恨まれ屋

恨まれ屋

人からの恨みを肩代わりする「恨まれ屋」稼業の活躍を描いた人間ドラマ。「恨み」の裏側にあるさまざまな物語が展開する。「ヤングキング」2012年5号から2014年20号にかけて掲載された作品。監修は玄秀盛。

正式名称
恨まれ屋
ふりがな
うらまれや
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

桐谷純は三流大学を卒業後、製麺会社「真心製麺株式会社」でクレーム処理業務に就いていたが、自分を愚弄した上司の垣内を殴ったことでクビになってしまう。そこへ現れた宇郷聡明に「T.I.Eサービス」、別名「恨まれ屋」という稼業にスカウトされる。とりあえず様子を見ようと体験入社した純は、彼の教育係となった巳神のやり方に圧倒されつつも、次第に恨まれ屋の仕事にやりがいを見出していく。

そして1つ1つの案件に真摯に対応し、自分なりの「恨まれ屋」としての道を模索していくのだった。

登場人物・キャラクター

桐谷 純 (きりや じゅん)

「T.I.Eサービス」という「恨まれ屋」稼業に就いた20代の青年。三流大学卒業後、製麺会社「真心製麺株式会社」でクレーム対応の業務に就いていたが解雇され、その後スカウトされて「T.I.Eサービス」に入社。不器用だが、誠心誠意仕事に取り組む真面目で優しい性格。「恨まれ屋」としての仕事をこなしていくうちに、「恨まれても、どん底にいる人間に光を与えたい」という考えを持つようになる。

宇郷 聡明 (うごう そうめい)

「T.I.Eサービス」の社長を務める中年男性。「恨まれ屋」の信念として、暴力に屈しないことを掲げている。数々の逸話を残した伝説の極道と呼ばれており、「修羅の宇郷」という異名を持つ。幅広い人脈を持ち、時にはヤクザさえ怯えさせる謎の人物だが、根底には恨みを抱え込んでしまう人間の心情を理解する優しさがある。そのため、人を惹きつけてやまない。

巳神 (みかみ)

「T.I.Eサービス」の社員である青年。桐谷純の教育係であり、ペアで行動することが多い。普段はキャバ嬢と遊んでばかりのゆるい性格だが、相手の心理を読むことを得意としており、「恨まれ屋」稼業においては相当のやり手。たとえ自分が刺されようとも、依頼者を守る責任感がある。「恨むことを生きる力にしている人間もいる」という持論の持ち主。

本田 一生 (ほんだ いっせい)

「T.I.Eサービス」の男性社員。人の恨みを和らげる笑顔が武器の、細身の中年男性。「事故物件ロンダリング」のアルバイトをしている。レインと仲が良く、自分の好きなアイドルの声色で癒してもらっている。人を怒らせて暴力事件にし、告訴の材料にすることを得意としている。

レイン

「T.I.Eサービス」の若い女性社員で、七色の声色を持つことから「レインボイス」の異名を持つ。一度でも聞けば、再現できない声はない。母子家庭で、母親が借金した消費者金融からの取り立てに対応するうちに、この特技を身につけたという悲しい過去がある。

コンダ

「T.I.Eサービス」の女性社員。ハニートラップ専門で、色仕掛けでターゲットを操り、どんな会社でも崩壊に導く通称「壊し屋」。亀山の黒田に対する恨みを逸らすため、亀山の会社に事務員として送り込まれた。その噂から桐谷純に興味を抱かれているが、まともに対面したことはない。

鮫津 豊 (さめづ ゆたか)

「T.I.Eサービス」に押しかけで入社希望してきた20代の男性。恨みを消すには力でねじ伏せるしかないという考えの持ち主だったが、恨む側に堕ちた人間を理解し尊ぶ精神が欠けていると宇郷聡明に諭され、それからは宇郷を崇拝するようになる。進路について揉めてから親のことを恨んでおり、未だ和解には至っていない。

優子 (ゆうこ)

「T.I.Eサービス」の女性社員で受付及び秘書業務担当の若い女性。クライアントの過去の犯罪歴などを担当者に説明する役割を担う。可愛くグラマーで人当たりも柔かい、社内のマドンナ的存在。巳神が悪ふざけした際にはビンタで応じるなど、気の強い一面もある。

毒島 (ぶすじま)

「T.I.Eサービス」の諜報員。脅威の情報収集能力を持つ。ニット帽をかぶりひげを生やした寡黙な中年男性。巳神が何故恨みを抱えながら生きているのかということや、巳神と宇郷聡明との出会いを知るキーパーソンでもある。

