しおんの王 The Flowers of Hard Blood

しおんの王 The Flowers of Hard Blood

幼い頃に両親を殺された女子中学生が、養父の指導のもと女流棋士となる。しかし有名になるに伴い、両親を殺した犯人の影が再び彼女を襲う。運命に翻弄されながらも懸命に将棋盤に向かう、少女の戦いを描いた将棋サスペンス。「アフタヌーン」2004年5月号から2008年6月号にかけて連載された作品。

正式名称
しおんの王 The Flowers of Hard Blood
ふりがな
しおんのおう ざ ふらわーず おぶ はーど ぶらっど
原作者
かとり まさる
漫画
ジャンル
将棋
関連商品
Amazon 楽天

世界観

将棋が題材。女流棋士として活躍する主人公が同世代のライバルたちと切磋琢磨し、やがて養父や名人といった格上の棋士と肩を並べるほどに成長していく姿が描かれる。並行して主人公の両親を殺害した犯人を追うサスペンスとしての一面もある。

作品構成

本作『しおんの王 The Flowers of Hard Blood』の物語は、大きく3部によって構成されている。両親を殺された安岡紫音が、女流棋士となる過程で斉藤歩二階堂沙織といったライバルたちと出会い、プロになって初めてのトーナメント戦に挑む女流新旧王冠戦編が第1部。プロアマ、性別、年齢を問わない「プロアマオープントーナメント予選編」と「プロアマオープントーナメント本戦編」がそれぞれ第2部と第3部にあたる。特に第3部「プロアマオープントーナメント本戦編」では、紫音の両親を殺害した犯人の正体にも迫っていく。

あらすじ

女流新旧王冠戦編(1~11話)

安岡紫音11歳。幼い頃両親を殺害された彼女は、養父の安岡信次の指導のもと、将棋のプロになるべく研鑽を積んでいた。ついにプロへ昇格する1人を決める女流育成会リーグに出場した紫音は、そこで未来のライバルとなる斉藤歩二階堂沙織と出会う。

プロアマオープントーナメント予選編(12~29話)

安岡紫音13歳。女流1級となった紫音は、デジタルフォン社の小林の紹介で羽仁真名人の弟である羽仁悟と出会う。彼の会社が主催するプロアマオープントーナメントへの参加を勧められた紫音は、斉藤歩二階堂沙織、養父である安岡信次、そして羽仁兄弟も参加する完全実力制の戦いに挑むことになる。

プロアマオープントーナメント本戦編(30~50話)

厳しい戦いを経て、プロアマオープントーナメント予選を突破し本戦出場を果たした安岡紫音。初戦の相手が育ての親であり将棋の師匠でもある養父の安岡信次となったことに動揺する紫音だったが、自分の将棋に集中しようと覚悟を決め、対局へと臨む。一方刑事の横山は、石渡夫妻殺害事件の犯人がプロアマオープントーナメント本戦に残った羽仁悟ではないかとの疑いを持ち始める。

メディアミックス

TVアニメ

2007年10月から2008年3月にかけて、川瀬敏文監督によるTVアニメ版が放映された。主人公の安岡紫音役を川澄綾子、斉藤歩役を朴璐美、二階堂沙織役を水野理紗が演じた。シリーズ構成は山田隆司、キャラクターデザインは沼田誠也が担当している。

ゲーム

2013年9月、毎日コミュニケーションズからニンテンドーDS用ゲームソフト「しおんの王 The Flowers of Hard Blood」が発売された。内容は主人公の安岡紫音となってオリジナルストーリーを楽しむ「メインモード」と、作中のキャラクターたちと対局ができる「対局モード」、将棋のルールを学習できる「入門講座」で構成されている。

著名人との関わり

作品のイメージキャラクターとして、ファッションモデルの阿部純子が起用されている。TVアニメ放映時には、主人公の安岡紫音が着用しているものと同じ制服を来た阿部がPR活動を行った。

作家情報

かとりまさる(原作)

かとりまさるは、タレント、作家、棋士、そしてタロット占い師として活躍している林葉直子の執筆活動時の名義である。主な作品に『とんでもポリス』シリーズ、『キスだけじゃイヤ』シリーズなどがある。福岡県出身。

登場人物・キャラクター

安岡 紫音 (やすおか しおん)

