怨み屋本舗 WORST

怨み屋本舗 WORST

『怨み屋本舗』シリーズの第6部。謎の女、怨み屋が、法では裁けない人の業を、悪の力をもって闇に葬る。一つの復讐を完了させる連作形式で描かれるドラマティック・サスペンスで、第1巻は連作短編だが、第2巻以降は基本的に中編で構成されている。集英社「グランドジャンプ」2017年13号から掲載の作品で、「週刊プレイボーイ」2016年36・37号、2017年15・16号、「グランドジャンプPREMIUM」2016年9月号、2018年7月号にも掲載されている。

正式名称
怨み屋本舗 WORST
ふりがな
うらみやほんぽ わーすと
作者
ジャンル
復讐
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊21巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

シルバードライバー

ファミリーレストランでアルバイトする女子大学生の渡本芙乃が、痴呆症の老人、竜門寺七巳朗に轢き殺された。焼香に訪れた、芙乃のアルバイト仲間の中木ほのかから、芙乃が竜門寺にストーカー行為をされていた事を知った芙乃の母親は、怨み屋に復讐を依頼。怨み屋は竜門時に色仕掛けで近づき、彼が認知症を装っていたという自白を引き出す。さらに揺さぶりをかけられた竜門寺は、車で暴走。そこに、怨み屋から脅迫されて呼び出されたほのかが現れる。実は芙乃の情報を竜門寺に売っていたのはほのかであり、それを知った芙乃の母親が、ほのかへの復讐を怨み屋に依頼したのである。(第1話「シルバードライバー」。ほか、3エピソード収録)

自殺の理由

作田圭はイジメにより自殺したとされていたが、学校側の調査にはまったく進展が見られず、父親の作田和典は、徹底的に戦うと息巻いていた。母親の作田恭美は、怨み屋に、圭を追い詰めた犯人をつき止めて相当の報いを与えてほしいと依頼。だが、十二月田猛臣が尾行を開始すると、和典の裏の顔が次第に明らかになる。和典は担任教師の瀬川凉子と校長の岩村昇を脅し、自分に絶対服従させ、いじめの主謀者をでっちあげるよう命じていたのだ。また、和典には3回の離婚歴があり、いずれも結婚相手は病死。その生命保険で得た1億円もの貯金を隠し持っていた。そんな中、情報屋が見つけ出した圭の日記から、圭が和典から日常的に壮絶ないじめや暴力を受けていた事が明らかになる。怨み屋から真実を知らされた恭美は、和典の殺害を依頼。怨み屋は瀬川と岩村が持つ弱者の心理を巧みに殺意に変え、自らの手を汚さずに復讐を敢行する。

抹殺!お局様

集英商事に勤める房岸秋穂は、社内恋愛している前野伸弘から、地味な七谷結芽乃をいじめるなと注意される。結芽乃は秋穂が頼んだ仕事にだけ、ミスを連発していたのだ。そんな中、被害者を装った結芽乃により、秋穂は「イジメを装った逆イジメ」に遭う。秋穂は窃盗の容疑をかけられ、異動を言い渡される。伸弘からも別れを告げられてしまった秋穂は、怨み屋に結芽乃への復讐を依頼。アルバイトとして潜入した工作員の寄木桜花は、結芽乃を苛立たせるべく彼女からの仕事にだけミスを連発し、結芽乃の陰湿な裏の顔を探り出す。やがて、桜花を目の仇にしだした結芽乃は、桜花と秋穂が対立するよう罠を仕掛ける。

ダメ人間の暴走

怨み屋本舗」の工作員、寄木桜花は、潜入した集英商事で「仕事」につながりそうなダメ人間の名志山誼人を発見。十二月田猛臣が追跡すると、会社を辞めた誼人は盗んだ個人情報をもとに、仲間と警察を装って、老女の三乃沢トメの家に押し込む。誼人達はトメを殺害し、金品を奪って逃走するが、仲間割れの末に誼人は恋人の港星影夢と、仲間を「菜箸カッツン」という方法で殺害。怨み屋は被害者トメの娘から依頼を取りつけ、誼人と星影夢を集英商事保有の別荘に監禁し、被害者の関係者にある招待状を送る。

