空色海岸

空色海岸

海辺の街を舞台に、悲しい過去を持つ兄弟と運命の再会を果たした女子高生の、複雑な恋愛模様を描くビーチサイドラブストーリー。「別冊花とゆめ」平成18年9月号から平成20年11月号にかけて不定期に掲載された。

正式名称
空色海岸
ふりがな
そらいろかいがん
作者
ジャンル
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概要・あらすじ

小学1年生の夏、引っ越してきたばかりの町で桜井朝は同じ年頃の少年に出会う。海辺で彼がくれたのは、波打ち際で見つけた大きなメノウだった。しかしそれ以降、少年に会うことはできず、大きなメノウは朝にとって大切な思い出の宝物となった。そんな彼女が高校生になったある朝、痴漢被害にあっていたところを助けてもらったことがきっかけで、学校の校務員を務める田中陸と出会う。

その時彼が落とした鍵に付いていたのは、朝の持つものと同じメノウの付いた、手作りのキーホルダーだった。思い出の宝物で繋がった彼に、朝はどんどん心惹かれていく。一方で、同級生の田中天人は同じ手作りの髪ゴムを持っており、自分の髪ゴムも陸のキーホルダーも自分が作ったものだと話す。

陸と天人は、理由あって学校屋上のペントハウスで暮らしている兄弟だった。天人が浜辺の漂着物で作った小物に惚れ込んだ朝は、彼に弟子入りし、ペントハウスに通い詰めることとなる。そして、田中兄弟との距離は急激に縮まっていくのだった。

登場人物・キャラクター

桜井 朝 (さくらい とも)

立石高校に通う女子高生。明るく活発で、面倒見が良いため、男子にも女子にも密かに人気がある。他人のためには一生懸命になる一方で、自分のこと、特に恋愛に関しては不器用な一面を持つ。田中天人が思い出の少年であることには気がついておらず、兄の田中陸に想いを寄せている。両親は離婚し、現在は母親と2人暮らし中。世間知らずな母親に代わり、料理を含む家事全般をこなしている。

田中 天人 (たなか てんと)

田中陸の腹違いの弟で、桜井朝の同級生。小学1年生の時に朝にメノウをあげた少年。朝に想いを寄せているが、その自覚は薄い。双子の姉である洋子が海で不幸な事故に遭って亡くなってからは一度も笑顔を見せたことはなく、高校生になった現在でも姉の死を乗り越えることができないままでいる。海辺の漂着物を拾い集め、アクセサリーなどの小物を制作する「シーボーンアート」が趣味で、その腕前はプロ級。

田中 陸 (たなか りく)

桜井朝を痴漢から救った青年で田中天人の腹違いの兄。立石高校の校務員を務めており、その仕事内容は校内の修繕を中心に多岐に渡る。生徒たちからは「陸兄」の呼び名で慕われ、誰にでも平等で優しく明るい性格から、生徒たちにとって最も身近で頼りになる兄貴的な存在となっている。

吉岡 杏梨 (よしおか あんり)

桜井朝のクラスメイトであり、親友の女子高生。「女子に敵が多い美少女」を自称している。朝が大好きで、彼女の恋路は応援するが、自分以外の女子生徒が朝と仲良くすることに嫉妬する。山田南平の別作品、『紅茶王子の姫君』に登場する女の子「杏梨」ののちの姿。

佐伯 満 (さえき みちる)

桜井朝のクラスメイトの女子高生。1年留年していたため、他のクラスメイトより1歳年上。留年してから1度も登校していなかったため、初めて登校した時にはクラス内で「窓際の美少女」として謎の人扱いされていた。気が強く自分勝手な振る舞いが多く、なかなか周囲からの理解は得難いタイプだが、実は人より純粋でもろい心の持ち主。朝が根気強く接したことが功を奏し、学校生活を共に過ごすことができるようになった。 それから朝とは、互いを思いやることができる親友となる。

桜井 恵 (さくらい めぐみ)

桜井朝の母親で、イケメンが大好き。元々お金持ちのお嬢様だったため、世間知らず。夫の浮気を原因のひとつとして離婚してからは、朝と2人で親の持ち物であるマンションで何不自由ない暮らしをしている。ごみ捨てから料理に至るまで、家事全般を朝に頼る毎日。子供っぽいところが多く見受けられ、娘も手を焼くほど。ただ、夫を失ったことで、当初は謝ることすら知らなかった頑なな性格も、多少の変化を見せた。

鈴木 幹夫 (すずき みきお)

海辺の漂着物を拾い集め、アクセサリーなどの小物を制作する「シーボーンアート」を得意とする高校生。その技術は高く評価されており、若手シーボーンアーティストの代表格として知られる。桜井朝たちが参加したフリーマーケットで、田中天人の作品が安価で売られていたことを威圧的な態度で批判したため、第一印象は互いに最悪のものとなっていたが、その後和解。 朝と天人と3人で作品作りをする仲間となる。

岡田 真由 (おかだ まゆ)

喫茶店「yanni」のオーナーを務める女性。優しく温かみのある女性で、鈴木幹夫をはじめとするお店に集まる学生を見守るお姉さんのような存在。お店には幹夫の作品を中心とした手作り雑貨が販売されている。

章子 (しょうこ)

田中天人の母親であり、田中陸の義母。娘の洋子を亡くして以来、心が壊れ正常な状態を保てなくなった。異常行動に走ることもあり、介助をしてくれる女性がすぐ側について生活している状態。天人に対しては異常に執着し、陸には異常なほどにきつく当たり散らす。

洋子 (ようこ)

田中天人の双子の姉であり、田中陸の腹違いの妹。幼い頃、海の岩場で天人と洋子の2人が波にさらわれそうになり、天人がかろうじて洋子を掴んでいたが、怪我を追っていた天人の限界を察し、陸が手を放すように言ったことで、洋子だけが帰らぬ人となった。

ベンケイ

田中陸と田中天人がペントハウスで一緒に暮らしている15歳の雄犬。2人にとってはペット以上の大切な存在。一方でベンケイにとっては、陸は主人、天人は下僕としての認識がある様子。とはいえ天人を思いやる気持ちは強く、姉を亡くして心が壊れていた幼い天人にとって、ベンケイはなくてはならない存在となっていた。

場所

yannni (やんに)

岡田真由がオーナーを務めるカフェバー。桜井恵のアルバイト先でもあり、のちに佐伯満もこの喫茶店でアルバイトをすることになる。店内では鈴木幹夫の作品を中心に手作り雑貨を販売しており、オーナーの意向で田中天人の作品も販売されることになる。それによって、何かと桜井朝たちのたまり場として活躍する場所。

その他キーワード

ビーチコーミング

砂浜の漂着物を拾い集めること。砂浜を手を「コーム(くし)」のようにして探す様子から名付けられたとされている。作中では「浜拾い」とも呼ばれているが、これは作者である山田南平が子供の頃に使っていた言葉であり、作者の造語である。砂浜の漂着物として代表的なのものは、流木や貝殻、サンゴのほかに、ガラスの欠片やタコノマクラ(ウニの仲間)などがある。

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