F—エフ—

F—エフ—

F1レーサーを目指す天才ドライバー赤木軍馬と、政界に出て理想の国の実現を夢見るその父、巨大企業の創業者赤木総一郎の対立と生き様を描く。序盤は軍馬がレーサーとして勝ち上がってゆく姿を中心としているが、戦後の焼け跡から日本の復興とともに会社を成長させてきた父総一郎が、理想の日本をつくるため邁進する政治ドラマとしての展開も、物語が進むにつれて比重を増してゆく。野心的で命知らずであり、実は似た者同士である父と子が、時に交わり激しく対立しながら全力で生きてゆく姿を描ききった、大河人間ドラマである。全話のタイトルが「F」を頭文字とした言葉から取られている。

正式名称
F—エフ—
ふりがな
えふ
作者
ジャンル
カーレース・ラリー
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概要・あらすじ

群馬県に君臨する巨大企業赤木グループ。その創業者赤木総一郎の愛人の子として育った赤木軍馬は、自分を礼遇する父と決裂し、勘当されて家を出た。軍馬は親友の有能カーメカニック大石タモツと共に上京し、フォーミュラカーレースの世界に足を踏み入れる。最初はレースに関する知識も経験も全くない素人だった軍馬だが、天性の才能で荒々しく命知らずな走りを見せ、国内レースにその名を轟かせるようになる。

ライバルとの死別や愛した女性との離別など、様々な苦難が軍馬に訪れるが、苦しみながらもF1出場という野望を目指し、彼は己を信じて突き進んでゆく。

登場人物・キャラクター

赤木 軍馬 (あかぎ ぐんま)

目つきの鋭い、豪胆で男らしい性格の青年。人を引き付ける魅力にあふれているが、自分勝手で気分屋でもあるので、周囲とのトラブルも絶えない。スケベで女にすぐ手を出す。父は巨大企業赤木グループ会長の赤木総一郎だが、彼の愛人の息子として礼遇され続けてきたので、軍馬は父親のことを憎んでいる。 天才的な運転技術を持つ。父に勘当され赤木家を追われたことを契機に、F1レーサーを目標として、親友の有能カーメカニック大石タモツと共に上京した。カーレーシングに関してはまったくの素人だったが、持ち前の負けん気の強さで頭角を現わしてゆく。「何人(なんぴと)たりともオラの前は走らせねえ!」が口ぐせ。 2回目のレース参加でいきなり初優勝したが、その内容はゴールと同時にマシンは炎上大破し、本人も鎖骨骨折という凄まじいものだった。その後、何度も壮絶な体験と挫折を繰り返すが、その都度復活し、F1レーサーへの道を進み続ける。

赤木 総一郎 (あかぎ そういちろう)

群馬県の巨大企業赤木グループの会長。第二次世界大戦を生き延び、戦後の復興とともに会社を大きく成長させた、バイタリティあふれる人物。県議員から中央政界へ進もうとしている。自らの手でこの国を本当に良くしたいという強い使命を持つ。絶大な権力を手にしているが、目的のために無能な人間はためらわず切り捨てるため、敵も多い。 愛人との息子である軍馬の素行に手を焼き、赤木家にとって迷惑となる存在だと考え、彼を勘当した。

静江 (しずえ)

赤木軍馬の実の母親。赤木総一郎とは、戦後の東京の焼け跡で出会った。その時には身寄りのない少女だったが、17年後、大人の女となり、総一郎と再会した。正妻ではなく愛人となったが、二人の蜜月は続き、息子の軍馬が産まれた。しかし、総一郎に怨みを持ち暗躍する田川辰次郎に嘘を吹き込まれ、愛人の自分がそばにいては総一郎の足を引っ張ると思い、息子軍馬とともに総一郎の前から姿を消した。 軍馬が12歳の時に亡くなり、軍馬は赤木家へと引き取られた。

大石タモツ (おおいしたもつ)

