甲子園の土

甲子園の土

野球漫画の金字塔『巨人の星』で知られる梶原一騎が同じく原作を手掛けた青春高校野球漫画。どん底の状況にいる沢村健治が高校球児の聖地である甲子園を目指す姿を描いているが、『巨人の星』のような現実離れした超人的な表現は抑えられている。「月刊少年画報」1968年1月号から1969年12月号まで連載されていた。

正式名称
甲子園の土
ふりがな
こうしえんのつち
原作者
梶原 一騎
作者
ジャンル
野球
関連商品
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概要・あらすじ

毎日喧嘩に明け暮れる不良少年の沢村健治は、このままでは自分が駄目になると知りながらも怠惰な日々を送っていた。そんな時に、甲子園球場で勝利を収めたばかりの強豪校、港学園高等学校の野球部と出会い、彼らが落としたボールを返球する。これを見た美鳩ユカは沢村の才能に目をつけ、野球をするように促すが、沢村は劣悪な環境で知られるもぐら横町の出身で、野球はおろか高校に進学することすら難しい状況にあった。

登場人物・キャラクター

沢村 健治 (さわむら けんじ)

もぐら横町に住む少年。大阪のアウトロー軍団である風天閣一家とやりあってもまったく退かない度胸の良さと、腕っぷしの強さを誇る。子供たちからは「もぐら横町の英雄」と呼ばれているが、もぐら横町に居たままでは自分が駄目になると思っている。野球の経験はないが、剛速球を投げるだけの抜群の身体能力の持ち主で負けん気も強い。

美鳩 ユカ (みはと ゆか)

沢村健治に声をかけた若い女性。沢村の素質を目の当たりにして、紅光一を甲子園で倒すために野球をするように誘った人物。沢村が学費を稼ぐためにアルバイトをしている時も手伝った。また、アルバイトの合間のピッチング練習に付き合ったり、その後の野球の試合にも応援に駆けつけたりと、沢村のやることを常に応援し協力を惜しまない。

美鳩 十兵衛 (みはと じゅうべえ)

甲子園のグラウンドキーパーを務める老人で美鳩ユカの祖父。息子の美鳩洋介が甲子園を目指しながらも志半ばで他界したこともあり、甲子園の土を自分の命のように大切にしている。甲子園への愛情は並々ならぬものがあり、雨の日にはグラウンドコンディションが悪くなるからと、自分の布団と畳を持ってきてマウンドに置くほど。

沢村健治のおじ (さわむらけんじのおじ)

もぐら横町に住む沢村健治の叔父で無職の大酒飲み。沢村健治のおばにも暴力を振るうなど駄目人間で、自分のことを「負け犬」と自嘲している。しかし、仔犬が大柄な犬のアラシ号に挑み続ける姿を見たことをきっかけに、自分も立ち直りたいと心を入れ替えた。

沢村健治のおば (さわむらけんじのおば)

もぐら横町に住む沢村健治の叔母。なんでも屋のような店を営んでおり、子供の世話から縫い物まで幅広く仕事を手がけている。気が強く、暴力を振るう沢村健治のおじに向かっていく気性の激しさを持つ。

紅 光一 (くれない こういち)

港学園高等学校の野球部員で超高校級のスラッガー。高校野球界が生んだ怪物で、不動大作にも弱点はないと言わしめるほどの完全無欠の打者。真っ向勝負してくる本格派ピッチャーには特に強い。母親が不治の病に侵されており、その母親に甲子園での優勝を見せるために野球に真剣に打ち込んでいる。

美鳩 洋介 (みはと ようすけ)

美鳩ユカの父親。かつては剛速球投手で甲子園への切符も掴んでいたが、戦争の影響で大会が中止になった過去を持つ。その後、甲子園への夢が断ち切れずに高校野球の監督になり甲子園を目指す。監督として甲子園出場を決めたが病気になり、志半ばで亡くなる。

不動 大作 (ふどう だいさく)

