明治メランコリア

明治メランコリア

リカチの『明治緋色綺譚』の続編。明治時代、戦争の空気が近づく東京で、15歳の少女と商家の青年の、年の差恋愛を描いたロマンチックラブストーリー。「BE・LOVE」2014年第17号から連載中の作品。

正式名称
明治メランコリア
ふりがな
めいじめらんこりあ
作者
ジャンル
その他恋愛・ラブコメ
関連商品
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世界観

年の差恋愛が題材。前作『明治緋色綺譚』から5年後を舞台に、1人の女性として大きく成長した桐院鈴子と、かつて鈴子を遊郭から身請けした藤島津軽が、お互いを異性とて意識し合ったことにより、関係が変わっていく様を描く。鈴子の義理の兄である桐院春時や、曲馬団に所属する、軍人の平賀馨など、鈴子を取り巻く多数のイケメン男性キャラクターが登場するのも魅力。

作品誕生のいきさつ

リカチは、コミックス1巻のあとがきで、当初『明治緋色綺譚』の続編のタイトルは、「明治浪漫輪舞曲」というものを考えていた、と語っている。しかし、想定していた内容にはぴったりのタイトルだが、文字の画数が非常に多く「書きにくい」ので、現在の『明治メランコリア』に変更となった。それに伴って、内容も、「メランコリア」の言葉の意味に即した恋愛中心の物語に変更。「BE LOVE」編集長の意向もあり、サスペンス要素の強かった『明治緋色綺譚』に比べ、恋愛要素を全面的に押し出す内容となった。しかしその後、編集長から「恋愛以外の要素もほしい」という意見を受け、最終的に恋と冒険を描く物語へと変身していった。

時代設定

舞台は明治時代の日本だが、あえて本作『明治メランコリア』独自のアレンジを加えられた世界観となっている。例えば、桐院鈴子などの女性キャラクターは、髪飾りとしてリボンを付けていることが多い。ところが、実際にリボンが流行したのは、作中の時代よりさらに後である。また、藤島津軽の家が経営する「藤島屋」は、百貨店のようなデザインだが、百貨店が登場するのは、本来は明治時代の終わり頃であった。このように、時代考証は厳密なものではなく、時間的に多少の前後が見られる。

作品構成

本作『明治メランコリア』は、現在、大きく分けて2部構成となっている。第1部では、前作『明治緋色綺譚』から時を経て15歳となった桐院鈴子が、突如姿を消した想い人の藤島津軽を追って渡航する。第2部では、それから2年後、海外にいる津軽を待っていた鈴子が、自身の祖父を名乗る秋山篤治郎と出会って、望まぬ結婚をさせられそうになり、さらに記憶まで失ってしまう、という物語が展開される。

あらすじ

第1巻

明治時代。15歳に成長した桐院鈴子は周囲から慕われ、頼れる存在として「お助け鈴ちゃん」と呼ばれるほどになっていた。しかし、想い人の藤島津軽とはいまひとつ進展せず、悩んでいた。そんなある日、鈴子と津軽の両方に、お見合いの話が持ち上がる。このお見合いを断ったのを機に、もう一度津軽に告白した鈴子は、河内慎一郎の後押しも受け、津軽と「お試し」という形で交際することになる。それは鈴子の義兄である桐院春時が神戸から戻るまでの期間限定のものとなるはずだったが、その日を境に二人の関係は大きく変化していく。 

第2巻

桐院鈴子の片想い相手であり、お試し交際中の藤島津軽が、露西亜密偵の疑いをかけられ、そのまま姿を消してしまった。深く傷つく鈴子だったが、そこに桐院春時が戻り、二人は津軽の行き先を突き止めるための調査を始める。やがて津軽は仏蘭西に渡ったことが発覚し、鈴子と春時は河内慎一郎も伴って欧州へと旅立つ。さらにその途中で[倉田半司郎と再会した鈴子は、半司郎から津軽に関する意外な情報を得ることとなる。 

