こどもの体温

こどもの体温

酒井高紀、酒井紘一の父子と彼らを取り巻く人々の日常を描く、1話完結の連作短編。「Wings」平成9年4月号から平成10年6月号にかけて不定期に掲載された作品。

正式名称
こどもの体温
ふりがな
こどものたいおん
作者
ジャンル
家族
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概要・あらすじ

中学1年生になる息子は、なかなか上手く育ったほうだと思う。そう自負している酒井高紀は、その上手く育っているはずの息子、酒井紘一から「俺、クラスの子を妊娠させたかもしれない」と打ち明けられる。高紀はショックを受けながらも、高校時代の同級生が経営する産婦人科に連絡。翌日、紘一の交際相手である森彩香を連れて、妊娠検査のため病院へ向かうのだった。

登場人物・キャラクター

酒井 高紀 (さかい たかのり)

数年前に妻の酒井加奈子を亡くし、息子の酒井紘一を男手ひとつで育てているシングルファザー。自由業で、毎日自宅のパソコンに向かって仕事をしている。普段は物静かで温厚だが、教育上必要な時にはきちっと叱る良き父親。紘一の前では知的で威厳のある父親像を作り上げているが、情に厚く、納得のいかないことに対して感情的になる一面もある。 家事を一人でこなしているためか、料理はかなりの腕前。そのレパートリーの多くは、加奈子から教わったものである。学生時代は山岳部に所属していた。

酒井 紘一 (さかい こういち)

酒井高紀の息子で中学一年生。私立中学に通っており、成績はそこそこ。高紀から見ればなかなか上手く育った息子だと思っていたが、交際中の森彩香とはずみで性交渉を持ってしまう。父親を深く信頼しており、何かあれば「叱られにきた顔」で相談する。「さりげなく大人」、「のんびりしてそうで実は気配り細かい」、「笑うと可愛い」など、クラスメイトの評判は上々。 家では父親の家事をこまめに手伝っている。スキンシップ過剰とは思いながらも、高紀と外出する時には手をつないで歩いている。

酒井 加奈子 (さかい かなこ)

酒井高紀の妻。酒井紘一が小学校に入学する1年前に他界している。感情をストレートに出す女性で、紘一が見ている前でもガンガン怒っていた。ミネストローネやシーフードサラダなどの料理に加えて、ケーキ作りも得意で、そのレシピは高紀に受け継がれている。パン屋「エンゼル」で売られているトマトサンドとごぼうサラダサンドが好物だった。

森 彩香 (もり あやか)

酒井紘一と交際中のクラスメイト。一見、地味な女の子だが、頭のキレが良く洞察力も鋭い。酒井高紀と妊娠検査に行く日も、「一緒に学校を休んだらクラスの子たちにあやしいと思われる」という理由から、当事者である紘一の同行を断っている。父親の言動を恥ずかしく思っており、知的で落ち着きのある高紀に理想の父親像を見る。

おじいちゃま

酒井加奈子の父親。庭に桜の木がある家で暮らしている。一人称が「僕」と可愛らしいせいか、妻の芙美子を含む家族全員から「おじいちゃま」と呼ばれている。テニスクラブに通っており、そのメンバーを集めて庭の桜で花見パーティーを企画した。その際、食べ物が足りないことを知ると、酒井紘一と2人で、加奈子が得意だった料理とデザートを作る。

芙美子 (ふみこ)

『こどもの体温』に登場する。酒井加奈子の母親。おじいちゃまと2人で暮らしている。気立てのいい老婦人だが、おじいちゃまには手厳しく、酒井高紀や酒井紘一が見ている前でもお構いなしで叱責する。骨董品集めが趣味で、骨董市で買ってきた器と花瓶を花見の席に出そうと提案する。

綾小路 兼継 (あやのこうじ かねつぐ)

酒井高紀が学生時代に所属していた山岳部の後輩。山岳部で一緒だった友人、黒田征二と高木けいすけを誘って谷川岳に行った帰り、運転していた車が対向車に突っ込まれてしまう。この事故でけいすけは死亡し、征二は脊髄損傷で下半身不随になったため、罪の意識にさいなまれている。事故の後、仕事をやめて妻と離婚。征二の足代わりになり、奴隷のように尽くすと決意する。 資産家の息子で、現在はバリアフリー化した屋敷で征二と一緒に住んでいる。

黒田 征二 (くろだせいじ)

酒井高紀が学生時代に所属していた山岳部の後輩で、綾小路兼継、高木けいすけの友人。兼継の誘いで谷川岳に出かけた帰りに交通事故に巻き込まれ、脊髄を損傷。下半身不随になってしまう。事故に遭う前は弁護士をしており、裕福な生活を送っていた。そのため、金も地位も人生もめちゃめちゃにされたと、兼継を恨んでいる。兼継と一緒に暮らすなか、奴隷のように扱い、ネガティブな感情をぶつける。

高木 けいすけ (たかぎ けいすけ)

酒井高紀が学生時代に所属していた山岳部の後輩で、綾小路兼継、黒田征二の友人。兼継の誘いで谷川岳に出かけた帰りに交通事故に巻き込まれ、妻と幼い娘を残して他界する。高校時代は山岳部の三羽烏、漫才トリオと呼ばれるほど、2人と仲が良かった。

西園寺 轍 (さいおんじ わだち)

酒井紘一のクラスメイト。将来を嘱望されるバレエの天才少年だが、大事な国際コンクールを前にスランプに陥っている。常にバレエの動きをイメージしているため、日常でも姿勢や手先にその動きが出ており、クラスでは浮いた存在で、クラスメイトからは「バレエ王子」と呼ばれている。母親は国際的なプリマで、現在は父親と離婚してドイツのバレエ団で活躍中。

行平 (ゆきひら)

酒井紘一のクラスメイト。クラスの男子ではハンサムなほうで、紘一から「顔が良すぎて軽く見られている」と評されている。彼女とHしたことなどを平然と話す軟派な性格。性交渉の経験で紘一に先を越されていたことを知り、軽く落ち込む。

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