三億円事件奇譚 モンタージュ

三億円事件奇譚 モンタージュ

昭和の未解決事件の一つである3億円事件をテーマとした作品で、犯人の息子といわれた少年が、事件の真相へと迫っていく姿を描く。物語は、過去と現在とが交互に織り交ぜられながら展開していく。2016年にはフジテレビ系列にて、『モンタージュ 三億円事件奇譚』のタイトルで、福士蒼汰主演でTVドラマ化されている。「週刊ヤングマガジン」2010年27号から2015年12号にかけて連載された作品。

正式名称
三億円事件奇譚 モンタージュ
ふりがな
さんおくえんじけんきたん もんたーじゅ
作者
ジャンル
サスペンス
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あらすじ

第1巻

2004年、長崎の小学生・鳴海大和小田切未来は学校からの帰り道で殺人事件に遭遇する。その時の被害者の男性は、大和の父親が3億円事件の犯人だと告げて絶命する。その事件から3日後、大和の父親・鳴海鉄也は東京で死体となって発見され、大和は未来の両親である小田切武雄小田切葉子の厚意で小田切家で暮らす事となった。 6年後の2010年。高校生になった大和は、父親の形見の中に3億円事件で盗まれた500円札が入っている事を知るが、その直後に武雄と葉子は失踪し行方不明となってしまう。二人の失踪の手がかりが長崎の軍艦島にある事を知った大和と未来は、ボートを借りて軍艦島に上陸し、そこで3億円事件で盗まれた大量の紙幣を発見する。しかし二人は、軍艦島から戻った直後に謎の男たちの襲撃を受ける。大和と未来の知人である塾講師・鈴木泰成の助けによって難を逃れたものの、二人は自分たちにボートを借した人物が殺害された事、さらに自分たちがその事件の参考人として手配されている事を知る。大和と未来は軍艦島で発見した紙幣をスーツケースに入れて泰成に預け、二人で警察へと出頭するのだった。

第2巻

貸しボート屋の主人が殺害された事件の参考人として取り調べを受ける事になった鳴海大和小田切未来は、そこで事件の真犯人で、自分たちを襲撃してきた関口二郎と出会う。二郎は刑事であり、大和と未来は彼の取り調べを受けた末に、別の警察署に移送される事となった。だが、二人は移送途中で警察のスキを突いて逃走し、電車に乗って福岡を目指す。 一方、3億円事件の紙幣の入ったスーツケースを預かっていた鈴木泰成は、大和から連絡を受けて塾の生徒である中野夏美にスーツケースを運ばせる。福岡で大和と未来に接触した夏美はスーツケースを渡し、彼らが警察に追われている事を知りながら、協力を申し出るのだった。

第3巻

中野夏美に接触した関口二郎は、彼女を脅迫して鳴海大和小田切未来の潜伏先を聞き出すが、そのホテルには二人の姿はなかった。大和と未来は鈴木泰成と合流し、すでに広島へと渡っていたのである。 時は遡って1966年。川崎雄大は、長崎の軍艦島から職を求めて上京、そこでヤクザの土門茂ともめていた望月竜響子ギブソンと知り合い、バーでの仕事を竜に紹介してもらう。そのあとも竜の弟分である横溝保や、警察官の沢田慎之介、刑事の東海林旭など、雄大は東京でさまざまな人々と出会う。そして雄大は小田切和子という女性と交際を始め、子供をもうけるが、和子は事故に遭って死亡してしまう。その事実を知った雄大は病院で暴力を振るい警察に拘束されてしまう。沢田が見た雄大は完全に放心状態となっていた。 そして2010年、その沢田は政府与党の幹事長となっていた。

