無頼侍

無頼侍

荒んだ幕末の日本を舞台に、賞金首の男と旅浪人の旅を描いたアクション時代劇。鈴木マサカズの2作目で、サルが主役のコメディ初連載作『サルぽんち』から大きく作風を変えて「コミックビーム」に連載された。

正式名称
無頼侍
ふりがな
ぶらざむらい
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

鈴森岸十郎は、自らを「無頼侍」と自嘲する流れ者の浪人。たまたま旅の途中で、百両の賞金首である寛壱という男と出会い、紆余曲折の末、数人の道連れとともに妹の仇を追っている、という寛壱の旅に同行することになる。修羅の道を行くような過酷な旅の末、一行は仇討ち騒動の真相に辿り着く。

登場人物・キャラクター

鈴森 岸十郎 (すずもり がんじゅうろう)

流れ者で博打が趣味のさえない旅浪人。ぶらぶらしていることから「無頼侍」と自称している。賞金百両を求めて寛壱の命を狙うが、鼻を斬り落とされてあっけなく返り討ちに遭う。その後は鼻当てを身につけるようになり、紋太、健二郎の2人とともに、賞金目当てに執念深く寛壱を追い始める。しかし、いつしか寛壱の仇討ちの旅に同行するようになる。 善人と言うほど善人でもなければ、悪人というほどの悪人でもないが、根っこの部分ではお人好し。

寛壱 (かんいち)

百両の懸賞金のかかった賞金首。凄まじいまでの腕前を持った剣客。もとはれっきとした侍だったが、「親と妹を殺した」という疑いをかけられて役人を殺め、以後お尋ね者「妹殺しの寛壱」と呼ばれている。妹を殺めた真犯人である溝鼠という人間を追う旅の途中で鈴森岸十郎と出会い、幾度かの悶着を経て、旅の同行者となる。岸十郎にはほとんど一方通行ながら友情のようなものを感じており、岸十郎が自分に向かって刀を抜いた時にも命を奪わず、鼻を落とすに止めたのもそのためである。 溝鼠が待つという嵌蛍寺に向かっている。本物の溝鼠とは過去に面識があるため、偽溝鼠に騙されることもなかった。

千代松 (ちよまつ)

蛇山の藍の手下のヤクザ者。本人に自覚はないが、実際に馬鹿なので「馬鹿の千代松」「馬鹿松」などと呼ばれている。いずれ藍と夫婦になって組を自分のものにしようと考えているが、藍からは何とも思われていない。紆余曲折の末、鈴森岸十郎と寛壱の旅に最後まで同行することになる。弟の田子作と、故郷に残してきた両親のことだけは、本心から気にかけていた。 マッサージが上手で、そこだけは本当の意味で藍に気に入られている。

溝鼠 (どぶねずみ)

正体不明の人物。鈴森岸十郎は溝鼠の名さえ知らなかったが、恐ろしい悪人である、という噂が渡世人の世界に知れ渡っている。老人だとも、美少年だとも、はたまた女なのだとまで言われている。確かなのは、寛壱の妹を殺した真犯人であり、そして寛壱に嵌蛍寺で待つという言伝を残している、ということのみである。

紋太 (もんた)

寛壱の賞金を狙うため、鈴森岸十郎と手を組んだ浮浪児。健二郎の兄。しかし本心では岸十郎を利用するだけ利用して、賞金は健二郎と山分けするつもりでいた。寛壱の旅の仲間が次々と脱落し、あるいは賞金を諦めるようになっていくなか、最後まで一行を追い続け、旅の終着地である嵌蛍寺まで辿り着く。

健二郎 (けんじろう)

浮浪児で、紋太の弟。紋太とともに鈴森岸十郎に同行し、寛壱を追っていた。お結と出会い、彼女が安住の地を見つけた時に、ともに一行から離脱。その後はお結と2人、仲良く暮らす。紋太ほどのしたたかさはなく、どちらかといえば善良な少年である。

蛇山の藍 (へびやまのあい)

主に博打をシノギにしているヤクザ「蛇山組」の女組長。鈴森岸十郎や千代松に惚れられているが、蛇山の藍の方はまったく相手にしていない。用心棒だった木村六兵衛を斬った寛壱を、新しい用心棒に迎え入れる。のちに寛壱が旅立った時、突如として組を解散すると宣言。千代松他数人の手下だけを率いて、寛壱の旅に同行する。 何を考えているのか分からないミステリアスな女性で、その真意は最後まで誰も知らなかった。実は天性のマゾヒストであり、「寛壱に斬られたい」というのが、蛇山の藍の本当の願いであった。

お結 (おゆう)

奉公に出るために旅をしていた村娘。山賊に襲われたところを、通りすがりの寛壱に助けられた。一時的に寛壱に同行し、のちに紋太、健二郎の兄弟と意気投合。旅の途中で健二郎とともに一行から離脱し、2人で畑を耕して暮らす。

偽溝鼠 (にせどぶねずみ)

鈴森岸十郎が旅の途中で出会った野武士の頭目。悪党だが、小心な臆病者。「俺は溝鼠だ」と名乗り、岸十郎がその情報を伝えるために寛壱に再接触を図る、という出来事のきっかけを作る。溝鼠を名乗っていたのは、本物の溝鼠に「溝鼠と名乗って、寛壱という男が来たら嵌蛍寺で待っていると伝えてくれ」と言われていたため。 寛壱からはさしたる興味も持たれなかった。自身の手下であった田子作を寛壱と間違えて斬ってしまったため、田子作の兄である千代松の手で斬殺される。

田子作 (たごさく)

千代松の弟。鈴森岸十郎が旅の途中で出会った野武士の一党に、下っ端として加わっていた。兄に「両親は死んだ」ということを伝え、もう兄弟の縁など切れていると告げた。それでも千代松は弟のことが心配で、どうか田子作を斬らないでくれと、寛壱に頼み込む。寛壱にとっては何の関心もない相手であったので、実際斬られることはなかった。 ところが、自分の親分である偽溝鼠に誤って斬られてしまい、命を落とす。

木村 六兵衛 (きむら ろくへえ)

蛇山の藍に雇われていた、ヤクザ「蛇山組」の用心棒。賞金目当てで寛壱を斬ろうとしたが、あっけなく返り討ちに遭って首をはねられる。実は同性愛者で、寛壱のような男を、自分の荒棒で蹂躙したいという欲望を持っていた。それが異名である「荒棒の六兵衛」の由来だったが、その真実は、結局誰にも知られることはなかった。藍だけは薄々、木村六兵衛の本性を見抜いていた様子。

たえ

寛壱の妹。家柄の良い武家の娘であったが、身分に関わらず、どのような人間に対しても分け隔てなく接する、心の優しい、ある意味では過剰なまでにお人好しの娘。溝鼠と出会って殺害されたが、実はたえと溝鼠の間には、とある経緯があった。

場所

嵌蛍寺 (がんけいじ)

寛壱と鈴森岸十郎らの旅の終着地。溝鼠が、寛壱に「この地で待つ」と伝えていた場所。嵌蛍寺そのものは、名前の通りのただの寺で、ごく普通に住職や、寺に住まうその他の人々がいて、日々の暮らしを送っている。

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