの情報を収集し、ユキは死者の生前イメージにより、座った状態の英臣の後ろから何者かがストールで首を絞めた殺人事件と断定。前妻の有坂ミレイが彼の死亡給付金の受取人であり、殺害当日に英臣のもとを訪れていた事が判明する。(解剖FILE.16 真実の言葉)

ユキがH大学医学部の脳外科を辞め、無気力状態になっていた5年前、彼女は車に轢かれそうになったところを、学食で働いている丹羽まどかに助けられる。まどかはH大学医学部の法医学研究室の教授を務めている丹羽嗣仁の妻であり、それが縁でユキは法医学研究室に所属する事になる。しばらくしてユキは准教授になるが、「屍は活ける師」という言葉は、まだ理解していなかった。そんなある日、丹羽教授とまどかが交通事故に遭い、まどかは死亡、丹羽教授は脊椎損傷の重傷を負う。まどかはシートベルトをしておらず、丹羽に不審な点が多いため、まどかの遺体はユキが解剖する事になる。初めて遺体の生前の映像イメージを見たユキは、彼女が妊娠していた事を突き止める。(解剖FILE.17 再生)

第6巻

公園で暴力団の下っ端の男の刺殺死体が見つかり、衣服には炭酸ナトリウムが付着していた。後日、同じ公園で樋山紘平の遺体が発見され、彼の携帯に、昨夜の殺人の犯人は自分だという書き置きが見つかる。彼の携帯には、公園にあるラーメン屋台の店主、友哉の写真が保存されていた。桐山ユキは、友哉の解剖で彼の生前の映像イメージを見て、犬飼一を友哉のラーメン店に誘う。友哉は2年前、紘平の飛び降り自殺を助けた事から彼と懇意にしていた。そしてユキは、この店の床に炭酸ナトリウムが付着していると、早々に見抜いていたのである。(解剖FILE.18. 敬愛する人たち)

H大学医学部の4年生が利用する駐輪所に、血痕が残っていた。試料の血液でなかった場合を考え、一は血液型を調べるが、ユキに検査の間違いを指摘される。そして、ユキの指導で一は、血液の主がAB型の医学部4年生、冨吉沙椰子だという事を突き止める。父親の会社が倒産した事がストレスになり、胃潰瘍になった彼女は、アパートで吐血していたのだった。(解剖FILE.19 一の一歩)

一は脳外科の実習の見学する事になった。その時の患者は沙椰子の知り合いの木野真里で、頭痛を訴えていた。そんな中、一と沙椰子は真里の夫、木野玲が看護師と怪しい関係にある事を知る。それから数日後、川で真里の死体が発見される。ユキが解剖した結果、溺死前の傷から、ウォーキング中に真里がガードレールにぶつかった事が判明。さらに真里と玲が言い争っている姿も目撃されていた。だがユキは、真里の生前の映像イメージから、彼女が「キアリ奇形」という症状だった事を突き止める。(解剖FILE.20 夫婦の真実)

中学・高校と競争に勝ち続ける事が当たり前だった狩谷弓弦は、H大の医学部へと進んだ。解剖学実習でユキと同じグループになった狩谷は、心筋梗塞で亡くなった84歳の男性を解剖する事となる。そんな中、人とコミュニケーションを取る事が苦手なユキが、相手が遺体であっても、対面するのに戸惑う事を打ち明けると、同じグループの村上理はそれに大きく共感する。その後、解剖を再開したユキは、心臓には亡くなるほどのダメージがない事と、まぶたの裏に溢血点と頸の皮下出血がある事から、絞殺を疑う。弓弦は実習で他殺体を扱うはずがないと主張するが、ユキと同じく遺体から生前の映像イメージを受け取った村上は、調べてみるべきだと主張する。(解剖FILE.21 愛すべき学友たち)

第7巻

カリスマ主婦として活躍する内海ゆりかが亡くなった。死体検案だけでは死因がはっきりせず、桐山ユキが解剖を担当する事になる。まずは突発性心室細動が疑われ、ゆりかの生前の映像イメージから、青汁にその原因があると推測。その読み通り、「ジギトキシン」という毒を含む「ジギタリス」が、青汁から検出された。そして、ゆりかと離婚問題でもめていた夫の内海修平と、独立しようとしてゆりかとの関係がギクシャクしていた助手の佐倉史乃が、ゆりか殺しの犯人として疑われる。(解剖FILE.22 愛と食卓)

H大学医学部の沖元唯志は、剣道部の練習後、体育館で棚の下敷きになって倒れていた。駆けつけた犬飼一は、彼を運び出すが、病院で容態が急変し、挫滅症候群で死亡する。一が強引に助け出さなければ、息子は死なずにすんだ、と沖元の父親は激高。医学部長室に呼ばれた一は、退学を余儀なくされる。現場を検証し、遺体の傷を確認したユキは、沖元の両親に遺体解剖の要請を願い出る。一を解剖に立ち合せたユキは、唯志が動悸・めまい・息切れ、酷い場合は運動直後に突然死を引き起こす肥大型心筋症だった事を突き止める。(解剖FILE.23 そばにいる価値、奪われた資格)

夏休みのラジオ体操で、一の妹、犬飼七海は、同学年の谷山愛優と仲よくなる。ラジオ体操の最終日、町内会に入っていない愛優は、犬飼家がもらった景品のマスコットを一つもらうが、彼女はそのマスコットを弟の優馬にあげてしまう。そんな愛優に、七海は四葉のクローバーをプレゼント。しかし、その日の午前9時半頃、ラジオ体操を行っていた公園で、愛優の死体が発見される。七海達から話を聞いた村上衛は、愛優の自宅付近でマスコットを発見、死体検案を要請する。解剖したユキは、愛優の身体に虐待を受けていた傷跡を見つける。(解剖FILE.24 帰れない夏)

第8巻

家で亡くなっていた独居老人、今野紀久子の死体検案を行った桐山ユキ。おそらく心筋梗塞だという結果に、娘の美山彩夏は解剖を要請。彼女の頑なな態度に犬飼一は違和感を持つ。解剖の途中、紀久子が糖尿病だと知った彩夏は激しく動揺し、いっしょに暮らしていれば、母は一人で苦しまずに済んだのではないか、と自分を責め始める。(解剖FILE.25 母と娘)

教会のボランティア活動をしている事務所で、菊地茉莉也が胸を一突きにされて死んでいた。神父は、血に濡れた包丁を持った土井垣周が、逃げようとして手すりから1階の祭壇に落ちた場面を見ており、金目当ての犯行だと証言する。ユキの解剖から、茉莉也は土井垣の子供を妊娠していた事が判明。その直後、ユキと一は、元バドミントン選手だった土井垣が自殺を図った際、利き手で左の手首さえ切れなかった生前の映像イメージを目にするのだった。(解剖FILE.26 汝、こよなき宝)

クリスマスの時期、ケーキを売る臨時アルバイトに励む一は、誤ってモスキート音のスイッチを入れてしまう。ところが、アルバイト仲間の「サングラスの男性」がモスキート音に反応しない事に気づく。アルバイト中、寂しそうなハーフの少年が気になった一は、「サングラスの男性」が彼に、「ブッシュド・ノエル」というケーキをプレゼントして走り去るのを目撃する。お父さんと会いたいという母子家庭の少年のために、一は「サングラスの男性」を探そうと考え、再びモスキート音を鳴らすのだった。(解剖FILE.27 ルカの福音)

H大学医学部の法医学研究室の新たなメンバーとなった今泉瑠加が、初めて参加した死体検案で、ユキは、自宅でジョギングウェア姿の遺体で発見された小島美奈が、勝負下着を身につけ、フルメイクな事に疑問を持つ。ユキは、美奈のメイクを落とし、口の周りに発疹を発見、毒を飲んだ可能性があると、解剖を開始。その結果、瑠加はジョギング中の急病で亡くなったのではなく、死因は肝右葉裂傷だった事が判明する。彼女は室内で暴力を受けた可能性が高く、美奈の口周りの発疹は食物アレルギーによるものだった。(解剖FILE.28 黙した世界の裏の裏は)

第9巻

H大学医学部の体育館に現れた梶原啓吾は、高校の先輩にあたる村上衛に、受験に失敗した宇佐美蒼が不登校になり、不良の進藤大我に目をつけられている事を相談していた。その話を聞いた犬飼一は、ある日、大我が蒼の弱ったところをさらにつけ込もうと画策している事を知ってしまう。一週間後、ため池で大我の死体が発見される。解剖した桐山ユキは肺に溢血点を見つけ、彼が意識がある状態で、もがきながら死んだ事を突き止め、何者かに棒のようなもので打たれている生前の映像イメージを見る。村上と一は、大我の仲間の話を聞き、蒼が大我に弱味を握られて逆らえなくなった事を知る。そんな中、蒼はビルから落ちて病院に運ばれるのだった。(解剖FILE.29 少年の春)

昼の情報番組のメインを務めるタレントの城田ひとみが、楽屋で死亡した。共演者によると、彼女は大食漢であり、手が震える事が多く、多汗だったという。解剖したユキは、甲状腺の腫れから、彼女が自己免疫疾患であるバセドウ病だった事を突き止める。死因は、体に受けた強いストレスで甲状腺クリーゼになり、心臓に負担がかかった事によるものだった。ユキは彼女の子宮の中に避妊リングを見つけ、彼女にセックス・パートナーがいた事を知り、周囲の関係者達に、何らかの理由でひとみのバセドウ病が重篤化し事を告げる。番組ディレクターの真山は、心理的ショックで死んだのなら自分のせいだ、と崩れ落ちる。同時にマネージャーのは、真山が授かり婚をする事になったとユキに伝えた自分の落ち度だ、と自分を責めるのだった。(解剖FILE.30 女の敵は…?)