12歳でプロ棋士となり、中学校に通いながら活動している少女。茶色のボブヘアに、主に襟のついた制服のような服装で対局に挑むことが多い。おっとりしているが非常に芯の強く、大らかで素直な棋風の持ち主。幼い頃に起きた石渡夫妻殺害事件により両親を殺害され、その際のショックから声を発することができなくなったため、会話はすべて筆談で行っている。 事件後、隣室に住む安岡信次、安岡幸子夫妻に引き取られ、プロ棋士である信次に指導を受け棋士を志すようになる。安定した精神を持ち、周囲を自然と和ませるところがある。安岡家の養子になる前の姓は石渡。

斉藤 歩 (さいとう あゆむ)

安岡紫音が11歳の時に女流育成会リーグで出会い、彼女のライバルとなる人物。暗い青色の長い髪の毛をおさげにし、前髪を眉上で斜めに短く切った髪型に眼鏡をかけている。荒削りで実践的な棋風の持ち主。髪型やかわいらしい服装から女性に見えるが実は男性で、病床の母を支えるために女性の格好をして「あゆみ」として女流に潜り込み活動している。 将棋は金銭を得るためのものと割り切っており、師事する神園修にも、「どのようなことがあっても、将棋を金銭を得るためのもの以上には思わないこと。それを破った時、不幸になるのは歩自身である」と教えられている。暴漢に襲われそうになった紫音を男性の姿の時に助け、その際に正体を知られるが、紫音が黙っていたことから彼女との関係が深まっていく。 高校は中退し、そば屋でアルバイトをしている。紫音と出会った時点ではまだアマチュアだったが、プロアマオープントーナメントの時点では女流初段に昇格している。

二階堂 沙織 (にかいどう さおり)

安岡紫音が11歳の時に女流育成会リーグで出会い、彼女のライバルとなる人物。紫がかった黒髪のストレートロングヘアに、前髪を斜めに分けた、やさしく品のある棋風の持ち主。小柄で可愛らしい紫音のことをすぐさま気に入り親しくなるが、ライバルとして強く意識もしている。実家は非常に裕福で、恵まれすぎているあまり退屈な日々を送っていた。 名人である羽仁真のことを「羽仁兄い」と呼び慕っているが、彼を異性としても棋士としても意識しすぎているところがある。紫音と出会った頃は女流初段だったが、プロアマオープントーナメントの時点では女流2段に昇格している。対局中など「正解を知りたい」と思う時、髪をかき上げる癖がある。

羽仁 真 (はに まこと)

プロ棋士を務める若い男性。現在の名人で圧倒的な実力を持ち、二階堂沙織の兄弟子でもある。真ん中で分けた茶髪に顎ひげを蓄え、スーツ姿で対局に臨むことが多い。子供の頃に事故で父親を亡くし、弟の羽仁悟と共に母親を支える貧しい暮らしを送っていたが、母親を亡くした際に棋士になることを決め上京した。将棋界における女流棋士への偏見を取り払い、強い人間が表舞台に立つ環境にしたいと考えている。 かつて神園修に弟子入りを志願したが、断られた過去がある。

羽仁 悟 (はに さとる)

羽仁真の弟。新鋭の実業家で、金融業やIT関連の企業買収等で手広く活動している企業の若社長。アマ棋士でもあり、小林の紹介で安岡紫音と出会い勝負を持ちかける。気さくな雰囲気だが、気心の知れないところがあり、飄々とした言動で故意に周囲へ揺さぶりをかける意地の悪い一面がある。かつては兄と共に将棋を指しており棋士を目指していたが、母親を亡くしたことがきっかけで兄弟の対局はなくなり、羽仁悟が棋士になることもなかった。 「指すものの心を表す」と言われる将棋においても、相手を惑わし嘘をつくような棋風の持ち主。

安岡 信次 (やすおか しんじ)

安岡紫音の養父で、段位は八段のプロ棋士。粘り強く決してあきらめない性格の持ち主。棋士としては遅咲きで、思うような対局ができない時期も長かったが年齢制限ギリギリの時期で4段に昇格し、40歳を過ぎてから名人戦の挑戦者となった。紫音の本当の両親である石渡夫妻とは隣室に住んでおり、石渡夫妻殺害事件の後、紫音を引き取って養子に迎えた。 ある一件で支援を受けたことから、安岡信次は神園修に大きな恩義を感じている。

