クピドの悪戯「虹玉」

クピドの悪戯「虹玉」

男女のさまざまな恋愛模様がテーマのオムニバス「クピドの悪戯」シリーズ第1作。アソコから7色の玉を出し終えると、2度と射精ができなくなる奇病にかかった童貞の主人公が、恋愛で失敗したり傷ついたりしながら大人の男に成長していく姿を描く。「週刊ヤングサンデー」2004年第42号から2006年第18号にかけて掲載された作品で、2006年には北川弘美主演で、テレビ東京系列にてTVドラマ化もされている。

正式名称
クピドの悪戯「虹玉」
ふりがな
くぴどのいたずら にじだま
作者
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あらすじ

第1巻

童貞のまま処女と結婚する夢を持っていた板金工の睦月智也は、21歳になってもまだ女性経験がなかった。ある時、智也は取引先で事務員をしている美少女の大倉怜子を思い切ってデートに誘う。OKをもらって浮かれる智也は、その晩、怜子の事を思いながら自慰行為にふけるが、射精の瞬間にアソコから紫色の玉が飛び出す。それは男性器から7色の玉を発射すると、生殖機能が失われるという奇病「後天性射精機会損失症候群」の症状であった。智也はその事実を元同級生の桐生麻美から聞くが、すでに2発目を発射済みであり、残りの玉は5発となっていた。智也は、もうあと5回しかセックスのチャンスがないかもしれないと内心で焦りつつ、怜子との初デートに向かう。

第2巻

睦月智也大倉怜子との初デートで、焦りから強引にエッチに持ち込もうとして彼女を怯えさせてしまう。自己嫌悪に陥る智也は桐生麻美に誘われ、彼女の家を訪ねるが、怜子との事を思い出し、思わず泣き出してしまう。そんな智也に麻美は静かにキスする。いい雰囲気になる二人だったが、智也は麻美の様子がおかしい事に気づき、射精してしまうものの土壇場で挿入は思い留まる。麻美は妻子ある男性との不倫関係に疲れ、ヤケになっていたのであった。以降、智也は気まずさから怜子と麻美のどちらとも顔を合わせられず、悶々とする日々を送る事となった。そんな中、板金組合の親睦会が開かれ、智也も参加するが、そこに怜子が姿を現す。しかし彼女は智也ではなく、彼の先輩である前里浩二のとなりに座る。

第3巻

板金組合の会合に現れた大倉怜子に気まずさから声をかける事ができず、うろたえる睦月智也だったが、携帯でのメール交換をきっかけに彼女と仲直りする。二人はデートの約束をするが、父親の部下である山田清司の別れた妻が亡くなり、智也は工場を代表して葬儀に出席する事になってしまう。葬儀の日がデートとかぶってしまったため、やむなく智也は怜子に断りのメールを入れるが、そこに事情を知った桐生麻美が現れ、同行を申し出る。自分が山田に付き添うから、途中で抜け出してデートに行けばいいというのである。かくして智也は山田、麻美と共に高速バスで葬儀場に向かうが、その途中、山田がかつて妻とまだ幼かった娘を捨てた事を告白。今さら娘に会えるわけがないと言い出し、バスから降りてしまう。これまで貯めたお金を娘に渡してきてほしいと山田に頼み込まれた智也は、もはや抜け出す事はできないと腹をくくり、麻美も帰して一人で葬儀場に行こうとする。だが、その時すべてを見ていた麻美が、やっぱり自分も行くと言ってバスに乗り込んで来た。

第4巻

山田清司の元妻の葬儀に出席した睦月智也桐生麻美は帰りのバスを逃し、同じ部屋で一泊する事になった。その夜、智也の事が好きになっていた麻美は、寝入っている智也に密かにキスをする。そんな麻美の気持ちを知るよしもない智也は、彼女の寝姿を見て思わず夢精し、残りの玉はあと3発となってしまう。一方、麻美に智也を取られるのではないかと恐れていた大倉怜子は、帰って来た智也を旅行に誘う。かくして二人は板金組合の慰安旅行の日に合わせて、あえて別のところに一泊旅行に行く計画を立てる。同じ頃、麻美は不倫相手との関係を清算するが、智也への思いは秘めたままであった。そして、ついに迎えた旅行の日。温泉旅館を訪れた智也と怜子は、初めての夜を迎えようとしていた。