第4巻

広島へとやって来た鳴海大和小田切未来鈴木泰成の三人は、改めて3億円事件の紙幣を確認する。しかしその直後福岡で、再び旧札の紙幣が発見されたというニュースが流れる。このニュースの裏に中野夏美が関係していると知った大和は未来に連絡をとってもらうが、夏美の携帯電話に出たのは関口二郎だった。3億円事件の証拠である500円札を持って来るように未来に取引をもちかける二郎に従って未来は宮島へと向かう。宮島で二郎と対峙した未来は3億円事件の紙幣の一部を見せて取引に臨むが、逆に二郎に捕らわれてしまう。しかし、その直後二郎は何者かに狙撃され卒倒、そこに現れた大和と泰成は二郎を連れ帰り拘束する。 意識を取り戻した二郎は、大和に犯罪者の素質があると煽り、思わず大和は二郎の首を絞めてしまうが泰成に制止される。しかし、大和は泰成に対して、3億円事件に何らかの関係があるのではないかと疑い始める。

第5巻

広島で関口二郎を拘束した鳴海大和小田切未来だったが、鈴木泰成の裏切りによって3億円事件の紙幣を奪われ、そのうえ二郎も解放されてしまう。途方に暮れる大和達の前に福岡の警官・水原大輔が接触、大輔に今まで自分たちの身に起こった事をすべて話した大和は、東京に事件の真相に迫る糸口があると考えて大輔の協力を得て東京へとやって来る。東京の渋谷に住む大輔の祖母の家に転がり込んだ大和たちは、2004年に自分たちの前で殺害された男が東海林旭という刑事であり、かつて3億円背事件を追っていたという事実を知る。東海林の自宅を訪ねた大和たちは、そこで東海林の知人であり元ヤクザの土門茂の存在を知るが、土門はすでに故人だった。現在は居酒屋を経営している土門の家族から、その遺品を見せてもらった大和たちは、その中に軍艦島の資料と古い写真を発見する。そこに写っていたのは、望月竜響子ギブソン横溝保、そして川崎雄大だった。

第6巻

土門茂の遺品からさまざまな情報を得た鳴海大和小田切未来。しかし、彼ら二人は殺し屋の朝霧正人によって監視されていた。さらに土門の家から東海林旭の遺留品であるフロッピーディスクを見つけた大和たちは、その中に学生運動の過激派対策計画書が入っている事を確認する。しかもその計画書の日付は3億円事件が発生する3か月前であり、この計画を立案したのが沢田慎之介である事を知った大和は、沢田が3億円事件の黒幕であると考え始める。 一方、水原大輔のもとには福岡で別れた中野夏美が現れていた。男女二人で同じ家には泊まれないと判断した大輔と大和は、荷物を取りに一時的に大輔の祖母の家へ向かうが、そこで大輔が目を離した隙に大和は朝霧によって拉致されてしまう。さらに大輔もまた朝霧によってナイフで刺され重傷を負ってしまうのだった。

第7巻

朝霧正人によって拉致された鳴海大和水原大輔だったが、なんとか脱出に成功する。途中で通りがかった小柳翔太に助けられた二人は、翔太の協力を得て小田切未来と合流する。大輔は朝霧を追いつめるが朝霧はその場を逃走し、逃げる先で関口二郎によって殺害される。 翔太のアパートへ転がり込んだ大和と未来のもとへ、謎の人物から鈴木泰成によって奪われた3億円事件の紙幣が入ったスーツケースが戻ってくる。さらに大和は翔太の家で土門茂の家から見つかった川崎雄大たちの写真を確認、その写真が撮影された場所が今も東京の府中で営業しているバーである事を突き止める。しかしその直後、翔太のアパートに二郎が姿を現す。そんな大和と未来を助けたのは、スーツケースを二人に戻した謎の人物だった。その人物が写真に写っていた雄大だと気づきながら、大和たちは脱出に成功する。それを確認した雄大は二郎の前でダイナマイトを持ち出し、翔太のアパートごと爆破する。

