野望の王国

野望の王国

1977年から5年にわたり連載された、原作雁屋哲のバイオレンス・ピカレクスロマン作品。橘征五郎は野望に胸に秘めた悪であり、その悪がさらに強大な悪を討ち、支配を広げる様を描く。銃や刃物、爆弾などによる戦闘、拷問、性交シーンなどが続出する過激な内容を由起賢二が独特の画風で描写。特に征五郎や片岡仁が独白するシーンの異様な緊張感が評判を呼んだ。

正式名称
野望の王国
ふりがな
やぼうのおうこく
作画
原作
ジャンル
裏社会・アングラ
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概要・あらすじ

東大のアメフト部で活躍し、法学部では優秀な成績を収めた橘征五郎片岡仁。2人は暴力をもって日本を支配するという野望を抱いていた。広域暴力団の橘組組長だった征五郎の父の死をきっかけに、2人は行動を開始する。橘組を継いだ兄・征二郎、警察官僚・柿崎憲、政治家・浜岡達雄、宗教団体の教祖の息子・白川天星ら様々な人間を、敵として排し、味方に引き入れ、征五郎片岡は野望に向かって邁進していく。

登場人物・キャラクター

橘 征五郎 (たちばな せいごろう)

東京大学法学部の4年生にして、暴力団の橘組組長・橘征蔵と妾・芳子との間に生まれた五男。優秀な頭脳と東大アメフト部で鍛えた肉体を持つ俊才。暴力で世界を牛耳るという野望を抱き、父の死をきっかけに行動を始める。殺人も辞さぬ冷徹な策士だが、子供の頃に優しくしてくれた橘征二郎のことに関してのみ動揺をみせる。

片岡 仁 (かたおか じん)

橘征五郎とは志を同じくする盟友。疑獄事件に巻き込まれ獄死した父親を持つ経験から、暴力による日本征服を画策するようになった。知力、体力とも征五郎とほぼ互角、性格も冷徹な策士系。しかし征二郎の同腹の妹、橘文子に心惹かれていってしまう。

橘 征二郎 (たちばな せいじろう)

橘組組長・橘征蔵と妾・高子との間に生まれた次男で、征蔵の死後に橘組の組長に就任する。体力、胆力、知力すべてが優れた29歳の青年。組長就任後、様々な策で橘組を大きくしていく。家族や市民の前では温厚だが、敵に対しては残忍な行為も迷わず選択する。

赤寺 十郎 (あかでら じゅうろう)

橘征二郎の右腕的な存在の橘組幹部。見上げるような巨体を持ち、残忍にして狡猾。征二郎に絶対の忠誠を誓い、彼が逮捕された折には、工場爆破、競馬場の暴動、脱線事故などの大事件を同時発生させる川崎大騒乱作戦を敢行。混乱に乗じて警察署から救い出して見せた。六男四女の父親で、息子たちは父に劣らず凶悪な性格をしている。

柿崎 憲 (かきざき けん)

東大法学部を首席で卒業、警察庁に入った30歳のキャリア官僚。物語序盤は川崎中央警察署長として橘征五郎たちと組み、橘征二郎と対決。しかし征五郎に見限られ、犯罪者として追われる身に。その後、大神楽了造に拾われ、再び征二郎や征五郎に戦いを挑む。残忍なキャラが多い『野望の王国』の中でも、ひときわ残忍にして強健、復讐心も強い。

徳田 栄治 (とくだ えいじ)

橘征五郎に絶対の忠誠を誓い、暴力的工作を行う実行部隊の隊長。独自に徳田建設という建設会社を持ち、工作資金の提供も行っていた。父である徳田元一の死後、橘組に引き取られ征五郎と親交を深めた。回想シーン内では徳田徳一という名で呼ばれている。

疋矢 繁 (ひきや しげる)

関西の暴力団・疋矢組の組長、花岡組若衆頭、関西愛犬家協会の理事長などを務める40歳の男性。常にサングラスをかけ、洋酒を瓶ごとラッパ飲みする酒豪。大吉組へ援軍に出した50人が謀殺されたことから神奈川県に現れ、橘征五郎と出会う。その後、征五郎と片岡の野望に賛同、協力するようになる。

白川 天星 (しらかわ てんせい)

橘征五郎と片岡仁の後輩にあたる東京大学法学部の学生。清廉で整った風貌を持ち、新興宗教団体・救国教団の若神様として崇拝されている。自らの肉体、風貌に酔うナルシストでもある。征五郎たちの野望に共感し、信徒を貸し出す形で協力する。しかし、真の目的は征五郎たちを排除し、自分が暴力で日本を支配することにあった。

大神楽 了造 (おおかぐら りょうぞう)

片眼鏡を付け、葉巻をくわえた紋付き袴姿の82歳の好々爺。元民自党の大物政治家で、政界を退いた後も大きな影響力を持つ。中盤に橘征五郎の敵として現れた小田や立馬国造も、大神楽了造の息がかかった手下に過ぎなかった。後に柿崎憲の後ろ盾となる。

小田 (おだ)

右翼の大物として裏社会に君臨する日本の黒幕のひとり。虎皮のベストを着こんだ五分刈りの巨漢の老人で、ペットとしてチーターの五郎丸を侍らせている。柿崎憲に担ぎ出され、橘征二郎の政治力を封じるために利用される。柿崎の強大化を恐れた征五郎の策略で爆殺される。

立馬 国造 (たてうま こくぞう)

小田の跡を継いで右翼の大頭目となった、カイゼル髭の巨漢。大神楽了造の力で保神会の会長に就任し、暴力団と自衛隊という2つの暴力組織を意のままに操った。素っ裸になり脳天にお灸をすえ、その効果で股間を勃起させては女を小脇に抱えて寝所に向かうという色情狂の面がある。

集団・組織

橘組 (たちばなぐみ)

『野望の王国』に登場する神奈川県下で最大の暴力団。本拠地は川崎市にある。組長の橘征蔵が病死、本妻の息子の征一郎、征三郎が暗殺されたことにより、妾腹ながら人望のある征二郎が組を継いだ。その後、大吉組を吸収。残った征四郎との内紛を一晩で制し、巨大な暴力組織として成長していく。その影響力は裏社会のみならず、警察や政治家、在日米軍にまでも及ぶ。

保神会 (ほしんかい)

『野望の王国』に登場する、関西に拠点を置く暴力団を牛耳る最大組織。傘下には花岡組をトップとする53組、岩門組をトップとする11組を擁する。会長は大神楽了造の力で決められており、岩門組の組長・南法吉や、右翼の大物立馬国造、柿崎憲などが就任している。

救国教団 (きゅうこくきょうだん)

『野望の王国』に登場する新興宗教団体。白川天星の母親・白川玉堂が教祖として君臨している。教義や本尊は不明だが、一般社会からヤクザ、政界にいたるまで広く布教されており、信徒がいたるところに潜伏している。教祖やその子の白川天星に対して絶対服従を誓っており、死すら厭わない奉仕をする。教団内部には戦闘部隊も結成されていた。

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