土星マンション

土星マンション

中学を卒業した主人公ミツが生業として選んだのは、今は亡き父親のアキと同じ窓拭きだった。父親をよく知る組合の人たちに仕事を教わりながら、ミツは父親の新たな一面を知り、目標としながら成長していく。それまで日常生活の短編およびファンタジー色の強い作品を発表していた岩岡ヒサエにとって初の長編SF作品で、第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞している。

正式名称
土星マンション
ふりがな
どせいまんしょん
作者
ジャンル
青春
関連商品
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概要・あらすじ

人類は、地球から35000メートル上空に浮かぶ巨大なリング状のマンション、通称リングシステムの中で暮らしていた。そんなリングシステムで暮らすうえで欠かせない職業に窓拭きがある。その仕事内容は、宇宙の塵によって汚れてしまった採光用の窓を綺麗にメンテナンスすること。窓拭きは宇宙空間で作業するため危険が多く、ミツの父親であるアキも5年前に仕事中の事故で命を落としている。

しかし、ミツが生業として選んだのは亡くなった父親と同じ窓拭きだった。父親をよく知る窓拭き組合の人たちに、父親の知らなかった一面と仕事を教わりながら、ミツは成長していく。

登場人物・キャラクター

ミツ

年齢は16歳。両親ともに亡くし、父親のアキが生前働いていた窓拭きの組合に支援してもらいながら暮らしてきた。中学卒業後、父と同じ窓拭きとなった。組合に返済の必要がないと言われた支援金を返済すると伝えるなど責任感が強くまじめだが、親代わりだった影山夫妻をずっと苗字で呼んだり、悩みを周りに相談しないなど、内向的で他人に心を開かない傾向がある。 アキの最後の言葉から、地表に降り立つことに対してほのかな憧れを抱いている。

アキ

ミツの父親。ミツが働き始める5年前に仕事中の事故で命を落とした。組合に古くからいる人たちの話によると、非常に優秀で、周りの人間からも慕われていた。しかし、仕事時に終日ご飯粒を頬につけていたり、仮装時に非常に大きなアフロのかつらを被るなどお茶目な一面もあったという。

(じん)

窓拭き組合の古参でベテランの窓拭き職人。ミツの教育係で、生前のアキとも親しかった。そのため、アキに対する悪口を聞くと激怒する。仕事へのこだわりからか、同僚の影山とはよく殴り合いの喧嘩をしている。仕事には厳しいが愛妻家で、妻の春子には非常に優しい。ある理由から病院を嫌っている。

春子 (はるこ)

仁の妻。体が弱く、床に臥せていることも多い。組合の歴史についても詳しく、それゆえに生前のアキや窓拭きをやめてしまったタマチについても詳しく知っている。体は弱いものの食欲は旺盛でよくつまみ食いをしている。仁と同様にある理由から病院を毛嫌いしている。

影山 (かげやま)

組合の職人で、ミツの隣人。隣人であるがゆえにミツに対して影山夏奈江(カナエ)とともにさまざまな世話を焼いてきた。容姿はスキンヘッドで筋肉質。禁止区で花を摘んで捕まるなどおおらかで後先をあまり考えない面もあるが、窓拭きの仕事は非常に丁寧。仕事へのこだわりから仁とはよく殴り合いの喧嘩をしている。 カナエとの間に影山フユという一人娘がいる。

影山 夏奈江 (かげやま かなえ)

影山の妻で、ミツの隣人。影山と同様にミツのことを常に気にかけており、一度はミツを養子にしようと考えたほど。危険が伴い、急に仕事が入る窓拭きという職業に就く夫に対しても、多少悪態をつきながらも理解を持って、献身的に支えている。同じ組合員の妻として、春子とも親しい。

影山 フユ (かげやま ふゆ)

影山夫妻の一人娘。ミツの部屋に忍び込んでらくがきするなど少しやんちゃな少女。父親の影山の真似ばかりしているので、時に下品なその仕草に周囲から将来を心配されている。組合員の人たち皆から可愛がられ、面倒を見てもらっている。フジキの作ったタコのシャツをひどく気に入っている。

タマチ

元窓拭きの組合員。アキの死亡した事故に関わったとして職を追われ、バイオガス発電所で働くようになった。そのため、同じ職場の宗太と仲がいい。また、元同僚だった真とも仲がよく、窓拭きをやめた後も頻繁に会っている。家族の影響から、たまごが大好物。窓拭きの職業についたのは祖母の田町玉緒曰く「じっとしていられない性格だから」。

(まこと)

窓拭き組合の1人でミツの仕事仲間。兄弟が多く、その影響からか、自身にも他人にも厳しい。アキのことを非常に尊敬していたが、タマチとも交流が深いため、彼が仕事を辞める原因となり周りからも常に心配されているミツのことが気に食わない。日常生活ではニット帽をかぶることが多い。

佐知 (さち)

落下物調査員。ともに宇宙空間内での仕事なので、窓拭き組合に属する人たちとの交流がある。お酒好きで登場時は飲んでいることが多い。仕事のせいで日焼けし、顔が赤くなっていることを気にしている、また、非常にくせっ毛で寝癖がなかなか治らない。「美雪」という猫を飼っており、宇宙空間にもよく連れ出している。宇宙服をおしゃれにカスタマイズしている。