正義のブロガー

菜箸カッツン事件」の容疑者の名志山誼人と同じ苗字である事から、名志山拓次一家はインターネットの「まとめサイト」に個人情報を晒され、周囲の悪意に晒されてしまう。一方、人気漫画家の漆原正太郎は漫画の違法サイト「漫画町」と対立した事でまとめサイトで誹謗中傷され、甚大な被害を受けていた。漫画町とまとめサイトを運営するジャスティス・ワタスケをターゲットにしたい怨み屋は、漆原から依頼を取りつける。しかし、ワタスケがインターネットの闇サイトで名志山葵のレイプ動画を買い取ると扇動したせいで、名志山一家は半グレ集団に拉致されてしまう。名志山一家はシュウ十二月田猛臣に助けられ、名志山珠美は怨み屋に復讐を依頼する。怨み屋達はワタスケの私生活をインターネットに晒し、ワタスケが友人の杉高歩の命を奪った場所に連れて行く。さらにオプションとして、名志山一家の味方を装っていた田之済陽市の社会的抹殺も実行に移す。

サムの息子

14年前に「連続死化粧殺人事件」という猟奇的な事件を起こした鴨芦陸人は、「少年Aのブログ」を開設し、金儲けを目論んでいた。それに目をつけた編集者の綾瀬山改は、彼に犯行の手記を本にしないかと持ちかけ、自分はちゃっかりゴーストライターとして、鴨芦の原稿料をピンハネする。そんな中、「連続スタンガン強姦事件」の被害者、加平田静代の夫は、怨み屋に犯人の割り出しと相応の報復を依頼。すると、寄木桜花は鴨芦の働いていたファミリーレストランに、彼女がよく来店していた事に気づく。怨み屋は被害者家族から鴨芦への復讐依頼を取りつけ、さらに妊娠中の妻を殺害され、ホームレスに身を落とした公田珠男に、復讐の実行を持ちかける。一方、「加害者の会」を立ち上げ、その動画をアップした鴨芦は炎上商法で荒稼ぎする。怨み屋はまず、鴨芦と綾瀬山の仲を裂き、次に鴨芦を監禁。珠男による鴨芦の公開処刑を、インターネットで生中継させる。

登場人物・キャラクター

怨み屋 (うらみや)

復讐代行業「怨み屋本舗」の社長を務める女性。本名は不詳。黒いロングヘアをしたナイスバディの美女。黒髪はウイッグで、実際はショートヘア。戦闘能力は非常に高いが、事故を装って抹殺するのが十八番で、弱者の心理を巧みに殺意に変えるなど、自らの手をなるべく汚さない事をモットーとしている。依頼人が「怨み屋本舗」に関する情報を探ろうとすると、災難がふりかかる事を暗示して睨みを利かせる。 金持ちからガッポリ報酬を取る事を信条としており、リピーターになりそうな客には高値をふっかけ、あとで値引きして恩を売るという商売上手な一面がある。自分達は正義の味方ではない、お金をもらって怨みを晴らすのが仕事だ、と常々部下には言い聞かせている。自分で仕事になりそうな人間を探すよう、寄木桜花に教えており、指紋はシリコンクリームでコーティングするなど、プロ意識が高い。 今後も風評被害と戦わなければならない名志山拓次達には、ジャスティス・ワタスケの家にあった現金を慰謝料として渡すなど、依頼人にはそれなりの配慮を怠らない。十二月田猛臣からは、「上司」と呼ばれている。 決め台詞は「しかるべく」。

情報屋 (じょうほうや)

復讐代行業「怨み屋本舗」の協力者の男性。ラフな短髪で、口髭を生やしている。高い情報処理能力を持ち、仕事は早いが戦闘能力は一般人レベル。表の顔はインターネットのトラブル解決人で、「ホキマ情報研究所」の所長「シシカワ」を名乗っている。怨み屋の仕事を手伝っていない時は、研究所の仕事を受注している。数字や統計、過去の事件は忘れないが、よく行くファミリーレストランの店員の顔などはまったく覚えていない。 十二月田猛臣からは、「ヒゲオ」と呼ばれている。

十二月田 猛臣 (しわすだ たけおみ)

復讐代行業「怨み屋本舗」の工作員の男性。元ストーカーで尾行のプロであり、足が非常に速い。肩までの長さのロングヘアにメガネをかけ、チェックのシャツにリュックサックという、いわゆるオタクスタイル。読唇術に長けており、離れたところからでも会話を聞き取る事ができる。語尾に「チュ」と付ける独特の話し方で、手袋から光線を出す時には「チュチューン」と叫ぶ。 怨み屋から指示を受けた際は「ラジャー、トレジャー、炊飯ジャー」などと返答し、ふざけているように見えるが、十二月田猛臣本人は至って真剣であり、性格もまじめ。新兵器の小型火炎放射器を使った「燃え燃え光線」や「十二月キック」などを会得した事で、戦闘能力もまずまず。また、仲間に妙なあだ名を付ける特技がある。

寄木 桜花 (やどろぎ おうか)

