華の神剣組

華の神剣組

現代社会の闇に潜む邪悪な鬼と、その鬼に対抗するため作られた組織、神剣組の戦いを描く剣劇バトルアクション。鬼との戦いを通じて成長する少年達の心と絆を描いた和風ファンタジー。「月刊Gファンタジー」2000年7月号から2004年4月号にかけて連載された作品。

正式名称
華の神剣組
ふりがな
はなのしんけんぐみ
作者
ジャンル
和風ファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1巻

日本一の剣士を目指す犬崎高丸は剣道大会の決勝で、卑劣な手段で勝ちを得ようとする赤崎京一を打ち破り、日本一の剣士の座を手にした。しかし敗北を恨みに思った赤崎は、心の隙間を邪悪なに突かれ、異形の怪物に変貌してしまう。その圧倒的な力によって危機に陥る高丸だったが、雉宮一真が率いる神剣組に助けられ、鬼と化した赤崎の脅威を跳ね除ける。そして高丸は、真の日本一の剣士を目指すために神剣組に入隊し、人と鬼の闘争に身を投じていく事になる。雉宮による厳しい訓練も、持ち前の負けん気の強さで乗り越えた高丸は、神剣組局長の榊上剛賢により神剣斬鬼丸を授けられ、見習い隊員としての一歩を踏み出す。

第2巻

見習いとして一歩を踏み出し始めた犬崎高丸は、雉宮一真神剣組の仲間と共に、との戦いに明け暮れていた。そんな中、普段とは異なる行動を取り始めるようになった鬼達に不穏さを感じた雉宮達は、独自に調査を開始。ついに人を鬼化する謎の薬「禁断の木の実」の存在にたどり着く。警戒を強め、さらに薬についての捜査を進めるうちに、高丸はふとした偶然から薬を売る現場を目撃。だがいくつかのアクシデントが重なった結果、「禁断の木の実」が無差別にばら撒かれ、大量の鬼化事件が発生する。そして40体以上の鬼に囲まれた高丸は、無抵抗の子供をかばった事で敵の攻撃を受け、意識不明となってしまう。

第3巻

意識を取り戻した犬崎高丸は、大量のの死体の上に立つ二刀流の大男、鬼堂檜の姿を見る。檜はかつて鬼によって両親を殺され、同時に重傷を負った妹の鬼堂槇が心を失ってしまったという過去を持っていた。槇は自分達を襲った鬼を見つけるため、一人で鬼を殺し続けていたのである。だが、神剣組で鬼を人に戻す活動をしている高丸にとって、鬼を殺す事は到底受け入れられない事であった。一方、「禁断の木の実」を巡る事件の黒幕、阿部玲一は、檜を計画の邪魔者と見なし、側近である夜刀神舞螺に抹殺を命じていた。関係者を皆殺しにされ、最愛の妹、槇まで人質に取られた檜は、夜刀神に戦いを挑むが、まるで歯が立たない。絶体絶命の危機の中、それでも自分を守ろうとした檜の姿に、槇は自分の心を取り戻す事に成功。同時に、異常を察知して駆けつけた神剣組によって夜刀神は倒され、檜は間一髪のところで救われる。こうして神剣組に身を寄せる事となった檜は、リハビリに励む槇の姿を見て、自分も前に進む事を決意し、神剣組に入隊するのだった。一方、夜刀神を撃退された阿部は、今までの実験をもとに鬼による兵隊、鬼兵隊を結成し、神剣組に戦いを挑む。

第4巻

神剣すら通用しない鬼兵隊隊長の八瀬源一郎だったが、犬崎高丸が打ち込んだ一撃が突破口になり、全員の力を合わせる事で神剣組は戦いに勝利した。阿部玲一は八瀬が破れた事で作戦の失敗を悟るが、その瞬間、彼らを大きな地震が襲う。この地震が「原種の鬼」の復活の予兆だと察知した榊上剛賢と阿部は停戦し、当面は原種の鬼を共通の敵とする事を約束する。そんな中、大きな地震によって町の日常を一夜にして破壊した新たな敵に憤る高丸に対し、雉宮一真榊上桃也、剛賢は、かつての神剣組を壊滅にまで追い込んだ原種の鬼の事を語り始める。今から10年前。それはたった一人の隊士の裏切りから始まった。当時素行に問題があった大獄影二は、四鬼王覚裕にたぶらかされ、達を手引きしてしまう。鬼達は雉宮の父親を殺し、さらに次々と隊士を手にかけていくが、当時5歳だった桃也の活躍によって、多くの犠牲を出しつつも事件はかろうじて終結したのだった。過去を語り合った事で高丸と雉宮は絆を深め、打倒原種の鬼への思いを新たにする。

