武装島田倉庫

武装島田倉庫

戦後、化学兵器や放射能によって汚染されて荒廃した地球を舞台に、異態進化した不気味な生物たちと戦いながらも、混沌とした世界を生きる人々の抗争を描いた、サバイバルSF作品。椎名誠の小説『武装島田倉庫』のコミカライズで、「ビッグコミック スペリオール」2013年第7号から2014年第2号、2014年第4号から16号にかけて連載された。

正式名称
武装島田倉庫
ふりがな
ぶそうしまだそうこ
原作者
椎名 誠
漫画
ジャンル
終末・ディストピア
関連商品
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概要・あらすじ

17年前に終わった長い戦争により、大地と空は汚染され、人類は激減し、文明や国家も崩壊してしまった。そんな混沌とした世界のなか、辺境のドヤ街に住んでいる少年の百舌は、鉄眼と呼ばれる男が営む運び屋の助手に志願する。目的地の南都まで同行することになり、放射能や科学兵器によって異態進化した生物が蠢く街の外へ、鉄眼の運搬車に乗って旅立つ。

しかし、南都までもう少しというところで、窃盗団「耳切団」に襲われ、鉄眼は殺害されてしまう。百舌はからくも逃げ切るが、運搬車は窃盗団の襲撃によって故障してしまう。荷台を覗いた百舌は、そこに片目のない少女が倒れているのを発見する。この少女こそが届けるべき荷物だと判断した百舌は、彼女を背負い、再び南都を目指して歩き出すのだった。

登場人物・キャラクター

百舌 (もず)

ドヤ街に住む17歳の少年。前髪が目にかかっていて、襟足は長く、毛先が外側にはねた髪型をしている。幼い頃に両親を亡くし、祖父も肺を患って、百舌が10歳の時に亡くなっている。以降はドヤ街で、与えられた仕事を何でもこなして生きてきた。ドヤ街の外のことについては、周囲の人々から聞いた情報でしか理解していない。そのため憧れのような感情を抱いていた。 鉄眼がドヤ街に訪れた際には、真っ先に南都へ向かう仕事の助手になることを志願。南都へ行く道中、鉄眼から武器の扱い方を教わったり、南都や外界についてのさまざまなことを聞くなど、好奇心旺盛で前向きな性格。窃盗団「耳切団」に襲われて鉄眼を殺された後は、彼の遺志を継いで、運搬車の中で倒れていたアサコを背負って南都へと向かう。 のちに目的地でもあった物流倉庫会社「島田倉庫」に、雇ってもらうことになる。

鉄眼 (てつめ)

革命派組織「青い花」で運び屋をしている男性。長い黒髪を中分けにしている。妻と2人の子供がいたが、食料を調達するため市場へ行っている間に、窃盗団に皆殺しにされてしまった。酸性雨と光化学スモッグにまみれた土地を、仕事で訪れた際に、左眼の白眼の部分が赤く変色してしまう。それ以来、仲間内からは「鉄眼」と呼ばれている。 ドヤ街に立ち寄り、目的地である南都に到着するまでの助手を求めたときに、百舌と知り合う。機械の知識が豊富で、さまざまな武器を使いこなすことができ、百舌にも、道中の護身のために、手持ちの武器の扱い方を教授した。しかしその後、南都に向かっている道中で、窃盗団「耳切団」に襲われて殺されてしまう。

アサコ

左眼のない髪の長い少女。鉄目が運転していた運搬車の荷台の中にいた。運搬車で南都に向かっている途中、窃盗団「耳切団」の襲撃を受け、気を失って荷台の中で倒れていたところを百舌に助け出された。その後、百舌に背負われて、南都にある物流倉庫会社「島田倉庫」に連れて行ってもらう。他人とはあまり交流を持たず距離を置いているが、素直に感情を表現する百舌に対しては、南都まで連れてきてもらった恩もあり、少しずつ心を開いていく。 実は人間ではなく、北政府が開発した「乙型」と呼ばれる新型の弦鐘であり、開発に唯一成功した試作体。

