観用少女

観用少女

希少な生き人形観用少女を販売する人形店の店主をガイド役にした、笑いあり、涙あり、ときにはホラー要素ありのファンタジー短編集。特別な銘を持つ人形のほかは、登場人物や施設の固有名詞は一切示されない形で物語は進む。

正式名称
観用少女
ふりがな
ぷらんつどーる
作者
ジャンル
ファンタジー
 
ホラー
関連商品
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概要・あらすじ

人形自らが買主を選び、価格も法外という、プレミアム人形観用少女。そんな高価な人形の育成には、ミルクと砂糖菓子以外は与えてはいけないという掟があった。だが、人形店のショウウィンドゥ越しに買主として見込まれた青年は、観用少女の懇願に抗いきれず掟をやぶる。(「食卓のミルク」より)

登場人物・キャラクター

難病の青年 (なんびょうのせいねん)

病魔に侵されたうえ、職まで失ったきまじめな青年で、名前はない。人形店の前で行き倒れたところを、店主に介抱された。その際、観用少女を目覚めさせてしまう。買い取り能力は皆無だったが、観用少女がしがみついて離れないほど懐いてしまったため、店主にそそのかされる形で観用少女を連れ出す。 その数ヶ月後、貧しいながらも観用少女を慈しんで育て続け、穏やかにこの世を去った。

青年画家 (せいねんがか)

描いた人物に死をもたらす異能の絵描き。名前はない。雨にぬれた月の銘を持つ観用少女に恋をした老人が、自分のために目覚めなかった人形を死の道連れにするために雇った。雨にぬれた月の異変に気づいた店主が制作の中止を頼むが、自ら筆を折ることは拒む。だが、悲劇を回避するために、店主が自分の絵を切り裂く行為は、あえて阻止しなかった。

金融会社の社員 (きんゆうがいしゃのしゃいん)

個人金融会社の気のいい青年従業員で、名前はない。借金を踏み倒して夜逃げした人物の家で、置き去りにされた観用少女と出会い、買い手が見つかるまでの間、かいがいしく面倒を見た。その甲斐あって、別れ際に大泣きされるほど観用少女に好意を持たれ、思いがけず涙の宝石天国の涙を手に入れる。 この天国の涙は、宝石商に高額で引き取られ、観用少女の買い戻し資金となった。加えて、違法売買で警察に捕まった金融会社のボスの保釈金としても使われた。

女装の少年 (じょそうのしょうねん)

娘を亡くした失意の母親に、自分の存在を忘れられてしまった悲劇の少年。名前はない。姉のふりをすることで母の偽りの愛を得て心慰めていた。観用少女には無条件で愛される質。母親のために購入された姉娘に瓜二つの観用少女宝石姫がすぐになついだほか、遊びに行った人形店で別の観用少女も目覚めさせる。 その観用少女が示す純粋な愛の在り方を知った少年は、息子として母親に向き合うことを決意する。ちなみに、2体目の観用少女は、宝石姫の妹にするべく、父親におねだりする。

店主 (てんしゅ)

ウェーブのかかった髪を細いリボンで束ね、中国風の衣装を好んで着用する美青年。名前はない。訪問客に観用少女の特性や育成方法をレクチャーするのが常で、アフターサービスとしてミルクや砂糖菓子ドレスといった育成用品の配達も行っている。顧客との会話中に出るキーワードなどを、鮮やかな筆さばきで短冊にしたためる特技を持つ。

場所

人形店 (にんぎょうてん)

『観用少女』に登場する施設。観用少女を取り扱う唯一の専門店で、中国風の調度品に囲まれた店内には、常に数体の観用少女が眠っている。ミルク砂糖菓子香り玉といった、観用少女の育成に必要な品を販売するほか、環境の変化などで調子を崩した観用少女のメンテナンスも行う。

その他キーワード

観用少女 (かんようしょうじょ)

『観用少女』に登場する生き人形の総称。休眠状態で客を待ち、意中の相手が現れると目を覚まして買い取られるのを待つ不思議な性質を持つ。大きさは人間の少女ほどで、うまく育てば購入時の外見を長く保つことが可能。だが、育成を誤ると大人に成長したり、最悪枯れて散ってしまう。基本的には表情の変化で意志疎通するが、中には言葉を話したり歌ったりするタイプも存在する。 名前は購入者がつけることになっているが、最初から特殊な銘を持つ人形もいる。なお、職人が贅沢な環境で育むため、嗜好はどの観用少女もかなり贅沢。

