ONE OUTS

ONE OUTS

投手対打者で勝負するワンナウト賭博で499連勝中の勝負師渡久地東亜が、低迷を続けるリカオンズに入団。強欲なオーナーと一見、不利に思える完全出来高制のワンナウツ契約を結ぶ。相手チームとの戦いと、オーナーとの勝負が同時進行する。幾重にも仕掛けられた意外性が、現実のプロ野球の矛盾と裏面をもえぐり出しつつ、エスカレートしていく。

正式名称
ONE OUTS
ふりがな
わんなうつ
作者
ジャンル
ギャンブル・賭博
 
野球
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概要・あらすじ

沖縄の米兵相手のワンナウト賭博で不敗を誇る渡久地東亜が、不運の天才打者児島弘道と出会い、プロ野球球団リカオンズに入団。投手としては自称三流の渡久地は、完全出来高制のワンナウツ契約を強欲なオーナーに自ら提案することにより、野球というゲームを自分の得意とするギャンブルへと変貌させる。

巧妙な投球術と勝負師としての「読み」「直感」「心理戦」「情報戦」を駆使し、いずれも一癖のある相手チームを撃破し、オーナーの仕掛けた罠を逆手に取り、莫大な年俸を稼ぎ出していく。ワンナウツ契約はやがてオーナーを破滅させ、球界全体を揺るがせることになり、最後にはペナントレースの帰趨を賭けた、球界のドンとの大勝負へと発展する。

登場人物・キャラクター

渡久地 東亜 (とくち とうあ)

100~120キロ前半程度の直球しか投げられないが、低速にもかかわらず、リリース直前にボールの回転数を変えることができる技巧派投手。投球技術だけでなく心理戦の天才。打者の心理を読むだけではなく、巧妙に心理を誘導することもできる。沖縄で、ワンナウトというギャンブルを行っており、499勝無敗のギャンブラーだった。 だが、児島弘道の身体を張った勝負に負けて、リカオンズに入団。彩川オーナーとギャンブル的なワンナウツ契約を結び莫大な年俸稼ぎ出す。最終的には彩川を破産に追い込み、オーナーとしてリカオンズをリーグ優勝に導いた。

児島 弘道 (こじま ひろみち)

リカオンズの「不運の天才打者」と呼ばれるスラッガー。新人王を皮切りに、首位打者7回、本塁打王5回、打点王8回、三冠王2回の栄誉に輝くが、一度も優勝経験がない。43歳。沖縄ミニキャンプで渡久地東亜と出会い、ギャンブルのワンナウト勝負で一度は敗退するも、二度目に負傷しながらもリベンジを果たし、渡久地をリカオンズに入団させる。

彩川 恒雄 (さいかわ つねお)

リカオンズのオーナー。カネのことしか考えない冷血漢で、渡久地東亜と「ワンナウト500万円、1失点5千万円のペナルティ」という異常なワンナウツ契約を結ぶ。

出口 智志 (いでぐち さとし)

リカオンズ正捕手。選手会長。渡久地東亜がリリース直前に投げ分ける、低速回転球、高速回転球、スローボールなどの多彩な直球をキャッチングできる信頼できる女房役。渡久地に最も近い選手であり、質問役ででもある。勘違いすることもあるが真っ先に渡久地の意図を理解する頭脳派で、勘もいい。

三原 雄三郎 (みはら ゆうざぶろう)

リカオンズ監督。地位と収入を守るためオーナーには絶対服従の忠犬で、命じられるまま、渡久地東亜の三連投をはじめ無茶な采配を振るう。しかし、それがことごとく成功したため、スポーツ紙で「三原マジック」と絶賛される。

菅平 源三 (すがだいら げんぞう)

リカオンズ二軍選手。かつては一軍で活躍していたがギャンブルで身を持ち崩し万年二軍。新・ワンナウツ契約の一人として一軍に昇格。それでもくすぶっていたが、解雇寸前に捨て身でデットボールを受けてクビを繋ぐ。負傷により再び二軍落ちするものの、ギャンブル的な出来高払いのLチケットシステムにより、大好きな野球とギャンブル合体し、積極的な選手として一軍に復帰し活躍する。