赤木軍馬の親友。坊主刈りでずんぐりした体格で、素朴な田舎の青年に見えるが、天才的なカーメカニック技術を持つ。心配性で気が小さく、傍若無人な軍馬にいつも振り回される。しかし彼が運転の天才であることは認めている。軍馬がF1レーサーになるため上京したのを追って、自動車整備工場森岡モータースで働きながら、彼のメカニックとして力を尽くす。 野生のカンはあるがカーレースの知識と経験の無い軍馬をサポートし、女房役として支え続けている。

聖 一人 (ひじり かずと)

FJ1600Bクラスで2年連続年間チャンピオンとなった実力派ドライバー。医者の息子であるため、資金力が豊富。赤木軍馬にとって最初のライバル的存在。大石タモツのカーメカニック技術に注目し、彼を自分の専属にしようと、女を使っての色仕掛けなど様々な方法で誘惑する。不治の病に冒されており、上級のF3レースにシーズン途中で鞍替えするなど、残り少ない命をレースに注ぎ込んだ。 そしてF3レースの決勝戦において、軍馬と壮絶な争いを繰り広げ、レーサーとして限界を超えた姿を見せつけ、絶命した。タモツに対しては「軍馬と共に世界へ行け」とのメッセージを遺した。

小森 純子 (こもり じゅんこ)

赤木軍馬と大石タモツが東京で暮らす下宿のおかみの姪っ子。恋人のレーサー佐伯龍二をレース中の事故で亡くしている。軍馬のことをナンパで最低な男だと思っているが、ドライバーとしての天才性は認めている。FJ1600Bクラスのレースに参加する素人同然だった軍馬を、森岡モータース社長らと共にクルーとして支えた。 レースに協力する中で次第に軍馬に惹かれてゆくが、それは亡き佐伯龍二の面影を彼に重ねているだけだとも感じている。

赤木 将馬 (あかぎ しょうま)

巨大企業赤木グループ会長赤木総一郎の長男。赤木家の後継者。アメリカ留学を終え、国政に打って出る父に代わって赤木グループ社長の座についた。父の愛人の息子である軍馬には昔から対抗心を燃やしつづけている。将来の道筋が決まっている自分と違い、軍馬は楽天的で圧倒的に自由に生きているからである。 使用人のユキに恋していたが、彼女が軍馬と肉体関係があると知り、軍馬への嫉妬と嫌悪をますます募らせた。勘当され実家を去った軍馬に取り残されたユキを歪んだ愛情で囲い、愛人とした。その後ユキを失い、親戚の田川辰次郎の差配で政略結婚した。そして知らず知らずのうちに、田川の企む総一郎失脚の陰謀へと巻き込まれてゆく。

赤木 雄馬 (あかぎ ゆうま)

巨大企業赤木グループ会長赤木総一郎の次男。メガネをかけ柔和な青年。心臓に持病を抱えている。赤木家の者からは厄介者扱いされている軍馬のことを「兄さん」と呼び、慕っている。病のせいで静養せざるを得ない自分と違い、全力でがむしゃらにレースに打ち込んでいる軍馬をうらやましく思っている。 軍馬が参戦する姿を観るため、マカオまで追いかけてきた。軍馬はマカオGPに参戦する直前に事故に遭い内臓破裂レベルの大怪我を負うが、気力を振り絞り、日本人として初の優勝をとげた。この雄姿を見た雄馬は、軍馬を超えるため、彼のライバルレーサー山口音也のスポンサーとなった。

ユキ

赤木家の使用人の女性。愛人の息子の赤木軍馬を好きになり、肉体関係となった。その事実が明るみに出て、軍馬が勘当されたことで、赤木家からは解雇された。しかし赤木家の長男将馬に熱烈に惚れられており、彼の愛人の座に収まった。そしてブティック経営を任されたことを幸いに、金を着服し、別れても未だに愛している軍馬への協力と、自分に固執する将馬への復讐のため、黒井レーシングチームへ資金を横流しし続けた。 しかしその背信が将馬にばれてしまい、軍馬に迷惑をかけぬよう、自ら命を絶った。

山口 音也 (やまぐち おとや)

