アリスと蔵六

アリスと蔵六

想像すればなんでも願いを叶えてしまう超能力を持った少女紗名と、曲がったことが大嫌いな頑固爺さん蔵六によって紡がれる、現代を舞台にしたSFファンタジーストーリー。童話『不思議の国のアリス』をモチーフにしている点が多く見られる。第17回文化庁メディア芸術祭漫画部門新人賞受賞。

正式名称
アリスと蔵六
ふりがな
ありすとぞうろく
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
ファンタジー
レーベル
リュウコミックス(徳間書店)
巻数
既刊12巻
関連商品
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概要・あらすじ

曲がったことが大嫌いな頑固爺樫村蔵六は、ある日の仕事の帰り道に、「想像したものは何でも現実にできる」能力を持つ幼い少女紗名と出会う。紗名は超能力を利用しようとする研究所から脱走してきていた。紗名には研究所以前の記憶も戸籍もなく自分の年齢さえわからない。見た目は8歳から10歳位の未熟で生意気だが純粋な女の子だった。研究所をぶっ潰して、ひどいことをされている友達たちを救い出したいと言う。

蔵六は、なにも訳のわからないまま、“アリスの夢”と呼ばれる超能力を持つ少女達の闘いに巻き込まれてしまう。子供が白昼殺し合ったり、手品みたいに消えたりするのを見て、蔵六は紗名が普通の人間ではないことを身をもって知る。とある研究所から脱走してきたと打ち明ける紗名を、蔵六は放っておくことができず、自分の家に居候させることになる。超能力の使えない現実社会の不便で思い通りに行かない日常の中で、紗名は“本当に大切なもの”が何かを考えるようになる。しかし、束の間の平和な日常は長くは続かず、研究所からの追手はすぐそこまで迫っていた。

登場人物・キャラクター

紗名 (さな)

金髪に紅い目をした幼い女の子。とある研究所から命からがら脱走してきたという謎の少女で、コンビニをさまよっていたところ、樫村蔵六と出会う。アリスの夢という超能力を持つ人間の中でも別格の扱いで、想像すれば何でも願い事を叶えることができる。しかし、街で暮らし始めてからは、研究所にいた頃ほど、自由に能力を使えなくなっているようである。 研究所での生活が長く、自身の能力に頼って生きてきたため、体力がない。実は人間ではなく、ワンダーランドという現象が人間を模して作った生物であり、当人はその事実を知った時非常にショックを受けたが、蔵六の言葉によって助けられる。蔵六と出会った当初はわがままな性格で勝手気ままに能力を使うだけだったが、蔵六と共に暮らすようになり、叱られたり樫村早苗と遊んだりする他愛もない日々の中で、能力を使うことの善悪を考えるようになり、“本当に大切なもの”を徐々につかみ取っていく。

樫村 蔵六 (かしむら ぞうろく)

ふさふさの髭と眉をした白髪の老人。非常に頑固で見た目も強面だが、人情に厚く曲がったことが大嫌いな性格。花屋を経営している。仕事帰りに立ち寄ったコンビニで紗名と出会ったのをきっかけにアリスの夢たちによって繰り広げられる騒動に徐々に巻き込まれていく。後に紗名を迎え入れ、共に暮らすこととなる。 紗名や他のアリスの夢の超能力を目の当たりにしても、決して怖気づくことはなく、あくまで平等の立場で説教をすることのできる人格者。紗名が無闇矢鱈に超能力を使うことを良しとせず、なるべく普通の人間と同じような暮らしができるよう躾をしている。また、生活面だけではなく、能力を使うことの善悪と言った道徳的な面でも大きな影響を及ぼしている。 口調や躾は厳しいが、人一倍紗名のことを気にかけており、紗名が落ち込んだときは慰みの言葉を掛る優しい心の持ち主。

樫村 早苗 (かしむら さなえ)

『アリスと蔵六』に登場する人物。ロングヘアの高校生の女の子。樫村蔵六の孫。幼いころに両親を亡くしているため、紗名が来るまでは蔵六と二人暮らしをしていた。突然居候することになった紗名を快く受け入れており、実の妹のようにかわいがっている。初めて紗名の超能力を目の当たりにした際もあまり動じることなく、むしろそれを楽しむことができるほど、のんびりで大らかな性格をしている。 語尾を伸ばす癖がある。

雛霧 あさひ (ひなぎり あさひ)

『アリスと蔵六』に登場する人物。雛霧よながの姉。薄紫色の髪を大きな黄色いリボンで縦ロールのツインテールにまとめている少女。よながに比べると少々活発で、お嬢様言葉を使う。研究所から脱走した紗名を追いかけて、蔵六のいる街までやってきた。アリスの夢の一人であり、鎖のついたものなら何でも召喚できるという能力を持つ。 当時名のなかった赤の女王に紗名という名前を付けた名付け親でもある。双子の違いをつけるために口調や性格などをわざわざ変えているが、時々同じ性格に戻ったり、性格が逆転してしまう時がある。

雛霧 よなが (ひなぎりよなが)

『アリスと蔵六』に登場する人物。雛霧あさひの妹。薄紫色の髪を大きな黄色いリボンで縦ロールのポニーテールにまとめている少女。あさひに比べると少々おとなし目で丁寧口調。研究所から脱走した紗名を追いかけて、蔵六のいる街までやってきた。アリスの夢の一人であり、強力な弓矢をいつでも放つことができる能力を持つ。 当時名のなかった赤の女王に紗名という名前を付けた名付け親でもある。双子の違いをつけるために口調や性格などをわざわざ変えているが、時々同じ性格に戻ったり、性格が逆転してしまう時がある。

