加治隆介の議

加治隆介の議

衆議院議員の加治元春を父に持つサラリーマン加治隆介が、父の死を契機に政界へ進出し、大物政治家へと成長する姿を描く政治ヒューマンドラマ。1990年代の世相を反映している。

正式名称
加治隆介の議
ふりがな
かじりゅうすけのぎ
作者
ジャンル
政治家・政界
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あらすじ

出馬要請(第1巻)

大物政治家・加治元春が事故死し、運転していた秘書の加治春彦も死亡。父親の地盤を継いでほしいと出馬要請を受けた商社マンの加治隆介は、その申し出を辞退する。だが、元春の後援会会長・山本真喜雄から、政治家に向いているのは隆介だと記した父親の生前の手紙を見せられ、出馬を決意する。一方、隆介の愛人・一ノ関鮎美に妊娠が発覚。真喜雄は隆介と別れるよう鮎美を説得する。そんな中、元春の秘書だった谷崎健吾も立候補を表明、隆介は無所属での出馬となる。さらに、地元の利益より国益を優先するという隆介のスローガンに反発する声も多く、隆介は選挙戦で大苦戦を強いられる。結果、隆介は僅差で落選するが、トップで当選した議員が急死し、隆介はまさかの繰り上げ当選を果たす。

追い詰める(第2巻)

議員一年生となった加治隆介民主政和党に所属するが、しがらみから外れた独自の政策集団「桜嵐会」を立ち上げる。そんなある日、隆介は、鹿児島医大のから兄・加治春彦の死に不審な点があると聞かされる。春彦の身体から睡眠導入剤「ハルビオン」が検出されたというのだ。隆介は、春彦に疲労回復剤と偽り「ハルビオン」を飲ませた人物・下薗をつき止めるが、同時に下薗と妻・加治由紀子の不倫関係をも知ってしまう。真相を究明すべく、下薗が雲隠れしたワシントンに飛んだ隆介の陣営は、一ノ関鮎美の協力のもと、下薗に接触する事に成功。追い込まれた下薗は命を断つが、光田工業事件の新事実が明らかにされ、政界に激震が走る。

総理辞職(第3巻)

加治隆介鳩村尚三総理大臣に引導を渡すべく、加治元春殺害に総理秘書の朝生昌良がかかわっていたという証拠を叩きつける。ほどなく、鳩村は辞任し、隆介は浅海恒太郎の推す渦上三郎の支持にまわる。渦上は政界再編を掲げ、総裁選に持ち込もうとするが、派閥の二派が手を組むという予想外の展開となり、民主政和党総裁は井原七郎に決定。井原新内閣が発足する中、鳩村が逮捕され、朝生は拘置所内で自殺する。隆介は今後を考慮し、下薗と関係を持っていた妻の加治由紀子と和解。一方、渦上の愛人であるすっぽん屋の女将・田名綱敬子は、隆介の男っぷりに惚れこみ、最後の相場師と呼ばれた稲川欽蔵に100億円の投資を持ち掛ける。

カンボジアへ(第3巻~第4巻)

後援会会長・山本真喜雄の息子で、カンボジアに国連の選挙監視委員として派遣されていた山本剣吉が共産主義を掲げるパルパト派の兵士に銃殺されるという事件が発生。偶然、一ノ関鮎美もカンボジアでボランティア活動をしていると知り、加治隆介はカンボジア視察に出向いた。だが、鮎美に会いに行く道中、パルパト派のゲリラに拉致される。そんな中、日本では民主政和党から離脱した渦上三郎が、新党渦潮を結成し、内閣不信任案が可決される。これにより桜嵐会は解散し、民主政和党から脱退した浅海恒太郎桜新党を結成。隆介不在のまま、選挙戦に突入し、隆介の代理で加治由紀子が奮闘、見事当選を果たす。一方、すんでのところで処刑を免れた隆介は、パルパト派の少年兵士クミールに助けら二人で逃げるが、道中、クミールは底なし沼に飲み込まれてしまう。瀕死の状態で歩き続けた隆介は、鮎美に発見され病院に運ばれる。

総理の座(第4巻)

