手天童子

手天童子

鬼によってこの世界の夫婦に預けられた主人公・手天童子郎が、鬼に関わる数々の敵と戦いながら、己の出生の謎を追っていく物語。序盤から中盤は、現代日本を舞台に伝奇的なストーリーが展開するが、中盤以降には、未来世界、平安時代、精神世界などが舞台となり、SF的要素が強まっていく。数多くの謎と伏線が全編にちりばめられ、それら全てが最後に見事な決着を見せるという完成度の高い作品となっている。なお、本作にはプロトタイプとも言える同タイトルの短編が存在する(後に『邪神戦記』と改題)。また、派生作品として夏元雅人による本作のリメイク 『降魔伝 手天童子』がある。

正式名称
手天童子
ふりがな
しゅてんどうじ
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
怪談・伝奇
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概要・あらすじ

巨大なによってこの世界の夫婦に預けられた赤子手天童子郎。少年へと成長した彼は、に関わる奇怪な敵たちに襲われる。子郎を護る2体の鬼・戦鬼護鬼の力を借りて、敵を退ける子郎。だが、戦いが終わると同時に戦鬼護鬼によって、異世界へと導かれていく。それは子郎の出生と、の謎を解き明かす、長く数奇な旅の始まりであった。

登場人物・キャラクター

手天童 子郎 (しゅてんどう じろう)

物語冒頭、巨大な鬼・戦鬼と共に、赤子の姿でこの世界に出現、芝竜一郎・芝京子夫妻の養子となり、手天童子郎と名付けられる。成長した子郎は、文武に優れ眉目秀麗な少年となるが、その額には2本の角が生え、超人的な能力を発揮し始め、自分が人間ではないことに思い悩む。真面目で、養父母に対する愛情も強いが、障害に対しては断固として立ち向かう強さを併せ持つ。 22世紀に辿り付いた際に、その体が光のエネルギーの集合体であることが判明する。暗黒邪神教らの敵からは、常に手天童子と呼ばれていた。

柴 竜一郎

手天童子郎の養父。戦鬼から赤子を預けられた際に居合わせた僧侶からの助言を受け、養子となった赤子に自分たちと異なる「手天童」の姓を与え、手天童子郎と名付ける。妻の京子と共に子郎を我が子として深い愛情を持って育てていた。常識を弁えた大人ではあるが、子郎と暗黒邪神教との戦いの際には、ライフル銃を武器に敵の矢面に立つなど、果断な面も見せた。

柴 京子 (しば きょうこ)

手天童子郎の養母。夫の竜一郎と共に手天童子郎を我が子として愛する。その母性はあまりにも強く、15年後に再び現れた戦鬼によって、子郎が別の世界へと連れ去られたことで、精神の均衡を失ってしまう。

戦鬼 (せんき)

頭部と胸部に2つの顔を持つ巨大な鬼。新婚間もない芝竜一郎と芝京子の前に現れ、赤子であった手天童子郎を託す。その際に、「キョウヨリ15年カゾエタ日…ムカエニクル…」という言葉を残して姿を消す。15年後にその言葉通り再び出現し、少年となった子郎を異世界へと連れ去る。他の鬼を圧倒する絶大な戦闘力を持ち、胸部の口からは電撃のようなエネルギーを放つなどの超能力を操る。

護鬼 (ごき)

戦鬼と同じく手天童子郎の護り手を務める鬼。怪物然とした戦鬼とは異なり、ほぼ人間サイズ(それでも2mを超える巨体だが)で、容貌も人間に近い。また、そのメンタリティも人間に近く、子郎以外の人間とも、言語による会話が可能である。通常は腰に下げた剣を武器として戦うが、身体を粒子化するという特殊な能力を持ち、その力で子郎を護っていた。

白鳥 美雪 (しらとり みゆき)

手天童子郎を慕う美少女。子郎が通う高校北陵学園の同級生だったが、鬼を巡る子郎の戦いに巻き込まれ、異世界へと旅立つ。超常的な能力を一切持たない普通の人間だが、子郎も彼女のことを大事に思っており、子郎の従者である護鬼も進んで彼女を護ろうとしていた。

白鳥 勇輔 (しらとり ゆうすけ)

大学に通う白鳥美雪の兄。手天童子郎を慕う妹への心配から、子郎に近づき、子郎が鬼であることを知らされる。さらに、子郎が危険な敵に狙われていることを告げられ、共に戦うことを決意、大山直次郎、無双力、梶工作、小谷椰子夫の4人を子郎に引き合わせる。暗黒邪神教との戦いの中、巨岩に押し潰されて死亡する。

