妖怪アパートの幽雅な日常

妖怪アパートの幽雅な日常

同名のライトノベルを原作としたコミカライズ作品。予期せずして幽霊や妖怪が出るという寿荘に引っ越した稲葉夕士と、アパートの住人たちの交流を描く。「月刊少年シリウス」2011年7月号から連載中。原作は香月日輪。

正式名称
妖怪アパートの幽雅な日常
ふりがな
ようかいあぱーとのゆうがなにちじょう
原作者
香月 日輪
漫画
ジャンル
お化け・妖怪
レーベル
シリウスKC(講談社)
巻数
既刊28巻
関連商品
Amazon 楽天

世界観

妖怪や幽霊、精霊が存在する世界が舞台となっている。これらの「不思議」は利便性を求める現代社会のなかで居場所を失くし、砂漠でオアシスを求めるように寿荘に集まるようになった、と設定されている。幽霊や妖怪の中には霊感を持つ者にしか見えない、感じない者もいる一方、普通に人間に混じって生活している者も存在する。なお、直接的な繋がりはないが、香月日輪が原作を手掛けた『地獄堂霊界通信』『下町不思議物語』などと地名、人名などに共通点が見られ、同じ世界での話と考えられる。

あらすじ

稲葉夕士は、条東商業高校に進学が決まったばかりの少年。両親が他界してから親戚の家に引き取られていたが、そこでの生活は肩身が狭く、春からの学生寮での生活に心を躍らせていた。しかし引っ越しの直前になって、進学する条東商業高校の学生寮が火事で全焼してしまう。なんとしても家を出たい夕士は、見知らぬ少年に勧められた不動産屋で、いわくつきのアパートを紹介される。

作風

異世界の住人がモチーフになっているものの、ホラー描写はほとんどなく、全編を通して心温まるエピソードが多い。生き様が根本的に異なる幽霊や妖怪との交流からヒントを得て、人間同士の関係も学んでいく主人公の精神的な成長が大きな主題となっている。その他、作中に登場する料理描写には定評があり、単行本の巻末では本編に登場したメニューが紹介されたり、料理がメインのスピンオフ作品も発刊されている。

単行本の装填

単行本のカバー下には、おまけマンガ「アパートの中の幽雅な日常」が掲載されている。内容は各単行本に収録されているエピソードにちなんだもので、ギャグが主体。

メディアミックス

ドラマCD

単行本第3巻から第7巻、第11巻から第12巻の特装版、及び連載誌である「月刊シリウス」の付録として、何度かドラマCD化が果たされている。単行本特装版に付属しているドラマCDでは、その単行本に収録されているエピソードを音声化している。

登場人物・キャラクター

稲葉 夕士 (いなば ゆうし)

高校進学を果たした男子。3年前に両親を亡くし、それ以来親戚の家に引き取られて暮らしていたが、高校入学を機に紆余曲折の末、幽霊が出るという妖怪アパート「寿荘」で一人暮らしを始めることになる。部屋は二〇二号室。引っ越し当初はことあるごとに気絶していたが、寿荘での生活が長くなるうちに大分慣れた様子。それでも想定外の事態に直面すると気を失ってしまう。 実は霊能者としての素質を持つ。

久賀 秋音 (くが あきね)

妖怪アパート「寿荘」二〇四号室に住む女子高生。年齢は稲葉夕士のひとつ上で、初対面の夕士のことを名前で呼び、気さくに接している。長い髪をポニーテールにまとめた、非常に元気で活動的な少女で、自称だが人の3倍は食べるという。実は除霊士で、程度の低い霊や妖怪程度ならば難なく退治できる実力を持つ。その生業ゆえに、久賀秋音という名前も本名ではない。

一色黎明 (いっしきれいめい)

妖怪アパート「寿荘」に住む文筆家の男性。長髪を後ろでくくった髪型と糸のように細い目が特徴。身長が低く、外見も若く見えるが立派な成人。「寿荘」にも10年以上住んでいるらしい。知り合う前から稲葉夕士は一色黎明の作品のファンで、グロテスクに見えるが高尚で耽美的、特に文章と著書近影の見た目が一致していないのが好きと語っている。 非常にあっけらかんとした性格でいつも軽口をたたいているが、物事を表現する時に文学的な言葉を使ったり、含蓄のある物言いをすることもある。

深瀬 明 (ふかせ あきら)

妖怪アパート「寿荘」一〇三号室に住む男性。画家。非常に若い外見をしており、肌ツヤも良いが、実年齢は48歳。逆立たせた髪型に鋭い眼光、ぶっきらぼうな物言いをするが、実は面倒見が良く他人の心の機微に聡い。一色黎明とは若い頃からの馴染みだと語る。

シガー

深瀬明に飼われている狼犬。体長は大きいが、初対面の稲葉夕士に飛びつくなど人懐っこい性格。水遊びが好きで庭に簡易プールを作った時には、人でぎゅうぎゅうのなかに容赦なくダイブしていた。

(りゅう)

妖怪アパート「寿荘」二〇三号室に住んでいる霊能力者の男性。稲葉夕士いわく芸能人のように美麗な顔立ちをしており、長い黒髪を後ろで束ねた髪型がトレードマーク。彼が「寿荘」に足を踏み入れると、普段騒がしい幽霊や妖怪も静かになるほど強い力を持ち、周囲からも「龍さん」とさん付けで呼ばれている。「多分、人間」と言われたり、妖怪からも「長生き」と言われるなど、その正体は謎めいている。

古本屋 (ふるほんや)

妖怪アパート「寿荘」の住人。ボサボサの髪に丸眼鏡をかけた男性。世界中の希書や珍本の噂を聞いては放浪の旅に出てしまい、長いあいだ帰ってこないこともある。のちに稲葉夕士の手に渡る魔導書「小ヒエロゾイコン」を持ち帰る。

骨董屋 (こっとうや)