末期癌を宣告された浅海恒太郎は、連立野党の統一候補となり、暫定政権の総理大臣に打って出た。そんな浅海は、加治隆介を官房長官に抜擢する。政治改革法案成立と政界再々編成を同時に目論む青杉幹二の立ち回りもあり、浅海念願の政治改革法案は成立。その直後、浅海は倒れ、壮絶な殉職を遂げる。連立政権は崩れ、海藤正俊率いる改革派は民主政和党から離脱。青杉も社会平和党から離党し、海藤と共に日本平和党を立ち上げる。このクーデターが功を奏して渦上三郎総理大臣が誕生し、隆介は引き続き官房長官に就任。また新党渦潮、隆介の所属する桜新党ほか、少数派が大連合し自由と責任党が発足する。

拿捕(第4巻~第5巻)

北朝鮮が不穏な動きを見せ始め、閣議でも朝鮮半島有事の時における日本の対応が話し合われる。そんな報道の影響もあり、国内で北朝鮮人を狙った嘆かわしい事件も発生。そんな中、官房長官・加治隆介金秀海という朝鮮総評議会の副幹事から、漁船「八幸丸」の船長・八町健吉が工作員の運び屋をしているとの情報を入手するが、しばらくして八幸丸が北朝鮮に拿捕される。北朝鮮の李日成首席は、経済制裁に日本が参加しない意思を表明すれば、八幸丸の乗組員を解放すると宣言。日本国内が揺れる中、渦上三郎総理大臣は経済制裁に踏み切ると決断。その矢先、海上阻止行動に参加した護衛艦「ちくご」の艦長・土方俊太郎は、韓国のフェリーを攻撃した北朝鮮船艇を撃沈。だが、自衛隊への追求の目を逸らすため、土方は辞職させられる。そんな中、李日成死亡のニュースが流れる。極秘で北朝鮮に渡っていた青杉幹二が、李日成を亡命させる代わりに、八幸丸の人質返還の約束を取りつけていたのだ。戦争は回避され、安堵の空気が流れる中、隆介は謝罪のため佐世保の土方を訪ねるのだった。

逆風(第5巻)

北朝鮮に拿捕された人質と共に帰国した青杉幹二をマスコミは英雄扱いしたが、漁船「八幸丸」の船長・八町健吉は自らが工作員の運び屋だった事を会見で暴露してしまう。八町の疑惑を隠していた政権に逆風が吹く中、渦上三郎総理大臣と田名綱敬子のスクープ写真が週刊誌に掲載される。スキャンダルを暴露した民主政和党総裁の鈴鹿宏は、水面下で海藤正俊に接触し連立政権を持ちかける。そんな中、渦上は辞任しなければ民主政和党につくと海藤から脅される。渦上は自由と責任党を少数野党にするまいと、辞任。こうして日本平和党と自由と責任党は統一候補として青杉を立て、至上最年少の内閣総理大臣が誕生。加治隆介は青杉の強い要請を受け外務政務次官を引き受ける。一方、稲川欽蔵との関係が復活した敬子は、渦上に別れを告げる。

薩摩隼人とヤンキー娘(第6巻)

外務政務次官・加治隆介は、国連安全保障理事会の常任理事国入りを視野に訪米する。隆介に密着取材を申し込んできた新人記者リンダ・シモンズは、たびたび隆介を怒らせてしまうが、なんとか取材を敢行。そんな中、日本代表部主宰のパーティで、隆介は日本が国連では二級市民権しかあたえられていない事を目の当たりにする。日本の外交姿勢をはっきりさせるにはどうしたらいいか悩む隆介に、リンダは前国務長官クッシンジャーを紹介。隆介はクッシンジャーからのビクビク外交はやめろというアドバイスを受け、最大の目的である作業部会で、今後の世界の課題は核兵器を廃絶する事であり、核を持たない国が常任理事国に加わる事に意義があるとスピーチし、各国から絶賛される。

王手(第6巻)

首相官邸に20年近く勤めていた女性事務員・曽根みどりを見舞った外務政務次官・加治隆介は、みどりから衝撃の事実を打ち明けられる。加治元春の事故死の2か月前、鳩村尚三元首相に私設秘書が元春殺害を示唆していたというのだ。隆介の秘書・西田丸は、元春の汚名を返上すべく、鳩村の私設秘書・海部雅治に揺さぶりをかける。そんな中、フランスが核実験を再開し、青杉幹二総理大臣はフランス大統領ポラックに抗議のパフォーマンスを仕掛け、日仏外交は険悪ムードとなる。一方、鳩村に暴言を吐かれて切り捨てられた海部は、銃を忍ばせ鳩村邸に向かう。