ジョン・ムルワカ

リカオンズ二軍選手。ドミニカ出身で207センチの長身打者。3A経験者。日本語をアダルトビデオでおぼえたため、ワイセツ用語を多発する。バッティングの才能がありながら、練習中、倉井の160キロ超の速球を頭部に受けて以来、身体にボールへの恐怖がしみついてしまい、どんな球でも振り遅れてしまう。 新・ワンナウツ契約の一人として一軍に昇格。渡久地東亜の仕掛けによってフォームを改造され、強打者として復活する。

倉井 一 (くらい はじめ)

リカオンズ二軍選手。投手。トルネード投法で160キロ超の剛速球が投げられるのだが、ムルワカへの死球後、トルネード投法を封印してしまう。新・ワンナウツ契約の一人として一軍に昇格。当初は低迷が続くが、渡久地東亜が呼び寄せた、倉井の中学時代の恩師の声援で封印が解かれ、剛球王として復活。 ただし、1イニングしか投げられない「30球肩」で、中継ぎかストッパーの切り札として使われる。

吉田【リカオンズ】 (よしだ)

リカオンズのショート。元々はエースピッチャーだったが、二軍落ちした時、オーナーの罠に落ちて八百長に手を出し、弱味を握られ、イヌに成り下がり、投手から野手に転向。対イーグルス戦でオーナー命令で渡久地東亜の足を引っ張るが、渡久地の言葉、「可能性が低いとは、つまり…ゼロじゃない…」という言葉によって立ち直り、渡久地のリリーフとして6年ぶりにマウンドに立った。 試合後、1Aから野球人生をやりなおすことを決意し、引退し渡米。

部長 (ぶちょう)

リカオンズ広報部長。作中には名前が登場しない。渡久地東亜を応援し、彩川の企みをこっそり伝えたりするが、ほぼ100%渡久地が予測ずみの情報なのでほとんど役に立たない。

奈良沢 考造 (ならさわ こうぞう)

リカオンズの元スカウト。無名時代の児島に早くから目をつけていた。ムルワカ倉井の素質を見抜きスカウトした。

青山 満 (あおやま みつる)

リカオンズ児島弘道の甲南高校時代の野球部仲間。特別編『最後の夏』に登場。肩を壊して野球部を退部した児島が、打者として復帰するきっかけを作る。悪性の癌に冒され、甲南高校が児島のサヨナラホームランで甲子園出場を決めたことを見届けて死去した。

木野崎 (きのさき)

リカオンズのトレーナー。児島の沖縄ミニキャンプに帯同し、渡久地東亜と出会う。

中根 (なかね)

リカオンズの二軍投手。児島の沖縄ミニキャンプでバッティングピッチャーを務める。

天海 太陽 (あまみ たいよう)

フィンガースの主力打者。天才的な打撃センスの持ち主で、倉井の潜在能力を一目で見抜く。武道家の如く沈着で、より強い相手を求めている。シーズン中にマリナーズに移籍。

北大路 剛 (きたおおじ ごう)

フィンガースの主力打者。俊足の1番打者で、柔軟な打撃センスの持ち主。長打力もある。シーズン中にマリナーズに移籍。

河中 純一 (かわなか じゅんいち)

フィンガーズの投手。160キロの速球と150キロのフォークボールの持ち主で完璧主義者。昨年度新人王。シーズン中、マリナーズに移籍。

仁科 佑一 (にしな ゆういち)

フィンガーズの控え捕手。「疑惑のオールスター戦」の主人公。スパローズ選手時代に、当時フィンガース捕手だった高輪の恨みを買い、「腰痛を隠してFA移籍した」と脅迫され続けている。高輪の画策で巨大掲示板に「オールスターなのにスターでない選手を選出して晒し上げる」とネタにされ、実際に選出されてしまう。 高輪からオールスター戦で渡久地東亜に不利なリードをするように強いられるが、すぐに見抜かれてしまう。

水橋 慎二 (みずはし しんじ)

イーグルスの投手。責任感が強いストッパー。渡久地東亜の心理戦により、スライダーを投げる時、グラブを閉じるという癖をつけられ、打たれてしまう。シーズン中、マリナーズに移籍。

吉田【イーグルス】 (よしだ)