(がん)

ドヤ街に住んでいる高齢の男性。前髪が頭頂部辺りまで後退した白い短髪で、口と顎にひげを蓄えている。ドヤ街の長老的な存在で、幼い頃に両親を亡くし、祖父にも先立たれた百舌を、親代わりとして10歳の頃から育ててきた。ドヤ街の外の世界に出ることを、百舌に厳しく禁止してきた。しかし、百舌の意志の強さに根負けし、鉄眼の仕事の助手として、ドヤ街から送り出すこととなる。

可児 才蔵 (かに さいぞう)

南都に住んでいる男性。黒髪の短髪で、顎には無精ひげを生やしている。筋肉質で大柄な体型。右肩の大きな髑髏のタトゥーは、戦時中にムングトリグスという場所に傭兵として徴兵された時に入れたもの。物流倉庫会社「島田倉庫」の採用試験に応募し、見事に合格して採用される。実は革命派組織「青い花」の一員で、組織の運び屋、鉄眼が運んで来る、大切な届け物が到着するのを待っている。 それは、南都を救う最後の切り札と目されるものだった。

正宗 (まさむね)

物流倉庫会社「島田倉庫」の倉庫長を務めている男性。黒髪の坊主頭で、顎にひげを生やしている。過去に遺伝子を組み替えられて凶暴になった「呵々兎(かかうさぎ)」を、島田倉庫で預かった際、鼻をかじり取られた。そのため、鼻の形をした鼻当てを付けている。所長が島田倉庫を立ち上げた時からの唯一の社員で、所長から全幅の信頼を寄せられている。

づる

物流倉庫会社「島田倉庫」に勤めている初老の男性。髪型は白髪の短髪。新人の可児才蔵の研修を担当し、荷物の運搬やフォークリフトでの作業などを教えた。昼食をともにした才蔵に、汁椀をプレゼントするなど、面倒見の良い性格。「島田倉庫」へは出稼ぎに来ていて、妻と娘と息子には給料から仕送りをしている。

アーム

物流倉庫会社「島田倉庫」に勤めている男性。黒髪の短髪で額に白いバンダナを巻き、小麦色の肌をした、筋肉質で大柄な体型をしている。戦時中には傭兵として徴兵され、戦場を転々としていた。左頬にはその時にできた大きな傷跡がある。強面だが、新人の可児才蔵を何かと気にかけたり、百舌に銃の撃ち方を教えてあげたりと、面倒見はいい。 甘い考え方では今の世の中をまともに生きられないと、今でも戦地リエンユンガンで教わった教訓を大事にしている。

所長 (しょちょう)

物流倉庫会社「島田倉庫」の所長を務める男性。白髪をオールバックにしている。戦後、リヤカー1台で何日もかけて南都に辿り着き、7年前から正宗とともに「島田倉庫」を立ち上げた。従業員の労働環境や給料面は良くないが、それは我欲のためではなく、あくまで「島田倉庫」を守るため。「島田倉庫」を皆の城のように考えており、「島田倉庫」を守るためなら全力を尽くす。

抓皮 伊舟 (つねりかわ いしゅう)

南都の法治局で局長を務めている男性。黒髪で鼻の下に2本の細長い髭を生やしている。ドーベルマンを従えて南都の住民を威嚇し、拳銃を住民に向けるなど、厳しい取り締まりを行っている。住民の取り締まりと並行して、革命派組織のアジトを突き止めるための尋問も行っている。目的のためならば殺害も辞さない、冷酷で残忍な性格。だがそれは、戦前のように美しく誇り高い南都を復興させたいと、いう高い理想からくるものである。

