神戸在住

神戸在住

兵庫県神戸市やその周辺の街を舞台に、女子大生辰木桂と周囲の人々との日常を、ほぼ一話完結の作品。主人公の一人称形式で描かれており、その時々の主人公の心情や感想、説明、補足が自筆文字で描かれておりイラストエッセイとしても楽しめる。様々なバックグウンドを持つ、個性豊かなキャラクターが次々と登場する。阪神・淡路大震災のエピソードも度々登場し、被災した登場人物達のリアルな体験談やトラウマが淡々と描かれている。細く繊細なラインで描かれたキャラクターや風景の絵は、ベタ塗りやスクリーントーンは使用せず、主にフリーハンドの横線などによって表現されており、この作品の持つ温かで優しい世界観を演出している。

正式名称
神戸在住
ふりがな
こうべざいじゅう
作者
ジャンル
エッセイ
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

東京から家族とともに移り住んできた主人公辰木桂は神戸中央大学校の美術科に通いながら、友人の金城和歌子泉海洋子をはじめ、所属する英語文化研究室の仲間たちと共につつがない大学生活を送る。金城和歌子やその恋人で中国系日本人2世の林浩の阪神・淡路大震災被災時の経験や、辰木桂が通うアトリエショップのオーナーでイラストレーター日和洋次と関わりを織り交ぜながら、ゆっくりとした時間の流れで神戸という街の魅力が描かれて行く。

登場人物・キャラクター

辰木 桂 (たつき かつら)

神戸中央大学校の文学部美術科課程に通っている。大学入試前に家族と共に東京から神戸に引っ越してきた。黒髪のショートカットでパンツスタイルを好むため、幼児体系もあいまって少年のような風貌。絵画やイラスト以外では、読書と散歩、父親の影響でビートルズやカーペンターズなどの少し古い洋楽を聴くのが好き。 ふとした事で涙を流すなど感受性豊かで、優しく素直な性格。時に、強引な性格の関西人の友人達に流されるままに行動する事もしばしば。友人も多く誰からも好かれ、かわいがられている。

金城 和歌子 (かなぎ わかこ)

神戸市中央区出身で主人公辰木桂と同じ大学に通う英文科2回生。少し派手めの美人で辰木桂の関西での初めての友人。美人でありながら鼻にかける事なく、さばさばした友達思いの性格。恋人の林浩と仮設住宅で同棲中。両親が熱海旅行中に阪神・淡路大震災に被災し、一人で避難所で過ごす。そこでボランティアとして奔走する林浩と出会い、彼との再会を願い神戸中央大学校に進学する。

鈴木 タカ美 (すずき たかみ)

主人公辰木桂と同じ美術科の2回生。ロングヘアでバンダナを巻いたりヘアバンドをしたりして、おでこを出している事が多い。美術科らしく個性的でかわいらしい服装をしている。漫画が好きでかつては投稿経験もあったらしい。明るくムードメーカー的性格ではあるが、空気を読まない事もしばしばで、苦手とされる人も多いようだ。 日和洋次の死を悪気なく唐突に辰木桂に伝えてしまった事が原因で、一時期辰木桂から距離を置かれてしまう。

林 浩 (りん はお)

香港生まれで高知育ち。両親は帰化した中国人でパチンコ屋を経験している。文学部4回生で日中英仏の四カ国語を操るが関西弁は少しおかしいらしい。辰木桂の友人、金城和歌子の恋人で同棲中。金城和歌子とは阪神・淡路大震災時の避難所で知合う。ボランティアとして避難所で率先して働くがその時の経験が彼の人生観に大きな影響を与えている。

小池 順 (こいけ じゅん)

主人公辰木桂と同じ英文研究室に所属する英文科3回生。金髪坊主で喫煙者。奈良県出身でこてこての関西弁を使い、若干口も悪い。辰木桂をヅラと呼ぶ。おちゃらけキャラで笑うと子供のような表情になる。後輩の面倒見が良く、辰木桂の弟、辰木晴君とも親しいらしく晴君は彼を尊敬しているようで後に髪型を真似られる。

野間 誠一郎 (のま せいいちろう)

主人公辰木桂と同じ英文研究室に所属する英文科3回生。大柄で笑うとおじいさんのような表情になる。貫禄があるが威張った所がなく優しく周りに気を配る性格。小池順と仲が良く、小池順が交通事故にあい、松葉杖生活だった時も車で送り迎えをしていた。

友田 文理 (ともだ あやり)

主人公辰木桂と同じく東京出身者で作品内で数少ない標準語を話す人物。英文研究室に所属する修士課程一年目で流体物理学を研究中。ショートカットでメガネをかけている。少しクールだが面倒見の良いお姉さん的存在。日向洋次の突然の死で抜け殻状態になった主人公辰木桂を優しく慰め、感情を吐露させる。