復讐代行業「怨み屋本舗」の工作員の女性。年齢は19歳。集英商事に潜入捜査に入る事になり、こけしのようなヘアスタイルから、ユルめのパーマヘアにイメージチェンジした。のちに、毛先の巻が渦巻き状になった独特のヘアスタイルに変化。情報屋から色々なソフトの使い方を教わり、PC作業は完璧にこなす。怨み屋から七谷結芽乃を退職に追い込むよう指示された際には、結芽乃から暴力を振るわれたように見せかけるべく、自ら机の角に頭をぶつけるなど、ガッツあふれる性格。 根がまじめであり、怨み屋からの信頼は厚い。刑事だった父親に、人の顔を覚える訓練をさせられていたので、それが仕事に活かされている。

シュウ

怨み屋の実弟で、クラブの店長を務める男性。ラフな短髪に黒いスーツでキメているイケメンで、復讐代行業「怨み屋本舗」の協力者でもある。以前の仕事で重傷を負い、3か月間入院していたが、名志山誼人を捕らえる際に復帰し、リハビリがてら怨み屋をサポートしている。戦闘能力は高いが、夜は本業を優先して裏の仕事を減らしたいと考えている。 ただし、姉には逆らえず、なかなか思い通りにいっていない。上司の弟である事から、十二月田猛臣から「ジョシブラ」と呼ばれている。

竜門寺 七巳朗 (りゅうもんじ なみろう)

頭頂部がハゲている老人。年齢は72歳。妻が半年前に他界してから、かなり気が荒くなった。ファミリーレストランで、事あるごとにアルバイトの渡本芙乃にナンパ行為を繰り返し、ついにはストーカー行為に及ぶ。しかし竜門寺七巳朗本人にはその自覚はなく、芙乃が自分の事を好きだと思い込んでいる。かつては一流企業の重役だった事もあり、プライドが高く、自分が贈ったプレゼントを捨てた芙乃を車で轢き殺した。 事故後は認知症を装い、逮捕後にも軽度の認知症と診断されたために、禁固2年・執行猶予3年の判決が出て、自由な生活を勝ち取る事に成功する。

渡本 芙乃 (わたもと はすの)

ファミリーレストランでアルバイトする大学生。セミロングヘアの女性。年齢は19歳。店の常連である竜門寺七巳朗からストーカー行為を受けるようになり、アルバイト仲間の中木ほのかに相談していた。自分のプレゼントを捨てた事に腹を立てた竜門寺の怒りを買い、車で轢き殺される。渡本芙乃の母親が、焼香に訪れたほのかから事情を聞き、怨み屋に復讐を依頼した。

中木 ほのか (なかぎ ほのか)

渡本芙乃のアルバイト仲間。ロングヘアの若い女性。2か月間アメリカへ短期留学しており、芙乃の告別式の1か月半後に線香を上げに芙乃家を訪れ、彼女が竜門寺七巳朗からストーカー行為を受けていたと芙乃の母親に打ち明ける。のちに、竜門寺に芙乃の情報を売って現金を得ていた事実が判明し、怨み屋のターゲットとなる。

茂森 友次

短髪のサラリーマン男性。年齢は31歳。小学生の照西波波波がマンションの10階から2リットルペットボトルを落下させ、通行人や車に被害を与えた事件の被害者。ペットボトルが直撃し、意識不明の重体となる。3か月間の昏睡状態から目覚めた時には、左半身に障害が残っていた。犯人である照西波波波と照西美加沙親子に会いに行った際、罵詈雑言を浴びせられ、怨み屋に復讐を依頼した。

照西 美加沙 (てるにし みかさ)

照西波波波の母親。ロングヘアのシングルマザーで、年齢は25歳。17歳の時に息子を出産したが翌年、夫の度重なる浮気で離婚。そのストレスからショッピングにはまり、借金がかさんで自己破産するが、鬱病を装って生活保護を受けている。その一方で、出会い系アプリで客を見つけ、週に3回のペースで売春をしているというとんでもない女性。 月に45万円ほど収入があるが、法律上では支払い能力ゼロのため、贅沢三昧の毎日を送っている。男なら誰でもいいから天罰を下したいという歪んだ考えの持ち主で、マンションの屋上から人に向けてペットボトルを落下させ、ストレスを解消している。

照西 波波波 (てるにし さんば)

照西美加沙の息子で、小学3年生。ショートヘアでソバカスがある。2リットルペットボトルをマンションの10階から落下させ、通行人や車に被害を与えた事件の加害者。だが、実はその時の真犯人は美加沙である。美加沙の命中率が悪い事から、以降は母親から携帯電話で指示を受け、照西波波波がペットボトルを落下させるようになった。