竜門高等学校野球部の主将。高校野球界でも評判のスラッガーで、打球を軽々とスタンドに運ぶパワーを誇る。当初は月謝を払わず入部してきた沢村健治に対して「タダ」と呼びしごいていたが、次第に沢村の良き理解者となっていく。実家は鉄工所を営んでおり、経営状態も良好らしくとても豪華な家に住んでいる。

今野 安彦 (いまの やすひこ)

竜門高等学校野球部の副主将でエースナンバーを背負う。PTA会長の息子で小杉仙吉にえこひいきされ、沢村健治の投球機会を無理矢理奪った。しかし、エースナンバーを背負うほどの実力はない。中学までは捕手をやっていた。

小杉 仙吉 (こすぎ せんきち)

元ノンプロでの野球経験がある男性で、途中から竜門高等学校野球部の指揮をとるために監督となった。しかし、過去に問題を起こしたせいでノンプロを追われている。今野安彦の父にも頭があがらず、実力で勝る沢村健治をエースにしないで今野安彦を登板させた。

アラシ号 (あらしごう)

沢村健治のおじが見かけた仔犬をいじめていた大柄の犬。それを見ていた沢村のおじに自分の負け犬根性を見直すきっかけを与えた。奮起した沢村のおじと戦ったが、背骨に怪我を負う。

サンダー三木 (さんだーみき)

東海地方の強豪校、石松商業高等学校に所属する黒人と混血の高校球児。金のために野球をしており、甲子園でスカウトの目にとまる活躍をして、契約金を釣り上げることを目論んでいる。非常に柔らかい身体の持ち主で、そのバットから繰り出される長打力は紅光一も目を見張るほど。

大道寺 (だいどうじ)

竜門高等学校野球部が地区大会の決勝で対戦した鉄甲学園高等学校のエースピッチャー。高校生とは思えない長身と気迫の持ち主で、七色の変化球を投げ分けることのできる大会屈指の好投手。変化球のキレと曲がりは見ている者に歓声をあげさせるほどの凄さ。

今野安彦の父 (いまのやすひこのちち)

今野安彦の父親で土木建設会社「今野組」の社長。竜門高等学校のPTA会長で、学校に多大な寄付金を援助しているため教師陣や監督は頭が上がらない。それをいいことに、安彦を無理矢理エースとして登板させたりと、野球部を私物化している。

海童 (かいどう)

甲子園大会に出場した北高等学校の主将。紅光一擁する港学園高等学校と一回戦で対戦するが、実力の差がありすぎて大差をつけられてしまう。それでも一人だけ諦めずに戦い、ガッツ溢れるプレイで観客を魅了した。足を負傷しながらも二盗、三盗と立て続けに盗塁を成功させるほど俊足。

ジェームス黒木 (じぇーむすくろき)

甲子園大会に出場した沢村健治の前に現れた、フリーのスカウトマン。球団に所属するスカウトではなく、自分の気に入った選手を球団に紹介する仲介業者のような仕事をしている。まだ2年生の沢村に対し、外国国籍を取らせてプロ入りさせようと画策する。

高田 (たかだ)

竜門高等学校の野球部員。沢村健治に次いで2番目に実力のあるピッチャーだが、精神的に弱い面があり試合ではあまりいい投球ができない。西城法彦との対戦では何発も場外ホームランを打たれたが、その年の甲子園では疲弊した沢村の代わりに投げ、失点はしたものの勝利に貢献した。

西城 法彦 (さいじょう のりひこ)

父親の仕事の都合で日本にやってきて、竜門高等学校に転校してきた青年。アメリカで長らく生活していたため、本場アメリカ仕込みの野球センスを持ち、特にそのバッティングは技術、パワー共に優れている。しかし、性格に難があり自分が一番ではないと気が済まないため、沢村健治をスターの座から引きずり降ろそうとしている。

西城法彦の妹 (さいじょうのりひこのいもうと)

西城法彦の妹。兄と共に来日し、甲子園で竜門高等学校を優勝に導くと言った兄を応援している。西城から沢村健治のことを悪く聞いていたこともあり、当初は沢村に対しては冷たい態度をとっていたが、それが誤解だと判明すると協力的になった。

朝井 (あさい)