ドレスシャツにアスコットタイ、ベストを羽織り、ゴシック風の模様が描かれた眼帯をつけた壮年の男性。髪をオールバックにしており、口髭も蓄えている。初対面の人間にもお構いなしに話しかけ、何かといわくありげな商品を売りつけようとする。

自動人形 (おーとまた)

骨董屋につき従う人形たち。法被を着て笠をかぶっている。黒く丸い顔をしており、目や鼻などの器官は見られない。自動人形というのは一色黎明が聞いた話で、久賀秋音は人造人間(ホムンクルス)だと聞いているらしい。リーダーだけ少し服装が違う。

るり子 (るりこ)

妖怪アパート「寿荘」で賄いをしている手だけの幽霊。作る料理は絶品で、レパートリーも豊富。生前はホステスをしていたが、それを辞め、かねてからの夢であった小料理屋を開こうとしていたが、その間際に命を落としてしまった。

クリ

妖怪アパート「寿荘」に住む幽霊の一人。まだ幼い子供の姿をしており、生前から一緒に暮らしたシロといつも一緒にいる。非常に人懐っこく、無邪気で愛らしい「寿荘」のマスコットのような扱い。だが、その死には非常に暗い逸話がある。

シロ

クリといつも一緒にいる犬の幽霊。クリが殺された際にその犯人に襲い掛かり、それを知った人間に袋叩きにあう。結果としてクリの後を追うようにして幽霊となり、その後も行動を共にする。性別はメス。

まり子 (まりこ)

妖怪アパート「寿荘」に住み着いている幽霊の一人。見た目は若い女性の姿でスタイルが良い。本人いわく21歳で時が止まっているらしいが、深瀬明に言わせるとただのババァ。人目を気にせず、風呂上りに下着1枚で徘徊しては周囲からたしなめられている。

華子 (はなこ)

妖怪アパート「寿荘」に住み着いている幽霊の一人。いつも玄関にいて、出入りをする人に「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」の挨拶をしてくれる。霊感のない稲葉夕士には、当初はその姿が見えなかった。

黒いアイツ (くろいあいつ)

単行本2巻のカバー裏のおまけマンガに登場する。妖怪アパート「寿荘」に集まる妖怪のうちの1匹で、作中の最序盤から背景の端々に登場していた。モコモコした小さい球体に目と鼻があり、体から直接手足が生えた姿で描かれる。深瀬明が手に持ち、筆代わりにして絵画を描いているため物質として存在する様子。締め切り前の一色黎明の顔を見て、自分たち妖怪より人間のほうがよほど恐いと語る。

貞子 (さだこ)

妖怪アパート「寿荘」に集まる幽霊のうちの一人。非常に長い髪を顔の前にも垂らしている女性。ホラー映画「リング」の貞子がモデルのようで、姿も酷似して描かれる。名前はコミックス2巻が初出だが、黒いアイツと同様に、作中序盤から背景には何度か登場している。特に危害を与えてくるわけではないが、長谷泉貴が初めて寿荘に泊まった際、トイレから出たところで遭遇して彼を青ざめさせている。

もくもくさん

妖怪アパート「寿荘」に集まる妖怪の一種。久賀秋音でも姿が見えない妖怪で、触ってみると柔らかく、とてつもなく図体が大きい。そのためもくもくさんがいるとその場所が通れなくなってしまう。時折トイレの前に現れては、人が中に入るのを邪魔する。

葉賀 (はが)

妖怪アパート「寿荘」に集まる蛇のような妖怪。顔の中心部からぱっくり複数に割れるような口をしており、人に化ける能力を持っている。とある宴会の場で一色黎明に化けていたところ、稲葉夕士に声をかけられ、振り向きざまに口を開いて驚かせた。妖怪に慣れてきたと自認していた夕士だったが、この時は朝まで気絶していた。

大家 (おおや)

稲葉夕士の身長を優に超える、丸みを帯びた愛らしい見た目の妖怪で、その名の通り妖怪アパート「寿荘」の大家。「寿荘」に引っ越し、最初の夜を過ごそうとしていた夕士の前に現れて彼を気絶させた。体は大きいものの温和な性格をしている。ただし、家賃を催促する時は少し怖い。

麻雀の人たち (まーじゃんのひとたち)

妖怪アパート「寿荘」でいつも半纏を羽織り、麻雀に興じている人たち。しばらくの間は麻雀卓とその音、手だけしか登場しなかったが、のちに鬼であることが明かされた。

佐藤 (さとう)

髪を七三分けにして笑顔を絶やさない糸目の男性で、実は妖怪。人間として美容業界の大手「ソワール化粧品」に勤めており、勤続年数は20年のベテランで役職は課長。短い寿命の中で精いっぱい生きる人間に憧れ、本当は人間に生まれたかったと語る。会社に勤めているのも人間の真似ごとをするため。

山田 (やまだ)

身長が低い割に恰幅が良く、薄い頭髪をバーコードのようにセットした髪型が特徴の男性。実は妖怪だが、佐藤と同じく人間社会に溶け込んでいる。

ボールを持った少年 (ぼーるをもったしょうねん)

新居を探すも見つからず途方に暮れている稲葉夕士に声をかけた少年。部屋を探しているならいい店を知ってると前田不動産を紹介してくれるが、夕士が少し目を離した隙に姿を消してしまう。

前田 (まえだ)

妖怪アパート「寿荘」の物件情報を取り扱っている前田不動産の主人。稲葉夕士が格安物件を探していることを知り、自分が物置にしていた「寿荘」の部屋を勧めた。当初は特に不審な点もなかったが、のちに夕士が寮に移った時点では前田不動産自体が店舗として存在しないことが発覚するなど、彼自身も人外である可能性が高い。

(あかね)

大神神社に仕える巨大な狼の霊獣。幽霊化した後、大神に処分されかけていたクリとシロをかばい、寿荘に預ける。それ以来母親のように接している。また、クリとシロだけではなく、誰にでも優しく接する懐の深い性格。メス。