ポプリ・ドール

『観用少女』に登場する生き人形のバリエーションの一つ。ミルクと一緒に香り玉を与ることで芳香を放つ特殊な観用少女。香り玉の種類は一つだが、放つ芳香は観用少女にごとに変化する。短編「桃源郷」に登場する3体のポプリ・ドールは、それぞれの香りのイメージで「みどり」「ゆり」「すいかずら」と呼ばれた。この香り玉は人間が服用しても害のない品で、観用少女と同様に香りをまとうことができる。 短編「ポプリ・ドール」では、主となった少女が好んで飲んだ。

白雪 (しらゆき)

『観用少女』に登場する銘持ちの生き人形。短編「スノウ・ホワイト」に登場する、透けるような白い肌と絹糸のような長い漆黒の髪の持ち主。出戻りの経歴があるプライスダウン商品だが、観用少女としての品質は最上級。天国の涙という観用少女の涙の宝石を入手したい宝石商が通いつめ、ようやく振り向かせることに成功した。だが、白雪を泣かせることを良しとせず、宝石商は天国の涙の入手を断念する。

あの子 (あのこ)

『観用少女』の短編「ミッシング・ドール」に登場する生き人形。若い娘の姿に成長した観用少女で、言葉も不自由なく話す。亡くしたばかりの愛する主人を祖母と思い込み、その祖母が、自分を育てるために手放したという観用少女を、あの子と呼んで探していた。人形店であの子と同タイプの観用少女と会ったことで、あの子が自分だと悟り、血のように赤い色の天国の涙を残して枯れてしまう。

オランピア

『観用少女』の短編「楽園の果実」に登場する銘持ちの生き人形。観用少女の改良種「歌う少女」の初期型で、誰にでもほほえむ人形として知られていた。だが、持ち主が殺害されて盗まれたうえ、犯人も死んでしまった経緯があり、歌も忘れてしまう。そんな因縁を知るためか、新しい主となった青年は、毎夜オランピアを巡る殺人劇の夢に悩まされる。 そして、青年を心配してオランピアを壊そうとする妻を、誤って銃で撃つ。オランピアが歌いだしたのは、まさにそのとき。青年の妻は、一命を取り留めたが、事件をきっかけにしてオランピアは手放される。

アクアプラン虫 (あくあぷらんちゅう)

『観用少女』の短編「珊瑚」に登場する水生の生き人形。幼い少女がいる家庭の父親が、酔った勢いで買ってきたお土産で、小さな珊瑚の殻の中で眠っていた。当初は、アクアプラン虫という品名以外は、入手ルートも育成方法も一切不明だったが、日当たりのよい窓辺で大きく育ったことから、光合成で成長することが判明した。少女が珊瑚と名付けたアクアプラン虫は、一度はバスタブでの育成を考えるほど大きくなったが、床に落とした衝撃で目覚めさせてしまい、体が乾いて縮んでしまう。 以降、成長を止め、小さな金魚鉢が似合う大きさで過ごことになる。

天国の涙 (てんごくのなみだ)

『観用少女』に登場する宝石。最高に愛されて育った観用少女の涙が、真珠のような粒宝石となる。観用少女本体よりも高額で取引されることがある品で、色はさまざま。人形店の店主は、涙を流す瞬間に見ていたものの色を映すことが多いと語っている。

花冠 (てぃあら)

『観用少女』の短編「メランコリィの花冠」に登場する寄生植物。観用少女の頭上で一日だけ咲き誇る美しい花で、観用少女が受け取る愛の種類によって色が変化する。幸福な愛に満たされた観用少女の花は珊瑚色、哀しみを含む愛を受けた観用少女の花は青色になる。青い花冠を見ることに情熱を注ぐ紳士は、青になるその感情を「甘美な憂鬱」と呼んでいる。 なお、珊瑚色の花冠を咲かせた観用少女は枯れてしまっていたが、「甘美な憂鬱」を知った青い花冠の観用少女は大人へと成長した。

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