大樹のマウンド

大樹のマウンド

元プロ野球選手の父親を持つ少年が中学3年から野球を始めて、さまざまなライバルたちと出会い成長していく姿を描いた野球漫画。朝基まさしのデビュー作で、「マガジンスペシャル」1995年No.8から1996年No.2にかけて連載された。

正式名称
大樹のマウンド
ふりがな
だいじゅのまうんど
作者
ジャンル
野球
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概要・あらすじ

元プロ野球選手・根本大輔を父親に持つ中学生・根本大樹は、一度も野球をしたことがなかった。その理由は、プロで肩を壊したために1軍のマウンドで活躍できずに辛い思いをした大輔が、息子が同じ道をたどらぬよう、野球を一切させなかったからである。大樹も大輔のその想いを汲み、勉強に打ち込む日々を送っていたが、ある日シニアチーム「稲城ベーブルース」のマネージャーである野田羽澄と出会い、一緒に野球をやらないかと誘われる。

最初はその申し出を断っていた大樹だったが「稲城ベーブルース」の監督や選手たちから熱烈な勧誘を受け、中学最後のひと夏だけという条件で所属することにする。元プロの父親の血を引き、密かに何万回と父親のフォームを模倣していた大樹が投げる球は、初めてボールに触れた者とは思えないほどの球威とスピードを兼ね備えており、大樹はすぐに「稲城ベーブルース」のエースとなる。

こうして、遅ればせながら大樹の野球人生が幕を開ける。

登場人物・キャラクター

根本 大樹 (ねもと だいじゅ)

中学3年生の男子。元プロ野球選手の根本大輔を父親に持ち、母親からは当時の大輔の活躍を聞かされて育った。大輔がドラフト1位指名でプロ野球界に入った時の新聞の切り抜きを、今でも大事に保管している。大輔からは自身がプロ野球界で大成せずに苦汁を舐めた経験から野球を禁止されており、まともに野球のボールに触れたことはない。しかし、その素質は父親譲りで、シニアチーム「稲城ベーブルース」の面々に見初められ野球をすることを決意。 以降は「稲城ベーブルース」に所属しエースピッチャーとして活躍する。野球経験こそないものの、幼少期から密かに大輔の投球フォームを何万回となく模倣しており、フォームの基礎は出来上がっている。また、大輔譲りの強靭な肩の持ち主で、その才能はしっかりと受け継がれている。 中学卒業後は東栄高校へ進学する。

根本 大輔 (ねもと だいすけ)

根本大樹の父親で、「江戸前太平寿司」の店主を務めている。高校時代は東栄高校のエースとして20年に1人の天才といわれた投手で、甲子園では準優勝に輝いている。その後、ドラフト1位で指名されプロ野球選手となったが、プロ入り後ほどなくして肩を壊し、結局1軍のマウンドに一度も上がれないまま引退している。そんな過去があったため、息子の大樹には同じ思いをさせないように塾へ通わせ、しっかりとした学歴をつけさせたうえで、野球とは関係のない生き方をしてほしいと考えている。

根本大樹の母 (ねもとだいじゅのはは)

根本大樹の母親。ずっと2軍生活をしていた根本大輔を支え、大樹にも優しく接していた。野球選手時代の思い出を多く語らなかった大輔に代わり、幼い大樹に父親が野球選手としてどれだけ凄かったのかということを話して聞かせていた。また、大輔がドラフト1位でプロ野球に入団した時の新聞記事の切り抜きを大樹に渡しており、これは今でも大樹の宝物となっている。 病気を患い、大樹が幼い頃に病院で亡くなった。

御手洗 徹也 (みたらい てつや)

シニアチーム「稲城ベーブルース」でキャッチャーを務める中学3年生の男子。酷い老け顔で本人もそれを気にしており、「オッサン」と言われると激昂する。ケンカがめっぽう強い不良で、普通の高校生であれば多人数相手でも難なく勝つことができる。そのため何度も警察の世話になっており、保護司である野田監督には頭が上がらない。 当初、野球には興味がなかったが、根本大樹の球を受けてからは自ら率先して野球をやりたがるほどに熱意を持ち始めた。中学卒業後は東栄高校へ進学する。