第5巻

睦月智也大倉怜子はついに一夜を共にし、智也は童貞のまま処女と結ばれるという夢を果たした。射精の瞬間に発射した玉が避妊具を破ってしまい、一瞬焦るが、浮かれる智也はあまり気にしてはいなかった。次の日の夜、前里浩二の婚約者のお披露目会に出る事になった智也は、浩二にうながされて桐生麻美を呼び出すが、そこには怜子の姿もあった。身体を重ねたゆえか、かつて意識していた麻美に余裕の表情を見せる怜子。麻美は二人の関係が進んだ事を知るが、それでも智也の事をあきらめられずにいた。一方、智也は怜子と再びエッチする事しか頭にない状態だったが、そんな中、父親から工場は自分の代でたたむと告げられ、驚く事となる。

第6巻

工場をたたむという父親の決意を聞き、睦月智也は将来の事をまじめに考え始める。そんな矢先、智也は大倉怜子から妊娠したかもしれないと告げられる。智也は動揺しながらも、妻子を養える一人前の男になろうと一念発起。工場存続のため最新機器のレーザーカッターを導入しようと、桐生麻美の力を借りてパソコンの勉強をしたり、銀行に融資の相談に行ったりと精力的に動き出す。当初は反対していた父親の理解も得た智也は、ついにレーザーカッター購入の資金を調達し、勢いに乗って怜子にプロポーズする。だが、結局妊娠していなかったものの、妊娠検査薬を持っていた事が両親にばれてしまい、怯える日々を送ってきた怜子にとって、智也の行為は自分勝手なものでしかなかった。怜子は智也の求婚を拒絶し、友達に戻りたいと言い出す。さらにはセックスなんかしなければよかったと口走り、智也は絶望のどん底に叩き落されてしまう。

第7巻

大倉怜子との恋に破れた睦月智也は自暴自棄となり、工場の仕事もせず自室に引きこもっていた。見かねた桐生麻美はついに秘めていた智也への思いを告白し、あらん限りの思いを込めて励ますが、同時にもう友達ではいられないと彼のもとを去る。己の馬鹿さと情けなさを自覚した智也は、自身を罰しようと自慰で射精。とうとう残る玉はあと1発のみとなる。再び工場存続に向かって動き出した智也は、念願だったレーザーカッターを購入。怜子への思いにもしっかりとケリをつけ、忙しい日々を送る。それからしばらく経ったある日、智也は前里浩二に呼び出された。前里夫妻に子供が産まれたのである。智也は見舞いに駆けつけるが、そこには麻美の姿もあった。久しぶりに再会した二人は改めて互いの思いを確認し合い、ついに結ばれるのだった。 

登場人物・キャラクター

睦月 智也 (むつき ともや)

21歳童貞の青年。父親の経営する金属工場「睦月金属」で板金工をしている。中学時代の同級生である桐生麻美には「むっちゃん」、恋心を抱く取引先の事務員の大倉怜子には「トモくん」、昔からの仲間たちからは「むー」と呼ばれている。まだ童貞ながら、7回射精すると生殖機能を失うといわれる奇病「後天性射精機会損失症候群」にかかってしまうが、麻美や怜子との関わりを経て人間的に成長。 同時に、惰性で続けていただけだった板金工という仕事に、やりがいを見出していく。

桐生 麻美 (きりゅう あさみ)

上場企業のOL。明るく社交的な21歳の女性。同僚の五十嵐モト子からは「アサ」と呼ばれている。睦月智也の中学時代の同級生で、野外活動の際に、智也に顔射されたという過去を持つ。しかし、相手が智也であったとは気づいていない。高校3年生の時に智也と再会。以来、良き友人として付き合っていた。妻子持ちの上司との不倫関係に傷ついていたところを、智也の優しさやまっすぐさに癒され、次第に彼に惹かれていく。

大倉 怜子 (おおくら れいこ)

金属工場「睦月金属」の取引先「大倉鉄鋼」の社長の娘。父親の会社で事務をしている。一見とっつきにくそうだが、実は純情一途で少し子供っぽいところがある。まだ19歳で女子校出身ということもあって、男性との関わりを苦手にしていたが、性描写のある少女マンガを愛読するなど、性的なことへの関心は強い。紆余曲折の末に睦月智也と恋人同士になるが、智也と一緒にいることの多い桐生麻美の存在に不安を覚えている。