第8巻

二郎の襲撃を回避した鳴海大和小田切未来は、川崎雄大の写真が撮影されたバーを訪れ、そこで写真に写っている人物のうち横溝保は死亡しているものの、響子ギブソンが沖縄で健在であり、バーを経営している事を知る。さらに一足早くそのバーを訪れていた鈴木泰成から沖縄へ渡るためのチケットを渡される。小柳翔太の協力で沖縄まで行くためのフェリーに乗る大和と未来。しかし、フェリーの中でスーツケースに入れていた3億円事件の紙幣が半分盗まれてしまう。大和は沖縄に着くまでのあいだにスーツケースから紙幣を盗んだ犯人を特定し、協力体制を敷く事に成功する。無事に沖縄に到着した大和と未来だったが、そのフェリーには沖縄県警の真玉橋豊と、鈴木泰成の義理の父親が乗り合わせていた。

第9巻

沖縄で響子ギブソンと会った鳴海大和小田切未来は、響子から3億円事件の犯人は大和の父親・鳴海鉄也ではなく自分たちだと告げられる。3億円事件は、響子の恋人だった望月竜川崎雄大によるものだったが、竜は事件直後に行方不明となっており響子は今も竜の行方を追っていた。さらに沢田慎之介によって響子が持ち出した事件に関係する遺留品はすべて引き上げられたという。手元に残った遺留品の中にペンキのついた瓦礫を見つけた大和は、それも含めて東京にいる水原大輔に経過を報告する。 東京の大輔は、中野夏美と共に沢田の足跡を追っていた。途中、夏美は府中で偶然雄大が落としたペンダントを拾う。大輔は沢田が懇意にしていたという旅館を訪れ、そこで沢田の写っていた写真と沖縄で大和が見つけたものと似た瓦礫を発見する。大輔の話からこの瓦礫が軍艦島のものだと確信する大和。そして、大輔と夏美は沢田の写っていた写真の中に関口二郎に似た風貌の男性が写っているのを見つける。

第10巻

1966年、赤ん坊だった関口欽一関口二郎の二人はコインロッカーに捨てられているところを、とある男女に拾われる。しかし、成長に伴い養父母となったその男女から日常的に虐待を受けるようになった欽一と二郎は彼らを殺害する事を決意、そして1979年のクリスマスに殺害を決行する。この殺人事件を担当する事になった刑事の沢田慎之介は、逃亡中の欽一と二郎に接触し自身の影となって働くように提案する。その後、沢田の愛人・関口弘美に預けられた欽一は沢田の私設秘書に、二郎は刑事になった。 沖縄にいる鳴海大和は、響子ギブソンの紹介で寄った店で食べた料理がもとで、かつて父親が沖縄にいた事を知る。そんな響子のバーに鈴木が現れ、望月竜を知っている事をほのめかす。しかし鈴木の目的は3億円事件の紙幣を入手する事にあった。鈴木は大和たちから紙幣が入ったスーツケースを盗むが、その中身は大和によってすでにすり替えられていた。再び紙幣を奪おうとする鈴木から事件の計画を書いた手帳を奪った大和は、その中から沢田の名前を見つけ、鈴木が沢田の指示によって動いている事を察知する。

第11巻

鈴木の謀略によって警察に包囲されてしまった鳴海大和小田切未来は、沖縄の街が一望できる高台へと逃げ延びる。そこへ3億円事件の紙幣を狙って鈴木が現れるが、その直後に真玉橋豊率いる警察部隊も到着、大和たちを包囲する。鈴木は未来を人質に逃走を図るが、そこへ響子ギブソンとその知人であるハリー・スタンレーがヘリコプターに乗って登場、大和と未来を拾い上げて逃走する。かろうじてその場を逃げ出す事に成功した鈴木だったが、その前に今度は養子である鈴木泰成が現れる。3億円事件にかかわったために父親の横溝保が命を落としたと考えた泰成は、関係者全員への復讐を誓っており、鈴木は泰成の策略によって死亡する。 一方、退役軍人であるハリーの手引で沖縄の米軍基地に逃げ込んだ大和と未来は、紙幣の回収と今後の事を考え始める。さらにハリーは、響子にかつて自分も3億円事件当時に東京にいた事、そしてその頃に沢田慎之介と会っていた事を告げる。