柴田 藤吉 (しばた とうきち)

シニアチーム「稲城ベーブルース」のピッチャーを務める中学3年生の男子。野球センスに優れ、コントロールも良いが、球威がなく球が軽いという欠点がある。そのため野球自体への取り組み方も「息抜き程度」と考えており不真面目。しかし、根本大樹の投げる球を見てからはその球に感動し、現在は大樹と同じチームで野球をやることに喜びを感じている。 大樹加入依頼、エースの座は譲ったものの、100メートル10秒台の持ち前の俊足を活かし、「稲城ベーブルース」の一番バッターとして活躍している。中学卒業後は東栄高校へ進学する。

三十一 一 (みそいち はじめ)

シニアチーム「稲城ベーブルース」に所属する中学3年生の男子。学校の成績はクラストップで3教科の点数でも学年ベスト3に名を連ねる秀才。勉強よりも野球が好きであることを公言しており、「稲城ベーブルース」においては珍しくやる気のある人物。さまざまな占いが得意で、特に手相占いは的中率が高いと自分でも豪語している。中学卒業後は東栄高校へ進学する。

三十一一の父 (みそいちはじめのちち)

三十一一の父親。昔は西洋医学を専攻し大学病院に勤めていたが、現在は漢方医として自宅で診療所を開業している。医者としての腕は一流で、根本大樹の肩の状態を少し見ただけで適切な処置を施したのはもちろん、過去に根本大輔のピッチングフォームを真似ていたことまでも言い当てるほど。

野田 羽澄 (のだ はずみ)

シニアチーム「稲城ベーブルース」のマネージャーを務める中学3年生の女子。生まれつき心臓が弱く、小さい頃から外で遊ぶことができなかった。だが、本当は自分も野球をやりたいと思っており、将来はリトルリーグのチームの監督をしたいという夢を持っている。中学卒業後は東栄高校へ進学する。

野田監督 (のだかんとく)

野田羽澄の祖父で、シニアチーム「稲城ベーブルース」の監督を務める老人。20年前は根本大輔を指導し、東栄高校野球部の監督として甲子園準優勝まで導いたことのある名将。現在の夢は野球の歴史を塗り替える選手を育て上げること。

巽 清隆 (たつみ きよたか)

シニアチーム「調布イーグルス」のエースを務める男子。もともとは「稲城ベーブルース」に所属していたが、その時に野田監督から投手の器ではないと、エースナンバーをもらえなかった。そのため、野田監督に恨みを抱き、自分の素質に気が付かなかった野田監督の率いる「稲城ベーブルース」を自分の力でねじ伏せるべく、日々練習に励んでいる。

巌流寺 小次郎 (がんりゅうじ こじろう)

武蔵ヶ丘中学校の剣道部に所属する中学3年生の男子。同時にシニアチーム「調布イーグルス」の四番を務め、剣道と野球を両立させている。剣術「柳生古陰一刀流」の使い手で、バッティングの際にも上段の構えから胴を打つ要領で相手投手のボールをミートする「一刀流打法」という特異なバッティングをする。だが、その実力は高く、すでに名だたる野球の強豪校からスカウトが来ているほど。 中学卒業後は東栄高校へ進学する。

松崎 (まつざき)

野球部に所属する高校生の男子。都内でも指折りのピッチャーで球威があり、現在も成長中の注目株。その実力はプロのスカウトも注目するほど。しかし、突然グラウンドに現れた巌流寺小次郎と一打席勝負をした際には、ピッチャーライナーを顔面に受け敗北している。

府中トミーズの監督 (ふちゅうとみーずのかんとく)

シニアチーム「府中トミーズ」の監督を務める老齢の男性。「稲城ベーブルース」との試合の際には完全に相手を甘く見ていたが、新加入の根本大樹の存在を知らずに戦ったため、対策不足により敗北を喫する。少々妙な言動が見られることから、選手たちからはボケが始まっていると思われている。

重本 (しげもと)