第5巻

神剣組は、復活した原種の鬼への対策を進めていた。そんな日常の中、犬崎高丸は街中で「ショコラ」と名乗る少女と出会う。交友を重ねた二人は甘い雰囲気になるものの、その関係に嫉妬した垣内紅葉の横槍で、うやむやになってしまう。紅葉を邪魔者と認識したショコラは、ゾンビを作って紅葉を襲撃。神剣組の活躍、そして八瀬源一郎率いる鬼兵隊の援護によって、ゾンビを撃退する事には成功するが、これによりついにショコラ自らが戦線に立つ事となる。ショコラは高丸と紅葉に、邪悪な吸血鬼である自分の素性を明かし、圧倒的な実力をもって彼らを襲う。八瀬すら一撃で倒すショコラに、神剣組は苦戦するが、紅葉の機転と高丸の底力によってかろうじて勝利を手にする。だが、ショコラを完全に滅する事は叶わず、そこにショコラを助けに来た四鬼王田村丸が出現。一太刀でビルすら断ち割る田村丸に戦慄を抱く神剣組だったが、そこに残りの四鬼王も現れ、事態はさらに混迷を深める事となる。

第6巻

四鬼王が姿を現した事で、ついに人ととの最終戦争が勃発。ショコラとの戦いによって満身創痍の犬崎高丸達は絶体絶命の危機を迎えるが、応援に来た榊上剛賢鬼堂檜阿部玲一の助けもあり、どうにか撤退する事に成功する。だが榊上桃也は、ショコラとの戦いで気を失って以降、周囲の人をすべて皆殺しにして血にまみれる、という悪夢にうなされていた。目覚めた桃也は、あの悪夢が自分自身の願望であると自覚し、仲間を斬りたくない一心から神剣組を離れる事を決意。そして桃也は一人、富士の樹海にあるという原種の鬼の本拠地、鬼辰殿を目指すのだった。桃也の不在に気づいた高丸達は、桃也の向かう先が敵の本拠地だと気づき、彼を助けるために同じく鬼辰殿を目指す。桃也は次々と現れる原種の鬼を斬り捨てながら進み、ついには最強の原種の鬼である田村丸すら降す。しかし鬼を斬るたびに、その姿を変貌させていく。道中、桃也はショコラを不意打ちして力を奪い取った大獄丸を斬り、ついには最後の四鬼王、天海をも斬り伏せる。しかしその瞬間、桃也自身が鬼皇として覚醒してしまう。

第7巻

榊上桃也の正体は鬼皇の器であった。その器に9999匹の原種の鬼の血と四鬼王の血が注がれる事で、桃也は鬼皇、桃也として完全に覚醒。桃也に斬られつつもかろうじて一命を取り留めた四鬼王、田村丸は、ショコラの遺体を抱きながら、自分達が鬼皇復活のエサに過ぎなかった事を悟り、最後の意地から鬼皇討伐を決意する。そのために犬崎高丸の持つ斬鬼丸を欲する田村丸だったが、戦いの中で成長する高丸を一人の戦士として認め、彼に鬼皇の真実を伝える。そして愛刀、斬神丸と斬鬼丸が融合して生まれた最強の神剣天破剣と、自らの遺志を彼に託すのだった。高丸は戦いの中で心を通じ合わせた田村丸の言葉を信じ、鬼皇として覚醒した桃也と戦う事を約束する。そして高丸は桃也を取り戻すため、鬼皇との最後の戦いに挑む。

登場人物・キャラクター

犬崎 高丸 (けんざき たかまる)

