新世界より

新世界より

呪力という超能力に目覚めた渡辺早季は、自分の住む神木66町の外を冒険することで呪力や大人の秘密について知ることになる。大人の作り上げた「不条理な現実」を、新しい世代が打ち崩していく姿が描かれている。貴志祐介の小説「新世界より」を及川徹がコミカライズしたもの。

正式名称
新世界より
ふりがな
しんせかいより
原作者
貴志 祐介
作者
ジャンル
異能力・超能力
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概要・あらすじ

舞台は呪力という超能力が現存する日本。その日本内にある神木66町は八丁標で囲まれており、渡辺早季や子供たちは「八丁標から外に出てはいけない」と教えられている。〈改行〉早季は遅ればせながら呪力に目覚め、同級生の朝比奈覚青沼瞬秋月真理亜伊東守天野麗子らと共に呪力の修行に励んでいた。

そんなある日、落ちこぼれの麗子が突如失踪するという事件が発生する。だが、早季以外の同級生はこの事実に気づかず、麗子がいないまま修行する日々が続いていた。〈改行〉そんななか、修行の一環で早季たちは夏期キャンプに出掛けることになる。キャンプ中に早季たちは、好奇心に身を任せて八丁標の外にある「立ち入り禁止区域」に向かう。

そこでバケネズミたちの戦争に巻き込まれ、大人たちが隠していた秘密を知ることになる。

登場人物・キャラクター

渡辺 早季 (わたなべ さき)

神木66町の外の世界に興味を抱く少女。他の同級生よりも遅れて呪力に目覚める。彼女の好奇心やくじけない心は、神木66町の責任者である朝比奈富子の目に止まるほど。同級生との別れを経験しながら、町の中で26歳まで暮らす。バケネズミの調査と管理をする仕事に就いて、町をより良い環境にするために尽力する。

朝比奈 覚 (あさひな さとる)

渡辺早季とは幼なじみで、同級生の少年。彼女と一緒に行動することが多く、早季への淡い恋心を抱いている。しかし、素直になれず憎まれ口や噂話で気を引こうとする子供っぽいところがある。その反面、強い呪力を持ち、早季の心をつかんでいる青沼瞬をライバル視していた。早季と共に町で26歳を迎え、バケネズミの生態研究を行う仕事に就いて彼女を支える。

青沼 瞬 (あおぬま しゅん)

渡辺早季と同級生の少年。常に冷静なため、時にはそれが冷たい態度のように見えることがある。早季とは相思相愛の関係。同級生の中でも群を抜く強い呪力を持っていたが、その力の強さゆえに業魔化してしまう。

秋月 真理亜 (あきつき まりあ)

渡辺早季と同級生の少女で、赤い髪が特徴的。思ったことを口に出し強気な風を装っているが、本当は臆病で繊細な心の持ち主。同性ながら早季のことが好きで、伊東守に対しては想いを寄せられていることを知っていながら拒絶する。

伊東 守 (いとう まもる)

渡辺早季と同級生で、秋月真理亜に想いを寄せる男の子。気弱な性格だが、いざという時は愛する人を守る力を発揮できる度胸を持っている。絵を描くのが非常にうまく、真理亜のために絵を描きつづける一途な性格。

天野 麗子 (あまの れいこ)

渡辺早季と同級生の少女。早季たちとは非常に仲がいいが、気が弱く物怖じしやすいところがあり、呪力の修行をお願いするのにも一苦労するほど。呪力をうまくコントロールできなかったことが理由で、不浄猫によって処分されてしまう。

遠藤 (えんどう)

渡辺早季たちが通う学校の先生で、非常に明るい性格。生徒たちの自主性や仲間意識を大事にしているが、その裏では呪力の低い生徒のチェックを行っている。町を維持するためならば、自分の生徒であっても突き放す残忍さと、隷属させる強引さを備えている。

無嗔 (むしん)

人徳者として知られている寺の和尚。業魔化した人間を封印する儀式を執り行える人物であり、町の相談役としての顔も持っている。業魔化した青沼瞬の質問に最後まで答えるなど、どんな相手にも慈悲の心を持って対応する。

スクィーラ

「塩屋虻」というコロニーのリーダー的存在で、人語を流暢に話すことができる。同じバケネズミの奇狼丸には頭が上がらなかったが、ミドシロモドキを手に入れることで、人間に対応できるほどの文明を手にする。

奇狼丸 (きろうまる)

「大雀蜂」というコロニーの総司令官。非常に勇猛で、武力での戦闘になれば人間をも圧倒する力を持っている。人間の命令には忠実であるが、自分たちのコロニーを存続させることにより重きを置いている。

鏑木 肆星 (かぶらぎ しせい)

町の術者の中でも最強の呪力使いと謳われる人物。町を守りたい気持ちは誰よりも強く、その呪力は誰かを守るためにこそ使うという人格者。悪鬼と闘った際、自分が死の淵に立った時にも渡辺早季たちを助けることを第一に考えた。