安岡 幸子 (やすおか さちこ)

安岡紫音の養母でピアノ教師。紫音の本当の両親である石渡夫妻とは、紫音が安岡幸子のもとにピアノを習いに来たのがきっかけで知り合った。将棋の知識はなく、紫音の将来など、紫音と安岡信次だけで話し合って決める事柄が多いことに淋しさも感じているが、前向きに受け止め2人を優しく見守っている。紫音の足音を聞くだけで彼女の体調や気分を把握する力を持っている。

神園 修 (かみぞの おさむ)

段位は九段のプロ棋士。真ん中で分けた長髪に和服を着た、厳しい雰囲気の人物。弟子入り志願をした斉藤歩を訝しがるが、彼の実力と本当の性別を即座に見抜き受け入れる。妻の神園京子を亡くした精神的ショックから体調は思わしくなく、医者からは入院を勧められているにもかかわらず酒浸りの日々を送っている。家の中も非常に荒れており、歩の訪問時は「家に女性を入れたのは5年ぶり」と語っている。

久谷 啓司 (ひさたに とおる)

安岡信次の弟子にあたる20代前半の若い男性。前髪を上げて眼鏡をかけた穏やかな雰囲気の人物。14歳の時に信次へ弟子入りを志願し、現在の段位は奨励会3段。家から仕送りを受けながら棋士として活動を行っており、なかなか4段に上がれずプロになれないことを非常に気にしていた。しかし二階堂沙織と出会って彼女に想いを寄せ、その存在に刺激されるうちに実力を発揮するようになっていく。

横山 (よこやま)

安岡紫音の実の両親の殺害事件について調査している年配の刑事。石渡夫妻殺害事件の解決を刑事人生のしめくくりと考えており、何が起きても諦めず調査を続けたいと考えている。事件時に紫音が握りしめていた王将の駒から、犯人は将棋を指す人間ではないかと睨んでいる。

エリ

斉藤歩の友人で、同じそば屋に勤めるショートカットのラフな服装の少女。性別を偽って女性棋士として活動する歩を応援するため、彼がアルバイトに顔を出せない際はその分まで代わりに働いている。歩を応援するあまり、安岡紫音にいたずらの脅迫状を送り付ける。

小林 (こばやし)

携帯電話会社デジタルフォン社に勤める若い男性。一見腰が低く慇懃な雰囲気だが将棋の内容には一切興味がなく、棋士たちを見下したところがある。話題性を得られれば手段は選ばないと考えており、筒井と結託して棋士たちのゴシップ記事をばらまいている。女流新旧王冠戦など、デジタルフォン社がスポンサーを務める大会には顔を出しているが、素人であるため他の棋士の解説のもと観戦している。

斉藤 ふみ子 (さいとう ふみこ)

斉藤歩の母親で、ある病院の東館E-2号室に長期入院している女性。額を全開にしたストレートロングヘアの、優しい雰囲気の人物。自分が生きているせいで歩の人生が制限されると考えている。歩が将棋を指すことと、高校を中退していることは知らない。花が好きで、お見舞いに花束を贈られると非常に喜ぶ。

斉藤歩の父親 (さいとうあゆむのちちおや)

斉藤歩の父親。短く切った髪に痩せこけた頬をした、ろくに働かず酒浸りの生活を送っている人物。妻である斉藤ふみ子の病気は歩を産んだことが原因だと考えており、歩のみならず歩と親しいエリにも冷たく当たる。

大田 武 (おおた たけし)

安岡紫音がプロアマオープントーナメントで対局したアマチュア棋士の男性。短い髪にがっしりとした体格の人物。女流棋士やアマチュア棋士を見下しており、紫音のことも格下とみなしてからかうような対局を仕掛ける。

本間 素生 (ほんま すお)

安岡紫音がプロアマオープントーナメントで対局したアマチュア棋士の少年。無邪気で可愛らしい雰囲気の人物で、年齢も小学5年生と若いが、プロの村田9段に勝利したほどの実力を持つ。普段はインターネット上で将棋を指しており、対面で勝負をするのはプロアマオープントーナメントが初。そのため駒の扱い方が乱雑であったり対戦相手への礼儀を把握していないなど、やや幼いところがある。

no name (のーねーむ)