日本一の剣士を目指す少年。年齢は15歳。学校では剣道部に所属しており、全国レベルの剣の腕を持つ熱血漢。さらに鬼に直面しても物怖じしない度胸を買われ、神剣組にスカウトされた。得意技は、恵まれた腕力によって上段から打ち出される「一胴両断」。全国大会でもこの技で勝ちを得たほか、鬼達との決め技としてもよく使っている。 入隊当初は猟奇的な鬼の犯行を直視できなかったり、神剣組の数々の通過儀礼に年相応の不満を抱いていたが、鬼との戦いの中で次第に鬼を切る剣士として成長していく。また鬼堂檜が加入して以降は、初の後輩と、彼の前では何かにつけて先輩風を吹かす。鬼が鬼を殺すために鍛えた、といういわくつきの神剣、斬鬼丸を使う。

雉宮 一真 (きじみや かずま)

神剣組一番隊組頭を務める男性。眼鏡をかけた美青年で、チームの頭脳的存在。榊上桃也とは幼なじみの間柄。神剣組の教育係を担っており、新入りである犬崎高丸の事も徹底的にしごいた。しかしその裏には、鬼から人を守るという人一倍強い使命感があり、新入りである高丸を無駄死にさせないよう、雉宮一真なりに思いやりを持った行動であった。 10年前に起きた神剣組壊滅事件の数少ない生存者であり、目の前で父親を殺して逃げた大獄丸こと「大獄影二」の存在を追っている。父親の形見でもある神剣、出水守兼吉(いずみのかみかねよし)を使う。得意技も、父親が得意としていた光速の突き攻撃である「鉄光弾」を受け継いでいる。

榊上 桃也 (さかがみ とうや)

神剣組の剣士。年齢は15歳。神剣組局長である榊上剛賢は義理の父親で、雉宮一真とは10年来の幼なじみ。女子と見紛うばかりの紅顔の美少年だが、現在の神剣組では最強の腕前を誇る。甘党で、つねにお菓子を食べていたり、笑顔でいたりと子供っぽい様子が目立つ。幼少の頃は今とは打って変わって無表情、無感情だったり、明るく振る舞っている裏では、人の感情を理解できないと思ったりなど、その素性には謎が多い。 使う神剣は無銘だが、恐ろしいまでの業物。得意技はないが、目にも止まらぬ剣戟は、鉄すらたやすく切り裂くほどで、神剣組の中でも別格の剣の腕前。その剣の腕前に目を付けられ、犬崎高丸から一方的にライバル視されている。

猿渡 棗 (さわたり なつめ)

神剣組において唯一の槍使いの男性。飄々とした性格の女好きで、ナンパを趣味とし、ヒマさえあれば女性に声をかけているが、基本的にはふられている。普段の気さくな態度の裏には、かつて鬼に殺された姉への憧憬がある。鬼との戦い、特に女性を人質に取ったり、襲ったりする鬼に対しては強い憎悪を見せる。「宝勝院流(ほうしょういんりゅう)」の槍術をおさめており、得意技は、槍による縦横無尽の攻撃である「美人斬り」。 また格闘術にも長けており、強敵相手には槍を使うと見せかけた、格闘術によるフェイント攻撃を使う事もある。

鬼堂 檜 (きどう いぶき)

二刀の剣を振り回す大男。身長190センチ以上で、年齢は17歳。鬼に復讐を誓った剣客であり、鬼を殺すためヤクザの用心棒を転々としていた。当初は、鬼を人に戻すという神剣組の信条を受け入れられずに反目していたが、のちに和解。以降は神剣組の一員として戦うようになる。並外れた怪力による二刀流を得意としているため、二刀流に相性のいい対の刀である、国重作の神剣、雷祖(らいそ)と飛廉(ひれん)を与えられた。 また鬼堂檜自身は使う事を好まないが、奥の手として、かつての仇敵であった鬼から与えられた鬼化能力を使う事もできる。

鬼堂 槇 (きどう こずえ)

鬼堂檜の妹。鬼によって四肢を失い、心も壊された。神剣組によって助けられて以降は、檜と共に神剣組に身を寄せ、鈴鹿に義足と義手を作ってもらい、リハビリに励んでいる。

垣内 紅葉 (かきうち くれは)

犬崎高丸の幼なじみの少女。面倒見のいい性格で、がさつな高丸のフォローをしている。そのため、周囲からは夫婦扱いされているが、垣内紅葉自身は満更ではなく思っている。剣道をたしなんでおり、暴漢程度なら簡単にあしらうが、鬼を相手にしては手も足もでない。

黛 清姫 (まゆずみ きよひめ)

