明治緋色綺譚

明治緋色綺譚

明治時代を舞台に、遊郭から身請けされた幼い少女と、彼女を救った商家の青年。2人の年の差恋愛を描いたロマンチックラブストーリー。「BE・LOVE」2011年第10号から2014年第14号にかけて連載された作品。続編として『明治メランコリア』がある。

正式名称
明治緋色綺譚
ふりがな
めいじひいろきたん
作者
ジャンル
その他恋愛・ラブコメ
関連商品
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世界観

年の差恋愛が題材。明治時代を舞台に、没落華族の桐院鈴子と、呉服屋の主人である藤島津軽の、淡い恋愛模様が描かれる。共に便利屋のような仕事「さがしもの屋」を行ううち、絆を深めていく2人だが、その過程で、鈴子が遊郭へ売られることになった原因が、次第に明かされていく。ラブストーリーとサスペンスの2つの側面を持つ作品。

あらすじ

没落華族の出である桐院鈴子は、両親に遊郭へ売られ、禿(かむろ)として働いていた。そこを、呉服屋の主人・藤島津軽に身請けされる。藤島家に引き取られた鈴子は、津軽が、家業の傍ら営む「さがしもの屋」の手伝いをすることとなる。津軽が自分を身請けした真意がわからず、鈴子は戸惑うが、彼との日々を過ごすうち、次第に津軽に強く惹かれるようになっていくのだった。

関連作品

関連作品として『明治メランコリア』がある。こちらは本作『明治緋色綺譚』の続編にあたり、本作から5年後の世界で、成長した桐院鈴子藤島津軽の恋愛が描かれる内容となっている。

登場人物・キャラクター

桐院 鈴子 (とういん すずこ)

呉服屋で働く幼い少女。呉服屋「藤島屋」の支店で、藤島津軽の助手として働いている。前髪を眉の高さで切り、肩につくほどの長さの黒髪ボブヘアで、顔の両サイドに髪飾りを付けている。没落華族の出で、姉の桐院夕香と共に遊郭に売られたが、夕香は死亡。1人になったところを、津軽に身請けされる形で、「藤島屋」にやってきた。生真面目で気が強く、ずばずばとものをいう性格。 津軽が、借金を背負ってまで自分を身請けした理由がわからず、津軽の「さがしもの屋」の仕事を手伝いながら、その真意を探ろうとしている。貧しい思いをした経験から、裕福な人間に対して手厳しいところがある。

藤島 津軽 (ふじしま つがる)

呉服屋「藤島屋」の支店で主人を務める若い男性。前髪を左寄りの位置で分け、黒髪全体を外にはねさせた髪型をしている。呉服屋として働く傍ら、別宅で便利屋のような「さがしもの屋」を営んでいる。依頼を受け、助手の桐院鈴子と共に、さまざまな調査を行っている。普段はのんびりとした穏やかな青年だが、知性的で洞察力にも優れる策士。 「さがしもの屋」に来る難題も、すんなりと解決してしまう。本来は「藤島屋」を継ぐ意思はなかったが、鈴子の身請け金を両親に貸してもらうという条件で、仕方なく継いだという経緯がある。

河内 慎一郎 (かわち しんいちろう)

華族の長男の若い男性。藤島津軽の友人。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、癖のある茶髪をしている。おっとりとした明るく社交的な性格で、顔が広く、女性が大好き。時間に余裕もあり、津軽と桐院鈴子の「さがしもの屋」の仕事に同行し、3人で行動することが多い。「丈夫に育つ」という迷信から、幼い頃は女性の格好をさせられており、その頃の写真を弱点としている。 おみやげを贈るのが好きで、津軽のもとへ訪問する際にもよく持参する。

佐之次 (さのじ)

かつて桐院家の下男として働いていた若い男性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、肩につかない長さまで伸ばした髪全体を外にはねさせている。非常に背が高く、6尺(182センチ)を優に超えるほど。心優しい性格で容姿にも優れるが、やや気が弱く、自分に自信を持てないでいる。桐院家から暇を出されたて、各地を転々としていた。街で桐院鈴子と偶然再会する。 その後、奉公先で商品を多く仕入れ過ぎたのが原因で、商品を売り切るまでは戻ってくるな、と追い出されてしまった。鈴子の頼みで、藤島津軽のもとで世話になる。しかし、華族の下男が問屋に奉公していたり、奉公先から追い出されるような存在であるにもかかわらず、商品を仕入れるつてがあるなど、不審な点が多い。 さらには、「吉田左之助」と名乗って、別の店で働いていることが発覚する。鈴子は、佐之次の真意がわからず悩むことになる。

