柔道一直線

柔道一直線

柔道に命をかける少年一条直也とその師匠・車周作との師弟愛を中心に、一条直也の柔道家としての成長を描く。梶原一騎が『巨人の星』に続いて発表したスポ根もの。オランダの柔道家アントン・ヘーシングが東京オリンピックで金メダルを取るなど、日本柔道の凋落が嘆かれていた世相を背景に、柔道の本来の精神や本質を問うた作品。作画は永島慎二だが、終盤斎藤ゆずるにバトンタッチされた。また、師・車周作から地獄車破りの秘策を受けたアメリカ人柔道家ゴードンといよいよ対決という場面で一旦連載が終了されるが、読者からの要望を受けて、3か月後に『大完結編』と銘打たれた読み切り作品が発表された。『大完結編』掲載の前には、若き日の車周作を描いた番外編、『鬼車青春双六』『鬼車の子守り歌』も発表されている。

正式名称
柔道一直線
ふりがな
じゅうどういっちょくせん
原作
作画
作画
ジャンル
柔道
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概要・あらすじ

昭和39年の10月。九州にある柔道塾で練習に明け暮れる主人公一条直也。そこに師範の講談館時代の先輩・車周作が訪ねてきて、東京オリンピックでの日本柔道の敗北を予言する。結果ははたして日本柔道の完敗であった。優勝したのはオランダのアントン・へーシンク。その巨体と力の勝利だった。周作によると、体重制の導入こそ、柔道衰退の根源だという。

「柔よく剛を制す」の言葉通り、小男が大男をぶん投げる工夫こそが技の研究につながるのだと。その言葉を裏付けるかのように、体重が倍もあるプロレスラーと対決した周作は、必殺技・地獄車でこれをしりぞける。その姿を見た直也は周作の弟子になることを決意する。

こうして鬼の師匠と弟子の激しく険しい柔道地獄が幕を開けた。

登場人物・キャラクター

一条 直也 (いちじょう なおや)

北九州市小倉出身。初登場時は青葉中学校の2年生。柔道部所属。鬼車の異名を持つ元講道館柔道六段の車周作に出会い、その技と精神に惚れこみ押しかけ弟子になる。火の玉ボーイとあだ名されるほど一本気で単純な性格だが、周作や周囲の人の言葉は素直に受け入れる柔軟さも持ち合わせている。 人並み外れた根性の持ち主。のち関東一の柔道の強豪校である東京の天道高校へ入学。数々のライバルと切磋琢磨しながら高校柔道の頂点を目指す。最終目標は、師匠の周作同様、日本柔道の復興であり、「柔よく剛を制す」の精神で、外国柔道を倒すことである。必殺技・二段投げ、地獄車の使い手。

車 周作 (くるま しゅうさく)

一条直也の師匠。必殺技・地獄車を編み出した柔道の鬼。講道館六段で、かつて鬼車と恐れられた人物。試合で丸井豪平六段を必殺技・地獄車で殺してから柔道を引退。全国を行商し、その売り上げを丸井の遺族に送っていた。北九州市小倉で一条直也と出会い、その一本気な性格と根性に惚れ、ともに日本柔道の復興を目指すようになる。 指導方針はスパルタで、肉体的にはもちろん、精神的にも直也を逆境に追い込むことばかりだが、直也のことを実の息子のように思っており、たまに温かい面をみせることもある。

直也の母

主人公・一条直也の母。北九州市小倉で魚屋・魚一を営む。夫を亡くし、女手一つで直也を育てあげた。大柄な体格で切符の良い性格。人情に厚く涙もろい。直也のことを何より可愛く思っているが、猫かわいがりではなく、時には厳しい判断もする。直也の試合のテレビ中継など、うれしいことがあると、5割引きサービスを行うお調子者。

高原 ミキ (たかはら みき)

初登場時は青葉中学校放送部部長で中学3年生。直也の初恋の相手で、ミキも直也に思いを寄せているがいつも喧嘩ばかりしている。柔道部道場に出入りして、直也の傷の手当など世話を焼く。のちにデザイナーの勉強のため、東京の学校に通う。

丸井 円太郎 (まるい えんたろう)