辰木 晴君 (たつき はるきみ)

主人公辰木桂の弟。調理師専門学校に通っており、父に似てヘビースモーカー。姉の辰木桂に対し憎まれ口をたたく事が多いが、仲が悪いわけではなく、母が旅行中の時は嫌々ながら晩ご飯を作って一緒に食べたり、偶然街で会った際なども一緒に散策したり外食したりもする。小さい頃から体が弱く、現在も季節の変わり目になるとぜんそくの症状が出る。

森橋 笑子 (もりはし えみこ)

主人公辰木桂の弟辰木晴君の彼女。市内の有名私立女子高に通う高校生で、セーラー服姿で登場する事が多い。狐目が愛らしく、明るく礼儀正しい性格だが意外と押しが強い。外国人から英語で話しかけられた時も堂々と対応するなど、おっとりしているようでとてもしっかり者。辰木桂をとても慕っており、晴君の事で相談したりする事も。

泉海 洋子 (いずみ ひろこ)

兵庫県姫路市出身で主人公辰木桂と同じ大学に通う英文科2回生。身長175cmで高校時代から学業のかたわらモデルの仕事をしている。ヘアスタイルはベリーショート。小柄な辰木桂を子供扱いしながら頭をなでたり、とてもかわいがる。仕事柄、ファッションに詳しくオシャレ。パリコレやミラノで活躍するモデルを夢見ている。 自分が誘っておきながら観覧車を怖がるなど、実は高所恐怖症。かつてヌードで広告写真に載った事を悔いている。

日向 洋次 (ひなた ようじ)

元町高架下モトコータウンでFREEDOMというアトリエ兼ショップを経営している、プロのイラストレーター。31歳。主人公辰木桂が美術科を目指すきっかけとなったイラスト作品の作者。若い頃の交通事故で脊髄を痛めたため、脚が不自由で車いすを使用している。時折サングラスからのぞく左目は義眼。 さらには24歳の頃から腎臓疾患を抱え人工透析を受けており、余命は長くないらしい事を本人も自覚していた。着衣に必ずロングスカートを用いるが、それは病気の症状から来る腹のふくらみを隠すためだと思われる。

中沢くん (なかざわくん)

主人公辰木桂と同じ美術科の3回生。和歌山県出身。アマチュアミュージシャン。モトコータウンの中古レコード店ブートレグでアルバイトしている。音楽情報はもちろん、漫画、ラーメン屋などにも詳しい。

志摩くん (しまくん)

主人公辰木桂と同じ美術科の3回生。京都府出身。長身で「お公家さん眉」と「ちょんまげ」が似合う。ギターが上手いくリクエストされると嬉しそうに弾き始める。見た目に反し、意外にもキティちゃんなどのファンシーグッズが好きで描く絵もとても優しい。

崔 月姫 (ちぇ うぉるひ)

主人公辰木桂と同じ美術科の3回生。神戸市長田区出身。在日韓国人三世。通名の千田姫子ではなく本名の韓国名を名乗り、成人式では韓国の国民服であるチマチョゴリを着て成人代表として壇上にのぼった。差別によるいやがらせに合った経験を持つ。大人っぽく美人でモード系ファッションを着こなす。 同級生の志摩くんと仲が良いが、付き合ってはいないと主張する。

廣田 和名 (ひろた かずな)

主人公辰木桂が足しげく通う日向洋次のショップを手伝っている神奈川県出身の女性。現在は大阪府寝屋川市在住。29歳独身。ロングのウェービーヘアでそばかすがチャームポイント。手先が器用で折り紙をよく折っている。血を見るのが苦手。日向洋次とは旧知の仲のようで、身の回りの世話を色々している。 今でこそ明るいが昔は弱く暗い性格であったらしい。

小西さん (こにしさん)

主人公辰木桂が足しげく通うショップのオーナー日向洋次が通うコーヒーショップキネマのマスター。大阪出身。同性愛者で元オペラ歌手。もの静かな佇まいで色っぽい雰囲気を醸し出している。映画も好きで店内でよくビデオを流しており感極まって泣いてしまう事も。辰木桂とは古い音楽の趣味が合い店内で一緒に歌を歌ったりする。

上原 千代子 (ういばる ちよこ)

主人公辰木桂と同じ英文研究室に所属する英文科5回生。沖縄出身。5単位が足らず留年中。ノリが良く人なつこい性格で誰とでもすぐに仲良くなるが、同い年の友田文理と特に仲が良い。

小田くん (おだくん)

主人公辰木桂と同じ英文研究室に所属する経済学科5回生。兵庫県尼崎市出身。小柄で華奢だがプロボクサー。すぐにムキになる性格で、何度会っても辰木桂の事を覚えない。

木下 たけい (きのした たけい)