大山 直次郎

白鳥勇輔の友人として、手天童子郎の仲間に加わった男性。関東一円をしきる侠客一家の跡取りで、柔道三段の頑健な肉体と抜群の勝負度胸を持って活躍するが、鬼谷が呼び出した魔動鬼に食われ死亡する。実は鬼の子孫であり、その家には「手天童子を護って死ぬことが務めである」と、代々伝えられていた。 なお、キャラクターデザインは、永井豪作の『あばしり一家』に登場する悪馬尻直次郎のものが流用されている。

無双 力 (むそう りき)

白鳥勇輔の友人として、手天童子郎の仲間に加わった女性。元女子プロレスラー。高い筋力と運動神経を持っていたが、魔邪利妖念が操る鉄塊の打撃を受けて死亡する。大江直次郎とは従兄弟同士であり、やはり先祖代々「手天童子を護ること」が使命とされていた。なお、キャラクターデザインは、永井豪、石川賢作の『心霊探偵オカルト団』等に登場するリッキーのものが流用されている。

無双 ユウ (むそう ゆう)

無双力の妹。姉と同じく鬼の子孫であり、頭部には小さな角がある。まだ幼いため、手天童子郎の仲間にはならず、戦いにも参加しなかったが、無双力の死後、芝竜一郎に引き取られる。無双家に代々伝わる古文書には、先祖である鬼の絵姿が描かれており、その顔は、若い頃の芝竜一郎に非常に似ていた。

小谷 椰子夫 (こや やしお)

白鳥勇輔の友人として、手天童子郎の仲間に加わった男性。大学相撲部のキャプテンを務める怪力の持ち主で、指弾の使い手。精神的に鈍く、超能力による幻覚攻撃さえ受けつけないほどだったが、白鳥勇輔の死には動揺、その隙に暗黒邪神教教徒に喉を突かれ死亡する。やはり鬼の子孫であり、牙のように長い犬歯を持つ。 なお、キャラクターデザインは、永井豪作のギャグ短編『廃人20面チョ』等に登場するこややし少年のものが流用されている。

梶 工作 (かじ こうさく)

白鳥勇輔の友人として、手天童子郎の仲間に加わった男性。他の仲間とは異なり、小柄で理知的だが、やはり鬼の子孫であり、超能力をもって敵と戦う。暗黒邪神教教徒に首を貫かれて死亡する。

種村 (たねむら)

手天童子郎が通う高校北陵学園で、子郎のクラス担任を務める女性教師。暗黒の魔主に操られ、結命党のゴロツキたちによって斬殺されてしまう。

暗黒の魔主 (あんこくのましゅ)

不良集団結命党から盟主として崇められる鬼。白鳥美雪の姿に化け、手天童子郎が、追い求める手天童子であるかどうかを探っていた。異次元から呼び出した3匹の魔物と共に、子郎に戦いを挑む。なお、「暗黒の魔主」は、結命党がこの鬼を崇めて使う呼称であり、配下の魔物を呼び出す際には自身を「大宇宙の魔神」と名乗っている。

鬼谷 妖次郎 (きたに ようじろう)

手天童子郎が通う高校北陵学園で、生物教師を務める男性。一見すると普通の人間だが、口内には牙があり、その影は鬼のものである。その正体は暗黒邪神教魔導四天王のひとり鬼門天殺聖であり、自らが使役する鬼・魔動鬼と強大な念力を武器に教団の悲願である手天童子抹殺を謀る。

魔邪利 妖念 (まじゃり ようねん)

鬼を奉じ手天童子を滅ぼすことを教義とする邪教集団・暗黒邪神教の宗主。魔導四天王を従え、異世界から火竜を召還するほどの絶大な念動力を武器に手天童子郎の抹殺を目論む。力に目覚め始めた子郎と、戦鬼・護鬼の前に敗れ去るが、死に際に子郎の養母芝京子を手にかけようとする。

邪腕坊 苦海 (じゃわんぼう くかい)

暗黒邪神教教徒の中でも、その体に鬼の特徴を色濃く残す集団・争魔衆のリーダー的存在。その名の通り鬼の腕を持っており、恐るべき怪力を持つ。争魔衆を率いて手天童子郎たちと激突するが、子郎の降魔の利剣により、両断される。

大暗黒死夜邪来 (だいあんこくしやじゃらい)

『手天童子』に登場する鬼たちの神。暗黒邪神教の本尊であると同時に、実在する鬼の世界である鬼獄界の支配者として君臨する魔神である。胸部や頭部に複数の鬼の顔を持つが、なぜか頭頂部にのみ鬼ではない女性の顔があり、その容姿は手天童子郎の養母芝京子のものに酷似している。

小隅 黎次郎 (こすみ れいじろう)

22世紀の宇宙船アルファードの総司令官。太陽系外宇宙調査の長期航海中に、手天童子郎と名乗る巨人と出会い、アルファードの客として受け入れる。

女 蛮子 (すけ ばんじ)