第10巻

食品会社の開発部長、古橋賢蔵が、携帯に遺書を残して冷凍庫で死んでいるのが発見された。冷凍庫の内ドアには古橋の手の皮が付着しておらず、凍死の特異的な所見が見つからない事から、桐山ユキが解剖する事になる。総務部の福田恵美は、自殺では死亡給付金が出ないからと、死亡原因を確認するために結果を見届けるという。そんな彼女には、古橋の愛人だという噂があった。ユキと犬飼一が見た古橋の生前の映像イメージは、苦しそうにしているが、寒がってはいなかった。ユキは、彼が膵臓がんにより糖尿病を併発、最近かかった肺炎がストレスとなり、高浸透圧高血糖症候群による腎不全で死亡したと告げる。すると、恵美は「私が彼を冷凍室に運んだ」と告白するのだった。(解剖FILE.31 愛なのか情なのか)

医大生最後の夏休みにNYに滞在していた今泉瑠加は、ワシントンハイツ病院で脳外科医をしていたユキと共に妊婦を助ける。後日、瑠加はユキと病院で再会。妊婦が実は自分の母親、ビアンカ・タカノで、流産経験がある事をユキに打ち明ける。ユキは彼女がRh(-)の母体にRh(+)の胎児という血液型不適合妊娠だと気づき、適切な処置で胎児の命を助ける。最後まで、母親のビアンカに自分の事を気づいてもらえなかった瑠加だったが、胎児を救ってくれたユキのおかげで、母親との悲しい過去を吹っ切る事ができたのだった。(解剖FILE.32 ファム・ファタル)

ある日、H大学医学部の脳外科のゼミに参加する事になった一は、法医学をバカにしたような発言をする脳外科医の山崎秀とのあいだに、ひと悶着起こしてしまう。そんな中、一と冨吉沙椰子は、脳腫瘍の摘出手術で左半身不随となった新宅雄蔵の左手首に、縛られたような傷跡を見つける。二人は山崎に事情を話すが、虐待などあるわけないと一蹴される。一方、娘の新宅芙美子も、相当な介護疲れのためか、自分が何をしてしまったかわからないという状態だった。違和感を感じた一は、ある患者が片手で髪のリボンを結んでいるのを見て、雄蔵が自殺を試みていたのではないかと考える。(解剖FILE.33 ワンコの受難)

第11巻

桐山ユキは老老介護に疲れ、夫の大庭が入浴中に湯に沈めて殺してしまった、妻の大庭さきの遺体を解剖する。大庭の自白通り、さきは溺死という結論に、ユキは何となく納得がいかない。一方、ユキも解剖中に見る遺体の生前映像の回数が減っていた。その後、大学病院の食堂でユキは偶然、介護疲れに悩む新宅芙美子と話をする。彼女の思い詰めた表情から、欠けていた情報のピースが揃い、ユキは大庭夫婦の映像イメージを目にするのだった。(解剖FILE.34 ユキの受難)

H市で毎年開催される実業団対抗駅伝で、「DAMZA自動車」の期待の星、三宅隼斗選手がトップ争いの中、転倒してしまう。起き上がった隼斗は再び逆転してトップに立ち、見事チームを優勝に導くが、ゴール後に倒れて急死してしまう。病院でのCT画像では、急性硬膜下血腫と診断される。犬飼一と同じくH大学で医者を目指す妹の三宅麻友は、レース前の兄が3日前の出来事を完全に忘れている、という異変があったと、解剖を要請する。解剖したユキは、硬膜下血腫以外に脳浮腫を見つけ、彼が試合前に脳震盪を起こし、短期間に再び頭部に衝撃を受けると、高確率で重篤な脳損傷を引き起こす、セカンドインパクト症候群で死亡したとの見解を示す。(解剖FILE.35 夢と希望)

脳外科と法医学の両方の実習に参加する事になった一は、頭痛やめまいを感じるようになっていた。そんな中、一がアルバイトをするホテルのバーでも、専属歌手だった夫津木リサが公園で何者かに殺された事件以降、バーに「呪い」の噂が流れ、体調を崩す客が増えたという。一の腕に湿疹が出ていた事を知ったH大学医学部脳外科の准教授、麻生理織は、ストレスから副腎が肥大し、アレルゲンに反応したのではないかと推測。また、ユキがバーの壁紙を調査していた事を一から聞き、麻生はバーを調査、トルエンが原因のシックハウス症候群だと指摘する。麻生に呼ばれたユキは、壁紙をはがして血痕を見つけるのだった。(解剖FILE.36 あなたが残してくれたもの)

第12巻

桐山ユキの母校、県下一の有名進学女子高W学園で、美術教師の山原諒子が美術準備室で亡くなった。死体検案では窒息死の可能性が高いが、遺体の外表面に異常は見られず、ユキが解剖する事になる。絵を描きながらパンのようなものを食べ、喘息の発作を起こした彼女は、アスピリン喘息患者だった。一番最後に山原に会った生徒の安西優梨華は、調理実習で作ったマフィンを差し入れており、ゴミ箱のマフィンの紙カップの中から、アスピリン錠の包装シートが見つかった。(解剖FILE.37 マテリアル)

犬飼一は、W学園の玉木未緒からW学園の学園祭に招かれものの、生徒の須佐みのりが遺体で発見される。ユキが解剖した結果、死因は「アンピシリン」という薬に反応するアレルギーによる、アナフィラキシーショックと判明する。みのりといっしょに行動していた生徒達の血中から、同じく「アンピシリン」が見つかる。模擬店のポップコーン作りを担当していた安西優梨華が疑われ、「アンピシリン」混入と、山原の殺害を自供する。優梨華は、アスピリン錠の包装シートのみを、美術準備室のゴミ箱に捨てているところをみのりに見られ、それをネタにみのりに服従を強要されていた。その後、未緒の様子が気になっていた一は、みのりの病院に付き添っていた未緒が、みのりのアレルギーを故意に優梨華に話したのではないかと、未緒を問い詰める。(解剖FILE.38 薔薇と棘 )

第13巻

H大学の大学病院に入院した犬飼一と同室の少年、梶川郁人は、極端な人見知りだった。主治医の山崎秀は回診でも郁人に触れる事ができずに悩んでいたが、彼は自分の母親には普通に対応していた。ある日、落ち込んで座っていた一に、郁人が声をかけて来た。これにより一は、郁人が山崎を嫌っているのではなく、山崎が上から目線だった事に拒否反応を示していた事を知る。(解剖FILE.39 隠された想い)

劇団「カンパニーZE」の代表で、演出家の沢木穣が、ビジネスホテルから転落死したと見られる状態で発見される。郁人からの証言で、彼は劇団の看板女優である深山マリエと揉めていた事がわかり、マリエは拘束される。H大学医学部長の娘であるマリエと、以前付き合っていた狩谷弓弦は、彼女を当直室に泊めていたと警察に話し、桐山ユキの解剖に同席する事になる。膝のあたりに皮下出血を見つけたユキは、現場に直行。沢木の生前の映像イメージから、彼は転落したのではなく、交通事故で亡くなった事を突き止める。(解剖FILE.40 青い鳥)

コンピューター周辺機器メーカー「ベリック」の社長の妻、永盛和香奈が倒れ、彼女を診断した山崎は、肝機能が低下している場合、ストレスが原因で肝臓の解毒作用がうまく働かなくなって脳が正常に作用しなくなる、肝性脳症だと診断する。彼女は山崎が高校時代に医者を志す事を決意するきっかけとなった、思い出深い憧れの女性だった。しかし後日、和香奈の容態は急変し、死亡。CT検査の結果、急性硬膜下血腫が確認された。和香奈の夫、永盛彰正は医療ミスで山崎を訴えるという。遺体を司法解剖したユキは、死因は腎破裂と断定、和香奈の生前の映像イメージから、彼女が夫から酷い暴力を受けていた事を知る。(解剖FILE.41 憧れの女)

第14巻

犬飼一の先輩、橘亮平は、大手スーパーマーケットチェーンを展開する社長の娘、那久茂ゆいと結婚する事となった。その結婚式で、一は亮平のビールを自分の手にこぼしてしまうが、その後、急激な体調の悪化に見舞われる。その夜、亮平はホテルの部屋で死亡。彼の荷物の中から「アコニチン」という毒が発見され、彼の血中からも「アコニチン」が検出された事で自殺の疑いが濃厚となった。しかし、結婚式の様子を聞いた桐山ユキは、一の血液検査を行い、同じ毒を検出。その後、亮平の遺体を解剖したところ、彼の血中からはフグなどが持つ猛毒の「テトロドトキシン」が微量に検出される。二つの毒は拮抗し、「テトロドキシン」がより早く体外に排出され、夜になって「アコニチン」の作用が発現したのだ。この情報を受けた警察は、結婚式のビデオを確認し、一がメインテーブルに行く前に、亮平にビールを注いだ人物を探し出す。(解剖FILE.42 絆の証)

冨吉沙椰子の好意にまったく気づいていない一は、恋愛経験が豊富そうなH大学病院の初期研修医、椿夏澄を、恋の相談相手として沙椰子に紹介する。一方、H大学病院の看護師、住居慎一郎は、意味ありげな様子で、夏澄や沙椰子の髪を誉める。だが、彼は看護師としては優秀で、抗がん剤治療を受けるあおいのケアに心を砕いていた。そんな中、夏澄が自宅で殺されているのが発見され、続いて沙椰子が同一犯と思われる人物に刺されてしまう。犯人として住居が浮上、彼は犯行を自供するものの、ユキには真犯人の見当がついていた。(解剖FILE.43 想いの果て)