官邸事務員の恋(第6巻)

アメリカ大統領から日本へ、フランスの核実験に対して強い抗議行動をすべきではないというテレックスでの示唆が入った。青杉幹二総理大臣は外務政務次官・加治隆介の意見に同調し、公言していたフランス大使召還を撤回する。そんな青杉は国会で、アメリカ大統領からのテレックスのコピーを持ち出した日本平和党・横田道彦から、激しい追及にあう。横田へコピーを渡した大日新聞社の東野耕司は、総理秘書の奥村貞子と不倫関係にあった事が判明。隆介や青杉が奥村の処遇に悩む中、東野と横田のあいだに金銭の授受があった事を掴んだ検察により、東野と奥村は起訴される。

加治たたき(第7巻)

中国が日本で開催されるAPECの宿泊施設に文句をつけてきた事を受け、外務政務次官・加治隆介はロイヤルプラザホテルに団体での宿泊予約を入れていた暴力団・神弘組の組長・神弘に、ほかのホテルへの宿泊変更を直談判に行く。隆介の心意気を買った神弘は了承。一方APECでは、社会主義を標榜していた元社会平和党青杉幹二総理大臣は他国から信用されずにいた。そんな中、APECでCIAの諜報員がスパイ活動をしている事が判明し、行方を追っていた隆介は、帰国間際の諜報員に接触し圧力をかける。APECが幕を閉じ、隆介が鹿児島での活動に勤しむ中、地元で対立関係にある谷崎健吾は、隆介が神弘組に接触したとの証拠を掴む。暴力団と黒い関係があるとマスコミにリークされた隆介は、絶体絶命の窮地に立たされる。

韓国へ(第7巻)

議員を辞職して浪人の身となった加治隆介は、韓国を訪問。板門店を訪れた隆介に気づいた北朝鮮の兵士は、彼を尾行する。一方、隆介と同行した西田丸は韓国に住む友人・二木清彦と再会するが、ふとした事からソウル大学に通う女性二人組と仲よくなる。西はその一人・姜香織と深い仲になるが、知らぬあいだに隆介の宿泊するホテルのキーを盗まれてしまう。香織からホテルのキーを受け取ったのは、北朝鮮の兵士だった。隆介は兵士達に拉致されるが、危機一髪で逃げ出し、結果的に未発見だった北朝鮮の工作員が侵入する南進トンネルを見つける。一方、汚名返上のため、西と二木は香織の潜伏先を発見するが、追い詰められた香織は服毒死してしまう。

チャレンジ・アゲイン(第8巻)

衆議院が解散し、比例区名簿の上位に入っていない加治隆介のみそぎ選挙は、厳しい戦いを強いられる。一方、隆介は地方に埋没させるのは惜しい人物だと、元海上自衛隊のエリート土方俊太郎に立候補を要請する。そんな中、隆介のライバル・谷崎健吾は、隆介が暴力団・神弘組と付き合いがあるという誹謗中傷のビラを撒く。組のメンツを傷つけられたと怒り心頭の神弘は、印刷業者を締め上げ、谷崎に頼まれて中傷ビラを撒いたという内容のチラシを撒かせる。選挙投票日、息子の加治一明を連れて釣りに出た隆介は、今まで何度も逃していた淵のヌシと呼ばれる大魚を釣り上げるのだった。

波乱のスタート(第8巻)

日本平和党青杉幹二に総理大臣を辞任させる代わりに、海藤正俊自由と責任党長池修三を総理に推した。それに同意した自由と責任党党首の渦上三郎だが、首班指名候補者の発表の直前、長池の選挙違反容疑が浮上。急遽、自由と責任党の小沢倫太郎が候補に選ばれ、総理大臣に指名された。加治隆介は念願の外務大臣を打診されるが、海藤に阻まれ、防衛庁長官に就任。そんな中、長池の選挙違反の原因となった人間が元日本平和党の党員だった事が判明。激怒した渦上は海藤を殴打してしまう。入院した海藤は青杉に最後通牒をつき付けられ、失意の中、息を引き取る。同じ頃、隆介は防衛庁の制服組のトップ柳田昇吉と信頼関係を築いていく。