神谷 修 (かみや しゅう)

「T.I.Eサービス」の男性社員で、「直し屋」と呼ばれる青年。リフォーム会社を名乗って爽やかな容姿を武器にターゲットに取り入り、言葉巧みに半ば強引にリフォームをさせてしまう。大工としての腕は超一流で、リフォームした場所は完璧な仕上がり。

垣内 (かきうち)

製麺会社「真心製麺株式会社」の企画営業部の部長で、桐谷純の元上司の中年男性。「真心製麺株式会社」と有名店のコラボ商品を企画するため、クレーム対応の部署からの脱出をエサに、純を頑固な店長のいるラーメン店「壱角屋」へ商談に行かせるよう仕向ける。部下の手柄は横取りし、ピンチになると部下を矢面に立たせる器の小さい人物。

白木 (しろき)

総合商社「ゼウス物産」の営業課に所属する若い女性。西条の直属の部下で次期課長候補。西条を慕っていたものの、上司である西条を確実にリストラに追い込むため、「T.I.Eサービス」からの提案で「パワーハラスメント及びセクシャルハラスメントで西条を訴える準備をしている」という設定を受け入れる。

西条 (さいじょう)

総合商社「ゼウス物産」の営業課の課長。パワフルな行動力で営業成績は常にトップの中年男性。スパルタ式に部下を叱咤するやり方が上層部の反感を買ってリストラ第一候補に上がり、「T.I.Eサービス」の桐谷純と巳神からリストラ宣告を受ける。純と「壱角屋」のラーメンを食べに行ったことがきっかけとなり、新たな生きがいを見出す。

汐入 (しおいり)

製麺会社「真心製麺株式会社」の企画営業部に所属する新人の若い女性。「真心製麺株式会社」の手違いですべてのカップ麺に1万円がもらえる当たり蓋をつけて販売してしまった件へのクレーム処理を、垣内になすりつけられる。自分を助けようとしてくれた桐谷純に想いを寄せている。

黒田 (くろだ)

株式会社「三和生命」の営業職に就く青年。学生時代に、今はIT企業の社長となった亀山をいじめていた。営業成績が悪いため保険契約を結んだ亀山のいじめの報復に逆らえず、追い詰められて「亀山と大人として新たな関係を築きたい」と「T.I.Eサービス」に駆け込む。

亀山 (かめやま)

少数精鋭のIT企業「フェイスドア」の社長をしている青年。学生時代、黒田にいじめられていた過去があり、黒田と再会し保険契約を結んだことから、過去のいじめの復讐を開始する。「恨み」に取り憑かれているが、コンダが事務員として入社したことから、黒田への「恨み」を忘れていく。

住山 正二 (すみやま しょうじ)

「寺塚建設」の資料管理室の室長で52歳の男性。創業時は社長とともに社の基盤を作った人物だが、ある時期を境に遅刻や早退を繰り返すようになってしまった。寺塚社長から依頼を受けた「T.I.Eサービス」から解雇を突きつけられるが、桐谷純のフォローにより気持ちを入れ替える。

八木沢 (やぎさわ)

レストランチェーン「洋食屋ヨシクラ」の本店で店長を務める中年男性。3年前に「洋食屋ヨシクラ」の社長である逢沢圭一郎に親切にしたことから、無職の自分を拾ってもらい恩義を感じている。逢沢が暴力団のフロント企業と取引をしている事実を知り、「T.I.Eサービス」に相談する。

逢沢 圭一郎 (あいざわ けいいちろう)

レストランチェーン「洋食屋ヨシクラ」の社長を務める男性。チンピラのような生活をしていた自分を拾ってくれた前社長の吉倉を恩人と慕い、暴力団のフロント企業である「KY商事」との関係はどんなことがあっても続けてくれ、との遺言を守り続けている。可愛がっていた八木沢が裏で「KY商事」と手を切るよう動いていたことを知り、失望する。

冴島 (さえじま)

暴力団「竜田組」の次期組長と噂される男性。レストランチェーン「洋食屋ヨシクラ」が取引している「KY商事」を取り仕切っている。拉致した桐谷純を取り返しに来た宇郷聡明を見て、かつて自分が極道として憧れていた「修羅の宇郷」であることに気付く。

水原 愛美 (みずはら あいみ)

グラビアアイドルの若い女性。仕事がないストレスからドカ食いし、肥満体型になってしまった。感情の起伏が激しいヒステリックな性格のため、「痩せろ」と告げる恨まれ役の引き受け手がなく、マネージャーに「T.I.Eサービス」へ依頼を持ち込まれる。