まんまると太った体格。初登場時は東京の中学生。のちに東京に出てきた一条直也と同じ天道高校に通う。車周作の必殺技・地獄車で命を落とした柔道家丸井豪平の息子。車周作を憎むことを生きがいにしていたが、どん底の生活の中から仕送りを送っていた周作のことを直也から聞かされ、すべてを許す。 以来、直也と親友になる。

赤月 旭 (あかつき あきら)

北九州市若松出身。初登場時は花園中学3年生の柔道部主将。主人公・一条直也のライバル。北九州三四郎の異名を持つ天才少年。気障で高圧的な男だが、じつは研究熱心で直也の二段投げをカメラで撮影し、分析するなど努力を怠らないまじめな性格。直也の必殺技・二段投げを一度は破るが、二度目の対決で、改良された「完全なる二段投げ」に敗れる。 以来直也と親友になり、のちに直也と同じ東京の天道高校に通う。

ザ・ジュードー・キッド

切れ味鋭い柔道の技をプロレスに取り入れて活躍する天才プロレスラー。プロレス興行で来日中、一条直也の二段投げを偶然目にし、欠点だらけだとあざ笑う。受け身の取れないほどのスピードで相手を投げる必殺技・ライナー投げの使い手。プロレスを観に行った直也と揉め、ライナー投げで直也を投げ飛ばす。 その正体はアメリカン・スクールの天才柔道少年、ロバート・クルスで柔道の修行のために実戦的なプロレスの世界に身を投じていた。

ロバート・クルス

そばかすが目立つ白人で、アメリカン・スクールの天才柔道少年。必殺技・ライナー投げの使い手。恐怖のそばかすの異名を持つ。世界各国の柔道少年を集めた・インターナショナル柔道大会で一条直也と対戦する。直也の必殺技・二段投げを破り、ライナー投げで直也に勝つが、その正体はプロレスラーのザ・ジュードー・キッドであったため規則違反で失格。 繰り上げで直也が優勝した。のちに天道高校に入学した直也と再戦。この時は必殺技ライナー投げを封じられ、逆に直也の必殺技・地獄車に敗れる。

大豪寺 虎男 (だいごうじ とらお)

主人公・一条直也が入学した天道高校の先輩で柔道部の絶対的支配者であった。巨体にひげ面、高ゲタというバンカラ。主に山籠もりで修業をしていて、力に対抗するにはそれ以上の力であるとの信念の持ち主で柔道ならぬ剛道を目指す。「柔よく剛を制す」の柔の道を目指す直也たちとぶつかり、第二柔道部を作った直也と対決。 直也が習得した必殺技・地獄車にやぶれる。その後、共通の外敵、アメリカン・スクールとの対決を経て、直也と友情で結ばれる。

アントン・ヘーシンク

東京オリンピックで日本代表の柔道家を破り、金メダルを獲得。世界の柔道王になる。車周作、一条直也師弟からすれば、力だけの外国柔道の象徴であり日本柔道の宿敵である。直也が天道高校に入学した頃、同高校の特別コーチとして来日しており、直也の不意打ちで片足を取られ尻もちをついた。 この事件が大きく報道され、直也に対する天道高校柔道部先輩たちの風当たりが強くなる。実在の柔道家アントン・ヘーシンクがモデル。

城山 大作 (しろやま だいさく)

主人公・一条直也のライバル。全国高校選手権大会の出場選手中、大物と目された3人のうちの一人。鹿児島県代表・桜島高校主将。西郷隆盛と風貌体格ともにそっくりで、心技ともに充実した大人物。必殺技は大噴火投げ。全国高校選手権大会では直也と死闘を演じ、ついには引き分ける。 試合後講道館で昇段試験を受け、見事二段に認定されたのち、講道館の研修生となる。

黒江 狼介 (くろえ ろうすけ)

主人公・一条直也のライバル。全国高校選手権大会の出場選手中、大物と目された3人のうちの一人。北海道代表月の輪高校の主将。もみあげが長く眼光は鋭い。黒帯おおかみの異名を持ち、凶暴で冷酷。逆関節技や絞め技を多用し、相手を痛めつけることに快感を覚える。必殺技・熊殺しの使い手。 全国高校選手権大会で直也に敗れ、やけくそで暴れ、ついには自殺しようとしたところを直也に救われ、友達となる。