沙椰子に告白された一だが、どことなく落ち着かず、逆に彼女に気を遣わせてしまう。そんな時、一は以前血液検査を受けに来ていたカップル、久保田拓斗貞友麻希と再会。兄妹ではない事が判明した二人だったが、拓斗は重度の再生不良性貧血で早急に骨髄移植が必要だという。その後、法医学研究室に来た麻希は、拓斗の叔母や従兄妹が自分とよく似ていた事などから、血液検査を依頼する。事情を聞いたユキはDNA検査を行う。ユキは麻希がcisAB型で、表に出なくてもO型遺伝子を持っているとして、麻友と拓斗は兄妹だと、拓斗と彼の親戚に説明するのだった。(解剖FILE.44 特別な人)

第15巻

テレビショッピングで有名な「ヤスナリ」の社長、安成崇が、風邪をこじらせたあと、自宅で急死した。妻と愛人の秘書は、崇の後継者を巡って対立しており、彼の解剖を要請する。桐山ユキは広範囲の臓器に出血性梗塞が起きている事から、毒物の可能性は低く、壊死性リンパ節炎があるため、なんらかのウイルス感染を疑う。ユキは崇の生前の映像イメージをヒントにマダニを発見、マダニが媒介したウイルスによる感染症と断定する。(解剖FILE.45 予期せぬ名声)

「ゴモララウィルス」を発見し、一躍時の人になったユキ。彼女は山中の谷底で発見された男性の解剖中、彼が楠耕士郎という名前で、6年前にユキが彼にくも膜下出血のクリッピング術を施した事を思い出す。彼はくも膜下出血を起こして転倒した際、脳挫傷を負い、てんかんの後遺症が残ったのだった。ユキは遺体の生前の映像イメージから、彼が首を絞められた際、てんかんの発作を起こした可能性が高いとし、血液検査により彼が亡くなる前に薬を飲んでいなかった事を突き止める。(解剖FILE.46 ユキの過去)

自社の内部告発をしようとした升岡悟郎は、マスコミに囲まれる中、くも膜下出血で倒れた。H大学病院の脳外科医、麻生理織による手術は成功したものの、容態は急変、再手術の甲斐もなく2週間後に死亡した。升岡の息子は父親が脅迫を受けていた事もあり、なんらかの作為が加わったのではないかと憤る。遺体を解剖したユキは、脳ヘルニアによる病死だと記者会見で発表。個人的利害が絡んでいるのではないかと疑うH新聞社の記者、小井手勝也を、「私は死者を冒瀆しない」と一刀両断する。(解剖FILE.47 疑惑の片鱗)

第16巻

5年前の桐山ユキに何があったのかを、狩谷弓弦に問う犬飼一。当時、H大学脳神経外科では、優秀すぎて皆の神経を刺激するユキを、病理の村上理が、その空気を和らげてフォローしていた。そんな中、ユキを指導していた笹島教授がくも膜下出血を起こし、准教授だった麻生理織が執刀するが、術後回復する事なく死亡。病理解剖した理は、動脈瘤による出血が激しく、脳腫脹脳ヘルニアを起こして亡くなったと報告。そんな中、理がくも膜下出血で倒れ、情報を集めて患部を立体視していたユキは、強引に手術に持ち込む。手術は成功したが、術後容態は急変、理は亡くなる。医療事故調査委員会が立ち上がり、丹羽嗣仁教授が解剖した結果、再出血個所のクリップが動脈瘤から外れかけていた事が判る。これは「シザリング現象」と呼ばれ、クリップのはさみ部分のずれが生じて、クリップが徐々に外れていき、しばらくして瘤に血液が流れ込んで再び破裂するというものだった。医療事故調査委員会で、ユキが早急に開頭にこだわった事が、論理的観点から看過できないとされ、彼女は診療行為の1か月間停止を言い渡される。(解剖FILE.48 ユキと村上)

世界的なバレエダンサー、筧安喜良の妻、筧リホが、自宅兼バレエスタジオの非常階段の下で亡くなっていた。安喜良は教え子の大橋杏とのペアで、パリの現代舞踊コンクールで優勝したばかりだった。足が悪いリホの死亡時の状況を判断するのは難しく、ユキが解剖した結果、死因は転落による外傷性ショックだが、彼女が転落前に右後肋骨を骨折していた事が判明する。(解剖FILE.49 深まる溝)

自分はユキにとって特別な存在であり、村上理の代わりだと思いたくなかった一。だがその思いにとらわれ過ぎ、ユキに同調できず、遺体の生前の映像イメージを見られなくなった彼は、法医学研究室を出て行く。そんな中、一は冨吉沙椰子と行った中華料理屋で、同じ高校だった平朋美と再会。だが彼女は、美人で医大生の沙椰子を見て卑屈な態度をとる。翌日、仕事中に倒れた朋美は、店長の香川に付き添われ、H大学病院に運ばれて来る。一は彼女の昨夜の様子から、彼女が甲状腺の疾患を隠している事に気づくのだった。(解剖FILE.50 癒えぬ傷)

メディアミックス

TVドラマ

2013年9月、フジテレビ系列で本作のTVドラマ版が『屍活師~女王の法医学』のタイトルで放映された。プロデューサーは貨川聡子、脚本は寺田敏雄が担当した。桐山ユキ役を松下奈緒、犬飼一役を横山裕が演じている。

2021年5月に『女王の法医学~屍活師~』のタイトルで再ドラマ化。テレビ東京他で放映。こちらは桐山ユキ役を仲間由紀恵、犬飼一役を松村北斗(SixTONES)が演じている。

登場人物・キャラクター

犬飼 一 (いぬかい はじめ)

H大学医学部4年生。法医学研究室に配属された男子大学生。臨床医に憧れているが、徐々に法医学の奥深さに魅了されていく。桐山ユキといっしょに遺体の生前の映像イメージを見る事ができるので、いつしかユキから特別な人に思われたい、という気持ちが強くなっていく。天才肌のユキと比較すると、あくまで普通の人物だが、人の心に特別聡い事もあり、ユキが映像を見るのに必要な情報を無意識に補完している。 8人兄弟という大家族の長男。父親は自営で町工場をしていたが、一が高校生の時に父親が大病を患い、赤貧生活をしていた。以降は学費や生活費を稼ぐためにアルバイトに明け暮れてきた。ちなみに大病を患った父親は、当時ユキに命を救われており、のちにその事実を知る事となる。 ユキには「ワンコ」、村上衛には「ボウヤ」と呼ばれている。

桐山 ユキ (きりやま ゆき)

H大学医学部の准教授。法医学研究室に所属する女性。法医学研究室の実権を握る実力者である事から、犬飼一や周りから「女王様」と呼ばれている。美人だがマイペースで、一風変わった考え方の持ち主。人付き合いを苦手としている。「屍は活ける師なり」と遺体に敬意を払い、どこまでも真摯にご遺体の伝えられなかったメッセージを追及する事を自分に課している。 経験と知識により立体映像を再現できる能力を持つ天才であり、脳外科にいる頃から、情報を聞くだけで患部の立体イメージが見える事があった。映像はすべての情報がぴったり当てはまった時だけに見え、人の心に聡い一が必要な情報を補完する事が多い。そのため、一には心を開いているところがある。脳外科医だった頃は、自分が見える映像イメージを、村上理と共有する事ができていた。 自身が執刀した理が、術後に急死した事から脳外科を辞めたが、H大学医学部の法医学研究室の教授、丹羽嗣仁と妻の丹羽まどかとの縁もあり、法医学研究室に移った。理の死後、精神的なショックからか味覚障害となる。

村上 衛 (むらかみ まもる)

H県警察本部刑事部の課長。キャリア組の男性刑事。自身が大学院生の時に兄の村上理を亡くし、その理不尽な死が納得できなかった事から、警察官になった。以前は、弁護士を目指して司法試験の勉強をしていた。桐山ユキのせいで兄の理が死んだと思っており、ユキを決して許していないが、彼女の実力は認めている。人の感情に聡い理と犬飼一が似ていると実感する事が多い。

村上 理 (むらかみ おさむ)

村上衛の兄。H大学医学部で、桐山ユキと狩谷弓弦と同じ実習に参加していた男子学生。ユキが脳外科医となった時には、H大学病院の病理学を担当していた。人の心に聡く、ユキが世間と断絶しないよう気を配り、つねに彼女の事を考え、いつも二人だけのシンパシーのようなものを感じていた。ユキを補完するのに自分の力を役立てたい、相手に近づきすぎる臨床学より、全体を見渡せる病理学の方が自分に合っている、と弟の村上衛に語っていた。 すべてを見透かすような目を持っており、当時ユキのライバル的存在だった弓弦に、「君は最終的にユキを裏切ったりできない」と指摘していた。笹島教授の手術の手法に違和感を感じており、手術の記録映像を弓弦に見せてほしいと話していたが、その直後にくも膜下出血を起こした。 ユキが半ば強引に執刀を担当して、手術は成功したかに思われたが、術後急変し、亡くなった。

高嶺 霞 (たかみね かすみ)

H大学医学部院生。法医学研究室に所属する女性。普段はメガネをかけて髪を一つにまとめており、地味で目立たない存在。実は「KASUMI」という芸名の人気モデルでもある。ガチガチの理系人間であり、美しい見た目のせいで色々な誤解を受けた事から、逆にそれを利用してやろうと、モデルのアルバイトを始めた。モデル業に本気で取り組んでいる沙羅を尊敬している。

今泉 瑠加 (いまいずみ るか)