シニアチーム「調布イーグルス」に所属する男子。偵察にやって来た「稲城ベーブルース」の面々にいち早く気付き「偵察ごときでウチに勝とーなんて93万年ぐらい早ェ」と悪態をつく。しかし、その言葉は野田羽澄に「ギャグからして頭わるそー」とギャグ扱いされたうえにバカにされる。

柳瀬 (やなせ)

シニアチーム「調布イーグルス」でキャッチャーを務める男子。「稲城ベーブルース」戦では各バッターが根本大樹の投げる「60cmの魔球」に手こずる中、いち早くその仕組みに気付くなど、鋭い観察眼を持つ。

二ノ宮 (にのみや)

シニアチーム「調布イーグルス」に所属する男子。「調布イーグルス」においては二番バッターを務めており、そのミートの上手さは巌流寺小次郎にも認められている。「稲城ベーブルース」戦では、根本大樹からチームで初めての快心の当たりを放った好打者。

萩原 真 (はぎわら まこと)

全国大会準優勝に輝いたこともある、西原城中学校野球部でエースを務めていた男子。中学卒業後は東栄高校へ進学しようとしていたが、根本大樹と甲子園を賭けて戦いたいという思いから井出元振太郎とともに別の高校へと進学した。喧嘩っ早い性格ですぐに相手に絡む癖がある。

井出元 振太郎 (いでもと しんたろう)

全国大会準優勝に輝いたこともある、西原城中学校野球部で四番を務めていた男子。中学卒業後は東栄高校へ進学しようとしていたが、根本大樹と甲子園を賭けて戦いたいという思いから萩原真とともに別の高校へと進学した。大樹の球を打ち崩すことに執着しており、早く対戦したいと思っている。

土伊 (どい)

東栄高校の3年生で野球部キャプテンを務める男子。毎朝早くから自主的に朝練に励んでおり、後輩に対しても厳しく指導する厳格な人物。しかし、手塚が試合で打球を肩に受けて速球が投げられなくなった時は、復帰のための投球練習に付き合うなど、仲間想いの優しい一面もある。

手塚 (てづか)

東栄高校の3年生で野球部に所属する男子。昔はリトルリーグでも有名な選手で、東栄高校でも速球派のエースピッチャーを務めていたが、試合で打球を肩に受けて自慢の速球が投げられなくなってしまってからは練習をサボり、不良仲間とつるむ毎日を送っている。しかし、野球をもう一度やりたいという思いは強く、今度はシンカーを主体に変化球で打者を打ち取る軟投派のピッチャーとして再起しようと考えている。 ただ、いまだにピッチャー返しに対する恐怖心が拭い去れないでいる。

岩田 直道 (いわた なおみち)

東栄高校の1年生で野球部に所属する男子。中学では軟式野球でピッチャーを務めていた経験もあり、入学して一番初めに行なわれた上級生対下級生の練習試合では先発ピッチャーに指名された。だが、球威のある球を投げることができず、9回までで12失点を喫してしまう。

緒方 信吾 (おがた しんご)

徳英高校の野球部でエースを務める男子。184センチの恵まれた体格から投げ下ろす伸びのある速球を武器に、チームの原動力となっている。メディアからも注目されており、一回戦からインタビュアーがわざわざ押し掛けるほど。

鹿賀 (かが)

徳英高校の野球部の監督を務める男性。「野球の鉄人」という異名を持つ人物で、徳英高校の監督に就任してからチーム力を大幅に上昇させたやり手。緒方信吾を擁する今年のチームの完成度には自信を持っており、「今年ほど甲子園が近くに感じたことはない」と語っている。

御堂 巌 (みどう いわお)

秀英高校の野球部に所属する1年生の男子。上下逆にバットを握る「逆グリップ打法」の使い手。リトルリーグ時代は「荒獅子御堂」と呼ばれ、三冠王を2年連続で獲得したほどの逸材。全国大会で打率7割をマークしたこともあり、すでにプロのスカウトも注目している超高校級のスラッガー。ピッチャーとしてマウンドに立つこともあり、その際は2メートルの長身から、砲丸投げのような独特のフォームで回転数の少ない重い球を投げる。

