逃亡医F

逃亡医F

同僚を屋上から突き落としたという濡れ衣を着せられ、指名手配を受けた天才外科医が、自身の無実を証明するため、身を隠しながら旅をする医療サスペンスドラマ。2007年、秋田書店「プレイコミック」にて創刊39周年記念連載攻勢第1弾として連載された。単行本化はされていなかったが、2020年Jコミックテラスより電子書籍化。2022年1月テレビドラマ化。

正式名称
逃亡医F
ふりがな
とうぼういえふ
原作者
伊月 慶悟
作画
ジャンル
医療
関連商品
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概要・あらすじ

同僚の八神妙子を病院の屋上から突き落とし、植物状態にしたという濡れ衣を着せられて、指名手配犯となった医者の藤木圭介は、「鳴海健介」という偽名を使って逃亡生活を続けていた。健介は身を隠すため、気象観測船「第一海風丸」に清掃員として乗り込むが、自分の正体を勘づいている船爪と乗り合わせてしまう。そんな時、偶然起きてしまった事故のせいで、気象観測士の八沢井美香子が重傷を負ってしまう。

この状況で手術を行えば自分の正体が明るみに出る恐れがあるものの、彼は「療心(りょうしん)」に従って手術を執刀する。

テレビドラマ

2022年1月に実写ドラマ化。日本テレビ系にて放送。主人公の鳴海健介(本名・藤木圭介)を成田凌が演じる。

登場人物・キャラクター

鳴海 健介 (なるみ けんすけ)

帝都医大所属の外科医の青年。天才的な腕を持つ。同僚の医者である八神妙子を病院の屋上から突き落として植物状態にしたという冤罪により、警察から指名手配を受けている。そのため本名は「藤木圭介」だが、偽名の「鳴海健介」を名乗って身分を偽っている。自分の潔白を証明するため、逃亡生活を続けながら、帝都医大所属の教授である都波健吾を追っている。 逃亡生活の中で怪我を負った人がいれば、自分の正体がバレてしまう危険を顧みず、手術を行う強い正義感の持ち主。

烏丸 (からすま)

東京都奥多摩にあるイースト薬業株式会社の中央研究所に所属する若い女性。鳴海健介の正体が「藤木圭介」だと知る1人で、八神妙子の友人。人類にもしものことがあった時のことを考え、優秀な精子を試験管で収集するという趣味を持っている。記念すべき100本目の精子サンプルは鳴海からと決めており、執拗にその後をつけ回している。 鳴海が無実であることを疑っておらず、その逃亡に度々協力する。

富樫(医者) (とがし)

浜田中央総合病院に勤務している医者の男性。鳴海健介の大学時代の同期生。鳴海の無実を信じており、金の尽きかけていた鳴海に金銭支援をしたり、携帯電話を貸すなど逃亡に協力している。鳴海の手術の腕を高く評価しており、早く無実の証明をしてほしいと考えている。同姓の富樫(マスター)とは無関係。

八神 妙子 (やがみ たえこ)

帝都医大所属の女性医師。鳴海健介とは同僚だった。何者かに病院の屋上から突き落とされ、現在は植物状態となって、東京都奥多摩にあるイースト薬業株式会社の中央研究所にいる。もともと独自の研究を行っており、帝都医大の都波健吾教授の研究と関わりがあった。植物状態の彼女をイースト産業が預かっているのも、彼女の研究が影響している。 なお、物語序盤では「根岸」という名前だったが、途中から「八神妙子」という名に変わっている。

八神 (やがみ)

世界の秘境を旅する写真家。雪男のような大男。日本に帰国して初めて妹の八神妙子が植物状態になっていることを知った。鳴海健介が私利私欲のために妙子を突き落としたと誤解しており、執拗に鳴海の後を追っている。ヒマラヤから帰国した際、足に凍傷を負っていたが、鳴海の適切な指示で指を切断せずに済んだ。しかし、それと妹の恨みは別であると考えている。

都波 健吾 (となみ けんご)

帝都医大に所属する教授。老年の男性。微生物学会の権威で、微生物発見のため各地を巡っており、半年以上も研究室に戻らず、連絡がつかなくなることも珍しくない。鳴海健介が指名手配を受けることになった事件に、深い関わりを持っている。しかし、当時は研究室を離れて全国を旅していたので、事件のことはまったく知らずにいる。

沢井 美香子 (さわい みかこ)

気象観測船「第一海風丸」に乗る気象観測士の女性。父親が漁師だったこともあって船上での仕事に憧れ、駆け出しではあるが、気象観測士として船に乗れたことを喜んでいる。海水につけていた観測器を引き上げる際にワイヤーが切れてしまい、切れたワイヤーが鞭となって手首に深い傷を負ってしまう。船上のため十分な医療設備がなく、船医から、命が助かっても片手を失ってしまう可能性が高いといわれる。 鳴海健介の機転と高い技術による手術で事なきを得た。その後は港南ヶ丘中央総合病院に入院する。

