戒音 dieとliveの脳内麻薬物質

戒音 dieとliveの脳内麻薬物質

表題エピソードである「戒音」を含む、サスペンスとロックミュージシャンをテーマとした由貴香織里の初期作品4編を収録したオムニバス作品集。「戒音」は「花とゆめ」平成8年6から7号、「マジカル・ミステリー・ツアー」は「別冊花とゆめ」平成2年夏の号、「時計じかけのオレンジ爆弾」は「別冊花とゆめ」昭和63年秋の号、「TOKYO TOP」は「花とゆめ」昭和64年1号に掲載された作品。

正式名称
戒音 dieとliveの脳内麻薬物質
ふりがな
かいね くろとしろのえんどるふぃん
作者
ジャンル
サスペンス
関連商品
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あらすじ

戒音

若い女性を中心として爆発的な人気を誇るロックバンド「エンドルフィン」のボーカリストである戒音が交通事故で死亡した。しかし、活動を継続させたいプロデューサーの織田木綿香はその事実を隠匿し、事故車に同乗して重傷ながらも生き残っていた戒音の双子の弟・斉藤凌を「戒音」として入れ替わらせようと画策する。突然の事態に混乱する間もなく、戒音としての生活を始めた凌の周囲では、ファンが次々と自殺していくという事件が発生するようになる。

マジカル・ミステリー・ツアー

ロサンゼルス旅行が当選したとの連絡を受けた森川沙耶は、期待に胸を躍らせ単身渡米。現地でガイドの岸田美信と落ち合い、旅行を企画した会社の社長宅へと案内される。沙耶は社長夫人である東条貴子にもてなされて旅行を楽しむが、やがて自室としてあてがわれた部屋で少女の幽霊と遭遇する。

時計じかけのオレンジ爆弾

人気デュオ「オレンジ・ボムズ」のギタリストであるには、サングラスなしで女性を見るとすぐに赤面してしまうという秘密があった。ある時、巽はジャムという少女に偶然道でぶつかり、その秘密を握られてしまう。秘密を漏らされたくない巽は、ジャムの要求に従いデートをすることになる。

TOKYO TOP

清純派アイドル歌手の成田さつきは、ぶりっこキャラを演じているが実は元ヤンキー。憧れている人気デュオ「オレンジ・ボムズ」のガイをはじめとするドラマスタッフたちにの前では、もとの性格がバレないように猫を被っているが、中学時代のヤンキー仲間でもありタレントの伊部零人の度重なるちょっかいによって時折ボロが出てしまう。

登場人物・キャラクター

戒音 (かいね)

エピソード「戒音」に登場する。人気ロックバンド「エンドルフィン」のボーカリスト。腰まで届く燃えるような赤い長髪に、常に人を見下すような視線が特徴的な青年。挨拶しない、感謝しない、詫びないという傲岸不遜な性格。自傷癖があり、高校時代からの親友であるDIEには自傷のたびに助けを求めていた。女性関係にだらしなく、DIEの元彼女やSINの彼女とも肉体関係を結んでいた。 両親が離婚し、戒音の母に引き取られて近親相姦の関係を強いられていた過去がある。その経験からか金銭に困った際には男娼として身を売っていた。かつて美容師として働いていた際、溶剤で指紋が削れている。自身を汚れた人間と認識しており、双子の弟である斉藤凌をうらやんでいた。

森川 沙耶 (もりかわ さや)

エピソード「マジカル・ミステリー・ツアー」に登場する。好奇心旺盛な16歳の少女。あまり人を疑うことをしない素直な性格で、楽しいことは全力で楽しむ天真爛漫な性格。懸賞で当たったとされるロサンゼルス旅行に単身臨み、ガイドを務める岸田美信に若干反発しながらも、ガイド先では紳士的な態度を見せる美信にだんだん惹かれていく。

(たつみ)

エピソード「時計じかけのオレンジ爆弾」「TOKYO TOP」に登場する。人気デュオ「オレンジ・ボムズ」のギタリスト。17歳の少年で、サングラスなしで女性を見ると赤面してしまうという秘密がある。秘密を知ったことを盾にデートを迫ったジャムを邪険にしていたが、無邪気で素直な性格を知る内にはっきりと惹かれていく。「時計じかけのオレンジ爆弾」ではガイと喧嘩を繰り返して解散の危機にあったが、ジャムとの出会いをきっかけに関係が改善していく。