イーグルスの投手。日本球界史上最高のアンダースロー。シーズン中にマリナーズに移籍。

高見 樹 (たかみ いつき)

マリナーズの5番。4割4分4厘の打率を誇る天才打者。打者対投手の枠を超えて、チームぐるみで渡久地東亜との対決に知力を尽くす。三連戦三連投の渡久地の体力を削り、ついには彼からの初本塁打を放つが、それすらも先を読み尽くした渡久地の用意した罠で、公式記録からは抹消されてしまう。

トマス

マリナーズの3番。俊足の4割バッター。球種を読むことが巧み。

ブルックリン

マリナーズの4番。4割バッター。パワーヒッター。キレやすく、キレるとバットをへし折る癖があるので、毎試合30本のバットをベンチに持ち込んでいる。単純明快な性格ゆえに、渡久地東亜の心理戦のターゲットになってしまう。

吉良 伸光 (きら のぶみつ)

マリナーズのピッチャー。長身。静かな巨人(サイレントジャイアント)の異名を持つ。対リカオンズ戦で、渡久地東亜のノーゲーム作戦によって大量の自責点を背負わされる。打高投低のマリナーズで冷遇された投手陣の鬱積を代表するかのように、監督命令に造反する。

忌野 喜郎 (いまわの よしろう)

マリナーズ監督。渡久地東亜の「ノーゲーム」作戦にハメられ、放棄試合という屈辱的な選択を強いられる。ペナントレース終盤では大幅な戦力強化を行ってリカオンズと死闘を演ずることになる。

城丘 克郎 (しろおか かつろう)

バガブーズ監督。かつてマリナーズ、スワッターズを率い、両チームを優勝させた頭脳から、知将と呼ばれている指揮官。

ジョンソン

バガブーズの新外国人選手。元陸上短距離選手。塁間世界最速を誇る。デビュー第二戦でホームスチールを成功させ、渡久地東亜にプロ入り初失点を与える。

天堂 (てんどう)

ブルーマーズの監督。世界の本塁打王として尊敬を集めているが、監督として君臨していても選手を信じ、細かいことはヘッドコーチに任せている。

城丘 高志 (しろおか たかし)

ブルーマーズのヘッドコーチ。バガブーズ城丘監督の実弟にしてトリックスタジアムシステムの産みの親。勝つためにはチームぐるみのサイン盗み、盗聴も辞さない。兄への対抗心と不遇感に駆り立てられている。

スコット・ウイリアムス

ブルーマーズのリリーフエース。ナックルボーラー。しかしそのナックルは偏心ボールを使ったインチキだったことを渡久地東亜に見抜かれてしまう。

ペドロ・ロドリゴ

ブルーマーズの主砲。

ビッグママ

沖縄でワンナウト賭博を仕切る女。肥満体のアフリカ系アメリカ人。最も渡久地東亜のことを知る一人。

三田村 要 (みたむら かなめ)

ファイナンストロンポス社長。リカオンズを買い取ろうと画策している。

南田 (みなみだ)

倉井の中学時代の恩師。いじめられっ子で、誰からも顧みられず、川原で石を投げていた倉井の投手としての才能を見抜く。後に、大病を患い、盲目となるなるが球場に駆け付け、倉井の封印を解くことになる。

高輪 (たかなわ)

元フィンガースの捕手。一昨年のオープン戦、対スパローズ戦で死球を受け、負傷。その時リードしていた仁科がFA宣言でフィンガースに移籍。弾き出されるかっこうで解雇されたため仁科を恨み、秘密を握って恐喝を続ける。

集団・組織

埼京彩珠リカオンズ (さいきょうさいたまりかおんず)

『ONE OUTS』の主人公渡久地東亜が所属するパ・リーグ所属の'プロ野球チーム。埼玉県大宮市が本拠地。親会社はゼネコン彩川組。児島を擁する人気チームだが、3年連続最下位。

彩川組 (さいかわぐみ)