御堂 真砂 (みどう ますな)

御堂巌の妹。車椅子で生活しており、普段は巌に担がれて移動している。そのため、巌がいない時には注意散漫になり、多少の段差は無理をしてそのまま進んでしまう危険な面もある。まだ幼いが顔は整っており、根本大樹からは「将来美人になる」と言われている。

株木 (かぶき)

秀英高校の野球部に所属する1年生の男子で、元100メートル走中学記録保持者。秀英高校の一番バッターを務めており、その俊足を活かして内野安打を量産し、切り込み隊長として活躍している。また、セーフティバントを得意としている。守備ではサードを守り、機敏な動きで卓越したフィールディングを見せる名手でもある。

高木 (たかぎ)

中学3年生の男子で根本大樹の友人。大樹と同じ予備校の生徒だが最近は模試の結果が悪く、中学浪人も視野に入れていた。だが、最近は親に面倒をかけられないと考え、志望校のランクを落とそうかと悩んでいる。大樹のことは小さな頃から知っているが、父親が元プロ野球選手だったにも関わらず、ずっと野球をやりたがらずにいたことを不思議に思っている。

集団・組織

稲城ベーブルース (いなぎべーぶるーす)

野田監督が監督を務めるシニアチーム。所属するメンバーはそれぞれ光るものは持っているが、ほとんどのメンバーが勉強の息抜きで野球をやっているにすぎず、練習も早く切り上げ帰ってしまうなど野球への情熱は薄い。そのためまともに練習もできておらず、所属する地区のシニアチームの中では最弱といわれている。

調布イーグルス (ちょうふいーぐるす)

エースは巽清隆が務め、四番に巌流寺小次郎を擁する名門シニアチーム。特に小次郎を筆頭とした打撃力は関東中でも頭一つ秀でている。広い練習グラウンドをはじめ設備もしっかりしており、ナイター用照明や専用の更衣室なども完備されている。

場所

東栄高校 (とうえいこうこう)

根本大樹が中学卒業後に進学した高校。野球部は20年前、根本大輔がエースを務めていた時代に甲子園で準優勝しており、それ以降もしばらくは強豪校として名を馳せていた。だが、その後は目立った活躍をできず徐々に弱体化している。

徳栄高校 (とくえいこうこう)

184センチの長身を誇るエースピッチャー緒方信吾を擁する高校。「野球の鉄人」と言われる鹿賀監督の指導により、近年では打力、守備力ともに急成長を遂げている。甲子園出場の最有力候補の一角と目されている。

秀英高校 (しゅうえいこうこう)

超高校級のスラッガー御堂巌を擁する高校。最近は「機動部隊」という、100メートルを10秒台で走る陸上部あがりの3人の選手をチームに迎え、持ち前の俊足で出塁した後に、四番の巌につなぐ攻撃を得点パターンとしている。

その他キーワード

60cmの魔球 (ろくじっせんちのまきゅう)

根本大樹の使用する球。その仕組みは60センチあるプレートの立ち位置を変えて投球することで、打者に錯覚を生じさせ、ただのストレートでも軌道の違いから幻惑するというもの。対「調布イーグル」戦の前に肩を負傷し、100%の力で直球を投げられない大樹のために野田監督が教えた。しかし、プレートの立つ位置から対角線上に投げなければ幻惑ができないため、相手に仕組みがバレてしまうと球のコースが分かってしまうという欠点もある。

一刀流打法 (いっとうりゅうだほう)

巌流寺小次郎が使用する打法。上段の構えから飛来するボールを敵とみなして間合いをはかり剣道の胴の要領でギリギリまで引き付けてボールを叩き返すというもの。王貞治の用いた「一本足打法」同様、非常にタイミングが重要な「間合い打法」に分類されている。

青竹切り打法 (あおたけぎりだほう)

巌流寺小次郎が使用する打法。天に向かって伸びる青竹を斬るように天から刀をおろすようにしてスイングするもので、王貞治の用いたダウンスイングを極端にしたもの。ボールの下をカットするように叩くことで強烈なバックスピンをかけ打球をホップさせる仕組みになっている。

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