第12巻

ハリー・スタンレーは、鳴海大和響子ギブソンを前にかつて自分が経験した事実を話し始める。3億円事件に公安の須黒隆という男と沢田慎之介がからんでいたという事、3億円事件が沢田の発案によるものだという事、そして川崎雄大が重傷を負っている望月竜を見舞っていた事を知った大和。響子は、大和たちを救出した高台へと再び行く事を告げる。その高台に3億円事件の紙幣を隠していた大和は、行けば逮捕されると告げるが響子はハリーを伴って高台へと向かう。高台についたハリーは、響子にかつての彼女の恋人である望月竜は須黒を殺害したあとに力尽きて死亡し、自身が埋葬した事を話す。そこへ現れる真玉橋豊に響子は自分が3億円事件の犯人である事を話し、自ら逮捕される事を望む。しかしハリーは3億円事件の紙幣を見つけた直後に鈴木泰成に奪われてしまう。 ハリーの家で帰りを待つ大和と小田切未来は、水原大輔から沢田の写真の中に関口二郎と似た人物・関口欽一が写っていた事を知らされる。さらに鈴木の残した手帳に北海道の住所が記されているのを見つけるのだった。

第13巻

鈴木の残した手帳に書かれていた北海道の住所は、鈴木が経営する不動産会社の管理物件だった。その地に何かあると考えた鳴海大和小田切未来は、ハリー・スタンレーの協力を得て北海道へと移動する。そして、問題の住所を訪れた大和と未来はその場所にある建物に未来の両親である小田切武雄小田切葉子が監禁されている事を突き止める。 一方、水原大輔中野夏美から江ノ島で会いたいと呼び出され、束の間のデートを楽しむが江ノ島の海岸で夏美にナイフで刺され、さらにその場に現れた関口二郎に銃撃され海に転落する。夏美と共に江ノ島の旅館に入った二郎は、夏美に対して自分でも理解しがたい奇妙な感情を覚えていた。 同じ頃、父親である横溝保の墓参りにやって来た鈴木泰成川崎雄大からの手紙を見つける。雄大は、泰成と共に関口欽一が待ち受ける家へと向かう。

第14巻

ハリー・スタンレーの協力で北海道のとある住所にやって来た鳴海大和小田切未来は、そこにある建物に捕まっている未来の両親である小田切武雄小田切葉子の救出に臨む。見張りを欺き、建物の内部に入った大和と未来だったが見張りの男たちの反撃に遭い逆に捕まってしまう。建物には大和の予想通り武雄と葉子が監禁されており、未来は両親との再会を果たす。 しかし、大和は監禁されているとはいえ比較的快適な空間で過ごす葉子に違和感を覚えていた。そんな大和に葉子は自身が沢田慎之介の娘だが捨てられた事を告げる。さらに夫の武雄もまた沢田と何らかの関係があると考え近づいた事、そして互いに惹かれあって結婚した事を話す葉子。混乱する大和だったが、同時に川崎雄大が自身の父親ではないかと考え始める。 その雄大は、鈴木泰成と共に関口欽一と対峙していた。それぞれに目的と思惑を抱えた三人だったが、泰成に対して欽一は手を組んで共に雄大を殺害しようと持ちかける。

第15巻

小田切葉子は、自分を育ててくれた関口弘美という女性が関口二郎の養母である事を告げる。驚く鳴海大和小田切未来の前に中野夏美を連れた二郎が現れ、水原大輔を殺したと話す。さらに大和と未来たちに銃口を向けるが、大和は小田切武雄と共に二郎に反撃、二郎の銃を奪う事に成功する。そのまま脱出した小田切未来と武雄、葉子だったが未来は大和に父親をおとりにした事を責め、大和は姿を消す。二郎もまた夏美を連れて逃走、その後現場に現れた真玉橋豊は、未来たちと接触する。 江ノ島で夏美に刺され、二郎に銃撃された水原大輔は、偶然胸ポケットに入っていたペンダントで心臓への弾丸の命中は避けられていた。そのペンダントは府中で夏美が偶然拾ったものであり、川崎雄大が持っていたものだったが、大輔はそのペンダントの中にあるものが入っている事に気づき、自分の体に岩で「65」と刻み、帰らぬ人となるのだった。