もぐら

革命派組織「青い花」のリーダーを務める女性。長い黒髪に端正な目鼻立ちで、背が高くスタイルもいい。5年前に北政府の法治局が、「一斉地下浄化計画」を行ったが、それは、地下に住んでいる無登録住民を、一斉に焼き尽くすことを目的としたものであった。その時、法治局員との激しい抗争の末、右目を負傷し失明してしまったため、黒い眼帯を付けている。 その後、生き残った同志たちを集め、北政府に反旗を翻すために「青い花」を結成した。その時から自ら「もぐら」を名乗るようになったが、これは地下に住んでいた無登録住民を、法治局の局員が蔑んで呼んでいた名称。

灰汁 (あく)

革命派組織「青い花」の一員の27歳の青年。マッシュルームカットの黒髪で、前髪を眉毛の上で切りそろえている。武器の扱いに長け、「喇叭砲(らっぱほう)」という長銃を器用に使いこなす。温和で人当たりが良く、仲間を大事にする意識が強い。それゆえに、時には感情的になることもある。家族を皆殺しにされて孤児になり、20歳まで浮浪者同然の生活をしていた。 その原因となった弦鐘に対しては、特に激しい嫌悪感を抱いている。生活の面倒を見てくれたジーゼルのことを、父親のように考えており、彼との縁から「青い花」に入団することとなった。「青い花」の中では最も若い部類に入るため、子供扱いされがちで、本人はそのことを気にしている。

百舌の祖父 (もずのそふ)

百舌の祖父。白髪の短髪で、鼻の下に髭をうっすらと生やしている。左眼を失明しており、「棘胞ガス」という有毒ガスの影響で肺が真っ黒になり、百舌が10歳の時に亡くなってしまった。生前には百舌に対して「希望を捨てるな」と口癖のように伝え、「ドヤ街を出て自分の目で足でともに生きていく誰かを探し出せ」と諭していた。百舌の好奇心の旺盛さや明るく前向きな性格に、大きな影響を与えた人物。

捨三 (すてぞう)

革命派組織「青い花」の一員の男性。サキシマから譲り受けた、模様の入った耳あて付きのニット帽をかぶっている。母親と妹の妙とともに、総崩川の上流にある山中の村で生活をしていた。戦時中、母親を敵国の偵察隊に殺され、さらに妹を弦鐘に殺害されてしまう。鼻の頭にある傷痕は、その道中で襲って来た壺口に噛まれてできた傷で、「鼻烈」のあだ名の由来にもなっている。 「青い花」に入団した百舌のことを、足手まといだとして、ともに行動することを嫌がり、度々罵声を浴びせることもある。しかし、それは入団間もない百舌のことを心配しているため。言葉遣いが乱暴で粗野な性格に見えるが、これは彼の優しさの裏返しで、実際は誰よりも命を尊び、大切に思う人物。

直し屋の親父 (なおしやのおやじ)

南都の灰坊区で直し屋を経営している男性。恰幅が良く、白髪で頭頂部には毛髪がなく、黒くて細長いフレームの眼鏡をかけている。その名の通り、さまざまな機械や道具を修理する業務を行っている。ほかにも、中古の家具や電化製品、衣料品に加え、標識や拳銃まで店頭で販売している。社会情勢にも詳しく、彼の持っている情報や噂を聞くために訪れる者も少なくない。 戦争肯定派で、北政府と「青い花」をはじめとする革命派組織が戦争をすることを望んでいる。いざ戦争が始まったら、どさくさに紛れて武器や薬品を販売し、一儲けしようと企んでいる。

教祖 (きょうそ)

カルト教団「金糸雀教」の教祖の男性。頭は丸坊主で、袈裟を着用している。教団の信者たちを使って、革命派組織「青い花」からアサコを拉致監禁。彼女を「奇跡の子」と崇めて、新しい世界の理想郷を作ろうと企んでいる。さまざまな手を尽くして、アサコを人型兵器の弦鐘として覚醒させようと試みる。