クリの母親 (くりのははおや)

クリの実母。独身のうちにクリを産んだものの当時付き合っていた男に拒絶され、虐待を行うようになる。ついには錯乱し、クリを誤って殺害したことで、シロに喉元を噛みちぎられ死亡した。しかし死んでなおクリに執着し、追いかけてくる。

大神 (おおかみ)

茜が仕える神社の主であり、すべての犬族をまとめる神。霊魂となり、保護を求めてきたクリが、母親の魂で穢されているとし、聖域に穢れを持ち込んだクリとシロを滅しようとした。

薬屋 (くすりや)

年に一、二度の頻度で妖怪アパート「寿荘」に薬を売りに来る人物。着物に股引き、手甲にほっかむり、草履履き、「薬」と書かれた前垂れをつけた見るからに古風な薬屋。他に、「へのへのもへじ」と書かれたお面を着用している。持ってくる薬は漢方を主体をした自然素材が中心だが、稲葉夕士が傷薬が欲しいと言った時には、どこにでもある絆創膏を薦めてきた。 本人に悪気はなく、現代医学は便利だと語る。

ドゥラハン

コミックス第2巻のカバー裏で登場した妖怪。西洋風の鎧を身にまとい、同じく西洋風の兜を手に持っている。古本屋が持ち帰った本の中から出現した。動揺する稲葉夕士をよそに、大家と二言三言交わした後、金貨を手渡すと、翌日には妖怪アパート「寿荘」の住人となっていた。

又十郎 (またじゅうろう)

妖怪アパート「寿荘」を訪れた単眼・巨漢の妖怪。立つと「寿荘」の2階部分に顔が来るほど大きい。熊野の隠れ里に住んでおり、白神の狩り合戦で優勝した景品の猪肉を持ってきた。鞍馬の天狗とも交友がある。

延長コード (えんちょうこーど)

稲葉夕士が部屋で長谷泉貴と電話をする時に活躍した妖怪。電気を主食としており、電源コードの間に割り込むことから結果的にコードが伸びるため、そう呼ばれている。電気を感じている時は恍惚とした表情を浮かべる。

ナマハゲ

大晦日に妖怪アパート「寿荘」に現れた妖怪。人が扮しているタイプではなく、本物のナマハゲ。包丁やこん棒を持ち、クリを泣かせた後、一緒に食卓を囲んで鍋をつつき、年が明ける前に帰って行った。

長谷 泉貴 (はせ みずき)

稲葉夕士の親友。夕士とは小学3年生の頃から仲が良く、それ以来たびたび同じクラスになっている。名門の進学校に進学したため高校で夕士とは別れたが、それでも手紙をやり取りしたりするほどの仲。頭脳明晰、眉目秀麗、腕っ節も強いうえに、周囲に気がきく完璧超人。一方で計算高い面もあり、中学と高校では裏番を張っているという。両親を亡くした夕士を気にかけ、彼が住む「寿荘」にも訪れることがある。 ほぼ同じ顔をした姉がいる。

千晶 直巳 (ちあき なおみ)

休職した早坂俊三と入れ替わりに稲葉夕士の担任教師になった男性で32歳独身。オールバックに固めた髪に端正な顔立ちをしている。夕士には、深瀬明と同種の危険人物と見なされている。簿記とパソコンが専門教科で生活指導も担当する。

田代 貴子 (たしろ たかこ)

稲葉夕士が所属する英会話クラブで出会った女の子。男女の境なく話しかける人当たりのいい性格。学校の帰り道でバイクと接触して右足の動脈を切断する傷を負ったが、近くにいた夕士の措置で重症には至らなかった。そのことで夕士に恩義を感じている。

桜庭 桜子 (さくらば さくらこ)

稲葉夕士が高校2年生に進級した時のクラスメイト。ふんわりウェーブがかったミドルボブの髪型が特徴。田代貴子や垣内由衣とは仲が良く、よく3人でつるんでいる。

垣内 由衣 (かきうち ゆい)

稲葉夕士が高校2年生に進級した時のクラスメイト。黒髪ショートの髪型が特徴。田代貴子や桜庭桜子とは仲が良く、3人でつるんでおり、そのなかでは主にツッコミ役を担当している。

竹中 (たけなか)

稲葉夕士の通う高校で隣の席に座っているクラスメイト。明るい色の髪にそばかすが特徴の少年。非常に軽い性格で夕士にもよく話しかけてくるが、一方で不良とのつながりも持ち、その付き合いで学校をサボることもある。無断で「寿荘」に押し掛けてくる無遠慮なところもある。

竹中の友人たち (たけなかのゆうじんたち)

竹中に呼ばれて断りもなく妖怪アパート「寿荘」を訪れた不良たち。未成年の身分で喫煙、飲酒、アパート内でポイ捨てするなどやりたい放題で、それを咎めた稲葉夕士とケンカになる。しかし、他の住人の登場により、なす術もなく逃げ帰った。

石井 博之 (いしい ひろゆき)

稲葉夕士が妖怪アパート「寿荘」の部屋を引き払って学生寮に引っ越した際に、同室になった学生のうちの一人。1年生。丸く小さい目に四角い顔、夕士よりも低い身長の少年。人当たりが良く陽気な性格で、同室の加賀圭介とも一定の距離を保ちつつ良い関係を築いていた。

加賀 圭介 (かが けいすけ)

稲葉夕士が妖怪アパート「寿荘」の部屋を引き払い、学生寮に引っ越した際に、同室になった学生のうちの一人。2年生。寮では常に音楽プレイヤーで音楽を聞いており、基本的に他人には不干渉で、口数も少ない。夕士が自分の悪口を言っていると聞いた際には、激昂して音楽プレイヤーを破壊していた。

三浦 勝正 (みうら かつまさ)

