月館の殺人

月館の殺人

原作はミステリー小説の大家綾辻行人、作者は繊細かつ緻密な人物描写で物語を紡ぐ佐々木倫子が担当。それぞれの業界で名を馳せた至高のタッグが送り出す、珠玉の鉄道ミステリー作品。「月刊IKKI」にて2005年2月号から2006年6月号まで掲載された。

正式名称
月館の殺人
ふりがな
つきだてのさつじん
原作者
綾辻 行人
漫画
ジャンル
推理・ミステリー
関連商品
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概要・あらすじ

両親を亡くし、唯一の肉親であるまだ見ぬ祖父に会うため夜行列車「稚瀬布発月館行幻夜号」に乗り込んだ女子高生の雁ヶ谷空海。初めて乗る列車に初めての雪、そして初めての北海道。期待と不安に満ちた空海を待っていたのは、一癖も二癖もあるテツ、いわゆる「鉄道マニア」の乗客だった。彼女たちが乗り込んだ幻夜号は、オリエント急行の車両を用いた豪華な内装で、車両を引くのはD51(デゴイチ)という日本を代表する蒸気機関車。

乗客は空海を含めて7人、しかも空海以外の乗客も祖父が招待していたことが判明する。そんな不思議なめぐり合わせとなった旅路の最中、車両から乗客の死体が発見され、空海は突如として凄惨な事件へと巻き込まれてしまう。

登場人物・キャラクター

雁ヶ谷 空海 (かりがや そらみ)

東京生まれで沖縄育ちの女子高生。好物はバナナ。極度の鉄道嫌いだった母親の影響で生まれてから、一度も鉄道に乗ったことがない。そのせいで修学旅行はおろか、友人との旅行にすら行けなかったという苦い思い出を持つ。また、父はパイロットだったが飛行機にも乗ったことがない。おっとりした夢見がちな性格で、小・中学生時代はクラスの男子から「クウカイ」と呼ばれ、からかわれていた。 たまに妄想が暴走することがある。寝台車の部屋番号は7号室。

日置 健太郎 (ひおき けんたろう)

幻夜号の乗客でカエデ探偵事務所に勤めている26歳の男性。千葉から来ている鉄道考古学のテツ。幻夜号に向かう途中で、雪に車が埋まり立ち往生していた雁ヶ谷空海と中在家に出会う。出発時刻に間に合わないと慌てる中在家に空海を託され、彼女を車に乗せて一緒に幻夜号に乗車した。何かと空海を気にかけていたが、深夜に個室で死体となって発見された。 鉄道マニアで、鉄道考古学ともいうべき情報の収集を好む。乗客の中では一番の常識人。寝台車の部屋番号は10号室。

今福 健至 (いまふく けんじ)

幻夜号の乗客で獣医をしている35歳の男性。好物はジャーマンハンバーグ定食。埼玉から来ている。コレクションのテツで列車内の備品を片っ端から集めている。幼い頃は駅のスタンプを押すのが趣味だったがそれだけでは満足できなくなり、切符コレクターを経て、お金を使わず他人に頭も下げずにコレクションを増やすという現在のスタイルにたどり着いた。 寝台車の部屋番号は9号室。

中ノ郷 浄 (なかのごう きよし)

幻夜号の乗客で機器メーカーのエンジニアを務める40歳の男性。好物は柿ピーと冷凍ミカン。東京から来ている。撮りテツで会社に気を遣いながら休暇を取り、鉄道写真を撮りに行っていたが、趣味に傾倒しすぎたせいで妻とは離婚し、子供とも別離している。SLやまぐち号をライフワークと公言しており、週末も盆暮れも有給休暇もすべて山口線を撮るために費やしている。 寝台車の部屋番号は6号室。

杉津 治彦 (すいづ はるひこ)

幻夜号の乗客。フリーターで30歳の男性。好物は「苺ジャムを塗った食パン」と公言しており、幻夜号にも瓶の苺ジャムを持ち込んでいた。京都から来ている乗り専門のテツで、駅の設備をすべて使い切りながらの全駅制覇というルールを自らに課して全国の鉄道路線を踏破したり、全駅を乗り降りしている。寝台車の部屋番号は8号室。

沼尻 孝一 (ぬまじり こういち)

幻夜号の乗客で市職員を務める24歳の男性。好物はへぎそば。新潟から来ている時刻表のテツで、時刻表を読むだけで日本中の路線上を運航している列車が見えるという特技の持ち主。自らが考案した無駄や欠点を省いた「理想のダイヤ」が、JRから一部正式採用されるほどの筋金入りの鉄道マニア。初めて会った時から雁ヶ谷空海を気に入っており、密かに「空海と俺のラブダイヤ」なるものを作成している。 寝台車の部屋番号は5号室。

竜ヶ森 集 (りゅうがもり しゅう)