名高 淳二 (なだか じゅんじ)

2週間前に記憶喪失になった男性。誰かに恨まれているような悪夢を頻繁に見るので、記憶をなくす前の自分を知りたいと「T.I.Eサービス」に相談に訪れる。会社員の「丸尾淳二」と名乗っているが、本名は「名高淳二」で「名高不動産」という会社の社長。

丸尾 さとみ (まるお さとみ)

名高淳二を愛人として支え続けた女性。婿養子に入り「名高不動産」の社長になった名高から酷いDVを受けていたが、心の底では名高を愛している。そのため記憶をなくした名高に自分が妻だと言い聞かせ、幸せな時間を過ごしていた。名高が「T.I.Eサービス」に相談した後に自らも「T.I.Eサービス」を訪れ、自分と名高の事情を打ち明ける。

平井 奈々 (ひらい なな)

「株式会社ヘイトンホテル」の企画営業部に所属する若い女性。上司の重田信子と何かにつけ衝突し、企画をすべて却下されている。ライバルホテルが自分の企画と同じものを実行したことから、重田に追及され社内で孤立してしまい、「T.I.Eサービス」に犯人捜しを依頼する。

重田 信子 (しげた のぶこ)

「株式会社ヘイトンホテル」の企画営業部の新部長。男っ気のないオールドミスと社内で揶揄されている。平井奈々とは犬猿の仲で、私が気に入らないのなら転職すればいい、と公言している。自分が却下した平井の企画をライバルホテルが打ち出したことについて、平井を攻め立てる。

太田 加奈子 (おおた かなこ)

専業主婦の中年女性。住んでいる中古住宅をリフォームすることを夢見て節約していたところ、夫がキャバ嬢と浮気していたことを知って激怒し、小遣いを1日300円にしてしまう。夫から「T.I.Eサービス」への依頼があり、宇郷聡明は「直し屋」の神谷修を送り込む。

梅宮 秀樹 (うめみや ひでき)

職場での人間関係に疲れ切って10年勤めた会社を辞め、引きこもりとなった31歳の男性。体重が急激に増えたことを心配した母親が「T.I.Eサービス」に相談しに来た。コンダが投入されるが彼女の魅力が通じず、代わって桐谷純が梅宮と一緒に食べ続ける作戦を決行する。

集団・組織

T.I.Eサービス (てぃーあいいーさーびす)

人からの恨みを肩代わりする「恨まれ屋」を仕事とする会社。T.I.Eとは「to incur emity」の略で「恨みを買う」という意味。企業からはリストラ宣告や悪質なクレーム処理などを請け負うが、個人からは相談内容に応じ、臨機応変な対応を行う。仕事をきっちりとこなしていれば、何をやっても「自由」な社風。桐谷純は基本給20万円+歩合制という条件で入社した。 宇郷聡明が社長を務めている。

真心製麺株式会社 (まごころせいめんかぶしきがいしゃ)

大手の製麺会社。桐谷純はお客様相談室という部署で、クレームの対応の業務に就いていた。純が辞めた後は、後任として汐入がクレーム対応を行っていた。「T.I.Eサービス」とは、自社で手に負えないクレーム処理を任せる契約をしている。ちなみにお客様相談室は、三流大学出身のダメ社員が集められた巣窟と言われている。

壱角屋 (いっかくや)

有名なラーメン屋。製麺会社「真心製麺株式会社」の垣内が、自社とのコラボ商品を持ちかけようと桐谷純を商談説得に通わせた。店主は2週間以上通った純を認めて商談を受諾するも、垣内の意向で商談自体がなかったこととなった。また、純が傷心の西条をこの店に連れてきたことから、西条のその後の人生に大きな影響を与えることとなった。

その他キーワード

事故物件ロンダリング (じこぶっけんろんだりんぐ)

事故物件とは自殺や殺人事件があった不動産で、貸す時の告知義務が宅建業法で定められており、常に借り手が付きにくい問題物件。だが、一度誰かを入居させてしまえば、次の借り手に説明義務が生じなくなるため、ロンダリング(洗浄)係として日当がもらえるアルバイトのことを「T.I.Eサービス」では事故物件ロンダリングと呼んでいる。 入居していた人間に対して恨みを持つ者が訪問してくることが多いため、「恨まれ屋」稼業の仕事の一環として「T.I.Eサービス」では事故物件ロンダリングのアルバイトが認められている。

クレジット

監修

玄秀盛

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