山口県出身。F3レースでデビューから負け知らずだが、一家でチームを構成していて、寝たきりの祖母がいるので地元レースにしか出場しなかった。その祖母が死去したので中央レースへ進出してきた。F3で6連勝中の赤木軍馬に対してライバル心を剥き出しにしている。ビッグマウスで挑発的と、軍馬と似た面を持つ。 走り方は命知らずで過激な軍馬とは対照的に、着実で安全な入賞を狙う堅実派。

黒井 和夫 (くろい かずお)

黒井レーシングチームの代表。かつてはホンダF1のテストドライバーを務めていた伝説の人物。赤木軍馬をFJより上級のF3レースへ出してやると、己のチームに勧誘した。突然軍馬をスカウトしたのは、謎の女性からの資金援助があったからである。最初は厳しくとっつきにくい人物だったが、粗削りながらもバツグンの才能を誇る軍馬に次第に魅了され、彼を支え続けてゆくことになる。

武村 五郎 (たけむら ごろう)

黒井レーシングチーム所属のレーサー。F3レースに出場していたが伸び悩んでいた。新たにチームに加入した赤木軍馬の走りを目にして己の限界を悟り、レーサーは引退した。そしてフォーミュラレースの写真を撮るカメラマンに転身し、軍馬の雄姿を追い続けることにした。失踪した軍馬がイギリスで暮らしているのを偶然発見した。

原 久子 (はら ひさこ)

九州出身の日本人だが、ロンドン在住。ドヤ街に住み、場末のパブで歌いながら、メジャーデビューを夢見ているシンガーの卵。失踪した彼氏ジョージが戻ってくるのも待っている。ユキの自殺にショックを受け放浪の旅に出た赤木軍馬とロンドンで出会い、途方に暮れていた彼を助けた。その後、孤児のピーポーと共に疑似家族のように3人で生活し、レーサーを辞めようと考えていた軍馬が回復してゆくのを支えた。

グレッグ・オールマン

元F1レーサーのイギリス人中年男性。選手引退後はプロを多数輩出した一流レーシングスクールを経営している。観客として赤木軍馬の参戦したマカオGPを観ていた時に、軍馬の無謀で命知らずな走り方に嫌悪感を抱いていた。その後イギリスで軍馬と偶然再会した際に、今度こそ彼の危険な走り方を止めさせようとレース勝負を挑んだが、敗北した。 軍馬の持つ桁違いの才能を認め、彼をF3000のレーサー候補を探していたハンス・ハンセンに推薦した。

田川 辰次郎 (たがわ たつじろう)

赤木総一郎の正妻絹子と同じ家系。総一郎が子どものころからよく面倒を見てくれた叔父で、経営の才覚もある人物だったが、総一郎の腹心笠井に社長職を代わられ、赤木グループの中枢から追い出された。この仕打ちに怨みを抱き続け、20数年以上経った後に、復讐を開始する。総一郎の跡継ぎである将馬のもとへ政略結婚を仕掛けたり、愛人ユキの存在を調べ上げ恐喝したりと、手段を選ばず総一郎に牙を剥いた。 最終目的は、総一郎を失脚させ、赤木グループの中核である赤木商事本社を乗っ取ることである。

笠井 (かさい)

第二次世界大戦中に赤木総一郎と同じ隊に居て、その頃からの知り合い。戦後は東京で売春婦の元締めとして裏稼業に手を染め生きていた。復員した総一郎と闇市で再会し、一度は彼を殺そうとするが、屈服し、彼に忠誠を誓った。以後、戦後の復興と共に会社を成長させてきた総一郎のそばに仕え続け、傘下企業の社長の座にまで昇り詰めた。 総一郎に心酔しており、親類の田川辰次郎が陰謀を巡らせ総一郎を失脚させようと企んでいるのを知ると、様々な手を尽くして総一郎を守ろうとする。

豊田 有里 (とよた ゆり)

推理作家志望の女子大生。赤木総一郎の腹心笠井が暗殺されかけた事故現場に偶然遭遇した。そこで田川辰次郎が総一郎を恐喝していた重要証拠を手にしたことが原因で、田川の刺客に狙われることとなる。推理小説好きなため、赤木グループの権力を巡る陰謀に興味を持ち、素人探偵として自ら事件の渦中へと身を投じてゆく。

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