髪型をツインテールにした美少女。垣内紅葉のクラスメイト。紅葉とはいい友人関係を築いており、紅葉を通じて神剣組のメンバーと交流を深めていく。鬼に襲われていたところを榊上桃也に助けられて以降、彼に淡い思いを寄せるようになる。

鈴鹿 (すずか)

神剣組の重鎮。面倒見がよく、雉宮一真達の姉的存在として見守る美女。ことわざを使う事を好むが、どこか間違っているのがお約束になっている。戦闘力が低いために鬼達との戦いで前に出る事はないが、隊士達の家事や経理など身の回りの世話をしている。犬崎高丸からは憧れの存在として見られているが、デートに誘われた際には、代わりに垣内紅葉を連れて行かせる事であしらうなど、年上としての度量の深さを見せる。

榊上 剛賢 (さかがみ ごうけん)

神剣組局長を務める男性。榊上桃也の義理の父親。神剣組のメンバーからは、「局長」と呼ばれる。現在は若人を見守る好々爺だが、かつては「阿修羅」と評されたほどの剣豪だった。

赤崎 京一 (あさざき きょういち)

辰武館道場所属の男子高校生。去年の剣道の全国大会優勝者。卑怯な手を使っても勝つ事に執着しており、有望な選手相手には、取り巻きを利用して闇討ちや足止め工作を行ったりしていた。ただ実力がないという訳ではなく、神剣組のスカウトに名前が挙がるほどの腕前は持っている。しかし赤崎京一の腕前を見た雉宮一真と榊上桃也は、二人そろって「性格の悪い剣」と評している。

阿部 玲一 (あべ れいいち)

官房長官の私設秘書を務める男性。だが裏では裏社会で暗躍するなど、謎の多い人物。陰陽術をあやつり、人でありながら鬼を使役する。実験のため人を人工的に鬼化する薬品「禁断の木の実」をばら撒き、社会を混乱に陥れていた。のちに人工的に鬼化した兵士を束ねて鬼兵隊を結成し、神剣組に戦いを挑む。

夜刀神 舞螺 (やとがみ まいら)

阿部玲一の側近。妖艶な雰囲気を漂わせる妙齢の女性。髪に魔力を流し込む事によって鋼以上の硬度にする事ができ、髪を操った変幻自在の戦闘を得意とする鬼。

八瀬 源一郎 (やせ げんいちろう)

阿部玲一の側近。阿部が組織した鬼兵隊の隊長を務める大男。鬼としての驚異的な身体能力に加え、格闘術「鬼神拳」を駆使して戦う。神剣組とは志の違いから戦う事になったが、鬼から人々を守る意志に違いはなく、ショコラとの戦いで共闘した際には、彼の叱咤が犬崎高丸や雉宮一真の意識を変えるきっかけとなった。

ゼン鬼 (ぜんき)

阿部玲一の配下。ゴ鬼とは姉妹。人が変化する鬼とは違い、生まれながらの生粋の鬼で、童女の姿をしている。封印されていたところを阿部によって解放され、以降は彼の下働きのような真似をしている。基本的にゴ鬼と二人組で行動する事が多い。

ゴ鬼 (ごき)

阿部玲一の配下。ゼン鬼とは姉妹。人が変化する鬼とは違い、生まれながらの生粋の鬼で、スタイルのいい少女の姿をしている。基本的にゼン鬼と二人組で行動する事が多いが、頭が悪く、現代社会にも適応していないため、予想外のトラブルを引き起こしがち。「禁断の木の実」の売人などもしていたが、偶然居合わせた犬崎高丸に勘づかれ、トラブルの末に薬をばら撒いたりしている。

田村丸 (たむらまる)

1300年生きる原種の鬼。四鬼王の中で最も古株であり、最強ともされる鬼の剣士。「大戦鬼」の異名でも呼ばれる。歴戦の兵の雰囲気を漂わせる大男で、田村丸が振るった一太刀でビルが真っ二つになるなど、その戦闘力は強力無比の一言。同じ四鬼王であるショコラに懸想しており、彼女の事になると、普段の超然とした態度が一変して冷静ではなくなる。 そのため、ショコラが黙って鬼辰殿からいなくなった際には、四鬼王最年長にもかかわらず、ほかの四鬼王が呆れるほどうろたえていた。実は犬崎高丸の持つ斬鬼丸を打った本人であり、田村丸自身は斬鬼丸の対となる「斬神丸(ざんじんまる)」を使う。得意技は、上段からの神速で刀を振り下ろす「鉄槌」。