竜門高等学校の野球部員。主将であった不動大作が卒業後、多数決で沢村健治との接戦の末、主将を引き継いだ。以後は部員をうまくまとめたり、自らのプレーでチームを引っ張るなど、他の部員にとって見本となる良い主将となった。

大城 (おおしろ)

選抜高校野球大会における竜門高等学校の2回戦の相手で、鹿児島代表である桜島商業高校のエースピッチャー。1回戦では21奪三振を奪ったという剛腕で、その剛速球は超高校級どころかプロでも一流レベル。その速球の威力から、「ウルトラ剛速球」と称されている。

小室 (こむろ)

竜門高等学校の野球部員。甲子園出場後に加入した小柄な少年で、沢村健治の後輩にあたる。補欠の部員だが、沢村の球をヒットにできたらなんでも言うことを聞くというルールのバッティング練習では、部員で唯一ヒットを放つなど、潜在能力は計り知れない。その時のお願いは阪神タイガースの田淵のサインを貰うこと。

坂口 万吉 (さかぐち まんきち)

強打と名高い豊太閣学園高等学校の主将で四番打者。地区予選では既に5ホーマーを打っている強打者で、プロレスラーのような体格をしている。練習では沢村健治ですら持ったら倒れてしまうほどの重いバットを使っており、それを軽々振りぬくパワーを持つ。

大滝 典一 (おおたき のりいち)

北海道代表の美幌高等学校のエース。身長2メートル、ロシア人の母親と日本人の父親の間に生まれた混血児。幼少期はその外見からいじめを受けており、父親もロシア人を妻にしたという理由で町の人たちから迫害を受けていた。そのため、デッドボールを与えると動揺して崩れてしまうという欠点がある。

集団・組織

竜門高等学校 (りゅうもんこうとうがっこう)

沢村健治が入学した高校。素質のある者なら、野球部に入ることで月謝なしで通学できる制度があり、沢村はそれを利用して入学した。ただし、野球部の評価はそれほど高くなく、強打者の不動大作がいるものの、地区大会を勝ち抜くまでの実力はないとされている。

港学園高等学校 (みなとがくえんこうとうがっこう)

天才スラッガーの紅光一を擁する、港町神戸の小高い丘の上にある学校。投手陣が弱く、紅が好守において要のワンマンチーム。校舎はとても立派で、校門前には大きな噴水も設置されている。

北高等学校 (きたこうとうがっこう)

主将の海童が率いる北海道代表の学校。応援団も少なく試合展開も大差がついていたので活気がなかったが、最終回に海童が最後まであきらめないガッツ溢れるプレーを見せたことで、甲子園の観客も一体となって北高等学校を後押しした。

西城高等学校 (さいじょうこうとうがっこう)

竜門高等学校が甲子園大会の1回戦で戦った相手。キレのいいカーブを投げる好投手の滝と、相撲部の主将と野球部を掛け持ちしているパワーヒッターの鬼頭を中心としたバランスの取れたチーム。

石松商業高等学校 (いしまつしょうぎょうこうとうがっこう)

サンダー三木を中心とした東海地方の強豪校。三木の指導のもと、日々の練習は選手の自主性に任せられている。また、他校に対して妨害活動をするなど、勝つためには手段を選ばない。

風天閣一家 (ふうてんかくいっか)

大阪を拠点に活動しているアウトロー集団。もぐら横町に乗り込んで、沢村健治と喧嘩をした。全員武器を所持しており、チェーンやナイフを持って沢村に向かっていったが全員すぐにのされてしまった。

場所

もぐら横町 (もぐらよこちょう)

沢村健治が生活している町。低所得者が集まっており、すべての家がボロボロで治安も良くない。また、そのような劣悪な環境の土地柄のため周りの住人からの信用もなく、住所がもぐら横町というだけで軽蔑されてしまう。

大急デパート (だいきゅうでぱーと)

沢村健治が学費を稼ぐためにアルバイトの面接に行ったデパート。本来なら、もぐら横町の人間は相手にもされないが、竜門高等学校に入学して野球をしていたことで信用され、雇ってくれた。

クレジット

原作

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