成田 さつき (なりた さつき)

エピソード「TOKYO TOP」に登場する。清純派アイドル歌手として売り出し中の少女。本名は「神成五月」。ジャムの中学の先輩にあたり、中学時代はヤンキーとして伊部零人と同じグループに所属していたが、芸能界に入ってからはぶりっこキャラで売っている。人気デュオ「オレンジ・ボムズ」のガイに好意を寄せているが、素直に話すことすらできない。

斉藤 凌 (さいとう しのぐ)

エピソード「戒音」に登場する。戒音の双子の弟で、真面目でオドオドしたところのある青年。両親が離婚し、父親に引き取られていた。戒音とともにドライブをしていたところ、交通事故に遭って重傷を負う。その後、織田木綿香の意向により、戒音に成り代わってロックバンド「エンドルフィン」のメンバーに合流するが、DIEにのみ正体がバレてしまう。 事故の際に炎の中で笑う人影を見た記憶から、戒音は殺されたものと判断してその犯人を捜している。戸籍上はすでに故人とされており、葬式も行われた。

DIE (だい)

エピソード「戒音」に登場する。人気ロックバンド「エンドルフィン」のギタリスト。耳にかかる黒い長髪と、軽薄そうな飄々とした表情をした青年。高校時代からの戒音の親友であり、戒音をバンドに誘った人物でもある。かつて彼女だった真理を戒音に寝取られた時も、大喧嘩をしながら結局は許した。事故以前の戒音とは思えない性格の変わりように、斉藤凌を問い詰める。

織田 木綿香 (おだ ゆうか)

エピソード「戒音」に登場する。人気ロックバンド「エンドルフィン」の担当プロデューサーにして「フォクシープロダクション」の社長の娘。冷ややかな目つきが特徴の中年女性。戒音が事故に遭った際、戒音と思われる死体を発見して斉藤凌に偽装し、火葬した。さらに凌と思われる重傷者を保護し、戒音として入れ替わらせる計画を立てた。 夫である間宮が男娼時代の戒音を買った挙げ句にデビューまでさせたことを根に持っている。戒音の母とどこか似た雰囲気を持つ。

間宮 (まみや)

エピソード「戒音」に登場する。織田木綿香の秘書として常に付き従っている痩身の中年男性。戸籍上は木綿香の夫だが、男娼をしていた戒音を買い、スカウトしてデビューまでさせたことを理由に木綿香に怨まれており、夫とは思われていない。

雷地 (らいち)

エピソード「戒音」に登場する。人気ロックバンド「エンドルフィン」でベーシストを務める少年。明るい髪色の未成年で、酒癖も悪く口も悪い。バンド内では一番好戦的な性格で、戒音の遅刻や態度の悪さに何かと喧嘩腰で突っかかっている。自分の容姿についてはあまり自信がなく、「吊り目のサル」と自嘲している。

SIN (しん)

エピソード「戒音」に登場する。人気ロックバンド「エンドルフィン」でドラマーを務める青年。うなじで1つくくりにした長髪で、丸いサングラスをかけている。常にニコニコと柔和な態度で周囲と接し、バンドメンバーの潤滑油的な存在となっている。舞子と付き合っている。

舞子 (まいこ)

エピソード「戒音」に登場する。SINと付き合っている女子高生。背中までの長いストレートヘアとルーズソックスが特徴。SINに隠れて戒音と肉体関係があり、戒音の子供を身ごもったと友人たちに広めていた。エンドルフィンの1stアルバムを聴き続け、自殺した。

真理 (まり)

エピソード「戒音」に登場する。かつてDIEと付き合っていた若い女性。DIEいわく純朴な女性で、清い関係を続けていた。しかしDIEの不在中、DIEの部屋のベッドで戒音と体の関係を持っていたことが発覚。この際に戒音は、DIEに対して真理のことを「おさがりの女」と発言している。

戒音の母 (かいねのはは)

エピソード「戒音」に登場する。戒音と斉藤凌の実母。頭がいい戒音を溺愛しており、夫の浮気が原因で離婚した後は戒音だけを引き取った。その後は戒音に近親相姦を強いており、戒音に言い寄る若い女性たちを憎悪してプレゼントを燃やすなどしていた。その火が体に燃え移り、死亡する。

