おとこ道

おとこ道

戦後の混乱期に活躍した伝説のヤクザの息子が主人公。任侠の徒に育てられた悪童が、様々な人との出会いによって愛と武士道精神に目覚めていく姿を描いたビルドゥングスロマン。矢口高雄の長編デビュー作。連載開始後すぐに、戦後混乱期の描写の一部が差別的だとして抗議が殺到。半年以上にわたる抗議を受けた結果、原作者の梶原一騎と編集部が謝罪。その後まもなく連載打ち切りとなった。

正式名称
おとこ道
ふりがな
おとこみち
原作
漫画
ジャンル
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

昭和20年、太平洋戦争が終結した。軍隊の凄惨なリンチにも耐えぬいた鬼神・相馬銀次郎は、戦後闇市で非道の限りを尽くす不良外人を一掃するために相馬組を組織。鋼鉄の意志と不死身の肉体、ずば抜けた統率力で不良外人の完全追放に成功する。昭和23年、男の子を授かったその日に、銀次郎は卑怯な手段で殺され、妻もショックで亡くなってしまう。

銀次郎の右腕である毘沙門源蔵は、残された赤ん坊を富士男と名付け、山梨県の寒村に移住。富士男を男の中の男に育て上げようとする。

登場人物・キャラクター

相馬 富士男 (そうま ふじお)

戦後の混乱期、闇市を跋扈する不良外人から多くの人を救った伝説のヤクザの一人息子。誕生と同時に父・相馬銀次郎は亡くなったため、その右腕だった毘沙門源蔵に育てられる。任侠道に基づいた英才教育を受け、すさんだ少年時代を過ごすが、キリスト教会の佐倉牧師らとの出会いによって、慈悲の心や武士道精神を学び、人間として成長していく。

相馬 銀次郎 (そうま ぎんじろう)

相馬富士男の父親。富士男が誕生したその日に殺し屋の凶弾に倒れる。戦時は東京赤坂の近衛野砲第十四部隊に入営。己を貫いたため、上官反抗の重罪で懲役十年を宣告される。監獄で筆舌に尽くしがたい拷問を受ける。終戦後は、闇市で悪逆非道を働く不良外人を一掃するため、任侠の徒である毘沙門源蔵らと相馬組を設立。 不良外人排除に成功し、多くの人から感謝された伝説のヤクザ。「男たるもの、肉体の死よりも、魂の死を恐れよ」がモットー。

毘沙門 源蔵 (びしゃもん げんぞう)

戦前から博徒・毘沙門一家を率いてきた老ヤクザ。背中に毘沙門天の刺青がある。戦後の闇市で不良外人を相手に立ち回る相馬銀次郎に惚れ込み、義兄弟の契りを交わして相馬組を結成。銀次郎の右腕として、闇市から不良外人を排除するために尽くす。銀次郎が暗殺された後は、相馬組を解散。銀次郎の忘れ形見である相馬富士男を連れて、故郷山梨県の富士山の麓に帰り、任侠道に基づいた英才教育を施す。

相馬 雪枝 (そうま ゆきえ)

相馬富士男の母親。旧姓は上月。誇り高い美女で、戦後闇市で不良外人に襲われた際、舌を噛み切ろうとするが、相馬銀次郎に助けられる。後に銀次郎と結婚。富士男を授かるが、出産直後に夫の銀次郎が殺され、そのショックから命を失う。

香車の常 (きょうすのつね)

相馬組元幹部。私欲のために行動したために相馬組を破門される。相馬銀次郎を逆恨みし、殺し屋を雇ってその命を奪う。相馬組の縄張りを自分のものにし、後に津川興行チェーンを経営し成功をおさめる。津川桂子の父親。

白藤 マユミ (しらふじ まゆみ)

相馬富士男の幼なじみ。村会議長の娘。幼少時、友達と一緒に富士男に石を投げていじめるが、全く屈しない富士男に逆に追い詰められる。罰として裸にされて以来、富士男に忠誠心と恋心を抱くようになる。

江波 慎太郎 (えなみ しんたろう)

相馬富士男のクラス担任。富士男が小学校6年生の時に、東京から山梨県の寒村の学校に赴任してきた若い教師。小説家志望。インテリだが理想に燃える熱血漢であり、問題児である富士男と正面から向き合う。毘沙門源蔵の富士男に対する教育方針と真っ向から対立するが、後に男の美学を貫く源蔵に一目置くようになる。

津川 桂子 (つがわ けいこ)

相馬富士男が住む寒村にある中学校の女教師。合気道の使い手で、初対面の時に手玉に取られて以来、富士男が密かに想いを寄せる相手。中学生になった富士男のクラス担任になる。江波慎太郎とは小説の同人誌仲間で恋愛関係にある。ヤクザの家に生まれた宿命に逆らい、家を離れて苦学の末に教師になった女性。実は富士男の父である相馬銀次郎を殺した、香車の常の娘。

志賀 謙介 (しが けんすけ)

相馬富士男が入学した中学校の番長。平気で教師を殴る札付きの不良。柔道場に通う猛者で大柄な体格をしている。女教師・津川桂子のことが好きで、同じく桂子に想いを寄せる富士男と激しい喧嘩を繰り広げる。

山川 草介 (やまかわ そうすけ)

交番勤務の平巡査。48歳。妻と子ども5人の大家族の長。父の仇である津川常吉殺害を目論む相馬富士男に拳銃を奪われ、その責任を問われ警察を懲戒免職となる。一家7人が路頭に迷うことになり、富士男に大きな恨みを持つ。

佐倉牧師 (さくらぼくし)

あすなろう塾の塾長。プロレスラー並の体格とヒゲ面が特徴。戦時中、捕虜収容所で我が身を犠牲にして命を救ってくれた人物の「人間愛」に感銘を受け、キリスト教の牧師となる。江波慎太郎に頼まれ、鑑別所に留置されていた相馬富士男を訪ね、身元引受人となる。自身が運営するあすなろう塾に富士男を入塾させ、独自の教育指導を行う。

冬川 弓彦 (ふゆかわ ゆみひこ)

あすなろう塾の塾生。熱血漢の多いあすなろう塾の中では珍しいニヒルな人物。「明日はヒノキになろう」という努力を無駄なあがきだといい、相馬富士男と対立する。剣道の腕は一流だが、近眼という弱点を持つ。

美影 卓也 (みかげ たくや)

あすなろう塾と剣道の対抗試合を行った、吉野高等学校剣道部の主将。黒人の父と日本人の母を持つハーフ。抜群の運動神経や容貌から、全校生徒の尊敬を集める生徒。ジャズレコードの演奏に合わせて竹刀を振るう「モダンジャズ剣法」を使う。

集団・組織

あすなろう塾 (あすなろうじゅく)

佐倉牧師が塾長を務める神奈川県山中の私塾。名前の由来はあすなろの木。明日はヒノキになろうと努力する姿こそ人間の理想だという信念が込められている。和魂洋才の精神がモットーで、キリスト教と剣道を通じて青少年の育成にあたっている。

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