船爪 (ふなづめ)

気象観測船「第一海風丸」に乗るベテランの男性船員。志水という警察官の友人がおり、その友人の情報で鳴海健介の正体が、指名手配中の「藤木圭介」なのではないかと疑っている。そのため、当初は鎌をかけたり何かと突っかかっていた。沢井美香子が重傷を負った際、自分の正体が露呈することを恐れず手術に踏み切った鳴海に心を打たれ、以降は追及をやめて、鳴海を第一海風丸の船医として迎え入れた。 根はいい人だが、偏屈なところがある。

佐伯 (さえき)

帝都医大に勤務していた男性医師。鳴海健介の正体が「藤木圭介」だと知っている。半年前に末期のすい臓がんであることが判明した。延命手術をする気はなく、自分の趣味であったヨットに恋人の志穂と乗って、太平洋に抱かれて死ぬつもりでいた。ところが、鳴海の乗る気象観測船「第一海風丸」にヨットが接触し、海に放り出されてしまう。 救助された後、恋人である志穂が妊娠していたことを知り、彼女や子供のために延命手術を受ける覚悟を決め、近くの病院で鳴海の手術を受けた。

志穂 (しほ)

帝都医大勤務の女性看護師。鳴海健介の正体が「藤木圭介」だと知っている。海の上で孤独に死のうとする恋人の佐伯のヨットに同乗し、自分も後を追って死のうと考えていた。ところが、鳴海の乗る気象観測船「第一海風丸」にヨットが接触し、海に放り出されてしまう。救助された後、そこに指名手配犯である鳴海がいたことに驚く。 八神妙子により手術部のナースに引き上げられたことで、彼女に恩を感じており、彼女を突き落としたとされる鳴海のことを恨んでいる。実は佐伯の子供を妊娠しており、佐伯にはそのことを隠していた。悪阻を抑える医薬品を持っていたため、その事実を鳴海に見抜かれた。その際、船上から鳴海のことを警察に通報しようとしたが、その前に佐伯が延命手術を受けることを決め、近くの病院で手術に成功した後は通報を取りやめた。

志水 (しみず)

男性警察官で、船乗りの船爪の友人。船爪の出航前日、2人で飲み屋に入った際に鳴海健介を見かけ、指名手配犯の「藤木圭介」ではないかと疑っていた。のちに行きつけの喫茶店「すずらん」で再び鳴海と出会い、なんとか証拠を手に入れて逮捕に踏み切ろうとする。「すずらん」のマスターである富樫(マスター)が、鳴海を自分の息子だと言ってかばったため、逮捕に踏み切れなかった。

富樫(マスター) (とがし)

喫茶店「すずらん」のマスターの老人。正義感の強い息子がいたが、2年ほど前、チンピラに暴行を受けていた見ず知らずの人を助けようとして、反対に刺し殺されてしまった。さらにその息子を追うように、もともと身体の弱かった妻も病死した。当時は悲嘆に暮れて自暴自棄になっていたが、警察官の志水が捜査報告の名目で店を訪れるようになり、彼の励ましもあって立ち直った。 息子に似た雰囲気を持つ鳴海健介を居候兼従業員として雇い入れる。鳴海が指名手配犯であることに気づいているが、鳴海がそんなことをする人物ではないと確信している。心臓が弱く、常備薬を持ち歩いている。浜田中央総合病院に勤務している医者の富樫(医者)とは無関係。

松田 (まつだ)

東海日々新聞社に勤める新聞記者の男性。息子の健太が交通事故に遭いそうだったところを、通りがかりの鳴海健介に助けられた。その際に鳴海が足を捻挫して入院が必要となったため、その費用を受け持つ。自分の書いた痴漢の記事が原因で、男性を自殺に追い込み、さらにその記事が誤報だったため、罪悪感から新聞記者を辞めようと考えていた。 だが、辞表を提出したところ、上司に考え直すように言われる。スクープ探しに警察を訪れ、ここで鳴海の正体が指名手配犯の「藤木圭介」ではないかと疑う。その調査をしているところで、息子の抱える難病の様態が急変するが、鳴海の手術により息子が救われたことをきっかけに、鳴海の無実を証明したいと考えるようになる。

秋美 (あけみ)

飛驒のスキー場で宿屋を営む一家の娘。糖尿病を患っている。電車の中で急激に血糖値が下がり、昏睡状態に陥ったところ、たまたま居合わせた鳴海健介に救われる。以降、鳴海に想いを寄せている。その恩返しにと、自分の家の宿に鳴海を招く。鳴海を追ってやって来た烏丸との会話から、鳴海が指名手配犯の「藤木圭介」だということを知る。 しかし、鳴海のことを信じ、雪崩のせいで陸の孤島となった雪山からの逃亡を、スキーガイドとして手伝った。