第16巻

関口欽一のもとを訪れた鳴海大和鈴木泰成は、共に沢田慎之介に会わせるよう要求する。それに応える形で欽一は大和と泰成に沢田と会えるように便宜を図る。泰成は大和にこれ以上かかわらない事、大和の冤罪を晴らすための証拠を用意している事を告げるが、大和は聞き入れずに沢田との面会に臨む。大和、泰成、欽一の前へ現れた沢田は三人の目前で土下座をしながらも、彼らが持っている3億円事件と沢田の関与を示す証拠だけでは、自身の地位は揺るがないと説明する。そのうえで彼らに協力する事を持ちかけ、その場をあとにするのだった。 3億円事件と沢田との関係を追う真玉橋豊は、かつて自分と同じように事件を追っていた東海林旭と3億円事件の首謀者とされる須黒隆の実家を訪ね真相へと近づいていた。そんな真玉橋に小田切未来がいなくなったとの連絡が入る。新聞で水原大輔が死亡した事を知った未来は謝罪のため大輔の実家を訪ねていた。大輔が最期を迎えた江ノ島へやってきた未来は、そこで大輔が隠したペンダントを見つける。 一方、欽一の働く事務所に盗聴機を仕掛けた大和は、そこで欽一が小田切一家を全員殺害しようと計画している事を知り、阻止するために欽一の弟・関口二郎に接触する。

第17巻

関口欽一に対して弟の関口二郎を捕らえたと脅迫する鳴海大和は、欽一と二郎を別々に東京の某所に呼び出す。欽一は大和を殺そうと目論んで銃を持って現場へと現れるが、大和もまた殺人犯になる覚悟で欽一と対峙しあらかじめ掘っておいた落とし穴に欽一を落とし銃を向ける。しかし、そこへ中野夏美を連れた二郎が現れ大和と撃ち合いになる。二郎にとっては欽一を助ける気持ちはなく、もはや自分でもなぜ大和と撃ち合うのかわからないまま銃撃戦を続けていた。 その頃、小田切未来水原大輔の実家を離れ、テレビ局へと向かっていた。3億円事件を含む一連の事件の関係者である事をちらつかせてテレビに出演した未来は、その番組で3億円事件の首謀者が沢田慎之介である事を発表する。その中継を見ていた真玉橋豊は、すぐにテレビ局へ到着、未来を保護する。 一方、沢田もまたかつて川崎雄大が暮らしていたアパート跡地で雄大と再会していた。もう終わりにしようと沢田にナイフを突き立てる雄大だったが、沢田はまだやる事があるとその場を去る。そんな沢田に雄大は軍艦島で待つと告げる。

第18巻

関口欽一中野夏美を人質に関口二郎鳴海大和をおびき出そうとするが、そのまま二郎と撃ちあった末に相打ちとなり、まだ息のあった二郎は夏美の手によって最期を迎える。そこへやって来た沢田慎之介は大和と夏美に自分の家に帰るように告げるとその場をおさめ去っていった。 翌日、沢田は緊急記者会見を開き、自分が3億円事件の首謀者である事を告げる。その会見の場には真玉橋豊に付き添われた小田切未来の姿もあった。しかし会見のさなか沢田は警備員に変装した鈴木泰成に銃撃される。残された意識の中、沢田は泰成の父親・横溝保が死んだのは事故死である事を話し、そのまま息絶える。殺人の現行犯で逮捕される泰成だったが、その直前に未来にあるメモを渡す。 長崎に戻った大和は未来と再会する。未来は泰成から渡されたメモから自分の父親である小田切武雄川崎雄大の息子であり、自分と大和は叔父と姪の関係にあると話す。 大和は事件を終わらせるために雄大の待つ軍艦島へと渡り、父親と再会。雄大は大和に自分の人生は継ぎ接ぎだらけのモンタージュだと語り、事件の真相を話し始める。