祖野山 慎司 (そのやま しんじ)

サラリーマンの若い男性。髪を七三分けにしている。カフェの店員である釜戸唯愛にちょっかいを出したとして、唯愛の彼氏とその仲間から暴行を受けて重傷を負う。また、未成年を金で買っているクズとの怪文書が会社に撒かれ、それを見た彼女の桃代から別れを告げられる。怨み屋に復讐を依頼するが、復讐完了時には、もともとは自分が出会い系アプリで過去に浮気した事が、今回の事件のきっかけになったと怨み屋から苦言を呈される。

桃代 (ももよ)

祖野山慎司の彼女だった女性。ロングヘアを一つに束ねている。以前、慎司が出会い系アプリを使って浮気した際、次に浮気したら別れるという約束で許したという経緯がある。しかし、その2か月後にお金持ちで空手の有段者である今の彼と知り合い、慎司に非がある形での別れを画策。慎司になりすまし、カフェの店員、釜戸唯愛にちょっかいを出し、トドメに怪文書をばらまいた。

岡久 涼美 (おかひさ すずみ)

泥酔した男性を家に引き入れ、レイプされたと噓をついて示談金を得ている女性。細身の体型でセミロングの髪型をしている。1年前、泥酔して目覚めると、ラブホテルに一人取り残されていた。その時から男への復讐として、既婚者で金のありそうな男性を狙い、睡眠導入剤を仕込んだ水を飲ませ、それ専用に借りたアパートに連れ込んでいる。

笹内 陽一 (ささうち よういち)

一流企業に勤める男性。年齢は41歳。泥酔した時、岡久涼美に持ち帰られ、レイプされたと示談金を要求された。何度も涼美に強請られ、怨み屋に復讐を依頼。実は、笹内陽一自身も泥酔女のお持ち帰りを趣味にしており、その被害者からの依頼を受けた怨み屋により、ターゲットにされる。

作田 圭 (さくた けい)

学校でいじめられてツライとの遺書を残して自殺した男子学生。作田和典と作田恭美の息子で、和典とは血はつながっていない。短髪でサイドを刈り上げている。成績も優秀で生活態度もまじめだったが、体育の着替え時に身体のアザをクラスメイトに目撃されている。また、担任教師の瀬川凉子に1回やらせてほしいと抱きつき、瀬川が自分を平手打ちした写真を隠し撮りするなど、不可解な行動を取っていた。 のちに、スマートフォンから削除されていたクラウドアプリを解析すると、日記が残っており、和典から日常的に壮絶ないじめと暴力を受けていた事が明らかになる。

作田 和典 (さくた かずのり)

髪型をツーブロックにした男性。年齢は38歳。作田恭美の夫で、作田圭の父親だが血はつながっていない。妻とは再婚同士であり、結婚して1年も経っておらず、恭美の持家に転がり込む恰好で結婚生活を始めた。圭の苗字が変わる事を懸念し、作田の籍に入った。旧姓は「鈴村」。圭を死に追いやった奴らに全力で復讐を誓うと息巻くが、圭の担任の瀬川凉子に身体の関係を強要したり、離婚歴が3回あるなど、次々に不審な点が明らかになる。 最終的に瀬川と校長の岩村昇を自分に服従させ、いじめの主謀者をでっちあげ、その親から賠償金をふんだくろうとしている。前の結婚相手はことごとく病死しており、1億円もの大金を生命保険で得ている。作田和典自身はフレックス制の警備会社で働いていると言っているが、本当は無職で、ふだんはギャンブルに明け暮れている。 恭美と結婚する前は「鈴村」を名乗り、出生名は「四ッ郷和典」。柔道経験者だが、怨み屋との戦いでは手も足も出ず、ボコボコにされる。

作田 恭美 (さくた きょうみ)

斜め分けのボブヘアの髪型をした女性。年齢は40歳。作田和典の妻で、作田圭の母親。夫とは再婚同士であり、結婚して1年も経っていない。学校や警察はあてにならないと、圭を死に追いやった人物への復讐を怨み屋に依頼した。息子が夫に殺害された事実を怨み屋から知らされ、夫への復讐を依頼する。

瀬川 凉子 (せがわ りょうこ)

作田圭の担任教師を務める女性。年齢は23歳。鼻筋が通ったインテリ風美人で、長い髪を後ろで束ねている。圭に体罰を与えている動画を盾に作田和典から脅され、体の関係を強要される。世間知らずで、圭の自殺の原因は自分の体罰にあるとの確認書を和典から書かされてしまう。ちなみに、親のコネで採用試験をパスした二世教師。