ショコラ

800歳の吸血鬼。外見は眼鏡をかけた美少女の姿をしている。珍しい海外生まれの原種の鬼で、400年前に来日して鬼皇の配下入りし、四鬼王となった。血を吸った者をゾンビにしてあやつったり、朝日を浴びると能力が弱体化するなど、ほかの原種の鬼にはない特徴を持つ。高い戦闘能力と鬼特有の残虐性の持ち主だが、恋やおしゃれなどに強い興味を示すなど、見た目相応の部分もある。 普段構って来る田村丸には絶対の信頼を寄せており、田村丸が傷ついた時は慌てたり、構ってくれない時は拗ねたりしている。

天海 (てんかい)

老僧侶の姿をした原種の鬼。年老いた男性の姿をしているが、年齢は400歳と四鬼王の中では大獄丸に次いで若い。四鬼王の中では鬼皇への忠誠心が最も高く、直接的な戦闘よりも謀略を得意とする。明智光秀となって、織田信長をたぶらかして敵対勢力を滅ぼした。ほかにも、天海として豊臣家に取り入り、世に乱をもたらすなど、古くから歴史の裏で暗躍している。 鬼皇の真実を知っており、原種の鬼やほかの四鬼王を言葉巧みにあやつり、真の鬼皇復活計画の実現を目論む。

覚裕 (かくゆう)

狩衣に烏帽子をかぶり、三つ目の仮面をつけた原種の鬼。四鬼王の一人で、「サトリ」と呼ばれる妖怪の能力を持ち、人の心を読み、たぶらかす事を得意とする。また自らの配下の鬼に、テレパシーのように思考を伝える事もできる。10年前、大獄影二の暗い欲望を刺激し、自らの手駒として取り込む事に成功した。彼を使って当時の神剣組を壊滅にまで追い込むが、当時5歳だった榊上桃也に両腕を斬り落とされた。 追い詰められ、巨大な蜘蛛の姿になって立ち向かったが、眉間を桃也の剣に貫かれ、自分の能力が通じない桃也の存在に驚愕したまま消滅した。鬼皇に対しては従っている振りをしているが、翻意を抱いており、神剣組を壊滅したあとは、取り込んだ大獄を利用して鬼皇に成り代わるつもりであった。 覚裕亡き後、四鬼王としての彼の後釜には、彼が誑(たぶら)かした大獄が大獄丸と名を変えて収まっている。

大獄丸 (だいごくまる)

10年前、神剣組の若手の中でも実力派とされていた男性剣士。当時の名は「大獄影二」。勝利にこだわるあまり、卑劣な手段も平気で使うため異端な存在とされており、雉宮一真の父親によって度々厳しい指導を受けていた。力を追い求めつつも、鬼の誘惑には耳を貸さずにいたが、覚裕によって自らの求める欲望をさらけ出されてからは、転がるように外道へと身を落としていった。 覚裕の霊薬「魔爪肯液」によって、他者の力を吸収する「魔爪」を手にしたのち、まず雉宮の父親を吸収。その後は神剣組の追っ手を撒きつつ、全国の武術家を殺しては吸収し、その力を増していった。現代では鬼として「大獄丸」を名乗って原種の鬼に合流し、覚裕亡きあと、空席となっていた四鬼王の座に就いている。 ただし、ショコラからは人間からの成り上がりとして、また田村丸からは戦う力もない女子供も殺める卑劣漢として、軽蔑されている。大獄丸自身にも他の四鬼王への仲間意識や鬼皇への忠義心はかけらもなく、力を付けて、いずれは皆殺しにするつもりでいる。

集団・組織

神剣組 (しんけんぐみ)

かつて幕末の時代に、鬼によって荒れ果てた世を守るため組織された剣客集団。現代社会でも政府直轄の組織として活動している。警察と協力関係にあり、鬼の関連する事件では協力し合っている。ただし、10年前に強力な鬼の襲撃を受けて、隊士の大半が殺害されており、実働部隊は雉宮一真、榊上桃也、猿渡棗の三人しか残っていない。 剣道大会などで有望株を見つけてはスカウトしているが、いずれも訓練に耐えられず早々に逃げ出しており、なかなか戦力の拡充が図れずにいる。