第3巻

藤島津軽が姿を消した理由は、元外交官夫人であり、津軽のかつての想い人でもある愛染ひなに会うためであった。桐院鈴子はその事実に動揺しつつも、津軽を追う決意を新たにするのだった。1か月後、仏蘭西に到着した鈴子、桐院春時河内慎一郎の三人は、ひとまず河内の知人宅へと向かう。しかし、その道中、実の兄同然に思っていた春時の想いに触れた鈴子は、春時が自分とどのような関係を築きたいのかと、頭を悩ませることになるのだった。そんなある日、街でお金を盗まれてしまった鈴子は、見知らぬ若い女性に助けられる。その女性こそがひなであった。 

第4巻

仏蘭西の地で、ついに桐院鈴子藤島津軽と再会する。しかしそこに、津軽の渡航理由を怪しむ日本海軍の平賀馨が姿を現す。馨から津軽を逃がそうとする鈴子だったが振り切れず、三人はそのまま、津軽の次の目的地であるモンテカルロへ向かうことになってしまう。馨は高圧的なうえ、女性を見下した態度をとるため、鈴子は悩んでいたが、鈴子が体調を崩した馨の看病をしたことを機に、馨の言動は変化していく。一方、はぐれた桐院春時河内慎一郎愛染ひなの3人は、鈴子達との合流を目指して共に行動していた。しかし、春時がひなの不審な態度を問いただしたのがきっかけで、ひなは逃げ出し、単独で鈴子達に合流。鈴子は、今度はひなの気まぐれな言動に振り回されることになるが、そんな折、津軽とひなが、突如姿を消してしまう。 

第5巻

藤島津軽に密偵の疑いがかかったのは、愛染ひなの手によるものであった。彼らの関係に疑問を抱く桐院鈴子は、突如消えた二人を探すため、津軽が残したヒントを頼りに平賀馨と共にとあるパーティ会場へと向かう。そこで鈴子達を待っていたのは、遠峰宗継であった。宗継から、津軽やひな、そしてひなの元夫である愛染元次郎に関する情報を得た鈴子と馨は、元次郎の屋敷を調査することにする。そこに河内慎一郎桐院春時河内手瑠璃子河内手茉莉子も合流するが、春時は鈴子に、なぜかすぐに調査をやめて日本に戻ろうと言い出す。一方その頃、津軽は元次郎の屋敷に監禁され、元次郎から拷問を受けていた。 

第6巻

愛染ひな愛染元次郎の目的は、藤島津軽を自分達と同じ密偵にすることだった。元次郎は、理想の国家作りのため、まず自分達密偵が海外に情報を流して日本を戦争に敗けさせ、今度は日本の政治の中枢に入り込み、日本を立て直す側に立って、日本を支配しようと考えていた。それを知った桐院鈴子は、津軽と共に元次郎の屋敷に監禁されるが、津軽と密かに連絡を取り合っていた倉田半司郎ら日本海軍の助けにより解放される。同時にひなと元次郎は捕らえられ、事態は決着したかに思えた。しかし、津軽は鈴子達と日本には戻らず、元次郎の悪事の後始末をしたいと語るのだった。

それから2年後、津軽と離れ離れのまま17歳となった鈴子は、津軽の帰りを待ちながらも充実した日々を送っていた。しかしそこに、鈴子の祖父を名乗る秋山篤治郎という男がやって来る。息子を亡くして跡継ぎのいない篤治郎は、鈴子を桐院春時から引き取り、跡継ぎを産ませたいのだという。強引な篤治郎に腹を立てた鈴子は、篤治郎を出し抜くための時間稼ぎとして、再会した平賀馨を婿養子候補として噓の婚約をする。しかしそこに、投獄されたはずのひなが姿を現す。 

第7巻

愛染ひなが仕組んだ火事によって、桐院鈴子は怪我を負い、その後遺症で記憶を失ってしまった。ようやく日本に戻った藤島津軽のことも思い出せず、鈴子は津軽よりも桐院春時に頼って生活するようになる。さらに、記憶喪失のために秋山篤治郎との約束を結果的に反故にしてしまった鈴子は、予定通り平賀馨が婚約破棄したため、篤治郎の屋敷に連れていかれ、篤治郎と暮らすことになる。そのあいだにまたもひなが暗躍し、今度は春時を手にかけようとする。 