ジーゼル

白髪で長い顎ひげを蓄えた情報屋の男性。目の下の深い隈が特徴。左腕がなく、フックのような義手を取り付けている。アサコを救出するため、カルト教団「金糸雀教」の本部へ向かった革命派組織「青い花」のメンバーに図面を渡したり、法治局の動向や北政府の17師団の潜伏先を教えたりと、「青い花」に情報を提供する形で協力をしている。 その背景には、過去に北政府に妻を殺されたことがある。仇討ちとして北政府に一矢でも報いられるのならば、命も投げ出す覚悟でいる。7年前に浮浪者同然の格好でジーゼルの住む廃アパートに訪れた灰汁のために、法治局に住民登録をしたり、その後の面倒を見てあげたことがある。表には出さないが、灰汁を自分の子供のように可愛がっている。

トーノ博士 (とーのはかせ)

北政府で研究員として働く男性。前髪を中分けにした黒髪で、眼鏡をかけている。17師団の研究施設で、濃脂雲塊を発生させる装置や人型兵器の弦鐘など、さまざまな科学兵器を開発した。また、過去に亡くなった娘の遺伝子を利用して、「乙型」と呼ばれる新型の弦鐘を造り、娘と同じアサコという名前を付けた。しかし、あまりにも強力な兵器を、自分の娘の分身としてしまったことをすぐに後悔し、17師団に見つからないように、研究施設からアサコを逃亡させた。 のちに自らも研究施設から離れて南都を去ったが、再び17師団の研究員として連れ戻された。師団長から命を保証されるかわりに、研究施設での科学兵器の研究、開発を続けさせられている。

師団長 (しだんちょう)

北政府の17師団で師団長を務めている男性。背が高く大柄な体型で、長髪で首が長く、鼻も大きく長い。17師団が拠点を置く南都に研究施設を設置し、濃脂雲塊を発生させる装置や人型兵器の弦鐘など、さまざまな科学兵器の開発を進めている。これらの開発した科学兵器を使い、南都を壊滅させようと計画している。

ゴンゾウ

白浜海岸に住んでいる男性。白髪の短髪で、額が見える位に前髪が短い。妻とともに漁をしながら生計を立てていたが、数か月前に小麦色の肌をした大男に妻を寝取られてしまった。それ以来気が立っており、喧嘩腰の口調で話す。アームの肌の色と体格を見ると、妻を寝取った大男のことを思い出すため、何かにつけてアームに喧嘩腰で絡もうとする。

石文字 (いしもじ)

白浜海岸に住んでいる男性。黒髪のボサボサ頭で、目が細く顎にひげを生やしている。元科学者のため機械に強く、九足歩行機カニムカデで沈没船を引き上げようと海底に潜ったアームに、海上の船から指示をしてサポートをする。

(たえ)

捨三の妹。黒髪のおかっぱ頭をしている。総崩川の上流にある山中の村で、母親と兄の捨三と3人で暮らしていた。結婚のことを「大好きな人とすること」程度にしか理解しておらず、将来は大好きな兄と結婚したいと話していた。戦時中、母親を敵国の偵察隊に殺され、自身も逃げ込んだ山中で弦鐘に遭遇し、殺害されてしまう。

サキシマ

戦時中、筏で総崩川の上流から下ってきた男性。模様の入っている耳あて付きのニット帽をかぶっている。高速連発銃を取り付けた筏を使って、弦鐘に襲われていた捨三たちを助けた。その後しばらくは行動をともにし、総崩川の下流の先にある湿地帯を埋め立てて、生活の拠点にしようと計画する。その際、湿地帯に留まらずに1人旅立つことを決断した捨三に、餞別として自身がかぶっていたニット帽を譲り渡した。

赤眼 (あかめ)