稲葉夕士が高校2年生に進級した際、新しく英語担当に配属された新人教師。教師になってから日が浅くまだ20代と思われるが、歳の割にやつれ、神経質そうでとっつきにくい雰囲気の持ち主。夕士は、教え方にソツがなく頭が良い印象を受けると評しているが、田代貴子からすれば教科書通りでつまらないらしい。

早坂 俊三 (はやさか としぞう)

稲葉夕士が高校2年生に進級した際の担任教師。髪がほとんど白髪であり、それなりの年齢と思われる。温和な性格で、三浦勝正に襲われた夕士の病院にも付き添った。田代貴子からは「トシゾー」と呼ばれている。のちに糖尿病を患って入院し、休職する。

青木 春香 (あおき はるか)

千晶直巳と同時に条東商業高校に赴任した女性教師。黒いロングヘアに眼鏡をかけ、穏やかな印象を与える。担当は2年生の英語。フールいわく「信念の人」。龍の醸し出す波動と雰囲気が似ているらしい。

山本 小夏 (やまもと こなつ)

条東商業高校の英会話クラブに新入部した女の子。長い黒髪に大きなスクエア型の眼鏡が特徴。クラスは1年F組。目つきが悪く、初対面の時から何かと周囲に突っかかる態度を取る。

坂口 (さかぐち)

条東商業高校の英会話クラブの顧問を務める教師。存在と名前だけは示唆されていたが、登場したのは山本小夏のクラブ加入時が初めて。部員からは一定の信頼を得ているようで、のちに青木春香が顧問に就任するかもしれないと危惧された時は、坂口に止めてもらおうという意見も出ていた。

間宮 (まみや)

条東商業高校の英会話クラブの一員。文化祭の出し物で演じる「ハウルの動く城」のハウル役になってしまい、自分がそんな役を演じてしまったらクレームが来るのではないかと恐れている。

江上 (えがみ)

条東商業高校の英会話クラブの部長を務める。カチューシャで前髪を止めたミドルボブの髪型が特徴。物事の進行に無駄がなく、部員からの信望も厚い。またヒステリックな山本小夏の挑発にも顔色ひとつ変えないなど、芯の強さも併せ持つ。

西山 (にしやま)

条東商業高校2年E組の生徒。中間試験で携帯電話を使ってカンニングを試みたところ、千晶直巳に見つかってしまう。これにより、携帯電話の持ち込みに関する生徒総会が開かれるきっかけを作った。

神谷 (かみや)

条東商業高校の生徒会長。携帯電話の持ち込みに関する生徒総会が行なわれた際、携帯の持ち込み完全禁止を提案する千晶直巳に食い下がり、1ヵ月の持ち込み禁止まで譲歩させた。英会話クラブの部長を務める江上と仲がいい。

女生徒 (じょせいと)

条東商業高校の教師である青木春香に、信仰に近いほどの想いを寄せる女生徒。生徒総会のやり取りの件で千晶直巳に反発心を持ち、カッターナイフで切りつける凶行に及ぶ。

岩崎 賢吾 (いわさき けんご)

稲葉夕士のクラスメイト。少林寺拳法部に所属しており、将来の夢は警察官。明るい髪をツンツンに立てた髪型が特徴。修学旅行で同じ班になり、夕士と共に行動する。

上野 勝 (うえの まさる)

稲葉夕士のクラスメイト。将棋部に所属しており、将来の夢は家業の理髪店を継ぐこと。少しくせのあるショートの髪とそばかすが特徴。修学旅行で同じ班になり、夕士と共に行動する。

桂木 公一 (かつらぎ こういち)

稲葉夕士のクラスメイト。バスケットボール部に所属しており、将来の夢は家業の飲食店を継ぐこと。外にハネた黒髪のミドルヘアが特徴。修学旅行で同じ班になり、夕士と共に行動する。修学旅行に先んじてI組の女子に告白したが玉砕。それもいい思い出としつつ、学生のうちにしかできないことを記念にすべきだと高説を唱え、周りからからかわれる。

(ひろし)

稲葉夕士の伯父。両親を亡くした夕士を引き取った親戚だが、特に彼を疎んじているような様子もなく、夕士が入居する予定の学生寮が全焼した時は「しょうがない」と、夕士に家から通学することを勧めた。

恵子 (けいこ)

稲葉夕士の伯母。両親を亡くした夕士を引き取った親戚。夕士が育ち盛りの頃は、娘の恵理子よりもおかずの量を多くしたりと、実子ではない夕士にも分け隔てなく接していた。しかしそのせいでどうしても崩れてしまう盛りつけを見て、当時の夕士はそれを差別と感じていたことが語られる。

恵理子 (えりこ)

両親を亡くした稲葉夕士を引き取った親戚の家の一人娘。歳は夕士の1歳上。多感な年頃ということもあり、家庭に入り込んできた異性の夕士に対して、強硬な態度を取り、辛くあたる。ピーマンが嫌い。

長谷 汀 (はせ みぎわ)

稲葉夕士の親友・長谷泉貴の姉。男女の違いこそあれ、顔は泉貴と瓜二つ。泉貴いわく一流大学を卒業し、一流企業に勤める才女。弟と同様に文武両道で、合気道の上級者。彼氏持ち。

長谷 瑞穂 (はせ みずほ)

稲葉夕士の親友である長谷泉貴の母親。泉貴いわく穏やかで優しい家庭的な母親。その評価に違わず、常に笑顔を絶やさず、おっとりした性格だが、泉貴が夕士との文通に可愛いレターセットを買っていることを家族の前で暴露するなど、容赦のない一面もある。実は大物政治家の娘。

長谷 慶二 (はせ けいじ)

稲葉夕士の親友である長谷泉貴の父親。大財閥の家庭に生まれたが、その恩恵を受けることを良しとせず、実家から離れて超有名企業に就職。現在はその会社の重役を務めている。自分の半生とその成功体験から、家族にも「自分のことは自分でなんとかする」というモットーを課している。

剣崎 護 (けんざき まもる)