日野 光風 (ひの こうふう)

町の呪力使いの中では、鏑木肆星と肩を並べる力の持ち主。しかし性格は残忍で、自分の力で排除できるものであれば躊躇なく殺してしまう。バケネズミが街を襲撃してきた際も、自分たちに刃向ったバケネズミを非道なやり方で殺害した。

朝比奈 富子 (あさひな とみこ)

渡辺早季たちが住む神木66町の最高責任者。町の存続を最優先するあまり、業魔化したり悪鬼になる可能性のある子供たちを危険因子として処分している。しかし、本心では町の人のことを誰よりも愛しており、「子供が犠牲になるなんておかしい」と考える早季に一目置く。

新見 翔 (にいみ しょう)

悪鬼が出現した際、数少ない生き残りの一人である少年。偶然、渡辺早季と合流して後、東京への旅にも同行することになる。同級生の坂井遙香のことが好きだが、言葉で素直に表現できない。業魔化する彼女を懸命に助けようとする行動派。

坂井 遥香 (さかい はるか)

悪鬼が出現した際、数少ない生き残りである少女。新見翔と共に渡辺早季に保護される。業魔化の前兆があり、町から処分対象の子供に認定されていた。気が弱そうに見えるが、翔を想う気持ちは強く、翔にどれだけ罵られても、少し褒められると顔を赤くする。

(いぬい)

町の鳥獣保護官を務める男性。朝比奈覚の先輩にあたる人物で、彼が渡辺早季にプロポーズする時には助言をするなど、面倒見の良いお兄さん的存在。早季たちが東京へ行く際、同行することになる。

鳥飼 進 (とりかい すすむ)

朝比奈富子の側に仕える人間の一人で、町の誰よりも富子のことを慕っている。非常に頭が固く、古い考えに縛られがちな大人。富子亡き後、町の責任者に渡辺早季が選ばれたことに納得していなかった。だが、東京への旅に同行した際に坂井遙香に助けられると共に、早季たちの行動を見届けることで徐々に考えを変えていく。

場所

神木66町 (かみきろくじゅうろくちょう)

渡辺早季たちが住む小さな町。町の中では呪力を扱う人間が身を寄せ合うように生活しており、悪鬼や業魔化の疑いがある子供を早い段階で処分するという暗黙のルールがある。

その他キーワード

呪力 (じゅりょく)

人間に突如として生まれた超能力で、物を動かす、焼く、止めるなど、自分の思念を現実にすることができる。2012年に生放送されていたとある番組で、呪力と思われる能力により人が殺される事件が発生。この事件をきっかけに、世界中で呪力を持つ人間が生まれるようになった。

バケネズミ

高い知力を持つ大きなネズミ。人語を理解することができ、コロニーという単位で社会性を保って生きている。基本的には人間に従事する生き物で、力仕事などを人間の代わりに行っている。バケネズミの中にはスクィーラや奇狼丸など、人間と対等に話せる個体も存在する。

コロニー

バケネズミの集団単位。各バケネズミのコロニーには女王が存在しており、その女王が死ぬと種が絶えてしまう。スクィーラは女王中心で回るコロニーの在り方に異を唱え、ミノシロモドキを得ることで新たな形へと変革を促していく。

業魔化 (ごうまか)

未熟過ぎる、あるいは強大過ぎる呪力をコントロールできない者が陥る状態。体から漏れ出した呪力が周りに影響を与えることで、草木や動物が突然変異したり死滅したりしてしまう。業魔化した人間の治療方法は一切見つかっていない。

ミノシロモドキ

世界中のデータが入っている不思議な物体。自立して動くことができるが、生物なのか物質なのか判断が難しい。ミノシロモドキには、先代文明が滅びた理由や業魔化、悪鬼に関する情報が含まれている。それ以外にも、残された人類の歴史や渡辺早季たちが置かれている状況についても記録されている。

愧死機構 (きしきこう)

人類が呪力によってお互いを殺し合わないようにするため、遺伝子に組み込まれたもの。呪力によって人を殺してしまうと、自分まで死ぬようにプログラムされている。このプログラムは力の強い動物には予め組み込まれていることが多い。

悪鬼 (あっき)

渡辺早季たちが住む日本で、稀に生まれる存在。強い攻撃性を持ち、人間を殺しても愧死機構が働かない。そのため、出現すれば町ひとつが簡単に滅ぶと言われている。

不浄猫 (ふじょうねこ)

呪力が未熟な子供を処分するために存在するネコ。子供たちの間では「ネコダマシ」という噂で知れ渡っている。実際は、朝比奈富子をはじめとする町の大人たちが管理をしており、未熟であるとわかった子供を不浄猫を使って処分していた。

クレジット

原作

貴志 祐介

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