ミニーC・タチバナ

短い黒髪にメッシュを入れた和装の女性。日系人である。巨大な男の腕を自在に操るトランプを持つアリスの夢で、研究所に雇われ紗名を研究所に連れ戻す画策を立てる。能力で操る男の腕は伸縮自在で自由な場所に出現させることが可能なうえに、透明化することができる。亡くなった夫に会いたいと強く願う中で能力が発現した。 腕のDNAは夫のものと一致しており、彼女は腕を夫の代わりとして身を寄せている。

一条 雫 (いちじょう しずく)

黒のショートヘアの精悍な顔つきの女性。内閣情報調査室特務機動B斑所属。真面目な性格で、いい加減な態度を取る内藤竜の扱いに困っている。666の兵器と13の魔法書を収めた魔法の物置を使って、多種多様な攻撃を繰り出すアリスの夢。一桁台の詠唱をするときにだけ、メイド姿のアニメキャラクターへと変身する。 紗名が研究所から脱走する際、ミリアム・C・タチバナを足止めすることで、彼女の脱走を手伝った。

内藤 竜 (ないとう りゅう)

髪をオールバックにした、白髪交じりの中年男性。樫村蔵六とは古い付き合い。一条雫と行動を共にしていることから、内閣情報調査室と思われる。デリカシーがなく、つかみどころのない性格だが基本的には職務に忠実な男性である。研究所に関しても何かしらの情報を掴んでいる様子。

山田 のり子 (やまだ のりこ)

眼鏡を掛けた女性で天才ハッカー。その確かな頭脳と技術によってアリスの夢の居場所を突き止めるシステムを作り上げる。もとは一条雫のストーカーで、現在もなお、一条にゾッコンである。

敷島 羽鳥 (しきしま はとり)

赤色の髪飾りを付けたおさげ姿の小学生女子。人の想像力を奪うトランプを持ち、周囲にいる人々を思い通りに動かすことができる。唯一紗名だけ思い通りに動かすことができない。幼いころから英才教育を施されていたが、小学校受験に失敗してしまい、以後冷めてしまった家庭環境に思い悩んでいた。能力を自覚してからは、親の愛が本当のものなのか、自分が作り出したものなのか分からなくなり、さらに孤独を深めていった。 自身を人食いグマと評し自虐している。

美浦 歩 (みほ あゆむ)

短髪黒髪の小学生女子で、敷島羽鳥の親友。一人称は「ぼく」。羽鳥のことを「はあちゃん」と呼んでいる。羽鳥の能力が効かない数少ない人間の一人で、羽鳥と一緒に行動を共にしているが、その能力のために自分で自分を苦しめている羽鳥をどうにかして助けてやりたいと思っている。羽鳥の能力を使って人々を思いのままに操ることに罪悪感を抱いている様子である。

場所

研究所 (けんきゅうじょ)

『アリスと蔵六』に登場する場所。かつて、紗名と雛霧あさひ、雛霧よながが暮らしていた場所であり、アリスの夢を研究し利用しようとしている研究機関。詳しい名称は明かされていない。脱走した紗名を連れ戻すために、ミリアム・C・タチバナを紗名のもとへと送る。アリスの夢を研究するだけでなく、アリスの夢を利用した非人道的な実験もしていたようである。 紗名は、研究所で植え付けられたトラウマから、研究所を潰し、そこにいる友だちを救うことを目的にして行動している。

ワンダーランド

『アリスと蔵六』に登場する空間。紗名が発見された場所であり、紗名が作り出す仮想の空間。紗名が生まれた場所でもある。紗名が想像したものを寸分違わず実現できてしまうため、想像と現実の境目がない。空間がいくつにもねじれているため、実際の十数万倍もの空間が広がっている。

その他キーワード

アリスの夢 (ありすのゆめ)

『アリスと蔵六』に登場する用語。超能力を持つ人間たちの総称。約10年ほど前から現れ始め、現在その数は数百人にまでのぼると言われている。トランプと呼ばれる、魔法のような超能力を使うことができ、能力を使う際には鏡の門と呼ばれる結晶状の物体が現れる。能力は基本的に一人につき一種類で、物理的な物体を召喚するものから、人の心を操るものなど様々である。 研究所と呼ばれる場所で管理されている人々もいる。アリスの夢はすべて後天的に能力を得ているが、赤の女王である紗名だけは、先天的に能力が備わっていた。

トランプ

『アリスと蔵六』に登場する用語。超能力を持った謎の人々アリスの夢が使用する能力の総称。アリスの夢一人ひとりが固有のトランプを持ち、その能力は物理物体を召喚するものから、人の心を操るものまで様々である。能力の発動条件は特にないが、トランプを使用するには膨大なエネルギーが必要なため、能力者たちはエネルギーが切れると能力が使えなくなる。 また、食事によって大量のエネルギーを摂取する必要があるため、アリスの夢には大食漢が多い。

鏡の門 (るっきんぐらす)

『アリスと蔵六』に登場する用語。超能力を持った人々アリスの夢が能力を使用する際に現れる、結晶体のようなもの。発現時にはこの結晶体が「パチッ」という音ともに発光する。視認することができるため、アリスの夢が能力を使う際はこれを見ることで察知することができる。また、結晶体の形状は、使用者によってそれぞれ異なる。

書誌情報

アリスと蔵六 12巻 徳間書店〈リュウコミックス〉

第11巻

(2023-07-13発行、 978-4199508202)

第12巻

(2024-02-13発行、 978-4199508455)

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