幻夜号の乗客で大学に籍を置く23歳の男性。好物はカレーライス。鎌倉から来ている。模型テツで自宅に総延長500kmのNゲージのジオラマを作った。だが自宅は30坪の決して広くはない一戸建てで、両親もジオラマの中で生活する状態になっている。幻夜号にもスーツケースぴったりに作ったジオラマを持ち込んでいた。常にメジャーを持ち歩いており、列車内でも気になるものはすぐに採寸してしまう。 性格は暗く、内向的。寝台車の部屋番号は4号室。

川俣 孝夫 (かわまた たかお)

幻夜号の車掌を務める男性。黒縁の丸メガネに口ヒゲというやや古めかしい風貌をしている。厳格で気丈な態度で幻夜号の乗客を取り仕切っており、日置健太郎の死亡確認も率先してやっていた。三国信一によると、1年ほど北海道から外に出ていない。

唐津 勘助 (からつ かんすけ)

幻夜号のバーテンダーを務める男性。ミステリー小説が好きで、ピアノバーの車両に置いてある本はすべて彼の趣味の本。幻夜号で起きた事件を「オリエント急行殺人事件」や「そして誰もいなくなった」などのミステリー小説になぞらえている。

三国 信一 (みくに しんいち)

幻夜号のサービスマンを務める男性。乗客7人のディナーのコースや飲み物を1人で取り仕切り、個々の注文にもしっかり対応できる。列車から餌をまいてアライグマを懐かせていた。そのせいで周辺には野生化したアライグマが数多く生息するようになっている。

倉吉 修 (くらよし おさむ)

幻夜号のピアニスト兼料理人を務める男性。事件が起きた後、列車内を探索する雁ヶ谷空海たちにサンドイッチを作ってくれる。料理の腕はもちろん、ピアノのレパートリーも多く「救急戦隊ゴーゴーファイブ」なる子供番組の主題歌も弾きこなせるほど。エゾシカ猟もやっていて山歩きに慣れているなど、多趣味な人物。

宮田 一郎 (みやた いちろう)

幻夜号の機関士を務める優しげな雰囲気を持つ年配の男性。与えられた仕事をきちんと遂行するまじめな性格で、いつも機関助士の添田次郎と行動を共にしている。

添田 次郎 (そえだ じろう)

幻夜号の機関助士を務める男性。まだ若いがしっかりとした面持ちをしている。宮田一郎といつも行動を共にしており、彼のセリフの後半部分を重複して話すことが多い。

月館 十蔵 (つきだて じゅうぞう)

雁ヶ谷空海の祖父。泣く子も黙る日本一の鉄道マニアで、テツの間では畏怖を込めて「鉄道王(キングオブテツ)」と称され、月館十蔵の住む屋敷は「鉄道館」とも呼ばれている。鉄道趣味に全霊を注ぎ込んでいたため、一人娘に嫌われ家を出て行かれてしまった。母親を亡くした雁ヶ谷空海を気遣い、中在家に空海を探すよう依頼する。

中在家 (なかざいけ)

月館家の顧問弁護士を務める男性。元々は検事だったが、職を辞してからは民事専門の弁護士をやっている。月館十蔵に頼まれ身寄りがなくなった雁ヶ谷空海に、財産相続の話があるからと北海道に来るよう促す。愛車はトヨタのセルシオ。

小元 (おもと)

月館家のメイドを務める女性。足が悪く左足をひきずって歩いている。職場の仲間には痛風と思われていたが、実は捻挫だった。殺人事件の発生後、テツである乗客の追求から雁ヶ谷空海をかばっていた。

雁ヶ谷 みずほ (かりがや みずほ)

3か月前に亡くなった雁ヶ谷空海の母親。旧姓は月館。幼少の頃から父親・月館十蔵の異常な鉄道愛を目の当たりにしていたせいで、極度の鉄道嫌いになってしまう。父への当てつけからパイロットである夫との結婚を機に家を出て、生涯鉄道には乗らないと宣言していた。

場所

幻夜号 (げんやごう)

雁ヶ谷空海たちが乗り込んだ「稚瀬布発月館行」の寝台列車。オリエント急行の車両を用いた豪華な内装で、革張りの椅子に床にはカーペットが敷かれている。牽引車のほか、荷物車、食堂車、プルマン車、ピアノバー車、寝台車、スタッフ車からなる。日本の車両ではほとんど見られない、キューポラという列車の屋根を突起させて作られた監視用の小屋も設けられている。 車両を引くのはD51(デゴイチ)という日本を代表する蒸気機関車。

その他キーワード

テツ

鉄道マニアや鉄道おたくの通称。乗りテツや撮りテツ、時刻表テツにコレクションテツなど色々な趣味の人達が存在する。本作『月館の殺人』の登場人物の中では異なる趣味のテツ同志は仲が悪く、さらに自身をテツと称されることを嫌がる乗客が多かった。

首都圏連続殺人事件 (しゅとけんれんぞくさつじんじけん)

首都圏で発生し、5人もの人間が殺されている連続殺人事件。殺されたのは鉄道マニアばかりで、死体の側には必ずカードのようなものが残されている。犯人はまだ見つかっていない。

クレジット

原作

綾辻 行人

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