岩村 昇 (いわむら のぼる)

自殺した作田圭が通っていた学校の校長を務める男性。鼻の横に大きなホクロがあり、短髪を整髪料でガチガチに固め、メガネをかけている。圭の父親、作田和典から脅しをかけられている。また、瀬川凉子は脅すと簡単にやらせてくれると、和典にそそのかされ、瀬川に体の関係を強要した。瀬川との行為を和典に盗撮され、和典に絶対服従せざるを得ない立場となる。 瀬川を世間と感覚がズレていると思っているが、自分がおかしい事にはまったく気づいていない。

房岸 秋穂 (ふさぎし あきほ)

集英商事城東支社に勤める女性。年齢は29歳。シャギーの入ったセミロングヘアを明るい髪色にしており、お洒落で、いつも高級な服を身につけている。社内恋愛している前野伸弘に、七谷結芽乃をいじめるなと注意され、激怒する。そんな中、結芽乃から「イジメを装った逆イジメ」に遭い、窃盗の容疑をかけられる。結果、厚木支店に左遷される事になり、伸弘からも別れを告げられた事で、怨み屋に結芽乃への復讐を依頼する。

七谷 結芽乃 (ななたに ゆめの)

集英商事城東支社に勤める女性。年齢は23歳。肩までかかる黒髪で、社内では地味だがよく気がつく感じのいい女性と評判になっている。実は入社した時から家が資産家の前野伸弘を狙っており、お局の房岸秋穂から伸弘を奪おうと画策していた。陰湿な性格で、嫌いな人間を陥れるためなら自作自演の罠をかけ、「イジメを装った逆イジメ」を遂行する。

前野 伸弘 (まえの のぶひろ)

集英商事城東支社に勤める男性。肩書は主任。マッシュルームの髪型をしている。実家は青森県で有名な果樹園を営んでおり、親から都心に1棟アパートを買ってもらったという噂がある。房岸秋穂と社内恋愛中だが、秋穂が窃盗の容疑をかけられると彼女と別れ、七谷結芽乃と付き合い始める。実は当初から青森に遠距離恋愛中の彼女がいる事を、怨み屋が秋穂に伝えていたため、秋穂とよりを戻そうとした際、彼女に迷惑料を支払う事になる。

名志山 誼人 (なしやま ないと)

集英商事城東支社に勤める男性。年齢は22歳。少し長めのラフな短髪にしている。前野伸弘の部下でもある。社会人としての常識がなく、それを注意されると、自分の才能を生かしきれないと、会社をあっさり辞めてしまう。彼女の港星影夢からは「ナイト」と呼ばれており、なにかと持ち上げられている。しかし絵に描いたようなダメ人間で、「良心」が欠落しており、つねに場当たり的な行動を取る。 昼間から酒を飲む父親と、子供の前で平気で彼氏と会話する母親に育てられ、本能で生きている両親からは道徳や常識を教わる事もなく、バレなければなにをしてもいい、という考え方を次第に持つようになった。中学時代にはカツアゲしていた同級生を、神社の階段から蹴り落として殺害。 集英商事の顧客データを盗み、一人暮らしの老女を狙って空き巣に入り、殺害するなど犯行を繰り返していた。捕まれば死刑確実だと知っており、たくさん殺したほうが得だと考えている。頭蓋骨の柔らかいところに菜箸を打ち込む「菜箸カッツン」という殺害方法を得意としている。結果的に11人殺しており、怨み屋に集英商事の別荘に監禁され、関係者から鉄菜箸を使って復讐される。

港 星影夢 (みなと ぽえむ)

フリーターの女性。年齢は21歳。名志山誼人の彼女で、細面で顎がしゃくれている。仲間内で大学に進学したのは誼人だけだったので、なにかにつけ、誼人を称賛している。写真加工を得意としている。

北加賀 男 (きたかが あがむ)

名志山誼人の仲間で、無職の男性。年齢は21歳。オールバックの髪型で髭を生やしている。会社の金庫から3万円盗んでクビになったばかり。誼人に老女の家に警察官を装って詐欺をする話を持ちかけられ、三乃沢トメ宅を訪問するが、頭のいいトメに疑われたため、カッとなってトメを殺害してしまう。連絡が取れなくなった半グレの兄が行方を探している。 ちなみに皿沼馬周と北加賀男自身の兄は友人同士。兄からは「アダム」と呼ばれている。

皿沼 馬周 (さらぬま ましゅう)