スキャンダル(第9巻)

ワシントンのペンタゴンを訪れた防衛庁長官・加治隆介ホーメン国防長官から、日本の危機に対する考えが甘いと一刀両断される。そんな中、記者のリンダ・シモンズは隆介のホテルの部屋を訪れ、二人は関係を持つ。早朝、二人は自殺したロビイストを発見。その場に偶然居合わせた新聞記者のジャッキー・ハイマンは、隆介が何者か気づいていた。だが、インスタントカメラで事件現場を撮ったジャッキーは、リンダと隆介のスキャンダルを記事にはせず、帰国する隆介に封筒を手渡すのだった。

シージャック(第9巻)

ロンボク海峡を通過したプルトニウム運搬船「ひので丸」が、北朝鮮のテロリストにシージャックされた。日本政府にプルトニウムの奪回と人質の命の二者択一が迫られる中、米軍のヘリコプターがテロリストのミサイル攻撃で撃墜された。防衛庁長官・加治隆介の要請で、巡視船「ありあけ」からテロ対策として警備にあたっていた一等海上保安正・三樹佑二郎がゲリラ活動を敢行し、ありあけにプルトニウムが積まれていない空きスペースがあると判明。だが、日本の自衛隊の実践力に限界があり、アメリカのピンポイント攻撃に頼るしかなくなる。ピンポイント地点に発煙筒を仕掛けるべく三樹は命がけの銃撃戦に臨み、ミサイル攻撃により沈没しかけたありあけの船内でテロリストは自害する。こうして無事に人質は救出されたが、後日、英雄と賞賛された三樹は野党の要請で、国会に参考人として召喚される。

クーデター(第10巻)

自由と責任党の母体となった新党渦潮の不正株取引というスキャンダルを使い、民主政和党の若きリーダー熱田建二郎は、青杉幹二を民主政和党に寝返らせる。これにより連立内閣は崩壊し、青杉の日本平和党と民主政和党が連合して、国民福祉党を結成する事となった。一方で二大政党制を目論んだ熱田は、民主政和党から離脱する有志と共に、自由と責任党への合流を画策。そして、合流と引き換えに総理の椅子を回してほしいと加治隆介に申し出る。これに対し隆介は、合流に異議はないものの、世間に権力争いの野合だと見抜かれてしまう事を理由に、熱田を総理大臣にする事には断固反対する。最終的に熱田は目的を果たせないうえで、自由と責任党に合流するしか道がなくなってしまう。

総理大臣の椅子(第10巻)

二大政党による総選挙は自由と責任党が勝利し、加治隆介も当選を果たした。自由と責任党の首班指名候補は平原和正となったが、社会平和党の票を獲得した国民福祉党鈴鹿宏との決選投票にもつれ込む事となった。無定見な野合への不満分子の説得にあたった熱田建二郎の尽力もあり、最終的に平原内閣が誕生する。外務大臣となった隆介は、ロシアや中国相手に屈する事なく本音外交を展開し、実績を上げていく。一方、隆介は白血病を患った一ノ関鮎美を、ニューヨークの病院から日本に連れ戻す。そんな中、疲弊した平原総理大臣は、ドクターストップにより辞任。総理大臣への立候補を逡巡する隆介は、鮎美の最後の手紙で決心を固め、熱田との一騎打ちとなる総裁選に挑むのだった。

登場人物・キャラクター

加治 隆介 (かじ りゅうすけ)

鹿児島県出身。鹿児島ラサール高校、東京大学文Ⅰ(法学部)から、東京の商社、丸講物産の課長として活躍しており、愛人の一ノ関鮎美も同社員だった。父は民主政和党(民政党)の大物政治家である加治元春で、兄の加治春彦や谷崎健吾などがその秘書を務めていた。 父と兄を交通事故で失い、隆介は父の後継として政界への進出を打診されるが、元春が光田工業事件で賄賂性の高い金を受け取ったのではないかという疑惑など、政治家に対する不信があり、一度は固辞する。しかし、後援会幹事長の山本らの説得や父の政治信条や後継者へ遺した思いなどに触れ、政治家を志す決意を固める。 父と兄が交通事故にあった時期、妻の由起子は長男一明の鹿児島ラサール中学進学に伴って、鹿児島に在住していた。隆介は、鹿児島1区から立候補して政界の道を進んでいく。外務省官僚の倉地潤、大日新聞の大森洋二郎とは、東京大学ラグビー部同期で親友。