稲葉夕士がアルバイトしている「剣崎運輸」の社長で、ガタイがよく迫力のある中年男性。制服を着ている際には「社長」とかかれたネームプレートをつけている。親がおらず一人暮らしをしているうえ、よく働く夕士を気に入っている。会社で新人アルバイトを雇った際、夕士をその2人のコミュニケーション係に任命する。

ヤマ

稲葉夕士がアルバイトしている「剣崎運輸」の社員。色が黒く、常に頭にタオルを巻いているのが特徴。愛煙家。リーダーシップに富み、新人アルバイトが仕事でミスをした際、率先して社長に頭を下げた。周囲からは「ヤマさん」と呼ばれている。

島津 (しまづ)

稲葉夕士がアルバイトしている「剣崎運輸」の事務員。眼鏡をかけ、髪を後ろでまとめた眼光の鋭い女性。始業時間を過ぎても事務所にいる社員にハッパをかけたりするほか、事務仕事のノルマが終わっていない社長にもズケズケとものを言う。そのため周囲から恐れられているが、普通に仕事をこなしているだけで本人に非はまったくない。

佐々木、川島 (ささき、かわしま)

稲葉夕士がアルバイトしている「剣崎運輸」が夏休みに臨時で雇ったアルバイト。2人とも、当初は先輩社員たちとなかなかなじめなかったが、夕士の働き掛けもあり、最終的には他の社員に混ざって談笑するまでになる。荷物に書かれた天地無用の意味を知らないなど少々天然の気がある。

浅田 有実 (あさだ ゆうみ)

稲葉夕士がアルバイト中に見かけた少女。ビルの屋上の縁に立ち、自殺を考えていたところを夕士に止められる。まだ小学6年生だが、髪を染め、化粧をして大人びた格好をしている。のちに助けてもらったお礼をしたいと夕士にコンタクトを図る。

フール

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。愚者のタロットに宿る。「小ヒエロゾイコン」の案内人で、宿っている妖魔と主人と認めた人物の仲介役を担う。出会ったその日に稲葉夕士の夢枕に立って意思の疎通を図り、封印を解いてもらったことで主人と認める。

ジン

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。魔術師のタロットに宿る。フールいわくアラジンのランプの精。万能の精霊で主人の望みをなんでも叶えることができるという触れ込みで、稲葉夕士が現金を願ったところ500円を出して消えた。スタミナがなく、一度使うと当分呼び出せない。

ジルフェ

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。女教皇のタロットに宿る風の精霊。風の精霊の名は伊達ではなく、呼び出した時にはガラス窓が割れるほどの突風が吹き、布団がふっとんだ。

コクマー

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。隠者のタロットに宿る。フールいわく、叡智の女神ミネルヴァに仕える知識のフクロウの眷属で、この世の「知」のすべてを知っているというが、初めて召喚された時には完全にボケていた。モノクルをつけた年老いたフクロウの姿をしている。

ケット・シー (けっとしー)

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。吊るされた男のタロットに宿る。フールいわく、長靴をはいた猫として知られる猫王の一族。長椅子に寝転び、水煙草を吸ったやる気のない状態で召喚され、「明日は雨」「お前は明日女にフラれる」と予言を残して消えた。

ケルベロス

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。悪魔のタロットに宿る。地獄の人喰い狼だがまだ子犬で、成長するにはあと200年ほどかかるらしい。

ヒポグリフ

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。戦車のタロットに宿る。千里を一瞬で駆けることができる神馬。巨大な怪鳥の姿で召喚されるが、稲葉夕士らの声に耳を傾けずに勝手にどこかへ飛んで行った。フールいわく、プライドが高く乗りこなすにはコツが必要とのこと。

メロア

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。女皇のタロットに宿る。水の精霊で無から水を生み出すことができるが、1メートル四方の地面に水たまりを作る程度の力しかない。

イタカ

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。塔のタロットに宿る雷の精霊。ごく小規模ながら雷電を生み出すことができる。小規模とは言え、濡れた水に触れている状態なら成人男性数人の体を痺れさせることもでき、侮れない威力を持つ。

タナトス

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。死神のタロットに宿る。フールいわく冥界の王に仕える死の大天使の眷属。十字架の描かれたマントとフードをかぶり、鎌を持った典型的な死神の姿で現れるが、身長は低く稲葉夕士の腰ほどまでしかない。自信満々でクリを指差して3日以内に死ぬと宣告し、周囲を呆れさせた。

シレネー

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。節制のタロットに宿る。鳥の体に女性の頭を持つ姿で描かれる。美しい歌声の持ち主。のちに歌のレパートリーを増やし、宇多田ヒカルやEXILEの鼻歌も歌えるようになる。

スクルド

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。運命の輪のタロットに宿り、ウルズ、ザンディと合わせて三姉妹で「ノルン」と呼ばれる。三姉妹の長女。杯を伴って現れ、他の姉妹と力を合わせると、占いや透視ができる。登場するたびに何かに影響されて容姿を変えるが、髪型で見分けがつく。スクルドは主にゆるいロングウェーブ。 初回登場時のギャル風の格好は、スクルドがケット・シーに今どきの格好を聞いた結果らしい。

ザンディ

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。運命の輪のタロットに宿り、ウルズ、スクルドと合わせて三姉妹で「ノルン」と呼ばれる。三姉妹の次女。杯を伴って現れ、他の姉妹と力を合わせると、占いや透視ができる。登場するたびに何かに影響されて容姿を変えるが、髪型で見分けがつく。ザンディは主に明るい色のロングストレート。 言葉遣いが乱暴で、気の強い性格。

ウルズ

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。運命の輪のタロットに宿り、ザンディ、スクルドと合わせて三姉妹で「ノルン」と呼ばれる。三姉妹の末妹。杯を伴って現れ、他の姉妹と力を合わせると、占いや透視ができる。登場するたびに何かに影響されて容姿を変えるが、髪型で見分けがつく。ウルズは主にツインテール。 気が弱く、すぐに泣いてすねる。