桐院 春時 (とういん はるとき)

桐院鈴子の兄。桐院夕香の弟。前髪を真ん中で分けて額を全開にした、黒髪ストレートヘアをしている。鈴子とは、3年間ほど離れて暮らしていたが、突如「藤島屋」を訪れ再会。離れている間に、鈴子と夕香が遊郭へ売られ、自身も父親の桐院春彦に追い出されてしまった。姉と妹の2人を救うために資金を貯め、ようやく再会できた、と語っている。 しかし、夕香は以前、「自分たちが売られたのは桐院春時が仕組んだこと」と語っており、おかしな点が多い。クールな雰囲気の慇懃な人物だが、やや強引で高圧的な態度を取るところがある。藤島津軽から、鈴子を無理矢理取り返そうとする。鈴子に異常な執着心を抱いており、鈴子を自分のもとに置くためなら手段を選ばない。 さらに佐之次や遠峰宗継とも、深い関わりを持っている。

遠峰 宗継 (とおみね むねつぐ)

裕福な男性。桐院春時の知人を名乗っている。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、癖のある髪の毛を外にはねさせ、眼鏡をかけている。桐院家の崩壊後、春時を高く評価し、経済的に援助していた。一見穏やかで親しみやすい雰囲気だが、実際は他人を弄び、苦しめて楽しむ残忍な性格。裏では賭博場の開催や阿片の製造といった、多数の悪事を働いている。 春時が大切にする桐院鈴子に関心を持ち、2人を苦しめようと企む。

桐院 夕香 (とういん ゆうか)

桐院鈴子の亡くなった姉。借金のかたに鈴子と共に吉原へ売られ、亡くなるまで遊女として働いていた。遊女としての名前は「霧舟」。鈴子を非常に大切に想う一方で、容姿も美しく頭も良い鈴子が、成長しても遊女として生きる未来しかないことを、憂いていた。また、他の遊女たちについても悲観しており、遊女として働き続けて心身ともに疲弊していくくらいなら、皆死んでしまった方が良いのでは、と考えていた。

河内 手茉莉子 (かわち てまりこ)

河内慎一郎の妹で、河内手瑠璃子の双子の妹。前髪を右サイドに一房だけ残して上げて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばした桃色の髪の毛を、1本の三つ編みにしてまとめている。双子の姉妹である手瑠璃子とは、非常に容姿が似ているが、河内手茉莉子の方は右サイドに前髪を垂らしている。慎一郎からは、手瑠璃子とセットで「小鬼たち」「鬼っ子たち」と呼ばれている。 祖父の誕生パーティと同時に出た慎一郎の結婚話に、表向きは賛成しつつ、実際は強く反対している。そのため、パーティに訪れ、自分と手瑠璃子の行動を不審に思う桐院鈴子を見張るため、パーティ中一緒に行動することになる。その後、鈴子の藤島津軽への想いを知ってからは、手瑠璃子と共に熱心に応援するようになる。

河内 手瑠璃子 (かわち てるりこ)

河内慎一郎の妹で、河内手茉莉子の双子の姉。前髪を左サイドに一房だけ残して上げて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばした桃色の髪の毛を、1本の三つ編みにしてまとめている。双子の姉妹である手茉莉子とは、非常に容姿が似ているが、河内手瑠璃子の方は左サイドに前髪を垂らしている。慎一郎からは、手茉莉子とセットで「小鬼たち」「鬼っ子たち」と呼ばれている。 手茉莉子同様、祖父の誕生パーティと同時に出た慎一郎の結婚話に、表向きは賛成しつつ、実際は強く反対している。そのため、パーティに訪れた藤島津軽を利用し、仮面を付けさせて、なぜか姿を消した慎一郎の代わりをさせて、周囲をだまそうとする。その後、桐院鈴子の津軽への想いを知ってからは、手茉莉子と共に熱心に応援するようになる。

桐院 春彦 (とういん はるひこ)

桐院鈴子、桐院春時、桐院夕香の亡くなった父親。前髪を真ん中で分けて額を全開にした撫でつけ髪にし、眼鏡をかけている。浪費癖があり、女遊びも激しい放蕩な人間。正妻である桐院高子の子供の夕香ではなく、妾の子供である春時に家督を継がせるつもりをしている。そのため、春時は家中の人間から無視されたり、不当に攻撃されるなど、つらい日々を過ごすことになった。 やがて自身を強く恨むようになっていた春時の策略にはまり、桐院家を崩壊させてしまう。

藤島 淡路 (ふじしま あわじ)