加治 元春 (かじ もとはる)

加治隆介の父親。民主政和党(民政党)の大物政治家で、第一秘書は谷崎健吾。長男の加治春彦も秘書を務める。民政党内の派閥「錦江クラブ」(加治派)の領袖。原理原則を貫く政治家として、国会議員からも国民からも信頼を得ていたが、光田工業事件で賄賂性の高い金を受け取ったのではないかという疑惑をもたれていた。 民政党の鳩村尚三と関係が深く、鳩村の総理大臣就任を後押ししていた。伊集院町での講演会の帰り、加治春彦が運転する車で交通事故にあって死去した。後援会長の山本への手紙で、長男の春彦よりも次男の隆介が政治家向きであり、後継として期待していると記しており、これと元春の遺した随筆を読んだ隆介は政界進出を決心した。

一ノ関 鮎美 (いちのせき あゆみ)

加治隆介の愛人。東京の商社、丸講物産のOLで、隆介の秘書業務をしている様子が描かれている。OL時代に、丸講物産の社内報(丸講社内報「恒心」)に「今月の頑張り屋さん」として掲載されるなどしている。隆介が政界に進出するようになって距離を置いたが、大日新聞の大森洋二郎から依頼を受けて働き、鳩村総理大臣の退陣のきっかけを作ることになる。 最後には隆介に大きな決断を促すなど、陰から隆介を支えた。

浅海 恒太郎 (あさみ こうたろう)

民主政和党(民政党)の大物政治家。和歌山1区。実家は代々の造り酒屋で、旧制三校から京都大学へ進み、報日新聞社に入社、首相の番記者となったことがきっかけで政界入りした。加治隆介の父の加治元春に心酔し、「錦江クラブ」(加治派)の事務総長として、元春の右腕として活躍し、「錦江クラブの元帥」と呼ばれた。 政界入りした隆介の後見人的な立場となってアドバイスを送り、成長を促した。隆介の師といえる存在。

渦上 三郎 (うずがみ さぶろう)

広島県出身(広島1区)。民主政和党(民政党)鳩村派に属していた。のちに「新党渦潮」を結成して民政党を離脱し、加治隆介らと行動を共にしていく。隆介よりも経験が豊富なことから、のちに的確なアドバイスを与える存在へとなっていく。

青杉 幹二 (あおすぎ かんじ)

弁護士で、社会平和党議員。選挙区は茨城県、のちに兵庫県で、加治隆介とは同期として初当選した。剣道の心得があるようで、木刀を振るったり、政治パフォーマンスに取り入れている姿が描かれている。政治家としても、パフォーマンスを好み、政局を重視している様子であるが、これがのちに青杉に厳しい状況をもたらすことになる。

鳩村 尚三 (はとむら しょうぞう)

民主政和党(民政党)の政治家で民政党の派閥鳩村派の領袖。加治隆介が初当選したときの総理大臣で、その就任や光田工業事件に隆介の父である加治元春が深く関わっている。光田工業事件については、私設秘書の海部雅治や下薗を使い、真相を闇に葬ろうと画策した。

井原 七郎 (いはら しちろう)

民主政和党(民政党)の政治家で、福岡県選出。加治隆介の政界出馬時には、農林水産大臣だった。「錦江クラブ」(加治派)に所属しており、加治元春の死後、錦江クラブをひきついで改組、名を「七政会」(井原派)に改め、領袖となった。隆介も初当選時にはこのグループに属しており、「七政会」の井原を総理大臣にし、大臣を多く輩出するという方針に改名は当然と発言した。

鈴鹿 宏 (すずか ひろし)

宮城県選出の民主政和党(民政党)の政治家で、最大派閥である鈴鹿派の領袖。幅広い情報網を持つ策士で、さまざまな策や裏工作を駆使して政権の獲得を目指している。ほとんどの場面で、加治隆介の反対陣営に属する人物である。

谷崎 健吾 (たにざき けんご)

民主政和党(民政党)の加治元春の議員秘書を務めていた。元春の死後、加治隆介の政治方針に反発する形で加治元春後援会の多くを率いて鹿児島1区から出馬し、衆議院議員となる。隆介とは選挙ごとに激しい戦いを繰り広げていくことになる。