名志山誼人の仲間で、無職の男性。年齢は21歳。ストレートの短髪で顎に縦細の髭を生やしている。後輩の財布を盗み、それを咎められた事で会社を辞めた。誼人に老女の家に警察を装って詐欺をする話を持ちかけられ、三乃沢トメ宅を訪問するが、インターフォンには皿沼馬周自身の動画が残されており、盗み取った金品を逃走資金にするため、全部自分のものにしようとした。

三乃沢 トメ (みのさわ とめ)

一人暮らしの老女。年齢は74歳。娘が17歳の時、夫を交通事故で亡くすが、女手一つで娘を大学まで行かせたしっかり者。個人情報が詐欺集団に漏洩したと、警察官を装って訪問して来た名志山誼人達を訝(いぶか)しんだせいで、あせった北加賀男に足蹴にされ、頭を打って死亡した。母親の死の真相を知らされた娘が、怨み屋に復讐を依頼する。

名志山 拓次

グラジャン工業企画部に所属する会社員の男性。年齢は42歳。名志山珠美の夫で、名志山葵の父親。サイドを刈り上げたツーブロックヘアにしている。「菜箸カッツン事件」の容疑者の名志山誼人と同じ苗字である事から、インターネットに犯人の父親として個人情報を晒され、会社にも抗議の電話が殺到し、強制的に休暇を言い渡される。 また、ジャスティス・ワタスケから扇動された半グレ集団に、片目をつぶされて失明する被害に遭う。

名志山 珠美 (なしやま たまみ)

名志山拓次の妻で、名志山葵の母親。年齢は39歳。専業主婦でロングヘアを一つに束ねている。「菜箸カッツン事件」の容疑者の名志山誼人と同じ苗字である事から、インターネットに犯人の母親として個人情報を晒され、近所から白い目で見られてしまう。ジャスティス・ワタスケから扇動された半グレ集団に襲われた際にシュウ達に助けられ、怨み屋を紹介される。

名志山 葵 (なしやま あおい)

名志山拓次と名志山珠美の娘。舎人高校2年生の女子。マッシュルームヘアをしている。「菜箸カッツン事件」の容疑者の名志山誼人と同じ苗字である事から、インターネットに犯人の妹として個人情報を晒され、学校でイジメに遭う。ジャスティス・ワタスケに名志山葵のレイプ動画を1000万円で買い取る、とインターネットの闇サイトにアップされ、家族と共に半グレ集団に拉致される。

漆原 正太郎 (うるしはら しょうたろう)

売れっ子漫画家の男性。ボサボサ頭に無精ひげを生やしている。「怨み屋本舗」の常連客。無料で読めるWeb漫画が増え、若い読者に「漫画は無料で読めるもの」という風潮が広がり、さらには漫画の違法サイトが現れた事で大きなダメージを受け、激しい怒りを抱えている。ツイッターに「漫画町」は違法サイトだという意見をアップすると、ジャスティス・ワタスケのまとめサイトに、偽造されたつぶやきが掲載され、大炎上する。 漫画町とワタスケを告発すべく、弁護士に相談したが、海外にサイトがあるため日本の法律が適用されないと知らされる。そんな時、ワタスケをターゲットにしたい怨み屋から依頼人にならないかと、話を持ちかけられた。

ジャスティス・ワタスケ (じゃすてぃすわたすけ)

インターネットの「まとめサイト」と漫画の違法サイト「漫画町」を運営しているブロガーの男性。カールしたマッシュルームヘアで、四角い色付きメガネをかけている。太った体型で「ブヒヒヒヒ」と不気味に笑う。まとめサイトで1日15~20万円、漫画町で月800万円を荒稼ぎしている。自分の行為を立派な社会貢献だと正当化し、自らを神だと自画自賛している。 漫画町を批判する漆原正太郎を陥れ、「菜箸カッツン事件」の犯人、名志山誼人とはなんら関係のない名志山拓次一家の個人情報をまとめサイトで晒し、アクセス数を稼いでいる。過去に殺害した、高校時代の友人、杉高歩の名を自分のサイトの管理人として利用している。

杉高 歩 (すぎたか あゆむ)

ジャスティス・ワタスケの高校時代の友人の男性。無造作に横分けしたヘアスタイルの気弱そうな人物。3年前、会社を辞めて経済的に苦しい時に、ワタスケに月収50万円のアルバイトだと、臓器売買契約書とは知らずに、サインさせられた。代金の1000万円はワタスケに奪われ、C国で消息が途絶える。以後、ワタスケが運営する漫画の違法サイト「漫画町」の管理人として名義を利用される。

田之済 陽市 (たのずみ よういち)