長期宇宙航海における心理テストの研究対象として宇宙船アルファードに乗りこんでいる少年のひとり。アルファードに迎え入れられた手天童子郎と仲良くなる。アルファードが地球へ帰還した直後、子郎を狙ったアイアンカイザーの攻撃に巻き込まれて死亡する。なお、キャラクターデザインは永井豪によるギャグ漫画『おいら女蛮』の主人公・女蛮子のものが流用されている。

ローラ・クリステル (ろーらくりすてる)

宇宙船アルファードに乗り組む児童心理学者の女性。女蛮子たちの教師も兼任している。日本の歴史にも詳しく、手天童子郎との鬼を巡る会話の中で、大江山の酒呑童子伝説こそが、子郎を知る者が発した過去からの信号ではないかと推察する。

全身を機械化し、数々の超兵器を装備した22世紀の戦士。21世紀に起こった異星からの侵略戦争で地球を救った英雄であり、個人が持ち得る範囲を逸脱した強力な武装が許可されている。その正体は、手天童子郎に殺さ... 関連ページ:アイアンカイザー

源 頼光 (みなもと の よりみつ)

平安時代中期の武将で、酒呑童子や土蜘蛛退治の伝説で知られる。22世紀から平安時代にタイムトラベルした手天童子郎と出会い、坂田金時の名を与えて酒呑童子討伐の一員に加える。実在の人物、源頼光がモデル。

(おに)

『手天童子』に登場する謎の生物。その姿は、日本に伝わる伝説の鬼そのもので、頭部に角があり、強靭な肉体を持つ。その性質は、凶暴かつ残忍。戦鬼や護鬼などの例外を除けば、会話等を可能とする知性があるにも関わらず、戦い、奪い、血にまみれるためだけに存在するような呪われた生物である。

集団・組織

結命党 (けつめいとう)

『手天童子』に登場する不良たちの徒党。北陵学園の旧校舎を根城とした20名程度の集団で、集団レイプなどを繰り返していた。実は全員が暗黒の魔主と呼ばれる鬼の支配下にあり、恐れによるものか洗脳によるものか、殺人にすら忌避感を持たなくなっている。

暗黒邪神教 (あんこくじゃしんきょう)

『手天童子』に登場する宗教団体。全国に数万の信者を持ち、邪鬼の像を鬼仏として奉る集団である。その本尊は、全宇宙を暗黒世界に導くとされる大暗黒死夜邪来。教団に伝わる鬼獄曼荼羅に描かれた唯一の光である手天童子を倒すことを数千年来の悲願としている。一般の信者とは別に、鬼の肉体を持つ集団争魔衆と鬼の超能力を持つ集団幻魔衆が存在し、宗主・魔邪利妖念と幹部である魔導四天王らが、これを従えている。

場所

鬼の星 (おにのほし)

『手天童子』に登場する地球型の惑星。頭部に角を持つヒューマノイド(=鬼)によって、独自の文明が築き上げられていたが、鬼たちの文明を邪悪なものとみなした別の異星人によって滅亡させられている。謎の宇宙船から得られた情報によってその位置をつかんだアルファードによって発見され、手天童子郎もこの星の調査に参加する。 そこで子郎が見たものは、異形の都市の廃墟と、鬼の星を滅ぼした異星人のメッセージ、そして大暗黒死夜邪来の像であった。

鬼獄界 (おんごくかい)

『手天童子』に登場する異世界。部分的に破壊された箱のような形を形をしており、その内側に鬼たちが棲む世界が広がっている。ここでは、何も無いはずの空間から次々に鬼が生まれ、互いの肉を喰らうために殺し合っている。また、鬼獄界自体が成長しており、鬼が棲む内側の世界も徐々に広がっている。

その他キーワード

アルファード

『手天童子』に登場する宇宙船。西暦2100年、太陽系外宇宙調査のために地球から旅立った全長500mの宇宙船。大推力プラズマ核融合エンジンにより初期加速を行い、イオンロケットエンジンによって恒常加速力を得る。研究者等を含む100名の乗員を司令官小隅黎次郎がまとめている。出発から約2年後、謎の宇宙船に遭遇し、危機に陥ったところを突然現れた巨人手天童子郎に救われる。 人間サイズに縮小した子郎を受け入れ、外宇宙調査を続行、謎の宇宙船の母星である鬼の星を発見した後、無事地球への帰還を果たす。

降魔の利剣 (こうまのりけん)

『手天童子』に登場する武器。その力に目覚めかけた手天童子郎の手に、忽然と出現した光り輝く剣。実は、光のエネルギーの集合体である子郎の体の一部であり、その意思に応じて自在に刀身を伸ばすことができる。

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