ムーさん

金属工場「睦月金属」の社長。睦月智也の父親。仕事仲間からは「ムーさん」と呼ばれている。智也が高校3年生の時に妻が死去したため、現在は息子と二人暮らし。亡き妻の助けもあって、零細ながら堅実な経営でバブル後の不況を乗り切る。息子に負担をかけたくないという親心から、引退後は会社をたたもうと考えている。

前里 浩二 (まえさと こうじ)

車のパーツなどを製造している「前里スチール」の社長の次男坊。睦月智也の7歳年上の先輩。後輩の面倒見が良く、智也ら組合の若手グループのリーダー的存在となっている。かなりの女好きで、女性をとっかえひっかえしていたが、丸山里香子とできちゃった結婚し、一女をもうける。

丸山 里香子 (まるやま りかこ)

前里浩二の結婚相手。フリーペーパーの編集をしているバリバリのキャリアウーマンだったが、妊娠発覚を機に退職。浩二と結婚し、彼の家業を手伝う決意をする。勘のいい女性で、浩二との婚約発表会に出席した桐生麻美と大倉怜子を見て、2人が睦月智也をめぐって意識し合っていることに気づく。

吉沢 ヤスコ (よしざわ やすこ)

睦月智也、桐生麻美の中学の同級生。智也の初恋の相手。通称「ヤッコ」。清純そうで男子たちの人気者だったが、同級生と大学生を二股にかけるなど、実はかなり男グセが悪い。しかも、相手が男子か女子かで露骨に態度を変えていたこともあって、女子の間での評判は微妙だった。短大を出て地方企業でOLをしていたが、その後仕事を転々。 親に連れ戻される形で地元に戻る。

山田 清司 (やまだ せいじ)

金属工場「睦月金属」の年配の従業員。社長のムーさんからは「山さん」と呼ばれている。独身を装っていたが、実は妻と娘がいる。女を作って家族を捨てたという過去を持つ。やがて前妻が亡くなったという知らせが届くが、どうしても娘と顔を合わせることができず、自分の代わりに葬儀に出席してほしい、と睦月智也に頼む。

五十嵐 モト子 (いがらし もとこ)

桐生麻美の会社の同僚で飲み友達。麻美のことを「アサ」と呼んでいる。睦月智也とも顔見知りで、麻美が送り迎え要員として智也を呼び出した際に、一緒に送ってもらったこともある。麻美のよき理解者で、不器用な恋愛ばかりしている彼女のことを、何かと心配している。

大倉さん (おおくらさん)

金属工場「睦月金属」の取引先「大倉鉄鋼」の社長。大倉怜子の父親。普段は温厚で人当たりのいい人物だが、怜子が妊娠検査薬を持っているところを目撃して激高。相手が睦月智也だと感づき、彼につかみかかる。

黒木 (くろき)

睦月智也の悪友で、「ケーズ金属」という会社に勤めている。仲間うちでは「クロ」と呼ばれている。智也が大倉怜子との初めてのデートの際に使用した車の持ち主。智也に彼女ができたことを周囲にばらしてしまうが、相手が誰であるかは気づいていない。

川崎 日菜子 (かわさき ひなこ)

山田清司の娘。山田が女を作って逃げた後、母親と2人だけで暮らしていた。山田がいなくなったのは物心がつく前で、彼のことはまったく覚えていない。婿養子のため肩身の狭い思いをしていた、という事情も知っているため、さほど父親のことを恨んではいない。

杉本 真悠子 (すぎもと まゆこ)

睦月智也が18歳の時に出会った年上の女性。自動車教習所に勤務していて、免許を取るために通っていた智也と知り合うこととなった。付き合っていた前里浩二の浮気性に悩まされていて、そのあてつけから、智也のことを誘惑しようとした。

仙道寺 徳子 (せんどうじ とくこ)

睦月智也の診察をした巨乳の女医。「後天性射精機会損失症候群」の専門家である岡崎教授の助手で、のちにこの病気の意外な真実を発表することになる。「クピドの悪戯」シリーズのほぼすべてに登場する狂言回し的存在。

その他キーワード

後天性射精機会損失症候群 (こうてんせいしゃせいきかいそんしつしょうこうぐん)

睦月智也がかかった病気。射精時に男性器から色付きの玉が出るという奇病。最初に発射される玉は紫色だが、以降、藍→青→緑→黄→橙→赤の順に玉の色が変化。7発目となる赤色の玉を発射すると、患者は射精が不可能となり、完全に生殖機能を失うとされている。このように射出される玉の色が虹の7色と同じであることから「虹玉」とも呼ばれている。

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