鬼兵隊 (きへいたい)

阿部玲一が作った私設組織。「禁断の木の実」を使って鬼化した兵士2000人以上を擁する。驚異的な身体能力に加え、元が兵士なだけあって一糸乱れぬ連携能力を誇る。

四鬼王 (しきおう)

原種の鬼の中で、鬼皇の次の位階に位置する四体の鬼。かつては田村丸、ショコラ、天海、覚裕が就いていたが、10年前に覚裕が討たれて以降、人間の成り上がりである大獄丸が代わりに就いている。鬼皇が不在のあいだは、四鬼王が原種の鬼のまとめ役を担っており、その真の目的は、鬼皇復活のあかつきに築かれる「鬼の王国」に向けて、戦力の拡充を図る事である。

場所

鬼辰殿 (きしんでん)

鬼皇の座する豪華絢爛な宮殿。富士山の麓、樹海の奥深くにある洞窟のさらに奥、地の底に存在する原種の鬼の本拠地。入り口は「鬼哭門(きこくもん)」と呼ばれる巨大で堅牢な門に閉ざされており、強力な門番の存在もあり、今まで侵入者の存在を拒んできた。

その他キーワード

(おに)

人の暗い心に魔が取り憑き、異形と化した存在。人を超える身体能力を持つほか、独自の特殊能力を持つ者も多い。また鬼になった者は残虐性が増し、人を食いたいという欲求が湧き上がる。人を食った鬼はさらに凶悪で強力な存在になり、日常的に猟奇的な犯行を重ねていく事となる。

原種の鬼 (げんしゅのおに)

生まれながらの鬼。「真鬼」とも呼ばれる。鬼とは根本的に違う魔力の強さを持つ。かつての神剣組は、たった一人の原種の鬼によってほぼ壊滅させられる事となった。頂点に鬼皇を頂き、四鬼王がそれを補佐する形で動かされている。基本的に原種の鬼はすべて鬼皇ないし四鬼王の配下だが、阿部玲一の配下のゼン鬼やゴ鬼のように、ごく稀にはぐれものともいうべき原初の鬼も存在する。

鬼皇 (おにおう)

原種の鬼達の頂点に立つ存在。かつて鬼皇だった桃李は、5000年の長きにわたって鬼達を統治してきたが、50年前に寿命を迎え、崩御している。ただし彼は自らの復活の準備を終えており、鬼皇復活が原種の鬼達にとって最大の悲願である。鬼皇が復活したあかつきには、今は地下に潜んでいる鬼達が地上に侵攻し、「鬼の王国」を築くとされている。

神剣 (しんけん)

鬼を切るための刃。「神剣」といわれているが、猿渡棗の槍など形状はさまざま。神剣で斬った鬼はその邪悪な魂だけが祓われ、取り憑かれた人間を解放する事ができる。なお、神剣以外の武器で殺した場合、取り憑かれた人間も、鬼もろとも死んでしまう。

斬鬼丸 (ざんきまる)

神剣の中で一際目立つ形状をした大振りの刀。神剣組の一員となった犬崎高丸が、自分用に選んだ神剣。鬼が鬼を殺すために鍛えた剣といわれ、その特異な形状もあって、これまで扱えた者は皆無だった。しかし「一胴両断」を得意とする高丸と相性がよく、高丸に選ばれて以降は、愛剣として彼を支え続ける。

天破剣 (てんはけん)

犬崎高丸の斬鬼丸と田村丸の斬神丸が融合して誕生した最強の神剣。斬鬼丸よりさらに一回り大きな大剣の形状をしている。選ばれた主が使えば山を崩し、天を破るとさえいわれる剣。高丸が田村丸との戦いで勝利した際に、田村丸の遺志と共に託される事となった。

禁断の木の実 (きんだんのきのみ)

人間を鬼に変える禁薬。阿部玲一が広めたもの。利用者の間では「フォービドゥンフルーツ」とも呼ばれ、世間では新種の麻薬として扱われている。裏世界を通じて社会に出回っており、町のチンピラや学校の教師などが鬼化する原因にもなっている。一度、阿部の部下の失態で大量に出回ってしまい、無差別に人々を鬼化する大事件の引き金にもなった。

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