H大学医学部の法医学研究室に新たに所属することになった男性。日本人とイタリア系アメリカ人のハーフ。イタリア系アメリカ人の母親が慣れない日本で流産した事で、悲しみのあまり離婚してしまう。自分が妹を助けられたら、母親は自分から離れていかなかったと、母親への思慕から医者を目指すようになる。犬飼一とはクリスマスケーキを販売するアルバイトで知り合うが、その時は「サングラスの男性」として登場し、素性を隠していた。 桐山ユキに母親のビアンカ・タカノと、彼女が妊娠していた胎児の命を助けられ、同時に自分の過去が吹っ切れた事から、ユキに片思いするようになる。何とかユキを臨床に戻したくて法医学研究室に来たが、彼女の心を開く事はできず、ユキが自分のテリトリーの近くに置く一に、何かと意地悪な発言をする事が多い。

丹羽 嗣仁 (にわ つぐひと)

H大学医学部の法医学研究室の教授を務めている初老の男性。犬飼一が大学に入学する前に事故に遭い、妻の丹羽まどかを失くし、自身は脊椎を損傷して、車いす生活になった。現在授業だけを行い、法医学研究室の実務は桐山ユキに任せている。遺族の話だけを鵜呑みにしがちな一に、「君はあまりにもなにも見えていない」と諫める人格者。 ユキが脳外科を辞める事になった医療事故調査委員会では、村上理の解剖を行い、結果を発表した人物でもある。妻のまどかが強引に法医学研究室に誘ったユキだが、彼女がまどかの解剖で初めて死者の映像イメージを見た事に感銘を受け、ユキに正式に法医学研究室に来るようオファーした。

狩谷 弓弦 (かりや ゆずる)

H大学医学部脳外科の准教授を務めている臨床医の男性。年齢は30代後半。両親共に医者で、自身も医者になる事が当たり前だと思っているクールな性格。桐山ユキを医学生の頃から意識しており、ユキと共に遺体の映像イメージを受け取る事ができる村上理に劣等感を感じていた。村上衛同様、犬飼一に村上との共通点を見出しており、相手の気持ちを汲んで動く一を高く評価している。 のちに、ユキと距離が近くなった一に、嫉妬心からつらく当たるようにもなる。法医学研究室を離れた一が、くも膜下出血で亡くなった笹島教授のカルテを見ていた際には、麻生理織と共に、いわくありげな様子を見せている。私生活は、深山マリエと見合いし、短期間だが付き合っていた事がある。 その後、マリエの妹の瑞恵と見合い結婚をした。

冨吉 沙椰子 (とみよし さやこ)

H大学医学部の脳外科、狩谷弓弦のゼミに所属している女子学生。有名な企業の令嬢だったが、実家が倒産した事から、そのストレスで胃潰瘍になる。自宅で倒れていたところを犬飼一に助けられ、以後彼に好意を抱くようになる。美人で気が強いが、根は心の優しい人物。椿夏澄の死で人生が突然終わる事もあると痛感し、あおいに刺されて入院している時に一に告白する。

麻生 理織 (あそう りお)

H大学医学部脳神経外科の教授を務めている脳外科の臨床医。美人で華がある女性だが、実家は貧乏で、苦労して医者になった経緯がある。桐山ユキが脳外科にいた頃の同僚で、彼女になんらかの屈託を抱いている。犬飼一が法医学の知識を脳外科で活かすのを見て、臨床法医学に進めばいいと、法医学と脳外科で実習できるよう取り計らうが、法医学研究室の情報を入手したいという魂胆が見える。 「ゴモラウイルス」発見で一躍脚光を浴びたユキを妬み、ユキの脳外科医時代の過去をH新聞社の記者、小井手勝也に暴露する意地の悪い一面がある。のちに法医学研究室を離れた一が、くも膜下出血で亡くなった笹島教授のカルテを見ていた際には、狩谷弓弦と共にいわくありげな様子を見せている。

山崎 秀 (やまざき しゅう)

脳外科医の男性。H大学の大学病院で外来や入院患者の担当をしながら、H大学医学部4年生の脳外科の生徒の面倒を見ている。脳外科にやって来た犬飼一に対して、法医学をバカにした発言をする嫌味なところがあるが、一と接する内に彼の師匠である桐山ユキの優秀さを認める素直さを併せ持つ。以降も度々一とぶつかるが、マイペースな一とは意外に相性がいい。

高月 (たかつき)

エピソード「解剖FILE.1 自殺者Hの謎」に登場する。犬飼一がアルバイトもする塗料工場の社員の女性。仕事をテキパキとこなす人物で、おしゃれにも気を使っている。ミスが多い同僚の林倫恵にイライラする事も多い。悩みを抱えていた倫恵を励ます意味で、自分のマニキュアをプレゼントした親切が災いし、倫恵殺しを疑われてしまう。

林 倫恵 (はやし みちえ)

エピソード「解剖FILE.1 自殺者Hの謎」に登場する。犬飼一がアルバイトをする塗料工場の女性社員。化粧っけのない清楚な雰囲気を漂わせているが、仕事のミスが多く、どこかオドオドしたところがある。工場で死体が発見され、会社の金を横領した事を苦にしての首吊り自殺だと見られていたが、桐山ユキの解剖により、体温が下がった事による仮死状態であったと事が判明する。

平田 (ひらた)

エピソード「解剖FILE.1 自殺者Hの謎」に登場する。犬飼一がアルバイトする塗料工場の工場長。メガネをかけた男性。高月に地味な服装をするよう注意するなど、派手さを嫌っている。妻帯者だが、林倫恵と不倫関係にあり、倫恵に会社の金を横領させていた。

鈴原 美弥子 (すずはら みやこ)

エピソード「解剖FILE.2 容疑者Kの策謀」に登場する。国立H大学文学部国文科4年生の女性。大学の給油室で何者かに左胸を刺されて死亡。卒論の指導教官は白木田准教授であり、卒論も提出し、就職も決まっていた。実は白木田と不倫関係にあり、妊娠していた。

笠井 和磨 (かさい かずま)

エピソード「解剖FILE.2 容疑者Kの策謀」に登場する。犬飼一と同じH大学文学部国文科4年生の男子大学生。一とはアルバイトを通じて友達となる。白木田准教授に一番目をかけられている生徒であり、鈴原美弥子の殺害を自供する。実は、中学時代に急性骨髄白血病を発症して、骨髄バンクで骨髄移植を受けており、のちにドナーが白木田准教授という事を知るに至った。

白木田 (しらきだ)

エピソード「解剖FILE.2 容疑者Kの策謀」に登場する。H大学文学部国文科の准教授の男性。教授選を間近に控えている。教え子の鈴原美弥子と不倫していた。笠井和磨に目をかけているが、彼が自分の骨髄のレピシエントという事は知らない。

甲元 正治 (こうもと しょうじ)

エピソード「解剖FILE.3 謎多き死体」に登場する。無職の35歳の男性。金属加工工場やバーの客引きなど職を転々としてきた。シートベルトを装着せず、一人で車を運転中にブレーキをかける事なく電柱に激突し、死亡した。金属加工工場で働いていた時期に、「ベリリウム」という金属粉に過剰反応する体質になっていたが、短期で辞めた事で、このアレルギーを自覚していなかった。 桐山ユキの検死解剖により、弘を誘拐した事が判明する。

(ひろ)

エピソード「解剖FILE.3 謎多き死体」に登場する。小学1年生の男の子。小児糖尿病で、インスリンのコントロールが必要。犬飼一がアルバイトしているレストランで、注射を打つ行為を、一がほかの客に見えないよう配慮した事から、顔見知りとなった。甲元正治に誘拐されてしまう。

律子 (りつこ)

エピソード「解剖FILE.4 永遠の痛み」に登場する。元看護師の女性。犬飼一がアルバイトしている老人ホームに入所している。同ホームの美枝という老女が亡くなり、医療関係者による薬剤の静脈注射での殺人の可能性が浮かび上がり、警察に連行されそうになるが、逃亡。自分が自分らしくいられるうちに、誰にも迷惑をかけず死にたいと強く願っている。

小山田 アリス (おやまだ ありす)

エピソード「解剖FILE.5 死者の汚名」に登場する。中学2年生の女の子。山中修介の殺害に絡んでいるとされ、行方不明になるが、溺死体で発見される。山中殺害現場に落ちていた通帳には、複数の男性による万単位の振込があり、売春をしていたと疑われている。だが、桐山ユキによる検死解剖の結果、処女膜には亀裂がない事が判明、実際は服作りに没頭する父親思いの優しい少女だった。

東堂 (とうどう)

エピソード「解剖FILE.5 死者の汚名」に登場する。県下一の進学校、S学院高校2年の男子。生徒会長を務めている。自分勝手な性格で、エリート意識が強い。殺害された山中修介とは友人であり、山中が小山田アリスと関係を持った事から、山中が彼女にゆすられていたと警察に証言した。

山中 修介 (やまなか しゅうすけ)

エピソード「解剖FILE.5 死者の汚名」に登場する。県下一の進学校、S学院高校2年の男子。生徒会では書記を務めていた。鋭利な刺器で胸を一突きにされ、死体で発見される。友人の東堂の証言から、小山田アリスと関係を持ち、彼女からゆすられていたとされている。

田宮 真佐子 (たみや まさこ)

エピソード「解剖FILE.6 被害者Tの想い」に登場する。「倉科植物園」の従業員の高齢女性。植物の言葉が映像イメージで見える人物。気難しい性格で、同僚ともほとんど言葉を交わす事はないが、配達のアルバイトで出会った犬飼一には心を開いている。その後、死体で発見された。遺体検索の要請で、腰に皮下出血があった事から桐山ユキが検死解剖する事になる。 数年前から狭心症で治療中だったが、エコノミークラス症候群で亡くなった事が判明する。

倉科 清香 (くらしな さやか)