ブロンディーズ

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。審判のタロットに宿る。フールいわく最期の審判で死者を呼び覚ます神鳴。召喚時には強烈な爆裂音を伴い、周囲の窓ガラスを破壊するほどの衝撃を放つ。その様子を見た周囲の人間は何かが爆発したのかと勘違いするほど。

ゴイエレメス

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。力のタロットに宿る。全身石で造られた巨体の人形で力持ち。美術室にあるような大きな机でも楽々持ちあげることができる。

サク

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。月のタロットに宿る。フールいわく月の宮を守護する毒サソリ。召喚時には電撃が走ったような描写がなされ、対象の動きを一時的に止める。他とは違って自動的に「小ヒエロゾイコン」に戻るタイプの存在ではないらしく、稲葉夕士の「戻れ」の命令で再度電撃をまとい、「小ヒエロゾイコン」に納まった。

ホルスの眼 (ほるすのめ)

魔導書「小ヒエロゾイコン」に宿る妖魔のうちの一匹。正義のタロットに宿る。見たものをなんでも記録し、再生することができるという精霊。「悪い奴はいないか…」と喋りつつ浮遊する、人間の頭ほどのサイズの目玉で登場。小さくなることもできるというが、それでも手のひらに収まるぐらいのサイズにしかならなかった。

ヴァチカンの特務員 (ゔぁちかんのとくむいん)

骨董屋が持ち帰った全方向型立体映写機を使っている際に現れた男性。黒いコートに中折れ帽をかぶり、サングラスをかけた謎の人物。古本屋いわくヴァチカンの“奇跡狩り”の一員だろうとのこと。久賀秋音の張った結界をいともたやすく破り侵入してくるなど、底知れない力の持ち主。

ジョージ

稲葉夕士が参加したバーベキュー大会を主催した外国人クラブ「エール1960」のボスで退役軍人。飛び入り参加となった浅田有実にも気さくに対応する、優しい人物。

バグー

稲葉夕士が参加したバーベキュー大会にいた牧師。禿頭に丸眼鏡、口髭をたくわえた柔和な中年男性。自身が営む「バグー英会話教室」に浅田有実を誘った。

クラブの不良たち (くらぶのふりょうたち)

稲葉夕士と出会う前の有実が通っていたクラブに出入りしているらしい不良たち。夕士と一緒に歩いている浅田有実を見つけ、何かと絡んでくるが、制御できるようになったブロンディーズの力によって気絶し、尻尾を巻いて逃げ帰った。

藤之 (ふじゆき)

久賀秋音がアルバイトをしている月野木病院で働く医師。作中序盤から会話の端々に登場していたが、稲葉夕士と出会ったのはかなり後。主に妖怪担当で、秋音の霊能力の師匠でもある。髪をオールバックに固めた長身痩躯の中年男性。穏やかに見えるがかなりの実力者。医者のため、周りからは「先生」付けで呼ばれる。

ハツ

妖怪アパート「寿荘」のお月見に呼ばれた月野木病院の患者の一人で年老いた女性。クリを見て、自分もこんな子を生んでいれば違った人生を送れたかもしれないと涙を流すが、月野木病院の関係者に良くしてもらったことで、最期に良い思い出ができたと語る。実はお月見の当日に病院で死亡している。

アムリタの伝承者 (あむりたのでんしょうしゃ)

古本屋がインドまで行き、ようやくたどり着いた霊薬アムリタの言い伝えを知る老婆。最初にアムリタについて聞かれた時はとぼけていたが、古本屋から多くの金品を受領し、ようやく語り出す。アムリタを譲って欲しいと言われた時には、なおも金を要求した。実は元ソーマ神殿つきの巫女で年齢は800歳を超える。

結城 (ゆうき)

長谷慶二の第一秘書兼ボディーガード。背が高く、ウルフカットに切れ長の目をした男性。壮絶な過去を持っており、チンピラ3人を一瞬で片づけるほど武力に長ける。慶二と会うまでサラリーマンをしたことがなかったにも関わらず、ビジネスの勉強をさせると1週間で完璧にこなすようになったという有能すぎる人物。

不良のライダーたち (ふりょうのらいだーたち)

稲葉夕士と長谷泉貴がファミリーレストランで会っている間に、無断で泉貴のバイクにまたがり、因縁をつけてきた集団。その後、泉貴にやりこめられ逆上。山中の廃墟にまで追ってくるが、泉貴の機転と夕士の魔導書「小ヒエロゾイコン」の力で返り討ちに遭う。

生首 (なまくび)

古本屋が持ち帰ったトランクの中から出現した妖怪。江戸時代末期に描かれた処刑画に宿る斬首された侍の怨念が、寿荘の空気にあてられて復活してしまったものと推測されている。魔書使いである古本屋の力で元の姿に戻った。

集団・組織

ヴァチカンの“奇跡狩り” (こんぐれっそゔぃえたーと)

カトリック教会の総本山であるヴァチカンが抱える裏組織のひとつ。古本屋いわく世界の霊的治安を守る警察のようなもの。任務の一環として、奇跡を起こして大衆を惑わす可能性のある物品の回収を行っている。骨董屋が持ち帰ったアイテムを使用したところ、その捜査網にひっかかってしまう。古本屋も過去に一度捕まったことがあるらしい。

場所

条東商業高校 (じょうとうしょうぎょうこうこう)

稲葉夕士が通う高校。制服は男子は学ラン、女子はブレザータイプ。生徒数は1学年でおおよそ400名。クラブ活動や他校との交流が盛んで、例えば夕士が所属する英会話クラブでは、他校や有志が運営する英会話クラブと頻繁にバーベキュー大会を行っている。作中冒頭で夕士が入居する直前に学生寮が全焼した。

前田不動産 (まえだふどうさん)