藤島津軽の弟。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしているところ以外は、津軽に非常に良く似た容姿をしている。津軽とは対照的に、冷たい雰囲気の意地悪な性格だが、非常に兄想い。そのため、津軽が借金を背負い、本来継ぐつもりでなかった家業を継ぐ理由となった桐院鈴子を快く思っておらず、鈴子に半ば意地悪のような難しい依頼をする。

藤島 近江 (ふじしま おうみ)

藤島津軽と藤島淡路の父親。藤島百合子の夫。前髪を真ん中で分けて額を全開にしたストレートヘアをしている。落とし物をして困っているところ、桐院鈴子に声をかけられて、知り合う。当初は鈴子の知性と洞察力に惹かれて親しくなったが、彼女の正体を知ってからは、厳しい態度を取るようになる。潔癖で生真面目な性格で、遊郭からやってきた鈴子の存在を、なかなか許容できずにいる。

藤島 百合子 (ふじしま ゆりこ)

藤島津軽と藤島淡路の母親。藤島近江の妻。前髪を上げて額を全開にし、高等部でまとめてかんざしを挿した髪型。当時の既婚女性にしては珍しい、若々しい雰囲気の髪型をしている。近江とは対照的に、明るく面白いことが好きな性格で、桐院鈴子にも好意的。津軽が鈴子のために、自分たちに多額の借金をしたことを「粋」だと感じ、鈴子と津軽を暖かく見守っている。 精神的にタフで、トラブルが起きてもめげない、たくましい女性。

遠峰 狩也 (とおみね かるや)

遠峰宗継と遠峰八千代の息子。遠峰射也の兄。前髪を右寄りの位置で分けたストレートヘアをしている。ある件から宗継のもとでしばらく暮らすことになった桐院鈴子に関心を持ち、鈴子の滞在中、射也も交えて3人で過ごすことになる。仕事が忙しいため、あまり宗継とコミュニケーションがとれず、淋しい想いをしている。しかし、宗継に不審な点が多いのは察しており、彼を快く思っていない。

遠峰 射也 (とおみね いるや)

遠峰宗継と遠峰八千代の息子。遠峰狩也の弟。前髪を眉上で短く切り、癖のある髪の毛を立てている。まだ非常に幼いが、狩也同様、宗継に不審な点が多いのは察しており、宗継を嫌っている。桐院鈴子の滞在中、狩也と3人で過ごして親しくなる。ある日、遠峰邸内にある温室で発見した阿片を誤飲したため、重体となってしまう。

遠峰 八千代 (とおみね やちよ)

遠峰宗継の妻。遠峰狩也と遠峰射也の母親。黒目がちな瞳が特徴。うつろで暗い雰囲気の人物。突如自宅に滞在することになった桐院鈴子を、快く思っていない。射也が阿片を誤飲した件で、宗継の冷たい態度にショックを受ける。そのため体調を崩し、その後ある行動に出る。

遠峰 宗顕 (とおみね むねあき)

遠峰宗継の兄。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、髪全体を外にはねさせた髪型をしている。癇癪持ちで攻撃的、わがままな性格で、周囲も手を付けられないほどの乱暴者。以前は、下男に暴力をふるったり、街のゴロツキとつるんで遊びまわったり、賭場に出入りしたりと、やりたい放題の日々を送っていた。しかし、ある事件により、右半身麻痺の寝たきり状態となり、現在は遠峰邸で、阿片中毒となっている。

倉田 半司郎 (くらた はんじろう)

桐院鈴子と桐院春時が、誘拐された先で出会った若い男性。前髪を眉上で短く切った赤毛の刈り上げヘアをしている。遠峰宗継の命令で、春時を阿片製造の首謀者に仕立て上げようとしている。悪人に見えるが、鈴子に乱暴する意思はない。抵抗する鈴子に手を焼きつつも、鈴子の勇敢で気丈な姿に関心を持つ。実は武家の出で、藤島津軽と河内慎一郎とは尋常小学校時代の同級生だった。 本来は面倒見のいい親分肌な性格。

夏川 (なつかわ)

素性不明の男性。遠峰宗継と陰で繋がり、阿片の密輸の仲介を行っている。坊主頭で三白眼の、目立たなく影の薄い雰囲気の人物。性格は冷酷で残忍。各地を転々としており、足取りがつかめずにいたが、桐院鈴子に偶然発見され、追われることとなる。

円城寺 ひな (えんじょうじ ひな)

