遥かなる甲子園

遥かなる甲子園

沖縄県を舞台に、ろう学校に通う聴覚障害の少年たちが野球部を設立し、様々な困難に直面しながら甲子園出場を目指す青春野球漫画。障害者が世間で生きることの困難さや、沖縄に残る米軍基地など、今日も日本社会に残る差別や無関心の問題を訴える作品。スポーツライター・戸部良也の同題のノンフィクションをもとにした創作である。

正式名称
遥かなる甲子園
ふりがな
はるかなるこうしえん
漫画
ジャンル
自伝・伝記
 
野球
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概要・あらすじ

沖縄県の福里ろう学校に通う友利武明とその友達は、野球をするのが大好きな少年たち。彼らは甲子園を目指したいと考え、高等部に上がると同時に、良き理解者の伊波先生のもと、念願の野球部を設立した。しかし、聴覚障害者が野球をやってケガをしたら危ないという理由と、先例が無いという理由で、ろう学校は高野連に加盟できないという事実が立ちふさがる。

様々な差別や無理解にさらされながらも、彼らは甲子園を目指し、汗まみれになり努力を続けてゆく。

登場人物・キャラクター

友利 武明 (ともり たけあき)

妊娠中に母親が風疹にかかったことが原因で、聴覚に障害を持っている。福里ろう学校の生徒。小学生のころに甲子園で高校野球を観て感激し、野球を始めた。高等部に進むと野球部を創立し、キャプテンに任命された。サードを守っている。臨時のピッチャーをつとめたこともある。

(たけし)

福里ろう学校の生徒。友利武明の友達。健の聴覚障害が原因で父親は家を出ており、母親と姉との3人暮らし。気が強く、聴覚障害者と健常者との間の理不尽な壁に対して怒りを隠さない。福里ろう学校野球部ではキャッチャーをつとめている。作中に名字は出てこない。

大城 光一 (おおしろ こういち)

福里ろう学校の生徒。友利武明の友達。面長でニキビが多い。武明といっしょに野球に打ち込んできたが、高等部で野球部を創立した後、心臓に疾患が見つかった。野球を続けられないショックで一時は自暴自棄になったが、仲間の支えもあり、手術を乗り越え、部員たちのサポート役として野球部に戻ってきた。

伊波 実 (いば みのる)

少年野球チーム、南町ベアーズのコーチを務める男性の高校教師。ろう学校で教えていた経験もあり、手話ができる。野球がやりたい武明たちに理解を示し、南町ベアーズに入団することを勧めた。その後、武明たちが福里ろう学校の高等部に進学したのに合わせて同校に転任し、野球部を創立した。 高野連の加盟却下など様々な困難に直面しながらも、くじけそうになる生徒たちを勇気づけ、奮い立たせる良き指導者。

花城先生 (はなしろせんせい)

福里ろう学校の校長。赴任してきた伊波先生と生徒たちが野球部を創立したいと願い出た時には驚いたが、自発的に動く生徒たちに感銘を受け、快くOKを出した。その後、ろう学校は高野連に加盟できないという理不尽な現状を知ると、様々に尽力し、なんとか加盟できないかと粘り強い働きかけを続けた。 高血圧が持病。

安永 稔 (やすなが みのる)

福里ろう学校の生徒。髪型をリーゼントに固め、夜遊びをする不良生徒。聴覚障害が原因で小さいころから理不尽な目にあってきたため、健常者や世間を憎んでいる。武明たちが設立した野球部に対しても冷ややかな目を向けており、妨害工作まで働く始末。武明たちと和解した後は野球部に入り、ともに練習や試合に打ち込む。

知花 美穂 (ちばな みほ)

福里ろう学校の生徒。ロングの黒髪が特徴的な美少女。手話はろう者同士でしか通じないので、それを使うことは自分自身を狭い世界に閉じ込める行為だと考えており、手話を使わず訓練した口話で話す。野球部を設立し聴覚障害に負けずにがんばる武明に惹かれてゆく。

小田 (おだ)

日本聴力障害新聞の記者。自身もろう者である。全国読書感想文コンクールに入賞した知花美穂を取材するため福里ろう学校を訪れたが、野球部が高野連から加盟を拒否されていることを知り、取材し記事にまとめた。この記事がきっかけとなり地元紙や全国紙もこの問題を取り上げるようになり、高野連加盟への後押しとなった。

野田 (のだ)

熊本ろう学校高等部の3年生。軟式野球部の部員。福里ろう学校にも野球部があることを知り、試合の申し込みに訪れた。福里ろう学校野球部にとって初めての対戦相手となり、熱戦を繰り広げた。

与那原 正 (よなはら ただし)

福里ろう学校の生徒。メガネをかけている。野球部でピッチャーをつとめている。3年生の時にフォームをアンダースローに改良した。

明彦 (あきひこ)

福里ろう学校の生徒。イガグリ頭でギョロ目。野球部でショートを守っている。直情的でケンカっ早い。作中に名字は出てこない。

ポール・ヘンダーソン

沖縄駐留米軍の将校の息子。武明たちの1歳年上。武明たちと同じく、風疹による聴覚障害を持つ。米軍基地の近くでボール拾いをしたため米兵たちと乱闘騒ぎを起こしてしまった武明たちだったが、息子ポールと同じ障害を持つ武明たちに対して将校は理解を示し、騒ぎが大きくなることはなかった。

集団・組織

福里ろう学校 (ふくさとろうがっこう)

『遥かなる甲子園』に登場する学校。1964年、アメリカで風疹が大流行し、米軍が居留する沖縄でも猛威をふるった。その影響で翌年多くの聴覚障害児が生まれた。福里ろう学校は彼らのための教育施設であり、中等部・高等部で6年間の教育を終えた時点で廃校となる、期間限定の学校である。高等部へ進んだ野球少年の武明たちは甲子園を目指して野球部を創立しようとするが、ろう学校には高野連に所属する資格がないと知り、愕然とする。

南星高校 (なんせいこうこう)

『遥かなる甲子園』に登場する学校。野球部は甲子園大会の沖縄県地区予選決勝戦まで進んだ強豪。福里ろう学校野球部が高野連に加盟するための試験試合の相手となった。実力差は大きかったが、懸命に向かってくる武明たちに敬意を表し、南星高校野球部員たちも手を抜かず全力で対戦した。

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