第8巻

愛染ひな愛染元次郎の新たな目的は、元次郎が桐院鈴子と結婚し、秋山篤治郎の持つ権力を奪うことだった。鈴子の唯一の身内であるという理由で、ひなに命を狙われた桐院春時だったが、偶然現場を目撃した河内手瑠璃子の助けにより難を逃れる。一方の鈴子は、篤治郎の誘いで草津へ向かう途中、悪漢に襲われ、篤治郎ともども怪我を負ってしまう。しかしそれは、元次郎の仕組んだ罠だった。元次郎は悪漢から助けたふりをして篤治郎に恩を売り、さらに鈴子を強姦して妊娠させ、強引に秋山家の跡を継ごうと考えていたのである。そこに助けに現れたのは、藤島津軽ではなく、春時であった。 

第9巻

桐院春時藤島津軽の活躍により、桐院鈴子秋山篤治郎は難を逃れ、愛染元次郎は大怪我を負ったまま行方不明となった。鈴子の記憶はまだ完全には戻らないままだったが、鈴子は記憶喪失になって以来、冷たい態度ばかり取っていた津軽と、もう一度親しくなろうとする。一方その頃、元次郎を失い、さらに余命いくばくもない愛染ひなは、津軽との無理心中を企む。春時の協力を得て津軽を呼び出すひなだったが、津軽が鈴子を同行させたことに腹を立て、春時に鈴子を殺させようとする。 

第10巻

愛染ひなに「自分を含めた誰かを殺せ」と脅された桐院春時は、自殺して場をおさめようとするが、桐院鈴子により阻止される。ひなの真意を知りたい鈴子は、ひなの語る過去の出来事に深く傷つけられながらも、ひなと一対一の対話を試みる。ひなとの対話の中で鈴子は記憶を取り戻すが、そこに亡くなったはずの愛染元次郎が現れ、鈴子を射殺しようとする。だが、鈴子の代わりに撃たれたのは、鈴子をかばったひなだった。ひなは死亡し、元次郎は再び捕らえられる。事件が解決し、春時と鈴子は義兄妹というお互いの関係を改めて見直し、男女としてではなく、兄妹として生きていくことを決意する。 

第11巻

さまざまな問題が解決し、桐院鈴子藤島津軽との平穏な日々を取り戻していた。河内慎一郎の四度目の結婚と同時期に鈴子と津軽もまた婚約をし、鈴子の周囲は幸せな雰囲気に包まれていた。そんなある日、鈴子は突如悪漢に襲われ、遊郭にさらわれてしまう。未だ続く秋山家の相続問題において、鈴子を邪魔に思った秋山篤治郎の親戚が鈴子を誘拐し、売ろうと企んでいたのである。どうにか脱出しようと方法を探す鈴子だったが、かつて遊郭で禿(かむろ)として働いていた自らの過去を思い出し、将来に不安を覚えていた。そこへ、当時と同じように鈴子を助けるため、津軽が姿を現すのだった。

スピンオフ

本作『明治メランコリア』には、多数のスピンオフ番外編が存在する。前作『明治緋色綺譚』と『明治メランコリア』の空白の期間を描いたものが主で、例えば、河内慎一郎の縁談を機に、慎一郎と藤島津軽がかつての同級生に再会する物語や、桐院春時の兵役に関する謎が明かされる物語などがあり、いずれも本作のコミックスに収録されている。

関連作品

関連作品として、本作『明治メランコリア』の前日譚に当たる『明治緋色綺譚』がある。こちらは本作から5年前の世界で、まだ幼い桐院鈴子藤島津軽が遊郭で出会い、一緒に暮らすうちに、鈴子が津軽に強く惹かれていく姿が描かれる。

登場人物・キャラクター

桐院 鈴子 (とういん すずこ)