エピソード「解剖FILE.6 被害者Tの想い」に登場する。「倉科植物園」の園長を務める女性。クールな雰囲気を漂わせており、メガネをかけている。植物園が経営難のため、田宮真佐子の作った新種の蘭を売り出すかどうかで揉めており、彼女とは折り合いが悪い。だが少女の頃は、父親の代から勤めていた田宮に植物の事を教わり、彼女といる時のみ植物の言葉が映像イメージで見えていた。

石崎 (いしざき)

エピソード「解剖FILE.6 被害者Tの想い」に登場する。「倉科植物園」の従業員の若い男性。いつも作業着をひどく汚すため、園長の倉科清香に怒られている。金欲しさに、田宮真佐子が作った蘭を持ち出して売っていた。

瓜生 公造 (うりゆう こうぞう)

エピソード「解剖FILE.7 欠けたピース」に登場する。資産家の男性。年齢は85歳。妻は瓜生節子。前妻とのあいだに息子の瓜生敦がいる。膵臓がんで余命数か月の命だったが、自宅で節子と共に何者かに殺害される。現役時代は大手企業を何社も経営しており、総資産は80億といわれている。節子を自分の召使いのように扱っていた。

瓜生 節子 (うりゆう せつこ)

エピソード「解剖FILE.7 欠けたピース」に登場する。瓜生公造の妻。年齢は61歳。前夫と離婚後、実子の仁史を育てるため、瓜生家にお手伝いとして入り、のちに公造と結婚した。妻というのは名ばかりで、実質、公造からは召使いのような扱いを受けていた。

瓜生 敦 (うりゆう あつし)

エピソード「解剖FILE.7 欠けたピース」に登場する。瓜生公造の息子。犬飼一のアルバイト先の社長で、経営難からアルバイトを全員解雇した。仁史に財産を相続させるのを嫌悪している。膵臓がんだった公造の世話はすべて節子に押しつけるという、自分勝手な性格をしている。

仁史 (ひとし)

エピソード「解剖FILE.7 欠けたピース」に登場する。瓜生節子の連れ子。H大学病院の理学療法士をしている男性。瓜生公造とは養子縁組をしていない。自分を育ててくれた瓜生家に感謝しているものの、自分と母親の節子をぞんざいに扱う瓜生家を恨んでいる一面もある。

植松 (うえまつ)

エピソード「解剖FILE.8 桜舞う日の殺意」に登場する。犬飼一が住む町内の大地主の若奥様。上品な優し気な雰囲気を持つ女性。自分の庭の鯉が死に、公園の桜の木の下に埋めていた。夫は家に帰らず、子供ができなかった事から、孤独な生活をしており、庭の鯉に自分の姿を重ねていた。

川田 裕司 (かわだ ゆうじ)

エピソード「解剖FILE.8 桜舞う日の殺意」に登場する。犬飼一の近所に住む幼なじみの男性。県外の有名高校に進学し、東京の私大に進んだが就活がうまく行かず、戻って来た。医大生になった一に何かと突っかかるものの、一の家庭環境を知ったあとは、一に謝るなど素直なところがある。公園猫のコウを追い払っている姿を一に目撃されるが、これは動物アレルギーからの行動だった。

沙羅 (さら)

エピソード「解剖FILE.9 永遠の美」に登場する。ジュエリー「Kano」の専属モデル。超売れっ子の女性。全身整形も厭わないほどプロ意識が高く、信じたものにすべてをかける情熱を持っている。H市のホテルで胸をペティナイフで刺された遺体で発見され、桐山ユキにより他殺と断定される。

叶 丈司 (かのう じょうじ)

エピソード「解剖FILE.9 永遠の美」に登場する。ジュエリー「Kano」代表を務めている男性。沙羅とは公私共にパートナーだった事もある間柄だが、来期の専属モデルには裏で「Kasumi」こと高嶺霞を推するという、あざとい一面がある。

猪狩 誠 (いかり まこと)

エピソード「解剖FILE.10 許されぬ過ち」に登場する。講談中学3年生の男子生徒。柔道部の主将を務めている。全国大会で入賞するなど学校の誉れ高い生徒だが、裏では、気分次第で後輩に異常なしごきを与える暴君でもあった。特に気の弱い滝沢をしごきのターゲットとしていた。

滝沢 (たきざわ)

エピソード「解剖FILE.10 許されぬ過ち」に登場する。講談中学1年生の男子生徒。柔道部に所属している。犬飼五空の友人。柔道部の主将である猪狩誠の異常なしごきのターゲットにされていた、気の弱い少年。

犬飼 五空 (いぬかい ごくう)

エピソード「解剖FILE.10 許されぬ過ち」に登場する。講談中学1年生の男子生徒。柔道部に所属している。滝沢の友人。柔道部の主将、猪狩誠にいじめのターゲットにされている滝沢を心配しており、彼をかばって自分が猪狩を階段から突き落としたと自白する。

増田 (ますだ)

エピソード「解剖FILE.10 許されぬ過ち」に登場する。犬飼五空が通う講談中学の教師。柔道部の顧問を務める男性。日頃から柔道部の主将である猪狩誠の異常ないじめを気に病んでおり、どうにかやめさせたいと思っていた。

白田 征治 (しろた せいじ)

エピソード「解剖FILE.11 遺る想い」に登場する。H市に住む30代の男性。妻は白田美弥。3年前の結婚記念日に、結婚指輪を家に置いて失踪。屍蠟化死体で発見された。優男で女性にモテるが、情緒不安定で自殺未遂を何度か繰り返していた。

白田 美弥 (しろた みや)

エピソード「解剖FILE.11 遺る想い」に登場する。白田征治の妻。結婚記念日に失踪した夫を許せず、征治の遺体が見つかった事を警察が告げた際、犬飼一の前で自らの結婚指輪をゴミ箱に投げ捨てた。しかし、実際は未だに征治を愛している。

白田 匡人 (しろた まさと)

エピソード「解剖FILE.11 遺る想い」に登場する。白田征治の従兄弟の男性。征治と共に麻薬の売人をしていた人物。征治が失踪したあとも、白田美弥の近所に住んでいる。

藍田 満里 (あいだ まり)

エピソード「解剖FILE.12 2体の遺体」に登場する。H大学医学部衛生学研究室の秘書を務めている美人の女性。犬飼一とは学内で顔見知りの間柄。衛生学研究室の教授を務めている川越と車で心中した、と思われる遺体が見つかる。以前は、H大学病院で看護師をしていたのを、川越教授が引き抜いたと噂されている。父親を早くに亡くしたので、川越を父親のように慕っており、母親を大事にしていた。

川越 (かわごえ)

エピソード「解剖FILE.12 2体の遺体」に登場する。H大学医学部衛生学研究室の教授。初老の男性。衛生学研究室の秘書、藍田満里と不倫の噂があり、車で心中したと思われる遺体で発見される。満里を娘のようにかわいがっていた。

新井 (あらい)

エピソード「解剖FILE.12 2体の遺体」に登場する。H大学医学部衛生学研究室の助教授を務めている男性。殺菌目的の燻蒸剤の研究をしている。メガネをかけたまじめそうな青年だが、陰湿な裏の顔がある。藍田満里に好意を寄せており、川越との不倫を疑っていた。

壇上 要

エピソード「解剖FILE.13 憎しみの心」に登場する。K市の大企業「壇上鉄鋼」の御曹司。部長を務める独身男性。年齢は29歳。自宅のマンションの9階から落下したと思われる遺体で見つかる。最近はいつも落ち着かない感じで、以前より痩せており、苦しそうな様子でうずくまっている姿が、マンションの管理人に目撃されていた。

佐伯 裕香 (さえき ゆうか)

エピソード「解剖FILE.13 憎しみの心」に登場する。K市の大企業「壇上鉄鋼」の女性社員。兄は佐伯裕也。半年前、上司の壇上要と共に残業していた最中、心筋梗塞で突然死した。実は壇上から日常的にセクハラを受けていたという噂があった。

佐伯 裕也 (さえき ゆうや)

エピソード「解剖FILE.13 憎しみの心」に登場する。K市の大企業「壇上鉄鋼」の女性社員、佐伯裕香の兄。裕香が上司の壇上要から日常的にセクハラを受けていたという噂と、裕香を検死した医者は壇上家と懇意の医者だったという事実から、裕香は壇上に殺されたのではないかと疑っている。

平塚 晃靖 (ひらつか あきやす)

エピソード「解剖FILE.14 皮肉な愛」に登場する。一人暮らしをしている土木作業員の男性。「山田幸一」は偽名で、借金で自営の会社は倒産し、8年前に妻子を捨てて家を出ていた。桐山ユキの検死解剖により、幼い男の子を助けてトラックに轢かれた事が判明する。厳しい生活をしながらも、家族への愛情は捨てていなかった事が、ユキと犬飼一により証明される。

本田 耕太 (ほんだ こうた)

エピソード「解剖FILE.15 死者の光」に登場する。脳外科医、狩谷弓弦の髄膜腫の手術を受け、2日後に死亡した男性患者。桐山ユキの司法解剖の結果、ストレスを受けると自らを攻撃してしまう、鎌状赤血球症という遺伝子を持っていた事が判明。妻の本田夏菜との間に子供が生まれたばかりで、希望にあふれていた。

本田 夏菜 (ほんだ かな)

エピソード「解剖FILE.15 死者の光」に登場する。本田耕太の妻。脳外科医、狩谷弓弦の手術で夫の耕太が死亡したのは、病院側のミスがあったからだ、とヒステリー状態になっている。子供が耕太と同じ鎌状赤血球症という遺伝子を受け継いでいる事にさらにショックを受ける。桐谷ユキにかけられた言葉により、耕太が命を賭して子供の未来を守ろうとした、と前向きに考えるようになる。

栗栖 英臣 (くりす ひでおみ)