グラジャン工業企画部に所属する会社員の男性。年齢は42歳。前髪を一束だけ垂らしたヘアスタイルをしている。名志山拓次の同期の同僚。拓次一家が「菜箸カッツン事件」の犯人の名志山誼人の家族だとインターネットに誤情報が流れ、彼らが被害に遭う中、献身的に手助けをした。実は、まとめサイトに名志山一家の嘘の情報を流した超本人であり、自分より低いレベルの大学出身であるにもかかわらず、拓次の方が出世が早い事を根に持ち、嫉妬していた。 拓次から引き継いだプロジェクトで出世し、拓次が復帰すれば、友達のふりをして再び貶めようと考えている。

松村 朋香 (まつむら ともか)

グランドJ産業に転職した女性。年齢は27歳。前髪を垂らしたロングヘアで、目の下に左右合わせて三つのホクロがある。高圧的な態度に弱く、前の会社は口うるさいお局からのストレスを受け、体調を崩して辞めたという経緯がある。親から常々「和」を大事にしろと教育されていたため、はっきりノーとは言えない性格。「借りパク女」で有名な先輩の数崎加奈江から、貸した物を返してもらえないという被害に加え、松村朋香自身のパソコンを貸したせいで、164万円分の商品券の請求が届き、怨み屋に復讐を依頼。 提示された200万円が払えず、会社から新製品情報を盗み出す犯罪に手を染めてしまう。

数崎 加奈江 (すうさき かなえ)

グランドJ産業の契約社員だった女性。年齢は29歳。マッシュルームヘアをしている。松村朋香を「借りパク」のターゲットに設定し、58万円分の家財を借りパクし、164万円分の商品券を肩代わりさせた。アルバイトや契約社員など職を転々とし、老後に備えて借りパクを繰り返して得た貯金は1000万円を優に超えている。

公田 早苗 (くだ さなえ)

公田珠男の妻。ロングヘアを一つに束ねた女性。鴨芦陸人が28歳の時に起こした「連続死化粧殺人事件」の被害者となって死亡。子供好きで、結婚して4年目にして不妊治療でやっと子供を授かったところだった。お腹にいた子供は「刑法上では胎児は母体の一部」だとして、被害者の一人としてカウントされなかった。

公田 珠男 (くだ たまお)

鴨芦陸人が起こした「連続死化粧殺人事件」の被害者の公田早苗の夫。妻子が殺害され、精神的に消耗して会社に行けなくなり、依願退職させられた。殺人事件が起こった家は査定額が低くなり、安く買い叩かれたあげくホームレスに身を落とす。手首には、ためらい傷が複数あった事から、怨み屋に復讐の話を持ちかけられ、金の作り方をアドバイスされる。 被害者家族の実名は晒され、加害者の人権が守られている事に強い憤りを覚えている。

鴨芦 陸人 (かもあし りくと)

情報屋と寄木桜花がよく行くファミリーレストランで、アルバイトをしている30歳位の男性。死んだ魚のような目をしており、鼻の横に大きなホクロがある。14歳の時に、「連続死化粧殺人事件」と呼ばれた事件を起こし、女子高校生三人と妊婦の公田早苗を殺害した。その際、万が一捕まっても精神鑑定が診断されるように、死体の顔に落書きし、鼻や耳などに異物を詰め込んだ。 父親は高校教師で、母親に暴力ばかり振るっており、その後二人がセックスする姿を見たため、女は殴られると喜ぶ生き物だと思い込んでいる。事件から14年ほど経ち、「元少年Aのブログ」で金儲けしようとしていた際、編集者の綾瀬山から手記を出さないかと誘われる。また、自分をバカにした女性を狙って強姦する「連続スタンガン強姦事件」を起こしている。 罪悪感の欠片もなく、快楽のついでに人を殺す、生まれつきの異常者。旧姓は「屋炭」で、現在は母方の姓「鴨芦」を名乗っている。

綾瀬山 改 (あやせやま かい)

大抜出版文芸部に勤める編集者の男性。もみ上げを長くしたラフな七三ヘアに、色メガネをかけて顎髭を生やしている。鴨芦陸人の「元少年Aのブログ」に金の臭いを嗅ぎつけ、手記を書かないかと話を持ちかけた人物。妻をゴーズトライターに仕立て上げ、妻名義の架空口座を作って鴨芦の原稿料をピンハネしている。一流大学を卒業しており、プライドが高く、つねに心の中で他人を馬鹿にしている。 また、世渡り上手な一面があり、上司にはペコペコし、部下には無理な仕事を押し付けている。

加平田 静代

鴨芦陸人が起こした「連続スタンガン強姦事件」の被害者女性。強姦はされなかったが、裸の写真をSNSに投稿され、精神を病んで自殺した。夫が加害者を探し出し、怨み屋にそれ相応の報いを与えてほしいと依頼。情報屋と寄木桜花の行きつけのファミリーレストランによく来ていた客でもある。エスニック調の服を身につけ、たまに店員にクレームを入れているのを桜花が覚えていた。