戦時中、総崩川の上流の山中にある村に住んでいた弦鐘。黒髪の短髪で、白目の部分が赤いことから「赤眼」と呼ばれている。もともとは北政府が造った旧式の人型兵器で、どういった経緯で村にやって来たかは不明。無表情で片言でしか会話をすることができないが、温和で穏やかな性格をしているため、村人たちにも親しまれていた。 捨三と妙が、村人たちとともに敵国の偵察隊から逃れるために山中に逃げ込んだ際、壺口の生息地に入ってしまった時や、弦鐘に出会ってしまった時には、身を挺して村人たちを守った。

壺口 (つぼぐち)

科学兵器や放射能で異態化した生物の1つ。巨大なヒルのような形をしている。大きいものは、大人の男性の身長ほどのサイズにもなる。総崩川の上流にある山林の中に集団で棲息する。口には、人間の奥歯のような頑丈な歯が沢山生えており、凶暴で人を襲っては咬み殺そうとする。戦時中に捨三が山林で遭遇し、鼻の頭を噛まれたことがある。

集団・組織

島田倉庫 (しまだそうこ)

南都にある倉庫と、そこで働く人々の集団を指す。7年前に所長が正宗とともにリヤカー1つから始め、現在は従業員を23人従え、南都の中でも指折りの大きな倉庫。主に食料と物資の仕入れ、送品業務の他、トラックでの運搬業務も行っている。倉庫内の電気は自家発電でまかなっており、従業員は早朝から、発電機に繋がったエアロバイクを漕ぐのが日課。 革命派組織「青い花」のメンバーが、社員として所属しているため、北政府からはアサコを匿っているのではないか、という疑惑を持たれている。

北政府 (きたせいふ)

先の戦争で勝利を収め、戦後国家を支配している政府機関。各都市に法治局を設置し、住民を管理している。17師団に研究施設を設けて、さまざまな科学兵器を研究、開発。「青い花」をはじめとする革命派組織との来るべき戦争に備えている。

紫煙興業 (しえんこうぎょう)

表向きは雑貨商を営んでいる商社。裏では武器の密売を行っている。北政府とも繋がりを持っており、北政府にアサコを捕らえて引渡すことを条件に、大金を得る約束をしている。

青い花 (あおいはな)

北政府に反旗を翻す革命派組織の1つ。もぐらがリーダーを務めている。5年前、地下に住んでいる無登録住民を一斉に焼き尽くすことを目的として、北政府の法治局が「一斉地下浄化計画」を行った。その時、生き残った、わずかな人々が中心となって結成された。近い将来に始まるだろうと予測されている北政府との戦争に備え、「乙型」と呼ばれる新型の弦鐘であるアサコを、北政府から救出した。 アサユは、南都を救うための鍵になるであろうと予測されている。

耳切団 (みみきりだん)

南都の近くで活動している窃盗集団。メンバーは共通して、白いVネックの半袖シャツに、白いハーフパンツを履き、頭髪がなく、顔面全体にペイントを施していて、自身の両耳を切り落としている。南都の近くを通りかかる人々を集団で襲い、金品や食料を強奪することを目的としている。南都に向かっている途中の百舌たちの運搬車を襲い、懸命に奮闘した鉄眼を殺害した。

倉庫盗賊団 (そうことうぞくだん)

南都で活動している窃盗集団。メンバーは共通して、白い靴に白いズボン、白い上着などの白装束を着用しており、白い布でできた覆面をしている。拳銃を手に持ち、南都周辺の倉庫を襲って、倉庫内にある金品や物資、食料を強奪することを目的としている。運び屋の鉄眼が運搬してくる予定だった届け物を狙って、物流倉庫会社「島田倉庫」を襲う。

金糸雀教 (かなりやきょう)

勢力を急激に拡大している新興宗教団体。名前の由来は、炭鉱に発生する毒ガスを察知して、危険を知らせる役目をしていた小鳥のカナリヤから。自分たちが、この世に溢れる神の怒りを警告し続ける存在であることを、意味している。しかし現在は、すべての悲しみから開放された理想郷を作るために活動するカルト教団と化している。治安維持の観点から、法治局から宗教活動を監視されてはいるが、実は裏で抓皮伊舟と繋がっており、アサコを拉致する計画を立てている。