カヨ

ミツへの仕事の最初の依頼人。5年前、姉が結婚式で窓拭きをアキに依頼したように、自身も宗太との結婚に先立ち、高価な窓拭きを依頼した。屋台で焼きそばを販売する仕事をしており、料理が非常に好き。人が集まった際には手料理を振舞うことが非常に多い。家にいなくなりがちな宗太に対して、時折、やきもちを焼く。

宗太 (そうた)

カヨの夫。研究者を目指して大学に通っていたが、自身の属する階級のためにその夢は叶わず、バイオガス発電所で働いている。同じ職場の同僚のタマチや、借りている研究室の隣室に住む森下とも仲がいい。研究者のニシマルユウダイとは大学で知り合った仲で、仁と影山が飲み屋でニシマルに対して行った粗相に対して仲裁した。

田抜、木元 ツネオ (たぬき、きもと つねお)

ミツへの仕事の依頼人。上層住民であり、田抜は海洋養殖で、木元ツネオは廃材回収業で、それぞれ大きな富を得ている。そのため、お金に物をいわせて、とある要求をミツに突きつけた。ミツの仕事終了後は、自身のもとでなんとかミツを働かせられないかとあれこれ画策する。その目的から、田抜と木元は互いに犬猿の仲。

ニシマル ユウダイ

研究者。宗太とは大学で知り合ったが、名前を呼ぶ時は高い確率で間違える。とある構想を宗太に相談し、やがて周囲を巻き込む大きなプロジェクトへと繋がっていく。結婚をしており、妻の牧恵のことを深く愛している。また、仕事における自身の扱いから、上層住民に対してあまりいい感情を抱いていない。

フジキ

影山の旧友。元は上層住民だったが夢見がちな性格のために下層住民になる。そのため、周りからは同情されるが本人はその性格から、あまり気にしていない。好きなことには実利性がなくてもとことん没頭してしまう。そんな彼の作品には、タコ柄で非常に伸縮性に優れたシャツがある。

マユ

ミツの元クラスメイト。社長令嬢であり、彼女の父親の会社は通信機のシェアでトップ10に入る。そのため、中学卒業後は進学はせずに、用意された独自の環境で通信機の研究をしている。ただ、恵まれた環境に置かれているために、どこか空虚さを感じている。また、家族や執事以外との交流がほとんどないため、他者の気持ちに疎い。育った環境から、通信機に関する知識が豊富で技術力が非常に高い。 反面、アートセンスは独特。

森下 (もりした)

ニシマルユウダイと宗太の研究所の隣人。職業は保安局員。上層住民も下層住民も平等な世界のための一助になればと考えてこの職業を選んだが、現実とのギャップに悩み続けている。かつて彼女がいたが、保安局員になるための試験勉強に時間を取られ、やがて離れ離れになってしまった。その苦い経験から、家を留守にしがちな宗太に対して、カヨを気にかけるようにアドバイスをする。

幸嶋 (ゆきしま)

28歳で窓拭き組合の1人。ミツよりは年上だが仕事上では初の後輩となる。仕事中に眠る、命綱を外す、鼻歌を常に歌うなど非常にマイペースな性格でお調子者だがどこか憎めない性格。また、食べ物に対しての異様な執着心があり、体重の増減が激しい。

田町 玉緒 (たまち たまお)

タマチの祖母で、細工職人。独特の形状の家にタマチとともに住み、仕事を辞めて悩み続ける孫に対して暖かく見守っている。「玉緒」と呼ばないとムッとする。5年前、アキの死亡事故の件でミツに会いに行こうとしたことがあり、会う前からミツの名前を知っていた。

塔子 (とうこ)

町工場員。「アニキ」と呼ばれる夫とともに金属加工の工場を経営している。工場員皆に慕われていて、何かのおりにはこっそり贈り物をもらえるほど。ミツとは、疲労で工場前に倒れてたところを助けたのがきっかけで親しくなる。やがて、ミツの紹介でニシマルユウダイのプロジェクトに協力することになる。

集団・組織

組合 (くみあい)

ミツ、真、仁などが所属する、窓拭きを生業とする集団。おおよそ40人程度からなり、組合に所属していない場合は窓拭きの作業を国から受けることはできない。ミツはこの組合から学費を支援してもらっていた。

場所

リングシステム

ミツたちの住むマンション。地球全体が自然保護地区になったため、代わりの生活地として作成された、地球から3万5000メートルの高さに土星の輪のように建築されたシステム。上層、中層、下層からなり、上層ほど金銭的に豊かな人々が暮らしている。なお、ミツたちは下層の住民である。

その他キーワード

窓拭き (まどふき)

ミツ及び他の組合の全員の就いている職業で、仕事内容はリングシステムの窓の汚れをとること。宇宙空間内で作業をするため危険が多く、機械化したほうがいいとの声もあり、機械開発も進んでいる。なお、資格を持っていないと作業現場を仕切ることができない。仕事をするにはさまざまな備品が必要となるため、依頼には大学院への入学手続きにかかる費用程度に資金が必要となる。 そのため、裕福な上層住人からの依頼がほとんど。

ジュワジュワムウムウ

宗太、および、ミツの世代の給食メニューであり、かつお菓子。宗太曰く「伝説の給食」である。ミツとマユの会話に出てきた説明ではスープにサプリのフレークが入ったあまりおいしくないメニュー。森下が引っ越してきた日に、ジュワジュワムウムウの素を宗太に贈った。

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