呉服屋で働く15歳の少女。呉服屋「藤島屋」の支店で、藤島津軽の助手を務めている。前髪を眉の高さで切り、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアを、段を付けて切った姫カットをしている。明るく、はきはきとしたしっかり者で、堂々とした誇り高い性格。没落華族の出で、5年前に姉の桐院夕香と共に遊郭に売られたが、夕香が死亡。 1人になったところを津軽に身請けされる形で、「藤島屋」にやってきた。当時は津軽が営んでいた「さがしもの屋」の仕事を手伝っていた。「さがしもの屋」が休みになってからは、単独で街の人の手伝いをしている。「お助け鈴ちゃん」と呼ばれる評判の存在。5年前から津軽に想いを寄せているが、最近彼の考えていることが分からず、思い悩むようになる。

藤島 津軽 (ふじしま つがる)

桐院鈴子の想い人の若い男性。東京都日本橋にある呉服屋「藤島屋」の支店の主人を務める。前髪を左寄りの位置で分け、黒髪全体を外にはねさせた髪型をしている。風変わりでマイペースな性格の、道楽者として知られている。実際は、知的で洞察力に優れる策士。以前は呉服屋として働く傍ら、鈴子と共に別宅で便利屋のような「さがしもの屋」を営んでいた。 現在は休止状態にある。鈴子とは、お互いを異性として意識しあう仲になっていた。ところが、露西亜の密偵をしているという疑いをかけられ、突如姿を消してしまう。

河内 慎一郎 (かわち しんいちろう)

華族の子爵である若い男性。藤島津軽の友人。前髪を目の上で切った、癖のある茶髪をしている。おっとりとした明るく社交的な性格。非常に顔が広く、あらゆるところにコネクションを持つ。時間に余裕もあり、子爵となってからも、桐院鈴子と津軽のもとによく顔を出している。女性が大好きだが、すでに3回の離婚経験があり、現在は独身。 妹の河内手瑠璃子、河内手茉莉子に、いつも振り回されている。その育ちの良さと穏やかな人柄から、気難しい桐院春時からも、密かに好感を持たれている。

桐院 春時 (とういん はるとき)

桐院鈴子の義理の兄。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、黒髪ストレートヘアをしている。桐院家が没落したため、鈴子とは離れて暮らし、再会後も兵役のため、また3年ほど別々に過ごしていた。兵役を終えて「藤島屋」を訪れて再会。藤島津軽が姿を消したことを知り、鈴子と河内慎一郎と共に、津軽を探す旅に出ることになる。 クールな雰囲気で、やや近寄りがたい人物だが、根は誠実で心配性。鈴子とは血が繋がっていないため、以前から鈴子を異性として想っていた。しかし、鈴子が16歳になるまでは、兄として接することを心に決めている。人付き合いはあまり得意ではないが、育ちが良くおっとりした慎一郎には、好感を持っている。船には極端に弱く、すぐに船酔いしてしまう。

佐之次 (さのじ)

桐院春時の従者の若い男性。かつて桐院家で下男として働いていた。前髪を上げて額を全開にし、肩の下長さまで伸ばした髪を1つに結んでいる。6尺(182センチ)を優に超えるほどの長身。容姿にも優れ、心優しい性格。しかしやや気が弱く、自分に自信がない。かつては、遠峰宗顕に暴力を振るわれたり、他人の言いなりになる暮らしを送っていた。 桐院鈴子との再会がきっかけで、気持ちを強く持つようになった。春時と鈴子が再会し、遠峰宗継との間の問題が片付いて春時が兵役に行くまでは、鈴子と春時と3人で暮らしていた。そのため、2人とは血は繋がっていないが、家族同然の存在となっている。本名は「音羽六郎」。今は「佐之次」の名で親しまれている。

倉田 半司郎 (くらた はんじろう)

日本海軍で大尉を務める若い男性。桐院鈴子とは知人であり、藤島津軽と河内慎一郎の尋常小学校時代の同級生でもある。前髪を眉上で短く切った赤毛の刈り上げヘアをしている。左眉の上に特徴的な傷跡がある。やや意地悪だが、親分肌の面倒見の良い性格。津軽を探して旅をすることになった鈴子に、思わぬヒントを与えることになる。

平賀 馨 (ひらが かおる)