法治局 (ほうちきょく)

北政府が各都市に設置する、治安維持を担当する部署。主に住民間の事件や事故を処理したり、住民登録者の管理をしている。5年前に「一斉地下浄化計画」を実行し、住民登録をせず、地下で身を隠して生活している者たちを焼き尽くした。ちなみに南都の放置局を統括する局長は抓皮伊舟。

17師団 (じゅうななしだん)

北政府が管轄している師団の中の1つ。南都に師団の本拠地を構え、大きな研究施設を持っている。そこでは、トーノ博士を中心とした研究員たちによって、濃脂雲塊を発生させる装置や弦鐘といった、さまざまな科学兵器を開発している。その成果により、現在は法治局が抑えきれないほどの軍事力を持った、独自の組織になってしまっている。

場所

南都 (なんと)

北政府の支配下にある都市。「島田倉庫」もこの都市の中にある。他にも沢山の倉庫が機能しているため、他の都市に比べて物流が円滑で住環境は悪くない。一方で、法治局により厳しく取り締まられており、住民登録していない者に対しては厳しい環境といえる。倉庫を襲撃する窃盗集団も多いため、場所によっては、治安は非常に悪いという一面もある。

灰坊区 (はいぼうく)

南都の中にある1つの地区。「灰坊ロード」という商店街がメインストリートで、1か月前までは賑やかな商店街だった。再び戦争が始まるらしいという噂が広がったため、現在は住民のほとんどが避難のために灰坊区を去り、シャッター通りとなっている。しかし、未だ営業している店も、ひと握りだが存在し、直し屋の親父もその1人。

その他キーワード

水流砲 (すいりゅうほう)

鉄眼が運転する運搬車に備え付けられた武器。消防車に備えられている消火ホースのような形状をしていて、先端部分を両手で持って使用する。発射口からは物凄い勢いで水が放出されるため、しっかり持っていないと、身体を何百メートルも吹っ飛ばされてしまい、取り扱いには細心の注意が必要。いざという時には、先端部分を打撃武器としても使用することが可能。 なかには自動回転するタイプの水流砲もある。

知り玉 (しりだま)

南都を定期的に浮遊している円形の巡回探査機。真ん中に大きなレンズが取り付けられており、そのレンズで住民登録のない者や、いざこざの類を巡回探査している。事件を発見すると、即刻法治局に通報が行くため、住民からは「法治局の犬」と揶揄されて呼ばれることもある。

弦鐘 (つがね)

北政府の17師団が造り出した人造人間。首の左右に、指の先位の小さな円形のパーツが付いている。それ以外に、外見から人間と弦鐘の判別をするのは難しい。人間の倍以上の力があり、感情がなく、無表情。傷をつけられても、血が流れることはない。しかし、アサコのように意志を持って人間の言葉をしゃべり、血液が流れている弦鐘も、例外として存在する。

濃脂雲塊 (のうしうんかい)

北政府の17師団が開発した人工雲。空を雨雲のような黒い雲で覆い、大量の油を含んだ雨を降らせる科学兵器。戦時中にも使用された。ターゲットとなった街は、濃脂雲塊から発生する脂雨によって油泥に沈んでしまい、黒い油に覆われて、誰1人住むことができない土地となった。

カニムカデ

かつて北政府が開発した九足歩行機。戦時中に使われていた古い機械で、当時は北政府が山岳攻略の際に用いていた。山を登るだけでなく、海に潜ることも可能。海底の暗闇を照らすサーチライトも取り付けられている。アームがメンテナンスし、海に沈んでいる沈没船の引き上げるために利用した。

クレジット

原作

椎名 誠

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