本間素生がインターネット上で出会った、安岡紫音の両親を奪った石渡夫妻殺害事件の犯人と思われる人物。ネット将棋で素生に勝利した後、犯人しか知り得ないはずの紫音の弱点を素生に教える。以前紫音を襲おうとした人物や、不審な電話をかけてくる人物とは同一であると考えられる。

瀬戸 一美 (せと かずみ)

羽仁悟の亡くなった恋人。ストレートロングヘアを1つに結んだ病弱な女性。安岡紫音の実父である石渡の会計事務所でアルバイトをしていたが、石渡夫妻殺人事件の翌日に持病からくる心臓発作で亡くなった。遺体に外傷はなく、その他薬物反応、外部からの侵入の痕跡もなく、警察は病死と断定している。悟に内緒で将棋を覚えようと、殺人事件の数日前にも安岡家を訪れている。 悟は自分の仕事に夢中になるあまり彼女との時間を持てず、1人で死なせてしまったことを悔やんでいる。

河合 節子 (かわい せつこ)

女流新旧王冠戦の参加者で、その時点における女流王者。女流新旧王冠戦の優勝候補でもある。安岡紫音のことは快く思っておらず、話すことができないために直接お礼を言うこともできない彼女が周囲に大切にされる理由が理解できずにいる。

筒井 (つつい)

新聞社に務める若い男性。額が見えるほど髪を短く切った、細面の人物。女流新旧王冠戦の際、安岡紫音に送られた脅迫状に関して、紫音を動揺させるようなぶしつけな質問をするよう観戦者に指示し、一部始終を大々的に記事にした。以降もデジタルフォン社の小林と結託し、ゴシップ記事を作成する。

安岡信次の友人 (やすおかしんじのゆうじん)

安岡紫音の養父である安岡信次の友人で、温泉旅館を経営する男性。スキンヘッドに髭を生やした、太い眉が特徴の人物。信次とは奨励会の同期で、棋士にはなれなかったため早い段階で旅館を継いだが、自分とは対照的に決して諦めない信次を尊敬していた。信次が紫音を引き取ると言った際は、彼が将棋から離れるのではと心配し反対していたが、実際に紫音と出会い考えを改める。

イベント・出来事

石渡夫妻殺害事件 (いしわたりふさいさつがいじけん)

安岡紫音が4歳の時に起きた、紫音の実の両親が殺害された未解決事件。家に押し入った犯人が刃物で石渡夫妻を刺殺し、家は血の海となった。紫音は別室にいて無事だったが、犯人を目撃した恐怖と、犯人から「事件について忘れろ」と言われたことで言葉を発せなくなった。現場には整然と駒を並べた将棋盤が残され、手がかりは紫音が握りしめていた血にまみれた「王将」の駒のみとなっている。

女流新旧王冠戦 (じょりゅうしんきゅうおうかんせん)

安岡紫音が参加した女性棋士限定の将棋大会。携帯電話会社デジタルフォン社がスポンサーとなって実現したトーナメント形式の新しい大会で、現役で直近1年間の成績が勝ち越した者と育成会に合格した者の計15名が参加できる。抽選で選ばれたファン30名が生の対局を5分間観戦でき、テレビを通して対局者と盤面が同時に見られるカメラ電話を活用した画期的なシステムが特徴。 持ち時間は各1時間で、準決勝までは午前と午後に1局ずつ行われる。優勝賞金は100万円で、準優勝は10万円。

プロアマオープントーナメント

安岡紫音が参加した将棋界前代未聞のアマプロ完全実力制オープントーナメント大会。主催はH&Kバンク、協賛は携帯電話会社デジタルフォン社。完全オープン制のためプロアマ性別年齢を問わず、参加料10万円を支払えば誰でも参加できる。3回戦まではチェスクロックを使用し、持ち時間は各3時間。持ち時間を使い切った後は一分将棋となる。 優勝賞金は5000万円。

その他キーワード

勾玉のペンダント (まがたまのぺんだんと)

安岡紫音が所持しているアクセサリー。1つの勾玉を紐に通して首から下げる、シンプルなデザイン。元は亡くなった紫音の実母の持ちもので、彼女の死後形見として紫音が受け取った。大切な対局には、紫音は必ず身に着けて臨んでいる。

クレジット

原作

かとり まさる

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