主人公辰木桂の自宅マンションの隣人である木下家の長男で5歳。辰木桂によくなついているため、母の木下ともえの留守中に頼まれて子守りをしたりする。子供らしい元気な性格。左利きでお絵描きが好き。妹の乳児木下いつこに時々やきもちを焼いたりもする。

木下 友絵 (きのした ともえ)

主人公辰木桂の自宅マンションの隣人。夫婦でイタリアンレストランを営んでいる。子守りをしてくれたお礼として辰木桂にイタリア料理とワインを振る舞ってくれる。明るくカラっとした性格でたくましい子育てをしている。

木下 太郎 (きのした たろう)

主人公辰木桂の自宅マンションの隣人で妻の木下ともえと夫婦でイタリアンレストランを営んでいる。静岡県伊豆出身。長身でメガネをかけている。木下ともえとは逆の、ひかえめで物静かな性格。料理人を目指す辰木桂の弟辰木晴君の良き相談相手。

瀬畑さん (せばたさん)

主人公辰木桂の友人、林浩が阪神・淡路大震災時、ボランティアとして活動していた時に知合った男性。責任感が強く頼られる存在。リーダーとして避難所で率先して働くが、後に妻と息子の遺体を発見してしまう。その後も避難所での仕事を続ける。

伏見 淳美 (ふすみ じゅんみ)

滋賀県近江八幡市出身で主人公辰木桂と同じ大学に通う経済学部経済学科2回生。地元の短大卒業後に入学したので、辰木桂より2歳年上。普段はおっとりとしているが、講義が始まると顔つきが変わるくらい真剣に授業を聞き、ノートを取る。勉強熱心。辰木桂とは「読書友達」で、会うたびに本を交換している。 旧家のお嬢様で、親戚の男性と既に婚約している。

帆津さん

神戸市東灘区出身で主人公辰木桂と同じ美術科で油画のゼミを選択。もの静かで繊細な性格で最初はあまり打ち解けないようでぎこちなかったが、徐々に仲良くなっていく。長年付き合っている彼氏がおり、左手の薬指に指輪をしている。ノリの全く違う鈴木タカ美に、少し苦手意識を感じている事を辰木桂に打ち明ける。

髙橋 愛 (たかはし あい)

主人公辰木桂の高校時代の同級生。現在は埼玉県の農業大学に在籍中。生まれつき左手の先を欠いているが、クラス委員をつとめたり、教室内で突然泣き出した辰木桂を気遣ったりと姉御肌的な性格。両親や兄弟とは不仲で殴り合いのけんかをするほど。現在は実家を離れ一人暮らしをしている。高校時代から大酒飲みで牛丼屋でビールを頼むほど。

羽生 かよ子 (はにゅう かよこ)

主人公辰木桂の高校時代の同級生。現在は東京でOLをしている。ショートカットヘアと、切れ長の目がチャームポイント。人の髪の毛をいじるの好きで、辰木桂の髪型をよく編んだりしていた。霊感があり辰木桂の祖母が見え、いつも見守っていると伝える。吉祥寺で不良にからまれた際、意外にも啖呵を切って相手を蹴り倒し、仲間から一目置かれる存在に。

立花 椿 (たちばな つばき)

主人公辰木桂の高校時代の同級生。髙橋愛とは幼なじみでずっと仲が良かったため、髙橋愛が辰木桂を気に入った事で、最初は辰木桂に嫉妬していた。八重歯の笑顔がかわいく辰木桂より身長が1cm小さい。夢であった花屋で働き、そこの店長との間に子供ができ出産、結婚予定。

集団・組織

英語文化研究室 (えいごぶんかけんきゅうしつ)

『神戸在住』の主人公辰木桂が所属する大学内のサークル。様々な学部学科から、個性的な面々が集まっている。英語文化研究というのはあくまで名目で、部室内では各々が好きな事を過ごしている。コーヒー好きが多く、誰かしらが必ず淹れて用意をしているため、部室に近づくと香りが漂っている。部員同士仲が良く、一緒に海にでかけたり、鍋をしたりと大学生らしい活動をしている。

場所

神戸市 (こうべし)

兵庫県南部に位置する兵庫県の県庁所在地。主人公辰木桂によると「新旧と和洋が入り交じり、様々な事柄が渾然としており坂が多く」、「住む人みんなが心がぽかぽかするくらい親切」な街らしい。作品内では辰木桂がよく通うショップがあるモトコーをはじめ、神戸ハーバーランド神戸MOSAIC神戸市立王子動物園や市外の、淡路島有馬温泉など実在の施設や観光地が登場する。

SHARE
EC
Amazon
logo