学生寮への転居が不可能になり、部屋を探していた稲葉夕士が最後に見つけた不動産屋。他の不動産屋にはなかった妖怪アパート「寿荘」を扱っていた。のちに夕士が学生寮に転居している間に、同じ場所を訪れているが、確かにあったはずの店舗はなく空店舗になっていた。

寿荘 (ことぶきそう)

稲葉夕士が住むことになったアパート。古い洋館のような建築様式のアパートで、2階建て。鷹ノ台東駅から徒歩10分、部屋の間取りは六畳和室+二畳の板間、トイレ風呂は共同で賄いつき、光熱費込みで家賃2万5千円という物件。非常に好条件だが、その代わりに幽霊が出るという噂があり、事実そこは物の怪のオアシスとなっている。なお、風呂は地下にある天然温泉。 男湯と女湯に分かれているうえ、大家の一任で滝を引いたり、異空間につなげることもできる。広間には共同の黒電話があり、住人が電話に出る時まで「妖怪アパート」と言いそうになるなど、あだ名が定着している。

寿荘の風呂 (ことぶきそうのふろ)

寿荘の地下にある共同風呂。古めかしいアパートの地下にあるには似つかわしくないほど広く、しかも温泉らしい。男湯と女湯があるのだが、男湯のほうが広いらしく、るり子はそれが理由で男湯に良く入ってくる。作中序盤は鍾乳洞のような場所だったが、のちに増築を重ねられ、滝が作られたり異世界に通じたりしている。しかも通じる異世界は場所が変えられるらしく、日の出が見える広大な平野、見渡す限りの雪原とめまぐるしく変化。 温泉にはマイクロバスで乗りつけたり、宴会を開くほどのスペースもあったり、もはや異空間と化している。

月野木病院 (つきのきびょういん)

久賀秋音がアルバイトをしている病院。表向きは普通の病院だが、実はスタッフ、患者共に人間、妖怪の種別を問わない妖怪病院。コンクリート4階建ての建物で、ベッドの公称数は40床とされているが、実際にはその倍近くある。専門は内科と精神科だが、他の病院から手のかかる老人や支払い能力のないホームレスの患者が次々送られてくる。 それらの人々は、天寿を全うするまでほぼ月野木病院にいるため、「月野木病院に入院したら死ぬ」との噂が広まり、普通の患者は滅多に来ない。

学生寮 (がくせいりょう)

稲葉夕士が高校1年生の2学期に入った頃、新しく建て直された学生寮。3階建て。夕士の住む部屋では3人の学生が共同生活している。賄いも家賃に含まれており、同室の石井博之は美味しいというが、夕士はるり子の料理には遠く及ばないと感じている。ちなみに、以前に火事で全焼した寮は築30年ぐらいだったという。

白峰女子高等学校 (しらみねじょしこうとうがっこう)

条東商業高校に赴任する前に、三浦勝正が勤務していた女子高。偏差値が高く、評判も良い。クラブ活動にも力を入れており、運動部、文化部共に強いことで知られている。中でも演劇部は毎年コンクールで好成績を収める強豪校。まだ教師になりたての三浦は、過去に演劇に携わっていた経験から、この女子高でも演劇部の顧問を務めていた。

剣崎運輸 (けんざきうんゆ)

稲葉夕士がアルバイトをしている運送会社。朝8時から夜8時まで営業しており、ほとんどの社員がフルタイムで働いているという、労働基準法完全無視の企業。もちろん残業もある。ただし、当日分の配送が早くに終わると、給料はそのまま早上がりできることもある。それでも夕士は、気のいい人たちが集まる少々暑苦しいがいい職場と評し、ここで働くことを気に入っている。 夜間勤務者には弁当が支給される。夏休みに5人の臨時アルバイトを雇ったが、内3人にすぐ辞められたことがある。

修学旅行のホテル (しゅうがくりょこうのほてる)

稲葉夕士たちが修学旅行で泊まることになったホテル。本来予定していた宿泊先は、冬休み中に厨房でガス爆発が起きて営業停止になったため、変更となった。歴史は古いが最近リニューアルし、見た目はピカピカ。しかし夕士は雰囲気が暗く、くたびれていて、空気も澱んでいると感じていた。何度空調を設定しても寒い、突然ラップ音がして停電する、説明できない落雪事故が起きるなど、怪しげな現象が頻発する。

その他キーワード

ユニコーンの角 (ゆにこーんのつの)

邪念を払い、気を清らかにしてくれるという触れ込みで、稲葉夕士に出会って早々に売りつけようとした。のちに長谷泉貴と会った際にも同様に購入を迫るが泉貴は本格的に交渉し、おまけをつけて泉貴の手に渡った。その御利益かは分からないが、これを購入した泉貴は家族全員が牡蠣にあたった時も無事だったという。

妖精王の夢見の石 (ようせいおうのゆめみのいし)

クリの母親が妖怪アパート「寿荘」に訪れた際、その有様を見て精神的に疲労した稲葉夕士を見かねて骨董屋がプレゼントした。夕士がこれを持って寝たところ、死んだはずの両親と、親友の長谷泉貴と一緒に花畑でピクニックをしている夢を見たが、夕士は夢の内容から自分に少女趣味があるのか、と落ち込んだりしている。

霊毛のペンダント (れいもうのぺんだんと)

妖怪アパート「寿荘」を出ていくという稲葉夕士に、骨董屋が餞別として渡したペンダント。水晶の中に龍の髪の毛がはめ込まれている。霊能力者の髪の毛は霊毛と呼ばれ、霊気や霊力が宿るため、ヨーロッパの貴族の奥方などに高く売れるという。

小ヒエロゾイコン (ぷちひえろぞいこん)

古本屋が持ち帰った魔導書のうちのひとつ。一見、ただのタロットカードの画集のようだが、描かれているタロットの下部の文字は普通の人には読めない。久賀秋音によれば、これは封印が施されている証だという。古本屋が寿荘に持ち帰った晩に稲葉夕士と共鳴し、文字が読めるようになったことで封印が解除され、夕士の持ち物となった。 中にはタロットカードに見立てた22匹の妖魔や精霊が宿っている。