岸田 美信 (きしだ みのぶ)

エピソード「マジカル・ミステリー・ツアー」に登場する。ロサンゼルスに在住している22歳の日本人。ロサンゼルス旅行の懸賞を企画した会社の新入社員として、単身渡米して来た森川沙耶のガイド役を務め、宿泊先である東条貴子宅や観光地に同行する。しかし沙耶の部屋に出た幽霊について、なにか隠している素振りがある。

東条 貴子 (とうじょう たかこ)

エピソード「マジカル・ミステリー・ツアー」に登場する。ロサンゼルス旅行の懸賞を企画した会社の社長夫人だが、社長が故人となっているため実質的に社長代理となっている。単身渡米して来た森川沙耶を気遣い、自宅でもてなしている。しかし沙耶を連れてパーティーに出席した際は沙耶のことを「娘」と称するなど、不審な点がある。

東条 翔子 (とうじょう しょうこ)

エピソード「マジカル・ミステリー・ツアー」に登場する。東条貴子宅に宿泊している森川沙耶の部屋に出没する幽霊とされる少女。故人である社長の連れ子で、貴子の継子。父親である社長が遺産をすべて東条翔子に遺したため、海へ突き落とされた。

ジャム

エピソード「時計じかけのオレンジ爆弾」「TOKYO TOP」に登場する。13歳の小柄な少女で、良くも悪くも物怖じしない性格。人気デュオ「オレンジ・ボムズ」の巽の曲のファンで、ずっと巽の追っかけをやっていた。巽の秘密の件に関しては実は気付いておらず、たれ目を隠すためだと思い込んでいた。成田さつきの中学の後輩で、彼女がぶりっこキャラを演じていても「神成五月」だと気付いている。

ガイ

エピソード「時計じかけのオレンジ爆弾」「TOKYO TOP」に登場する。人気デュオ「オレンジ・ボムズ」のボーカリスト。17歳の少年で女性関係にだらしない。中学時代、クラスメイトだった巽の作る曲に惚れ込んでデュオを組んだ。「TOKYO TOP」ではキャラ作りで無理をしている成田さつきを気にしており、さつきとのラブシーンの練習現場をジャムに見られた際には慌てて距離を取っている。

伊部 零人 (いべ れいと)

エピソード「TOKYO TOP」に登場する。売り出し中の俳優の少年で、成田さつきがヤンキー時代からの友人。さつきに好意を寄せているが、歯牙にもかけられていない。さつきとの共演作の主演をガイに取られており、タレントとしての立ち位置もかぶっていることから一方的にライバル視している。

集団・組織

フォクシープロダクション

エピソード「戒音」に登場する。戒音たちのロックバンド「エンドルフィン」が所属するプロダクション。織田木綿香の父親が経営しており、戒音、そして斉藤凌はこの「フォクシープロダクション」の息のかかった病院の手によって、秘密裏に成り代わりをさせられることになった。

エンドルフィン

エピソード「戒音」に登場する。戒音がボーカリストを務めるロックバンド。戒音の攻撃的、且つ魅惑的なパフォーマンスによって、デビューからわずか1年で大人気バンドとなった。作中の東京では、戒音を真似て赤い髪をした、信者のような若者が多く出没している。

オレンジ・ボムズ (おれんじぼむず)

エピソード「時計じかけのオレンジ爆弾」「TOKYO TOP」に登場する。巽とガイからなる人気デュオで、作詞作曲はすべて巽がこなしている。ガイはルックスの良さと演技力を買われてボーカリスト以外に俳優としても活動している。「オレンジ・ボムズ」のファンのほとんどがガイのルックス目当てといわれている。

その他キーワード

エンドルフィンの1stアルバム (えんどるふぃんのふぁーすとあるばむ)

エピソード「戒音」に登場する。戒音たちのロックバンド「エンドルフィン」のデビューアルバム。聴き続けると頭痛がするなどのクレームがあったとして回収され、廃盤となっている。しかしその本当の理由は長時間聴き続けた人間が次々と自殺していくためであり、事件が表沙汰になってからは裏でプレミアがついて出回っている。

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