集団・組織

怨み屋本舗 (うらみやほんぽ)

頭脳を使って間接的に標的を抹殺する、という復讐代行業を行う会社。社長は怨み屋が務めている。社員である工作員は、十二月田猛臣、寄木桜花。協力者に情報屋、シュウがいる。「あなたの怨み晴らします」と書かれた黒い名刺に書かれたメニューは、人探しや社会的抹殺、実質的殺害(価格応談)など。実質的殺害に関しては、それ相応の金額が必要となる。 怨み屋は、社員に地道な営業活動をするようつねに言い聞かせており、ダメ人間の周囲には恨みつらみが生まれやすいとして、そういう人物を見つけたら調べるよう教えている。また、お金をもらって怨みを晴らすのはあくまで仕事であり、自分達は正義の味方ではないと、社員には言い聞かせている。

その他キーワード

菜箸カッツン (さいばしかっつん)

良心の欠片もないダメ人間の名志山誼人が編み出した殺人方法。頭蓋骨の柔らかい部分に菜箸を刺すという手法。菜箸が詮になって出血しにくいため、血飛沫で床が汚れる事もなく、塗装していないムキ身の箸なら血を吸いとるという利点もある。誼人は仲間と共にこの手口で一般家庭で強盗を行っていたが、死体を隠す手間からすると儲かる金額が少ないため、のちに仲間を使って詐欺で効率よく稼ごうとした。 だが仲間割れし、仲間もこの方法で殺害。のちに、この事件は「菜箸カッツン事件」と報道されるようになる。

サムの息子法 (さむのむすこほう)

アメリカ、ニューヨーク州で1977年に制定された法律。加害者は自らの犯罪手記で利益を得てはならないというもの。1976年から1977年にかけてニューヨークで若いカップルや女性を銃で殺害する連続事件が起こり、六人が殺害され、八人が重軽傷を負った。犯人は「サムの息子」と名乗り、マスコミや警察に支離滅裂な手紙を送りつけたため話題となった。 ある出版社が犯人に多額の報酬で手記を書かそうとした事からこの法律ができ、加害者が得た報酬は全額被害者や遺族に分配されると定められた。

前作

怨み屋本舗 (うらみやほんぽ)

栗原正尚の代表作で、後にシリーズ化される「怨み屋本舗」シリーズ第1部。怨みを持つ人間に代わって、復讐を代行する怨み屋を生業とする宝条栞が頭脳を駆使し、依頼人に代わって復讐を果たす様を描く。2009年7... 関連ページ:怨み屋本舗

怨み屋本舗 REBOOT (うらみやほんぽ りぶーと)

栗原正尚の代表作「怨み屋本舗」シリーズ第3部で、『怨み屋本舗 巣来間風介』の続編。怨みパワーが満ち溢れる現代日本の裏社会を舞台に、依頼者に代わって恨みを晴らす怨み屋たちの暗躍と、現代社会の闇を描いた本... 関連ページ:怨み屋本舗 REBOOT

怨み屋本舗 REVENGE (うらみやほんぽ りべんじ)

『怨み屋本舗』シリーズの第4部。他人の怨みをはらす復讐代行業を営む女性の暗躍を描く。依頼を受けた怨み屋が復讐を行う姿を描いたサスペンス。基本的に短編から中編で一つの復讐を完了させる連作形式で描かれるが... 関連ページ:怨み屋本舗 REVENGE

怨み屋本舗 EVIL HEART (うらみやほんぽ えゔぃる はーと)

『怨み屋本舗』シリーズの第5部。自らを「必要悪」と称する怨み屋が、頭脳を駆使して悪を成敗していく。短編から中編で1つの復讐を完了させる、連作形式で描かれたドラマティック・サスペンスだが、最後に展開され... 関連ページ:怨み屋本舗 EVIL HEART

続編

怨み屋本舗DIABLO (うらみやほんぽでぃあぶろ)

栗原正尚の代表作で、テレビドラマにもなった「怨み屋本舗」シリーズの第7部。1~3話で完結する連作形式を基本とする。現代の東京が主な舞台。復讐(ふくしゅう)代行業を生業とする謎の女「怨み屋」が、社会には... 関連ページ:怨み屋本舗DIABLO

書誌情報

怨み屋本舗 WORST 21巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉

第20巻

(2022-08-19発行、 978-4088923505)

第21巻

(2022-11-17発行、 978-4088925097)

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