エピソード「解剖FILE.16 真実の言葉」に登場する。小説家の男性。妻は栗栖理名子、前妻はタレントの有坂ミレイ。自宅で首を吊った姿で亡くなっていた。死期を目前に控えた男の淡々とした1年間を描いた「凪の川」という新刊を、3年振りに出したばかり。ファンからは酷評されていた。

栗栖 理名子 (くりす りなこ)

エピソード「解剖FILE.16 真実の言葉」に登場する。小説家の栗栖英臣と1年前に見合いで結婚した若い女性。おとなしく弱々しい印象の人物。英臣の新刊小説が酷評されている事から、自分といっしょになったせいだという被害妄想に陥り、前妻の有坂ミレイと夫の仲にも疑心暗鬼になっていた。

有坂 ミレイ (ありさか みれい)

エピソード「解剖FILE.16 真実の言葉」に登場する。女性タレントで、栗栖英臣の前妻。もともとは地方局のレポーターで、現在はスポーツウーマンとしてジム経営などを手掛けている華やかな人物。英臣の死亡給付金の受取人である事が発覚する。

丹羽 まどか (にわ まどか)

エピソード「解剖FILE.17 再生」に登場する。H大学医学部の法医学研究室の教授、丹羽嗣仁の妻。H大学の学食で働いていた女性。5年前に交通事故で亡くなった。学食の裏メニュー「特製豚丼」を考案した人物。医学部の助手だった嗣仁と、学食のアルバイト時代に恋に落ちた。誰にでも愛情を注ぐ人物であり、味覚障害の桐山ユキに「おいしい」と言わせる事が夢だと語っていた。

樋山 紘平 (ひやま こうへい)

エピソード「解剖FILE.18. 敬愛する人達」に登場する。県会議員の息子。年齢は18歳。いじめを受けており、2年前、繁華街のビルから飛び降りたが、ラーメン屋のアルバイトをしていた友哉に助けられた。特権意識の強い両親に嫌悪感を持っており、高校中退でもラーメン店を持つようになった友哉の事を尊敬していた。飛び降りた事により「半側空間無視」という脳のダメージにで左の感覚が一部欠け、左側が見えない等の障害を抱えていた事が、桐山ユキにより証明される。

友哉 (ともや)

エピソード「解剖FILE.18. 敬愛する人達」に登場する。公園でラーメン家の屋台を出している若い男性。2年前、繁華街でラーメン家の店員をしていた時に、樋山紘平を助け、彼に慕われるようになる。実は、紘平の両親から金を受け取って店を開いた事を、紘平に隠していた。

木野 真里 (きの まり)

エピソード「解剖FILE.20 夫婦の真実」に登場する。H市郊外の食品会社「きの家」の娘。夫は木野玲。冨吉沙椰子とは幼なじみのような間柄。自分は有能でもないし、綺麗でもないと自己評価が低く、夫の玲に引け目を感じている。桐山ユキの解剖により、小脳や脳幹が圧迫され、頭痛や運動機能に障害が出る「キアリ奇形」という、初診ではほぼ見つからない症状だった事が判明する。

木野 玲 (きの れい)

エピソード「解剖FILE.20 夫婦の真実」に登場する。木野真里の夫。イケメンの男性。もともと「きの家」に出入りする運送のアルバイトだったが、ただのアルバイトを気にかけてくれる真里に惹かれ、結婚した。しかし結婚後、「きの家」に入社するが、正社員経験もパソコンも使えない自分には、どこにも居場所がないように感じていた。

内海 ゆりか (うつみ ゆりか)

エピソード「解剖FILE.22 愛と食卓」に登場する。情報番組の料理コーナーをはじめとしたテレビで活躍するカリスマ主婦。毒を持つ「ジギタリス」という草の葉を服用し、仕事場でもある豪華なキッチンで亡くなる。主婦目線の庶民派で売っているが、ストレス等が原因で亜鉛が欠乏し、味覚障害になっていた。だがその事を、周囲に気取られまいと必死に隠していた。

内海 修平 (うつみ しゅうへい)

エピソード「解剖FILE.22 愛と食卓」に登場する。カリスマ主婦、内海ゆりかの夫。ゆりかとの離婚を望んでいたが、カリスマ主婦としてのイメージが台無しになると、ゆりかに拒まれていた。

佐倉 史乃 (さくら ふみの)

エピソード「解剖FILE.22 愛と食卓」に登場する。カリスマ主婦、内海ゆりかの助手を務めている女性。「きれいすぎる料理研究家」として、ミニコミ誌で料理コラムを始めた事から、ゆりかとの仲がギクシャクしていた。

沖元 唯志 (おきもと ただし)

エピソード「解剖FILE.23 そばにいる価値、奪われた資格」に登場する。H大学医学部の男子学生。犬飼一の友人。父親は開業医をしている。剣道部に所属するまじめな学生で、一の他人への同調能力を高く評価している素直な性格。剣道部の練習後、棚の下敷きになって倒れていたところを一に助け出されるが、しばらくして急死してしまう。

谷山 愛優 (たにやま あゆ)

エピソード「解剖FILE.24 帰れない夏」に登場する。犬飼一の妹、犬飼七海と同学年の6歳の女の子。弟の優馬といっしょにいる事が多い。反応が遅く、やや鈍いところがあり、七海よりだいぶ小柄。ラジオ体操の最終日に、公園で午前9時半頃、死体で発見される。

犬飼 七海 (いぬかい ななみ)

エピソード「解剖FILE.24 帰れない夏」に登場する。犬飼一の妹。谷山愛優と同学年の6歳の女の子。活発な性格で、ラジオ体操で仲よくなった愛優に、妹のように接する姉御肌なところがある。愛優の死が納得できず、兄の六也と警察に駆けつける。

今野 紀久子 (こんの きくこ)

エピソード「解剖FILE.25 母と娘」に登場する。年金暮らしの独居老人。美山彩夏の母親。家で亡くなっているのを発見され、桐山ユキが死体検案を担当した。夫を早くに亡くし、地元の農協に勤めながら娘を一人で育ててきたシングルマザー。気丈で無愛想なため、娘に距離を置かれていた。

美山 彩夏 (みやま あやか)

エピソード「解剖FILE.25 母と娘」に登場する。今野紀久子の娘。東京で結婚し、美容室を経営している女性。気が強い性格で、自分と似ている気丈な母親に素直になれず、関係はあまりよくなかった。紀久子が一人で苦しんだのは自分のせいではないかと、桐山ユキに遺体解剖を要請する。

菊地 茉莉也 (きくち まりや)

エピソード「解剖FILE.26 汝、こよなき宝」に登場する。教会の手伝いをしているボランティアの若い女性。聖女のイメージを彷彿させるロングヘアの清楚な美人。教会の事務室で、胸を一突きにされて死んでいるのが発見される。実は、土井垣周に想いを寄せていた。

土井垣 周 (どいがき あきら)

エピソード「解剖FILE.26 汝、こよなき宝」に登場する。半ホームレス状態だった若い男性。失業してネットカフェで寝泊まりしていたが、教会で菊地茉莉也の世話を受けるようになる。粗野で激高しやすい性格で、半年前に教会で自殺未遂し、H大学病院に運ばれていた。元バドミントンの全国レベルの選手だったが、ケガで実業団チームから追いやられたため転落の人生を送る。

神父 (しんぷ)

エピソード「解剖FILE.26 汝、こよなき宝」に登場する。教会の神父の男性。結婚せず、女性に触れないようにしている敬虔なクリスチャン。菊地茉莉也に理想の女性像を重ねている。粗野な土井垣周には、いい感情を持っていない。

ハーフの少年 (はーふのしょうねん)

エピソード「解剖FILE.27 ルカの福音」に登場する。母親と二人暮らしの少年。犬飼一が、クリスマスにケーキを売る臨時アルバイトをしていた時に出会った。父親は仕事で日本に滞在中に母親と結婚した外国人。幼い頃離婚したので、父親の記憶がない。木の株の形をした「ブッシュド・ノエル」というケーキを、父親が作ってくれた記憶を持つ。

エリック・ジュベール (えりっくじゅべーる)

エピソード「解剖FILE.27 ルカの福音」に登場する。パティシエの男性。犬飼一が、クリスマス時期に臨時アルバイトをする事になったケーキ店で、トークショーと実演をするため、フランス本店から日本を訪れた。

小島 美奈 (こじま みな)

エピソード「解剖FILE.28 黙した世界の裏の裏は」に登場する。会社員の女性。年齢は35歳。自宅で死体となって倒れているのが発見された。ジョギングウェアに、上下セットの勝負下着をつけ、フルメイクをしていた事から、その死に疑問を持った桐山ユキが、解剖に回す事になる。

豊田 (とよだ)

エピソード「解剖FILE.28 黙した世界の裏の裏は」に登場する。小島美奈の会社の上司の男性。美奈の第一発見者。妻帯者だが、美奈と不倫関係にあった。一見穏やかそうだが、激高しやすい一面もある。

安西 (あんざい)

エピソード「解剖FILE.28 黙した世界の裏の裏は」に登場する。亡くなった小島美奈のジョギング仲間の男性。あごひげをたくわえた、ワイルドな見た目。土日に美奈と同じ位の時間帯に走っており、彼女が心拍計をつけて走る事を知っていた。

梶原 啓吾 (かじわら けいご)

エピソード「解剖FILE.29 少年の春」に登場する。翠光高校に進学した少年。警察の少年剣道教室に通っていた時、村上衛と知り合い、以降翠光高校出身の村上を慕っていた。翠光高校では親友の宇佐美蒼といっしょに剣道部に入部する予定だったが、蒼が高校受験に失敗し、自暴自棄になっている彼を心底心配している。欠点のないパーフェクトな人間に見えがちだが、人に言えない悩みを抱えている。

宇佐美 蒼 (うさみ そう)