第19巻

川崎雄大は、鳴海大和に対して3億円事件の真相を話す。かつて雄大は鳴海鉄也と名乗っており、小田切和子という女性を愛したが、彼女は過激派の学生運動に巻き込まれ死亡。当時、彼女のお腹の中にいた子供は無事だったものの、心を閉ざした雄大は、沢田慎之介須黒隆の誘いに応じて望月竜と共に3億円事件を引き起こした。しかし、3億円事件はもともと警察の上層部が計画した犯罪であり、雄大と竜は須黒の命令で、口封じのために銃撃されたのだった。かろうじて一命をとりとめた雄大は、別人の死体を鉄也のものと偽装して消息を絶ったのである。その後、雄大は自身の子供である小田切武雄が長崎へ移り住んだ事を知り、整形して自身も移住し、そこで別の女性と結婚。その結果、生まれたのが大和であった。すべてを知った大和は、この事件を終わらせるためには自分たちがいなくなるしかないと考え、行動を開始する。

登場人物・キャラクター

鳴海 大和 (なるみ やまと)

長崎県で暮らす男子高校生。小学生の頃に幼なじみの小田切未来と殺人事件に遭遇し、その時の被害者である東海林旭から自身の父親が3億円事件の犯人だと告げられる。その後はさまざまな事件に巻き込まれながら自分の運命と向き合いつつ、3億円事件の真相へと迫っていく。

小田切 未来 (おだぎり みく)

長崎県で暮らす女子高校生。鳴海大和より2歳年上だが幼なじみで、大和の父親が死亡してからは、自分の家に引き取られた大和と姉弟同然に過ごしてきた。両親が謎の失踪をとげたり、殺人事件の容疑者として指名手配を受けるなどさまざまな事件に巻き込まれながら、大和と共に3億円事件の真相を追う。

川崎 雄大 (かわさき ゆうだい)

鳴海大和の父親。長崎県軍艦島の出身で、1966年に仕事を求めて東京へとやって来た。そこで知り合った小田切和子と子供をもうけるが、ほどなく彼女は事故で死亡。やけになり、地元の知人だった沢田慎之介の誘いで東京での仲間である望月竜や響子ギブソンと共に3億円事件を実行した。その後、紆余曲折を経て大和の母親と再婚し、整形手術で顔を変えて「鳴海鉄也」と名乗るようになった。 冷静な判断力と度胸の持ち主だが、落ち着きを失うと爪をかむくせがある。

小田切 和子 (おだぎり かずこ)

かつて川崎雄大と付き合っていた女性で、定食屋で働いていた。雄大とのあいだに小田切武雄をもうけたが、雄大とは入籍しないまま、過激派の学生運動によって命を落とした。当時現場がかなり混乱していたため、和子が死亡した原因やその犯人などを特定する事はできずに終わった。この事件がきっかけとなって、雄大は警察組織や過激派への不満を募らせていく事となる。

小田切 武雄 (おだぎり たけお)

小田切未来の父親で剣道の有段者。鳴海大和の父親である鳴海鉄也とは家族ぐるみの付き合いであり、父親が失踪した大和を引き取って暮らしていた。妻の小田切葉子と共に何者かに拉致され失踪した。実は川崎雄大の息子であり、その事を知らないまま施設で育てられた過去を持つ。

小田切 葉子 (おだぎり ようこ)

小田切未来の母親。夫の小田切武雄と共に何者かに拉致され失踪した。実は政治家となった沢田慎之介とその愛人である関口弘美のあいだに生まれたが、愛人の娘という事で施設に預けられて育った。10代の頃に武雄と出会い、交際の末に結婚した。

鈴木 泰成 (すずき たいせい)