藤島津軽のかつての想い人で故人。河内慎一郎の親戚筋にあたる華族のお嬢様。津軽と慎一郎よりも2歳年下。髪の毛を結うのが嫌いで、前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをしている。津軽とは変わり者同士ですぐに親しくなり、3年ほど密かに交際していた。円城寺ひなが、結婚相手についていく形で海外留学することになったため別れ、のちに留学先で亡くなった。 津軽は、ひなを引き留めなかったことを、現在でも後悔している。

倖田 良純 (こうだ よしずみ)

教授を務める年老いた男性。河内慎一郎の知人。禿げ頭と太い眉が特徴で、眼鏡をかけている。無口なうえ口下手な性格で、感情表現が苦手。妻の倖田さえ子を愛していたが、彼女の家の弱みに付け込む形で結婚したのを気に病んでいた。思うようにコミュニケーションが取れないまま、さえ子を亡くしたことを悔やんでいる。実家は大きな商家。

倖田 さえ子 (こうだ さえこ)

倖田良純の妻で故人。近所でも評判の美女だったが、風邪をこじらせて亡くなってしまった。武士の娘で誇り高い女性だったが、家が借金を背負い、それを肩代わりする条件として良純と結婚することになった。死の間際、良純に「手紙を探してほしい」と言い残して亡くなる。桐院鈴子と藤島津軽は、良純の依頼を受け、手紙の在り処を探すことになる。

(かのえ)

曲馬団「三雲一座」に所属する少年。前髪を眉上で短く切った赤毛の短髪ヘアに、青い瞳という、日本人にしては珍しい容姿をしている。別の曲馬団に所属するという生き別れの父親を探している。桐院鈴子と藤島津軽とは、2人が曲馬団を観に行った際に知り合った。父親の手掛かりとなる懐中時計を、大切に持っている。華やかで美しい容姿だが、本人は自分の外見にコンプレックスがある。 父親がいないのも手伝い、ややひねくれた性格をしている。

菊池 律子 (きくち りつこ)

藤島津軽と河内慎一郎の幼なじみである奈津の妹。前髪を上げて額を全開にしたシニヨンヘアをしている。現在は結婚して山の手の屋敷に住んでいる。かつての縁を思い出して、姉の友人である津軽のもとを訪問する。津軽が「さがしもの屋」を営んでいることを知り、自宅で紛失した3つの指輪の捜索を依頼する。結婚したと語っているが、自宅に夫の姿はなく、不審な点が多い。

リチャード・マイヤー (りちゃーどまいやー)

日本で語学を教えている中年の外国人男性。藤島津軽が幼い頃に親しくしていた。前髪を上げて額を全開にし、癖のある髪の毛を後頭部に流した髪型をしている。口ひげを生やして眼鏡をかけた、太目の男性。呉服屋「藤島屋」の当時の常連客で、日本のものが大好き。津軽の持ち込む凧などの日本のものと、自宅にある物品を物々交換して、津軽と親しくなった。 津軽と出会う3年前に息子を亡くしており、津軽を実の息子のように大切に想っている。物語の創作が得意で、よく津軽から受け取った物品に、架空のエピソードを付けて披露していた。

西山 光二 (にしやま こうじ)

酒屋「西山酒店」で働く西山家の次男。前髪を眉上で短く切って、右寄りの位置で斜めに分けた短髪ヘアをしている。突如「さがしもの屋」に訪れ、「自分の妻候補になる美しい女性を探してほしい」という漠然とした依頼をする。素行は良く、真面目な働き者として知られている。容姿もそこそこなため、女性に困っているようには見えない。桐院鈴子と藤島津軽は、西山光二の真意を探るべく調査を始める。

芙蓉 (ふよう)

桐院鈴子と桐院夕香と共に、遊郭で働いていた若い女性。華族の羽鳥伯爵家に身請けされて妾となるが、羽鳥家が詐欺により破産。以後は、借金まみれとなった羽鳥家で暮らしている。街で偶然鈴子と再会。鈴子が、藤島津軽に強く惹かれつつも、夕香の残した「男性とは身勝手で汚い生き物」という言葉に悩んでいることを知り、アドバイスを贈る。

りょう

桐院春時の家で働く若い女中。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、後頭部の高い位置で1つにまとめている。読み書きができないことに、コンプレックスを抱いている。桐院鈴子とは仕事中に知り合い、春時の家で退屈していた鈴子から、文字を教わることになる。それがきっかけで、春時の不興を買ってしまう。

織部 (おりべ)

遠峰邸の温室で働く男性。坊主頭に頬骨の張った顔をしている。温室で阿片の抽出と精製の技術を研究している。いざというときは、桐院春時の命令で行っていた、と主張するよう、遠峰宗継から言われていた。宗継には母親を人質に取られており、織部は彼の言う通りにせざるを得ない状況にある。

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