軍人の少年。倉田半司郎の部下。桐院鈴子が暴漢に襲われそうになった際、助けに入った。前髪を眉上で短く切った短髪ヘアに軍服を着ている。三白眼で、右口元にほくろがある。海軍兵学校を首席で卒業し、少尉官候補になるほどの優秀で真面目な人物。女性全般を見下したところがあり、鈴子とはたびたび衝突することになる。

愛染 ひな (あいぜん ひな)

藤島津軽と行動を共にする元外交官夫人。津軽のかつての想い人。華族のお嬢様で、河内慎一郎とは親戚筋に当たる。年齢は津軽と慎一郎よりも2歳年下。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをしている。学生時代に3年ほど津軽と交際していたが、結婚相手についていく形で海外留学することになり別れた。 その後、留学先で亡くなったとされていたが、実際は生きており、津軽を探して旅を続けていた桐院鈴子と出会う。一見親しみやすく、可愛らしい雰囲気だが、マイペースでつかみどころのない残忍な性格。周囲の人間を、故意に苦しめて楽しむようなところがある。公的には亡くなったことになっており、夫である愛染元次郎は「元夫」となっている。 しかし、現在も元次郎と組み、不審な動きをしている。そのため、名字のない「ひな」と名乗ることもある。

遠峰 宗継 (とおみね むねつぐ)

桐院鈴子の知人。かつて桐院春時を支援していた男性。前髪を右寄りの位置で斜めに分けて癖のある髪の毛を外にはねさせ、眼鏡をかけている。一見穏やかで親しみやすい雰囲気だが、実際は、他人の気持ちを理解できず、他人を弄んで楽しむ酷薄な性格。裏で行っていた数々の悪事を鈴子に暴かれ、家を売り払って離婚し、姿を消していた。 現在は渡航して投資事業を行っており、鈴子とは意外な場所で再会する。

愛染 元次郎 (あいぜん もとじろう)

元外交官で、現在は事業家として活動する男性。愛染ひなとは夫婦関係だが、公的にはひなは亡くなったことになっているため、ひなの「元夫」とされている。年齢は藤島津軽と河内慎一郎の3歳年上。前髪を真ん中で分けたやや癖のある髪の毛と、うつろな雰囲気の瞳が特徴。7~8年ほど前にひなと共に欧州に渡り、外交官として素晴らしい手腕を発揮した。 現在は退職し、事業家となっている。一見話し上手の好青年だが、実際は上昇志向が強く、目的のためには手段を選ばない性格。ひなと共に、国の密偵として暗躍している疑いがある。

秋山 篤治郎 (あきやま とくじろう)

桐院鈴子の祖父を名乗る老人。前髪を真ん中で分けて額を全開にした撫でつけ髪をしている。突如鈴子のもとに現れ、孫娘として引き取り、平賀馨あるいは愛染元次郎と結婚させようとしている。高圧的で強引な性格で、悪質な手段を用いる政商として知られ、周囲から非常に多くの恨みを買っている。当初は鈴子のこともまるで人間扱いせず、駒のように使おうとする。 しかし、鈴子の働きかけで、少しずつ態度を軟化させていく。

河内 手瑠璃子 (かわち てるりこ)

河内慎一郎の妹で、河内手茉莉子の双子の姉。年齢は14歳。前髪を左から右へ向かって斜めに短く切りそろえ、左サイドに一房だけ残して、胸のあたりまで伸ばした髪の毛を1本の三つ編みにしてまとめている。双子の姉妹である手茉莉子と、非常に容姿が似ているが、手瑠璃子は左サイドに前髪を垂らしているのが特徴。藤島津軽に会うため渡航した桐院鈴子たちを追って、仏蘭西の巴里で鈴子たちと再会する。 手茉莉子と比べると落ち着いた性格で、洞察力にも優れる。桐院春時が鈴子を想っていることに気づき、鈴子と春時が恋人同士になれるよう、春時にアドバイスする。平賀馨を気に入っている。

河内 手茉莉子 (かわち てまりこ)