エピソード「解剖FILE.29 少年の春」に登場する。梶原啓吾の親友の少年。自分だけが翠光高校に落ち、自暴自棄になっている。警察の少年剣道教室でいっしょだった不良の進藤大我に、仲間にならないかと誘われている。

進藤 大我 (しんどう たいが)

エピソード「解剖FILE.29 少年の春」に登場する。警察の少年剣道教室に通っていた少年。力を持て余して剣道をしていただけで、地元では札付きの不良と知られている。宇佐美蒼を仲間に引き入れようとしている。人の心に聡く、その力で他人を動かす事に長けている。

城田 ひとみ (しろた ひとみ)

エピソード「解剖FILE.30 女の敵は…?」に登場する。30代後半の女性タレント。昼の情報バラエティ番組「わくわくワイド」のメインを務める。キレのあるトークを売りにしている。最近やせて美しくなったが、楽屋で倒れ、死亡する。バセドウ病にかかっているが、自覚症状がなかった。真山と付き合っていたが、お互いの仕事のために結婚をあきらめていた節がある。

(しの)

エピソード「解剖FILE.30 女の敵は…?」に登場する。城田ひとみのマネージャーを務めている女性。ぽっちゃりした体型で鈍感なところがあるため、ひとみから日常的にモラハラを受けていた。実はひとみと同じバセドウ病の患者で、病気についての知識を持っていた。

真山 (まやま)

エピソード「解剖FILE.30 女の敵は…?」に登場する。昼の情報バラエティ番組「わくわくワイド」のディレクターを務めている男性。城田ひとみと付き合っていたが、別の女性との結婚が決まった。自分の結婚相手の妊娠がバセドウ病のひとみにショックを与えてしまったと、彼女の死に責任を感じている。

古橋 賢蔵 (ふるはし けんぞう)

エピソード「解剖FILE.31 愛なのか情なのか」に登場する。食品会社の開発部長を務める男性。年齢は55歳。携帯に遺書と思われるメモを残し、冷凍庫で自殺したと見られていた。昔から仕事一筋だったため、家族とのあいだには深い溝がある。

福田 恵美 (ふくだ めぐみ)

エピソード「解剖FILE.31 愛なのか情なのか」に登場する。食品会社の総務部に所属する若い女性社員。地味でまじめそうな印象の人物。施設育ちで身寄りがないにもかかわらず、就職面接で自分を推してくれた古橋賢蔵を慕っており、彼に冷たい態度をとっていた彼の家族を快く思っていない。

ビアンカ・タカノ (びあんかたかの)

エピソード「解剖FILE.32 ファム・ファタル」に登場する。今泉瑠加の母親。瑠加の父親と結婚し、日本に移り住んだが、2番目の子供を流産。そのショックから立ち直る事ができずに離婚し、瑠加を置いてアメリカに帰国。のちに再婚した。産気づいた際、桐山ユキと瑠加に助けられるが、瑠加が自分の息子だとは最後まで気づかなかった。 瑠香が母親との関係をユキに打ち明けた事により、Rh(-)の母体にRh(+)の胎児、という血液型不適合妊娠をしている事が判明、適切な処置で子供の命が助かる。

新宅 雄蔵 (しんたく ゆうぞう)

エピソード「解剖FILE.33 ワンコの受難」に登場する。脳腫瘍の摘出手術で左半身不随となった男性。年齢は71歳。娘、新宅芙美子の幸せを自分が奪っているのではないかと気に病んでいる。左腕に縛られたような痕があるのを、冨吉沙椰子と犬飼一が見つける。

新宅 芙美子 (しんたく ふみこ)

エピソード「解剖FILE.33 ワンコの受難」「解剖FILE.34 ユキの受難」に登場する。新宅雄蔵の娘。脳腫瘍の摘出手術で左半身不随となった父親を介護するため、会社を辞めて在宅の仕事を探し、介護に専念する父親思いの女性。介護のストレスで精神的に参っている時に、H大学病院の食堂で桐山ユキと世間話をした事で、担当医の山崎秀に、自分が最近精神状態がおかしい事を打ち明ける。

大庭 (おおば)

エピソード「解剖FILE.34 ユキの受難」に登場する。高齢の男性。入浴中に亡くなった大場さきの夫。老老介護に疲れ、妻を湯の中に沈めたと主張している。大庭の表情が、自分を責めている新宅芙美子と重なった桐山ユキは、大庭と妻のあいだに起こった映像イメージを見る事になる。

三宅 隼斗 (みやけ はやと)

エピソード「解剖FILE.35 夢と希望」に登場する。「DAMZA自動車」に所属する実業団駅伝の男性選手。三宅麻友の兄。学生駅伝で記録を出した事で「DAMZA自動車」に入社し、期待を一身に背負っていた。責任感が強く、監督と共に優勝する事だけを目指していた。H市の実業団駅伝で優勝するが、その後急死してしまう。

三宅 麻友 (みやけ まゆ)

エピソード「解剖FILE.35 夢と希望」に登場する。実業団駅伝のスター選手、三宅隼斗の妹。H大学医学部の学生。兄が出場する駅伝の大会スタッフのアルバイトで、犬飼一といっしょになる。隼斗の専属ドクターになるべく、ゼミは整形外科を選んだほど、兄想いだった。隼斗が駅伝直前に3日前の記憶がなかった事から、彼の解剖を要望する。

夫津木 リサ (ふつき りさ)

エピソード「解剖FILE.36 あなたが残してくれたもの」に登場する。歌手の女性。犬飼一がアルバイトを始めたホテルのバーの専属だった。冬の終わりに公園で、頭を何かで殴られ、死亡した。人気に火が付き、メジャーデビューの直前での事件だった事もあり、バーに夫津木リサの「呪い」の噂が流れ、体調を崩す客が続出した。

店長 (てんちょう)

エピソード「解剖FILE.36 あなたが残してくれたもの」に登場する。夫津木リサをかわいがっており、肉体関係を持っていた。その後、メジャーデビューする事になった彼女に、店を辞めると言われてしまう。特に女性に対し、自分をバカにしているという被害妄想が強い。

山原 諒子 (やまはら りょうこ)

エピソード「解剖FILE.37 マテリアル」「解剖FILE.38 薔薇と棘」に登場する。有名進学女子校、W学園の女性教師。2年2組の担任を務め、担当は美術。年齢は33歳。美術準備室で死亡し、窒息死と断定された。遺体の外表面に異常は見られず、桐山ユキが解剖する事になる。その後、アスピリン喘息患者と判明し、同僚の氷垣津也子が渡したアスピリン剤を飲んで自殺を図ったと結論づけられる。 絵にも教師の仕事にも手を抜きたくない、と考えているまじめな性格で、女子校独特の空気感からは浮いていた。

氷垣 津也子 (ひがき つやこ)

エピソード「解剖FILE.37 マテリアル」に登場する。有名進学女子校、W学園の女性教師。担当は美術。W学園出身で当時同学年だった桐山ユキにあこがれていた。周囲とほどよい距離を保って、うまく立ち回る事を覚えて生きてきたが、氷垣津也子自身が学生だった頃のように目をキラキラさせている山原諒子に対して、意地の悪い気持ちを抱いていた。

安西 優梨華 (あんざい ゆりか)

エピソード「解剖FILE.37 マテリアル」「解剖FILE.38 薔薇と棘」に登場する。有名進学女子校、W学園に通う2年生の女子。山原諒子が担任を務める2年2組に在籍している。美人だが、お嬢様気質のわがままな性格をしている。「安西病院」の娘で、犬飼一が家庭教師の面接に行った際に初めて出会う。美術準備室のゴミ箱に、アスピリン剤の包装シートを捨てたところを須佐みのりに目撃され、それをネタに服従を強要されていた。

須佐 みのり (すさ みのり)

エピソード「解剖FILE.37 マテリアル」「解剖FILE.38 薔薇と棘」に登場する。有名進学女子校、W学園に通う2年生の女子。山原諒子が担任を務める2年2組に在籍している。安西優梨華の弱味を握り、自分の言う事を聞くよう密かに服従させていた。「アンピシリン」という薬にアレルギーを持っていた。

玉木 未緒 (たまき みお)

エピソード「解剖FILE.37 マテリアル」「解剖FILE.38 薔薇と棘」に登場する。有名進学女子校、W学園に通う2年生の女子。山原諒子が担任を務める2年2組に在籍している。まじめな性格で、医者を目指している。安西優梨華や須佐みのりにいじめられており、虫けら同様の扱いを受けていた。みのりが「アンピシリン」という薬にアレルギーを持っていた事を故意に優梨華に話すなど、暗く陰湿な一面がある。

梶川 郁人 (かじかわ いくと)

エピソード「解剖FILE.39 隠された想い」に登場する。H大学の大学病院脳神経外科に入院する男の子。年齢は9歳。台風後の増水した川に落ちて入院した犬飼一と同室になる。母子家庭で、母親には普通に接している。山崎秀が苦手らしく、回診時には頑なに触れさせまいとする。

深山 マリエ (みやま まりえ)

エピソード「解剖FILE.40 青い鳥」に登場する。劇団「カンパニーZE」の看板女優。H市出身で色々と揉めて故郷を脱出、沢木穣の作品に惹かれて劇団に入った経緯がある。実は、H大学の宮間医学部長の娘で、妹は狩谷弓弦の妻の瑞恵。本名は「宮間毬恵」。4年前に弓弦とお見合いし、短期間だが付き合っていた事がある。

沢木 穣 (さわき みのる)

エピソード「解剖FILE.40 青い鳥」に登場する。劇団「カンパニーZE」の代表にして演出家を務める男性。年齢は36歳。宿泊するビジネスホテルの6階から落下して死亡したと見られていた。桐山ユキの解剖により、交通事故で死亡した事が判明。深山マリエを深く愛していた。