白井 葵 (しらい あおい)

出雲に住む画家の女性。「田舎暮らしの貧乏絵描き」を自称している。都波健吾をスケッチした絵を熱心に見ていた鳴海健介に声をかけ、知り合う。完成した絵を譲るために都波に会う予定があり、彼を探していた鳴海に、連絡があった際は教えて欲しいと頼まれている。白井葵本人に自覚はなかったが、彼女のスケッチから、失明の危険もある急性閉塞隅角緑内障を患っていることが判明し、くしくも都波との待ち合わせの直前に発作が出てしまう。

理花 (りか)

競争馬を運搬する馬匹搬送車に、兄と一緒に乗っている少女。内向的な性格で、あまりはっきりしゃべらないが、馬に対しては心を開いている。競走馬のウンディホマレを搬送中に鳴海健介と出会う。人見知りのウンディホマレが鳴海にすぐに懐いたため、鳴海を信用して車に乗せた。しかしその搬送中、ウンディホマレが病気であることが判明。手術をしなければ死は免れず、しかし手術をすれば競走馬生命が終わり、どちらにせよ薬殺される、という究極の選択を迫られることとなる。

横尾 秀子 (よこお ひでこ)

先輩の弁護士事務所で居候弁護士をしている女性。清水亜美の依頼を受けて、ある殺人事件の再審請求のため別人になりすましている諸井隆司を追い、証拠を探っている。依頼人である清水の許可を得て、たまたま知り合った鳴海健介に協力を仰ぐ。

清水 亜美 (しみず あみ)

死んだとされている「諸井隆司」という男を探している少女。清水亜美の父親は、諸井と2人で海にボートで釣りに出かけた際に、諸井を海に突き落としたとされ、殺人罪で検挙された末に、獄中で病気になって死んでしまった。最近、当時の父親の知り合いから、諸井らしき人物を見かけたと聞き、弁護士の横尾秀子を雇い、父親の潔白を証明するため、諸井を見つけ出して再審請求をしようと考えている。

諸井 隆司 (もろい たかし)

「桑野」と名乗る男。清水亜美の父親とボートの上で酔っ払った末喧嘩になり、彼に殺されたことになっているが、別人に成り済まして生きている。整形をしており、総入れ歯であるため、半年に一度歯医者に通っている。肩に大きな花形のアザがある。「ボンベイブラッド」と呼ばれる特殊な血液型の持ち主。

菜々子 (ななこ)

養蜂家の女性。ミツバチのために「美々子」という双子の姉と全国を巡っている。佐賀県某市の郊外でミツバチに花蜜を採取させていたところ、怪しい男2人組に強姦されそうになったが、たまたま通りがかった鳴海健介と姉の美々子によって助けられた。全国を旅しているので、都波健吾を見かけたら連絡がほしい、と鳴海に頼まれる。

久保田 (くぼた)

料理人の男性。離婚した妻との間の娘が結婚すると聞いて、会うことは叶わないまでも、結婚式場の厨房にいれば、自分の料理を振る舞えるだろうと考え、シェフとしてホテルに入った。しかし結婚式の前に食道ガンで入院することになってしまい、放射線治療の影響で味覚が狂ってしまう。

長谷川 (はせがわ)

イースト薬業株式会社の子会社である岡部薬品に勤める男性。鳴海健介の大学時代の先輩だが、家庭の事情で中退したため医者になることができず、せめて医療に携わりたいと製薬会社に就職した。妻が腹膜擬粘液腫という重い病気を患っており、妻の治療費のため、八神妙子が開発している抗がん剤の新薬の研究資料を盗んでくるよう上司に脅されていた。 結果として妙子は病院の屋上から飛び降り、後輩である鳴海は指名手配犯にされてしまったため、罪悪感で苦しんでいる。

場所

帝都医大 (ていといだい)

東京都にある大学病院。鳴海健介、八神妙子、佐伯、志穂が勤める他、烏丸もイースト薬業株式会社の社員として出入りしている。優秀な医者を多く送りだすとともに、総合病院としての質も高い。

第一海風丸 (だいいちかいふうまる)

鳴海健介が清掃員として乗り込んだ気象観測船。天気予報に必要な情報を収集するのが主な役割で、観測器を海に沈めて調査したりもする。気象観測士として沢井美香子が同乗している。鳴海とは別に医師も同乗しているが、内科医であるため怪我の治療は不得手。漁船ではないので、通常の航路を外れることも多い。そのため、夜間に航海灯を消していた佐伯と志穂が乗るヨットに接触してしまった。

イースト薬業株式会社 (いーすとやくぎょうかぶしきがいしゃ)

薬の開発などをしている会社。烏丸が勤めている。ある極秘事情により、植物状態となった八神妙子を引き取って治療している。長谷川が勤める岡部薬品は、この会社の子会社。

クレジット

原作

伊月 慶悟

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