ヒエロゾイコン

有名な大魔導士が異次元より召喚した78匹の妖魔を封じ込めたとされる魔導書。「小ヒエロゾイコン」はこれをモチーフにして、別の魔導士が作り上げたものといわれている。

七賢人の書 (せぶんせいじ)

古本屋が持っている魔導書。書の中に7人の魔導士の力が封じられており、古本屋の命に従って自由に行使することができる。ちなみにそのうちひとつ「アラトロン」を古本屋が行使した際には、寿荘の空気にあてられて復活した妖怪を一瞬にして元の姿に戻した。ただしこれが本来の効能なのか、具体的な効果などは不明。

全方向型立体映写機 (ぜんほうこうがたりったいえいしゃき)

チップ状の何かを差し込むと、座っている座布団を除く床、壁、天井がなくなり、空に浮いていると勘違いするほど現実的な映像に変わる。古本屋によれば映し出されている映像は「この世じゃない」とのことで、恐竜が間近を通過したり、砂の海にすむ巨大な魚などがいる。使用中にヴァチカンの特務員に見つかったため、骨董屋が煙幕を撒いて逃げ、同時に映像も姿を消した。

アムリタ

月の神ソーマが持っている霊薬で、飲むと不死の力を授かるとされている。アムリタの精製には満月の力が不可欠で、古本屋が苦節の末に入手した未完成のアムリタを、妖怪アパート「寿荘」で行なわれたお月見の宴会で完成させようとした。なお手に入れたアムリタは確かに本物に近い力を持っていたが、中身が空に近く、わずかに残っていた1滴を4人で舐め、寿命を7ヵ月ほど延ばすだけの力しかなかった。 しかし後に再登場し、ごくわずかな量だけで危篤状態の千晶直巳を蘇らせている。

自然魔術 (まぎななとぅらりあ)

天然素材を使った医学や薬、またはそれらを使った技術のこと。薬屋が持っていたいわゆる漢方薬もその一種であり、傷薬になる「百足油」、胃腸を整える作用がある「王獏」、せみの抜け殻を砕いて粉にし、塗り薬とまぜて中耳炎の薬とするなどが一例として挙げられる。

魔書使い (ぶっくますたー)

古本屋のように魔導書を扱い、主にそれを行使して力をふるう魔導士の呼称。魔導書「小ヒエロゾイコン」に認められた稲葉夕士も魔書使いということになるが、まだまだ未熟。

イドの怪物 (いどのかいぶつ)

1956年に制作された映画「禁断の惑星」に登場した怪物のこと。モチーフとなった映画でのイドの怪物は科学技術によって増幅された人の潜在意識や自我が、実体をもって人々を襲うというものだったが、本作『妖怪アパートの幽雅な日常』では、条東商業高校の体育館倉庫にある落書きから噴出した黒い何かを指す。罵詈雑言を書きなぐった者全員の負の感情が宿り集まったもので、暗い過去を持つ三浦勝正とシンクロし、取り憑いた。 稲葉夕士が過去に「禁断の惑星」を見た経験があり、なぞらえてそう名付けた。

第三の眼 (だいさんのめ)

稲葉夕士が龍からおまじないとして授かったもの。授かる際には、龍の額に三つ目の眼があると想像しろと言われ、その直後に頭突きをかまされるという強引な方法が取られた。一色黎明いわく、視覚ではなく洞察力で物を見るための心霊的な器官。久賀秋音は「悟りを開く」ためのものとまとめた。授かった後も実感がわかなかった夕士だが、のちに意識してある程度使いこなせるようになっている。

異能者 (いのうしゃ)

異能とはある一点に関する天才的な才能のことを指す。そのため、異能者とはとある物事や分野において超人的な才能を持つ者のこと。龍や千晶直巳がそうであるとされている。長谷泉貴は、自分は優秀なだけで異能者ではなく、稲葉夕士こそが異能者であると語っている。

クレジット

原作

香月 日輪

書誌情報

妖怪アパートの幽雅な日常 28巻 講談社〈シリウスKC〉

第1巻

(2011-11-09発行、 978-4063763102)

第2巻

(2012-05-09発行、 978-4063763430)

第3巻

(2012-11-09発行、 978-4063763706)

第4巻

(2013-04-09発行、 978-4063763942)

第5巻

(2013-11-08発行、 978-4063764291)

第6巻

(2014-04-09発行、 978-4063764574)

第7巻

(2014-11-07発行、 978-4063765083)

第8巻

(2015-03-09発行、 978-4063765274)

第9巻

(2015-07-09発行、 978-4063765540)

第10巻

(2015-11-09発行、 978-4063765816)

第11巻

(2016-04-08発行、 978-4063906165)

第12巻

(2016-11-09発行、 978-4063906615)

第13巻

(2017-04-07発行、 978-4063906981)

第14巻

(2017-07-07発行、 978-4063907193)

第15巻

(2017-11-09発行、 978-4065103395)

第16巻

(2018-04-09発行、 978-4065111734)

第17巻

(2018-11-09発行、 978-4065134375)

第18巻

(2019-04-09発行、 978-4065150511)

第19巻

(2019-11-08発行、 978-4065174760)

第20巻

(2020-04-09発行、 978-4065190753)

第21巻

(2020-11-09発行、 978-4065211847)

第22巻

(2021-04-08発行、 978-4065227718)

第23巻

(2021-07-08発行、 978-4065238028)

第24巻

(2022-01-07発行、 978-4065257388)

第25巻

(2022-07-07発行、 978-4065283134)

第26巻

(2023-03-09発行、 978-4065309346)

第27巻

(2023-09-08発行、 978-4065330982)

第28巻

(2024-01-09発行、 978-4065342138)

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