大谷 (おおたに)

エピソード「解剖FILE.40 青い鳥」に登場する。劇団「カンパニーZE」のマネージャーを務めている女性。沢木穣と二人三脚で劇団を作って来た過去がある。沢木にとって、深山マリエがかけがえのない存在であると知っているが、彼に対するどうしようもない気持ちを抱えている。

永盛 彰正 (ながもり あきただ)

エピソード「解剖FILE.41 憧れの女」に登場する。コンピューター周辺機器メーカー「ベリック」の社長を務める男性。イケメンのやり手で、女性から人気がある。妻は永盛和香奈。妻が山崎秀に肝性脳症と診断されたが、病状が急変して死亡した事を受け、山崎の医療ミスを訴える、と息巻く激しい一面がある。実は特権意識が強く、和香奈に日常的に暴力を振るっていた。

永盛 和香奈 (ながもり わかな)

エピソード「解剖FILE.41 憧れの女」に登場する。永盛彰正の妻。旧姓は「安原」。記念式典中に倒れ、山崎秀に肝性脳症と診断されるが、後日急変し、急性硬膜下血腫で死亡。実は山崎が医者を目指す事になるきっかけを作った人物であり、彼の初恋の女性。夫の彰正のモラルハラスメントとDVのせいで、多大なストレスを抱えていた。

橘 亮平 (たちばな りょうへい)

エピソード「解剖FILE.42 絆の証」に登場する。H大学薬学部博士課程の大学院生の男性。両親を早くに亡くしており、天涯孤独な青年。両親の借金や大学の奨学金を返済するため、いつもアルバイトに明け暮れていた苦労人。新聞配達のアルバイトで仲よくなった犬飼一をかわいがっていた。スーパーマーケットチェーンを経営する会社の社長の一人娘、那久茂ゆいと結婚し、婿養子に入るべく大学院を辞める。 しかし、結婚式が終わった日の夜、ホテルの部屋で死亡する。

那久茂 ゆい (なぐも ゆい)

エピソード「解剖FILE.42 絆の証」に登場する。巨大スーパーマーケットチェーンの株式会社「那久茂」の一人娘。街で橘亮平に助けられた事から、亮平を好きになって強引に結婚を迫った、積極的な性格の持ち主。亮平の死後、研究を続けたかった亮平を、自分が追い詰めたのではないかと苦しんでいる。

住田 (すみだ)

エピソード「解剖FILE.42 絆の証」に登場する。H大学薬学部薬品資源学の大学院生の男性。亮平の友人。一見スマートで知的な青年だが、就活に行き詰っていた。そんな時、那久茂ゆいと出会ってトントン拍子に逆玉の輿に乗った橘亮平に、激しく嫉妬していた。

那久茂 征臣 (なぐも まさおみ)

エピソード「解剖FILE.42 絆の証」に登場する。那久茂ゆいの従兄弟。橘亮平が現れるまで、ゆいの花婿候補だった男性。亮平に対して憤懣を抱えており、結婚式では彼を「金で身を売った」となじった。

椿 夏澄 (つばき かすみ)

エピソード「解剖FILE.43 想いの果て」に登場する。H大学病院の初期研修医の女性。美しいロングヘアの美人で、患者や医者から大人気だが、やや高慢な性格をしている。自宅で胸を刺され、髪の毛を削られた状態で亡くなっていた。

住居 慎一郎 (すみい しんいちろう)

エピソード「解剖FILE.43 想いの果て」に登場する。H大学病院の看護師の若い男性。女性に意味ありげな態度で接する蠱惑的な人物。椿夏澄の美しい髪に執着しているのか、彼女をよくからかっていた。看護師としては優秀で、抗がん剤治療を受けているあおいのケアに心を砕いている。

あおい

エピソード「解剖FILE.43 想いの果て」に登場する。H大学病院の患者の女の子。骨髄移植し、抗がん剤治療を受けていた。退院してからも辛い治療は続き、看護師の住居慎一郎だけを心の支えにしていた。髪の毛が抜け落ちているので、いつも帽子をかぶり、マスクを着用している。

貞友 麻希 (さだとも まき)

エピソード「解剖FILE.44 特別な人」に登場する。実の両親が亡くなり、養女となった女性。H市のアマチュアオーケストラで知り合った久保田拓斗と恋愛関係になるが、境遇に一致する点があり、兄妹ではないと証明するために血液型検査を受けた。検査の結果はAB型。のちに、桐山ユキのDNA検査を受け、拓斗と兄妹だと判明するが、彼の難病を救うべく骨髄の提供を申し出る。

久保田 拓斗 (くぼた たくと)

エピソード「解剖FILE.44 特別な人」に登場する。実の両親が亡くなり、母方の叔母に引き取られた男性。実の妹は養子に出されたと聞いている。H市のアマチュアオーケストラで知り合った貞友麻希に通じ合うものを感じるが、兄妹ではないかとの疑惑が浮上。血液検査はO型で、AB型の麻希とは兄妹ではないとの判定となった。のちに重度の再生不良性貧血と診断され、早急に骨髄移植が必要になる。

安成 崇 (やすなり たかし)

エピソード「解剖FILE.45 予期せぬ名声」に登場する。通販中心に事業展開している「ヤスナリ」の社長を務めている男性。地方局のテレビやラジオショッピングからスタートし、今や会社の知名度は全国区となった。精力的に働いていたが、風邪をこじらせたあと、自宅で急死する。

小井手 勝也 (こいで かつや)

エピソード「解剖FILE.46 ユキの過去」「解剖FILE.47 疑惑の片鱗」に登場する。H新聞社の記者の男性。「名医に聞く!」というシリーズを担当している。桐山ユキを取材中、楠耕士郎の事件に遭遇した事から、ユキや法医学に関しての真摯な記事を書いた。だが、調子に乗りやすい性格で、人の意見に左右されやすい一面がある。

楠 耕士郎 (くすのき こうしろう)

エピソード「解剖FILE.46 ユキの過去」に登場する。H新聞社と付き合いのある「楠スターデザイン」のデザイナーの男性。山中で死体が発見される。6年前、桐山ユキがくも膜下出血の手術のクリッピング術を担当したが、くも膜下出血で転倒した時の脳挫傷によりてんかんの後遺症が残り、日常的に薬を服用していた。

笹沢 暢弘 (ささざわ のぶひろ)

エピソード「解剖FILE.46 ユキの過去」に登場する。H新聞社と付き合いのある「楠スターデザイン」のデザイナーの若い男性。楠耕士郎の下で働いている。自分のデザインを採用しない楠から、モラルハラスメントを受けていると思い込んでいる。

升岡 悟郎 (ますおか ごろう)

エピソード「解剖FILE.47 疑惑の片鱗」に登場する。N社の社員の男性。正義感が強く、N社と有力地元議員との癒着を内部告発していた。マスコミに囲まれる中、くも膜下出血で倒れた。H大学病院での手術は成功するが、その後容態が悪化し、多発性脳動脈瘤で死亡する。

升岡の息子 (ますおかのむすこ)

エピソード「解剖FILE.47 疑惑の片鱗」に登場する。升岡悟郎の息子。内部汚職を糾弾しようとしていた父親の死に憤りを感じ、父親の死になにがしかの作為が加わっていたと疑っている。桐山ユキの解剖でも、死因は脳ヘルニアによる病死とされ、頼りにしていた村上衛も解剖過程で不正はないとした。そのため、やり場のない怒りを抱えるようになる。

笹島 (ささじま)

エピソード「解剖FILE.48 ユキと村上」に登場する。H大学医学部脳神経外科医局の男性教授。桐山ユキを指導していた。5年前、脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を起こし、当時准教授だった麻生理織が執刀したが、術後回復する事なく死亡。病理解剖を担当した村上理は、動脈瘤破裂による出血が激しく、脳腫脹脳ヘルニアを起こして亡くなったと報告した。

筧 安喜良 (かけい あきら)

エピソード「解剖FILE.49 深まる溝」に登場する。H市内でバレエスクールを主宰している男性。妻の筧リホが交通事故で神経を損傷して踊れなくなった事からスランプに陥っていた。大橋杏とのペアでパリで行われた現代舞踊コンクールでは、再び優勝した。杏には感謝しているものの、自分にインスピレーションを与えてくれるのはリホだけだと思っている。

筧 リホ (かけい りほ)

エピソード「解剖FILE.49 深まる溝」に登場する。バレエダンサーの女性。8年前、筧安喜良とのペアで現代舞踊コンクールで優勝した。しかし、交通事故で神経を損傷した事で踊れなくなった。自宅を兼ねたバレエスタジオの非常階段から落下したと思われ、死体で発見される。

大橋 杏 (おおはし あん)

エピソード「解剖FILE.49 深まる溝」に登場する。筧安喜良主宰のバレエスクールの生徒の女性。安喜良とのペアでパリで行われた現代舞踊コンクールで優勝した。安喜良の特別な存在になりたいとの想いを胸に秘めている。

平 朋美 (たいら ともみ)

エピソード「解剖FILE.50 癒えぬ傷」に登場する。フリーターの女性。犬飼一と同じ高校の出身。短大を途中で辞め、中華料理店でアルバイトしている。高校時代よりふっくらしている。医大生で美人の冨吉沙椰子を見て、何もかもがうまくいっていない自分と比較し、やや卑屈な態度をとってしまう。店主の香川に好意を持っている。

香川 (かがわ)

中華料理店の店主の若い男性。エピソード「解剖FILE.50 癒えぬ傷」に登場する。店は五目焼きそばが美味しいと評判。平朋美をアルバイトとして雇っている。犬飼一を朋美の元カレと勘違いするが、体調を崩してH大学病院に運ばれた朋美を、心底心配している。

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