『ONE OUTS』の主人公渡久地が所属するリカオンズの親会社。球団は黒字経営だが、グループ全体では経営が危機に陥っている。

フィンガーズ

『ONE OUTS』に登場するパ・リーグ所属のプロ野球球団。北海道に本拠地を置く。オープン戦で渡久地東亜に完全試合を達成されてしまう。

イーグルス

『ONE OUTS』に登場するパ・リーグ所属のプロ野球球団。渡久地東亜のペナントレースデビュー戦の相手。

千葉マリナーズ (ちばまりなーず)

『ONE OUTS』に登場するパ・リーグ所属のプロ野球球団。3年連続日本シリーズ覇者で、開幕からダントツの首位を走っている。

大阪バガブーズ (おおさかばがぶーず)

『ONE OUTS』に登場するパ・リーグ所属のプロ野球球団。知将城丘克郎を監督に迎え、低迷するチームの再建をはかる。

神戸ブルーマーズ (こうべぶるーまーず)

『ONE OUTS』に登場するパ・リーグ所属のプロ野球球団。世界の本塁打王天堂監督が率いる。オーナーは親会社オリキスの二代目社長三沢純一郎。実質的な指揮官はバガブーズの城丘監督の実弟である城丘高志ヘッドコーチが務め、勝つためにはチームぐるみの不正をも辞さない。

東京読読ガラリアンズ (とうきょうよみよみがらりあんず)

『ONE OUTS』に登場するセ・リーグ所属のプロ野球球団。オーナーは球界のドン田辺常行。

ロンウッドキャピタル

『ONE OUTS』に登場する企業。彩川にワンナウツの資金を流していた再建ファンド。

トロンポス

『ONE OUTS』に登場する企業。急成長中のファイナンス。水面下でリカオンズ買収計画を進めている。

場所

神戸マーズスタジアム (こうべまーずすたじあむ)

『ONE OUTS』に登場するブルーマーズの本拠地。天然芝球場。相手チームのサインを盗聴などあらゆる手段を用いて盗み、応援団の太鼓などで選手に伝達するトリックスタジアムである。これにより、ブルーマーズは本拠地勝率が7割7分2厘という異常な数値を残している。

その他キーワード

ワンナウト

『ONE OUTS』に登場する賭け事。沖縄の米兵の間で流行っている賭博ゲーム。投手が打者からワンナウトを取れるかどうかを争う。打者が三振、または打ってもインフィールドで打球がバウンドする当たりだったらアウト。それ以外のヒットは投手の負け。

ワンナウツ契約

『ONE OUTS』に登場する用語。渡久地東亜と彩川オーナーの間で結ばれた完全歩合制システム。渡久地がワンナウト取るごとに500万円のプラス、1失点するごとに5,000万円のマイナス。途中で彩川は自分が有利になるように契約内容を変更していくが、ことごとく失敗し、莫大な年俸を支払うハメに陥る。

新・ワンナウツ契約

『ONE OUTS』に登場する用語。渡久地東亜の成績で年俸が決定するワンナウツ契約から彩川オーナーが降りようとした時、渡久地が提案した新しい契約。渡久地、倉井両投手とムルワカ、菅平両野手の成績によぅて渡久地の年俸が決定する。投手がワンナウト取るごとに500万円、野手は1打点取るごとに5,000万円が渡久地の年俸に加算される。 逆に投手が1失点するごとに5,000万円、野手がスリーアウトするごとに5,000万円が渡久地の年俸から差し引かれる。

オーナー協定

『ONE OUTS』の用語。渡久地東亜のリカオンズオーナーへの就任を阻止しようとした球界のドン、ガラリアンズの田辺オーナーに対して、渡久地が提案した一見不利な協定案。債務超過にならないこと、首位チームと10ゲーム以上離されないこと、パリーグのペナントレースを1位で終了することの三つの条件が満たされない場合は、渡久地の経営権をプロ野球機構に売却しなければならないとされている。

Lチケット

『ONE OUTS』でリカオンズ暫定オーナー渡久地東亜が導入したチケット。通常の1.5倍の価格だが、チームが負けた場合、全額払い戻される。LチケットにはMVPチケットがついていて、観客によるMVP投票が行え、得票数に応じてLチケットの収入が選手に分配される。その代わり年俸の月割り支給は廃止。

MVPチケット

『ONE OUTS』に登場するリカオンズの新チケットLチケット付属のMVP投票用紙。高い客席チケットほど投票権が増える。

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