河内慎一郎の妹で、河内手瑠璃子の双子の妹。年齢は14歳。前髪を右サイドに一房だけ残して上げて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばした髪の毛を1本の三つ編みにしてまとめている。双子の姉妹である手瑠璃子と非常に容姿が似ているが、手茉莉子は右サイドに前髪を垂らしているのが特徴。慎一郎からは「双子の手のかかる方」と評されており、元気でやや暴走しがちな性格。 藤島津軽に会うため渡航した桐院鈴子たちを追って、仏蘭西の巴里で鈴子たちと再会する。佐之次を気に入っている。

(かのえ)

曲馬団「三雲一座」に所属する少年。桐院鈴子の友人。前髪を眉上で短く切った赤毛の短髪ヘアに青い瞳という、日本人にしては珍しい容姿をしている。爽やかで正直な性格。叶が生き別れの父親を探していた際に鈴子と知り合い、それ以来親しくなった。曲馬団の一員として、長期にわたる異国巡業のため、鈴子とはしばらく離れて暮らしていたが、帰国した際に再会する。 将来は鈴子と結婚したいと考えており、積極的にアプローチする。そして、異国巡業中に手に入れたあるものを、鈴子に預かってほしいと依頼する。

藤島 近江 (ふじしま おうみ)

藤島津軽と藤島淡路の父親。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、額を全開にしたストレートヘアで、顎ひげを生やしている。厳格で生真面目な性格。5年前は、遊郭からやってきた桐院鈴子の存在を、なかなか許容できずにいた。しかし、現在では、鈴子をすっかり気に入っており、ぎこちないながらも鈴子を常に気にかけている。

藤島 百合子 (ふじしま ゆりこ)

藤島津軽と藤島淡路の母親。藤島近江の妻。前髪を上げて額を全開にし、後頭部でまとめてかんざしを挿した髪型という、既婚女性にしては珍しく若々しい雰囲気の髪型をしている。明るく賑やかで、精神的にタフな女性。桐院鈴子とは5年前から親しい。桐院春時が兵役で3年間家を離れている間に、鈴子を自宅で預かっていたほど仲が良い。 鈴子が津軽に想いを寄せていることも知っており、2人を暖かく見守っている。

一高の青年 (いちこうのせいねん)

一高に通う青年。学生帽を目深にかぶり、坊主頭をしている。ある日、写真入りの恋文を受け取るが、送り主と思われる写真の女性の正体がわからない。そこで、「お助け鈴ちゃん」として有名な桐院鈴子を見込んで、写真の女性を探すよう依頼してくる。素直で純朴な性格で、女性慣れしておらず照れ屋。

清子 (きよこ)

桐院鈴子の同級生の女子生徒。前髪を上げて額を全開にし、1つにまとめている。池田家の息子との結婚が決まっているが、英語教師のディクソンに、密かに想いを寄せている。ディクソンに想いを伝えるため、英語が得意な鈴子に、英文のラブレターの添削を依頼する。

九重 (ここのえ)

若い男性。藤島津軽と河内慎一郎の尋常小学校時代の同級生。前髪を右寄りの位置で斜めに分けて右に流し、口ひげを生やしている。嫌味で他人を見下したところがあり、津軽と慎一郎とはあまり親しくなかった。しかし、九重の妹である九重よりと慎一郎の縁談が出たため再会し、津軽にある指摘をする。

小夜 (さよ)

平賀馨のいとこにあたる若い女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアをハーフアップにしている。気が強く、曲がったことを嫌う正義感の強い性格。馨は桐院鈴子に、小夜の面影を感じている。

秋山 孝允 (あきやま たかよし)

秋山篤治郎の息子で故人。桐院鈴子の実の父親とされている。前髪を左寄りの位置で7対3に分け、肩につきそうなほど伸ばした髪を外にはねさせている。口のちょび髭が特徴。知的で心優しい人物で、気難しい篤治郎も自慢するほどの存在だった。しかし、馬車の事故で亡くなった。からくり箱を集めるのが好きで、箱の中に数々の大切なものを隠している。 死因は事故だと言われているが、実際は、篤治郎を恨む暴漢に襲われて亡くなったとも言われている。

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