右京 真吾

主人公・一条直也のライバル。全国高校選手権大会の出場選手中、大物と目された3人のうちの一人。京都代表花影学園主将。水も滴る貴族的な美少年。身軽さで相手を翻弄して鋭くしとめる柔道が得意で今牛若丸の異名を持つ。必殺技・花ふぶきの使い手。直也に敗れた後、復讐のため直也と同じ講道館の段位テストを受け、再戦する。 別人のように殺気だった執念の鬼と化し、直也の必殺技・地獄車を破って勝利するが、あまりにも凄惨な試合内容に両者ともに段位認定はされなかった。のちに野試合で三度目を戦い、地獄車の柔軟な変化に再び敗北。心身ともに「柔」の極意に触れ、直也と友情で結ばれる。

集団・組織

天道高校 (てんどうこうこう)

『柔道一直線』に登場する高校。関東一の柔道の名門校で主人公・一条直也、赤月旭、丸井円太郎が通う。直也らが入部した当初は大豪寺虎男が絶対的な権力を誇っており、封建的な部の体制を作っていた。直也と大豪寺の対決などを経て、部はまとまり、全国大会に向かって一丸となる。直也、大豪寺、赤月、丸井は天道四天王と呼ばれる。

その他キーワード

二段投げ (にだんなげ)

『柔道一直線』に登場する主人公・一条直也の必殺技。肩車から敵を放り投げ、空中にいる相手の手を掴んで再び投げる。北九州中学柔道大会小倉地区予選の決勝、対鮫島戦で開眼。北九州中学柔道大会準決勝戦で一度はライバル・赤月旭に破られるが、のちに「完全なる二段投げ」で雪辱を果たす。しかしその後もロバート・クルスに破られるなど、欠点は多い。

地獄車 (じごくぐるま)

『柔道一直線』に登場する必殺技。主人公・一条直也の師匠・車周作が編み出した恐ろしい破壊力を持つ技。突進してくる相手の懐に飛び込み、己の体を中の球、敵の体を外の球にして回転する。回転の度に相手は脳天と尾てい骨を交互に強打するが、自分の体は外側の相手の体がクッションになりダメージを受けない。回転数しだいでは相手を死に追いやる殺人技である。 直也は大豪寺虎男に勝つため、布団にくるまりながら非常階段を転げ落ちるなど、地獄の特訓を経てこの必殺技を習得した。

ライナー投げ

『柔道一直線』に登場する必殺技。アメリカの天才柔道少年、ロバート・クルスが使う。受け身がとれないほどのスピードで低空を一直線に投げる技。ロバートが雪山にこもって雪玉や大岩を投げ続けて会得した。中学生時代の一条直也はこのライナー投げに二度屈するが、高校生になってからの対戦では、ロバートの道着に両手を巻き込むなどの防御策でこれを破った。

大噴火投げ

『柔道一直線』に登場する必殺技。鹿児島県出身の城山大作が使う。相手を空中高く放り投げ、落ちてくる相手を頭突きで受ける技で、投げから頭突きの一連の流れを複数回繰り返す。桜島が噴火を繰り返すように見えることから命名された。

熊殺し

『柔道一直線』に登場する必殺技。北海道出身の黒江狼介が使う。相手の体を宙に投げ逆立ち状態にし、頭部を両膝ではさみ、脳天から叩き付ける技。プロレスのパイルドライバーに似た技だが、複数回頭部を叩き付ける点でさらに威力が上。黒江が北海道にいたころ、友達の熊・ゴローにふざけて飛びかかられたとき、偶然、必殺技・熊殺しの態勢になったのがきっかけ。

花ふぶき

『柔道一直線』に登場する必殺技。京都出身の右京真吾が使う。空中高く放り投げた相手を、ジャンプで追いかけ、さらに空中で投げる。着地時はひざを落として完全にとどめを刺す。敵味方が空中で入り乱れ舞うさまが花吹雪のようだという理由で命名された。

鉄ゲタ (てつげた)

文字通り鉄製の下駄。車周作に弟子入りした一条直也が与えられた特訓用の下駄。日常生活で使用することによって足腰を鍛えることができる。全国高校選手権大会後、周作は直也に今までの鉄ゲタを卒業し、一本歯の鉄ゲタを使用するように指示。足腰の強化に加え、バランスのとり方を身に着けさせようとした。

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