小田切未来が通う塾の講師を務める男性。3億円事件の真相を探る鳴海大和たちに協力している。実は3億円事件の関係者の一人である横溝保の息子で、父親が事件にかかわった事で変死したため、関係者に復讐しようと大和たちを利用していた。

関口 二郎 (せきぐち じろう)

鳴海大和と小田切未来を執拗に追い回す謎の男性。表向きは刑事として働いているが、その裏では殺人や盗聴などさまざまな犯罪にかかわっている。赤ん坊の頃、兄の関口欽一と共にコインロッカーに捨てられ、その際に拾った男女に育てられるが、虐待を受けていたため10歳の時に兄と協力してその養父母を殺害した。その後関口弘美に引き取られ、沢田慎之介に仕えるようになったという過去を持つ。

沢田 慎之介 (さわだ しんのすけ)

与党の幹事長を務める男性。2010年現在は政治家だが、3億円事件が発生した1968年当時は警察官として働いており、日本の将来について憂いを抱いていた。川崎雄大と同じ軍艦島の出身であり、妻を亡くした雄大を巻きこむ形で3億円事件を計画した。その後、学生運動を壊滅させるためのローラー作戦を指揮した手腕が評価されて昇進し、のちに政治家となった。

関口 欽一 (せきぐち きんいち)

関口二郎の兄で、沢田慎之介の私設秘書を務めている。弟の二郎と共に沢田の手足となって働いてきたが、沢田を見限りその地位を奪うために暗躍する。政治家やヤクザなど交友範囲が広く、またそれぞれのパイプも太い事から各方面より一目置かれている。赤ん坊の頃、二郎と共にコインロッカーに捨てられており、その時に拾ってくれた男女に育てられるが、虐待を受けていたため10歳の時に二郎と協力してその養父母を殺害した。 その後関口弘美に引き取られ、沢田に仕えるようになったという過去を持つ。

東海林 旭 (しょうじ あきら)

3億円事件の真相を追っていた刑事の男性。ヤクザだった土門茂とは職業上の対立もあり確執があったが、彼が自身の子供のために足抜けしようとしているところを助けた縁で親交を深める。その後も3億円事件について独自に捜査を進めていたが、2004年に鳴海大和の目の前で関口二郎によって殺害された。

中野 夏美 (なかの なつみ)

鈴木泰成が講師を務める塾に通う女子高校生。泰成の依頼で鳴海大和や小田切未来と接触した事で事件に巻き込まれる。自分を監禁し脅迫した関口二郎に対して当初は恐怖を抱いていたが、行動を共にするうちに少しずつ二郎に対して恋心ともつかない奇妙な感情を抱き始める。

水原 大輔 (みずはら だいすけ)

福岡県警に所属する警察官の男性。鳴海大和と小田切未来を保護し、彼らが巻き込まれた3億円事件の真相を探るべく協力する。その正義感の強さから暴走しがちなところがあり、結果的に空回りする事も少なくないが、大和たちをバックアップする心強い味方。

望月 竜 (もちづき りゅう)

1966年に東京にやって来た川崎雄大が知り合った男性。ヤクザである土門茂を前にしても一歩も退かない度胸の持ち主。職のない雄大に仕事を紹介するなど面倒見のいい性格で、交際相手の響子ギブソンや弟分の横溝保など、多くの人に慕われている。沢田慎之介の提案で雄大と共に3億円事件にかかわっていく。

横溝 保 (よこみぞ たもつ)

望月竜の弟分の男性。3億円事件に直接かかわる事はなかったが、犯行声明文を作成するためのタイプライターを打った事で間接的に関係していた。3億円事件のあとは家業の電器店を継ぎ、バブル期には多額の売上をあげていた。しかしやがて凋落し、川崎雄大に接触して3億円を渡すように要求。その際に死亡したため、息子の鈴木泰成が事件関係者への復讐を志す事となった。

響子 ギブソン (きょうこ ぎぶそん)

1966年に望月竜の恋人だった女性。3億円事件のあと姿を消した竜の事を想いつつ、沖縄へ移り住みバーの経営者となった。自身を訪ねて来た鳴海大和と小田切未来に対して当初は非協力的だったものの、大和たちが3億円事件にかかわっている事を知り自身の過去を含めた話をするなど、事件の真相に近づくために協力する。

土門 茂 (どもん しげる)

1966年に望月竜たちと対立していたヤクザの男性。子供ができた事をきっかけにヤクザを足ぬけしようとした際、東海林旭に世話になった事からそれ以降東海林と交流があった。そのあとは小料理屋を営んでいたが、70歳の時に不摂生がたたって死亡した。

真玉橋 豊 (まだんばし ゆたか)

沖縄県警に所属する刑事の男性。25歳と若手ながら捜査の指揮や手腕などかなり優秀な人物で、警察内部からも人望を集めている。沖縄で鳴海大和や小田切未来と接触、響子ギブソンの証言から彼らが3億円事件にかかわっている事を知り、独自の捜査を進めていく。

関口 弘美 (せきぐち ひろみ)

沢田慎之介の愛人だった女性。身寄りをなくした幼い頃の関口欽一と関口二郎を引き取って育てた。小田切葉子の母親だが、施設に預けた葉子とは親子の名乗りをしないままに認知症を発症し、現在は老人ホームで暮らしている。

小柳 翔太 (こやなぎ しょうた)

東京の府中近郊に住む男性。殺し屋による監禁から脱出して来た鳴海大和を助けた縁で事件に巻き込まれる。気性の荒い性格だが、一度かかわった事は最後まで面倒を見るという事をモットーとしており、大和たちにとって心強い協力者となる。

ハリー・スタンレー (はりーすたんれー)

元アメリカ海兵隊の教官だった男性。現在は退役軍人として沖縄のアメリカ軍基地に出入りしつつ、ヘリコプターや飛行機の輸送を手がける会社を経営している。響子ギブソンは10代の頃に出会った初恋の相手であり、現在も沖縄で毎日のようにプロポーズしているが毎回ふられている。

須黒 隆 (すぐろ たかし)

1968年の3億円事件の首謀者の男性。警視庁公安部に所属する刑事で、過激派の学生運動を壊滅する口実を作るため3億円事件を発案し、実行に移した。必要とあらば殺人すら辞さないほどの冷酷な性格であり、3億円事件直後に、部下だった沢田慎之介に実行犯の川崎雄大と望月竜の殺害を命じた。

鈴木 (すずき)

鈴木泰成の養父。泰成の父親である横溝保の弟で、保が電器店を継いだ際には共同経営者として売り上げと店舗の拡大に貢献した。店の金を横領し独自に会社を立ち上げるなど悪辣な性格で、養子となった泰成からも復讐の対象として考えられていた。沢田慎之介の指示で「鈴本」という偽名を名乗り、響子ギブソンに近づく。

朝霧 正人 (あさぎり まさと)

普段は大学生として生活している男性だが、その裏では殺人を請け負っている殺し屋。関口欽一の指示で鳴海大和と小田切未来を監視していたが、途中から関口二郎によって指示系統が混乱し計画は失敗、逃走中に二郎によって殺害される。

場所

軍艦島 (ぐんかんじま)

長崎県の沖合に浮かぶ炭鉱の島で、正式名称は「端島」。外観が軍艦に似ていることから「軍艦島」と呼ばれている。最盛期にはおよそ5000人以上もの人口があり、島内には学校や病院、寺院や娯楽施設など都市機能を備えていた。川崎雄大や沢田慎之介の出身地でもある。

イベント・出来事

3億円事件 (さんおくえんじけん)

1968年に東京都府中市で起こった3億円の強奪事件。未解決のまま、1975年に公訴時効が成立した。学生運動の過激派を壊滅させるためのローラー作戦を行う口実として、警察内部の沢田慎之介が発案。川崎雄大が直接的な実行犯となった。

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