倉地 潤 (くらち じゅん)

外務省の官僚。加治隆介とは東京大学の同期で、ラグビー部で共に活躍した親友。優秀な官僚で、外交問題など、様々な場面で隆介にアドバイスを送り、手助けをする。

大森 洋二郎 (おおもり ようじろう)

大日新聞政治部記者。加治隆介とは東京大学の同期でラグビー部で共に活躍した親友。新聞記者として、光田工業事件に関わる疑惑の解明や、加治元春の交通事故死に関する謎の解明などで、隆介の情報収集などを手助けする。真相究明のため、一ノ関鮎美にも接触することになった。

海藤 正俊 (かいどう まさとし)

民主政和党所属の大物議員の高齢の男性。かつて総理大臣も務めた事がある。浅海恒太郎総理大臣のもと、政治改革法案を成立させるべきとの考えで、社会平和党を潰すつもりの青杉幹二に同調。改革派グループ70人を引き連れて民主政和党を離党し、渦上三郎総理大臣誕生に協力、日本平和党に合流する。しかし抜け目のないタヌキ親父で、自分にもう総理の芽がないと悟り、青杉と組んで実質的な総理の椅子を手に入れようと、用意周到に青杉を総理大臣に仕立て上げる。のちに、度を越した日和見主義が露呈し、激怒した渦上に殴られて入院。青杉に愛想を尽かされ、失意の中で死亡する。

平原 史子 (ひらはら ふみこ)

平原和正の妻。沖縄で少女暴行事件が起こり、米軍基地への風当たりが強くなった際、個人的な発案で沖縄基地の海兵隊と親睦を深めるべく富士山への登山を企画。陸海空の若い兵士や国会議員も参加して有意義な交流会となったが、多方面に気を遣い、マスコミにもアピールしなかった。粛々と静かに夫を支える有能なファーストレディ。

海部 雅治 (かいべ まさはる)

右翼団体の政治結社「東亜軍事研究所」の代表を務める男性。鳩村尚三の元私設秘書で、鳩村に加治元春殺害を示唆した人物。鳩村が逮捕されたのちに独立して、政治結社を作った。元暴力団員などの構成員が10人いたが、今は激減。仕事の内容は企業にたかって金を脅し取る総会屋のようなもので、経営は苦しい。加治隆介の秘書の西田丸に揺さぶりをかけられ、鳩村に金策の助けを求めるが、暴言を吐かれて鳩村を銃殺する。鳩村の秘書を務めていた際は「海辺」と名乗っていた。

姜 香織

ソウル大学で日本語を勉強している女性。元在日韓国人で、10歳まで日本で暮らしていた。屋台で韓国人にからまれている西田丸と二木清彦を助け、のちにすぐ再会した事からなかよくなる。実は北朝鮮の工作員で、性技のテクニックに長けている。北朝鮮の兵士と通じており、西には加治隆介の拉致のために近づき、関係を持ったが、西達に追い詰められて服毒死。死の直前に、好きな男と寝たのはあなただけだと西に告白している。

国納 (こくのう)

ワシントン駐在員の男性。加治隆介の丸講物産時代の後輩で、隆介のワシントンでの外遊コーディネイトを担当。下薗の捜索にも協力するが、下薗に近づいて盗聴器を設置した女性が元丸講物産の社員、一ノ関鮎美であるとのちに気づき、隆介に報告した人物。

土肥垣 亘 (どいがき わたる)

社会平和党の委員長を務める男性。北朝鮮のテロリストから「あかつき」の乗組員とプルトニウムを命懸けで守った三樹佑二郎を国会へ参考人として召喚した人物。また、平原和正が指名される事が確実視されていた首班指名投票の際には、理念を無視して国民福祉党と手を組み、鈴鹿宏に党の議席30票を投じた。

田名綱 敬子 (たなあみ けいこ)

すっぽん屋「田名綱」の女将。渦上三郎の愛人。出身地の広島で養殖したすっぽんを東京の店で出している。加治隆介の男っぷりのよさに魅了され、隆介の泊まるホテルをつき止め、裸で帰りを待つなど、行動力があり積極的。隆介の眉間から「天下をとる光線」が出ているのを感じ、稲川欽蔵に、渦上と隆介に100億円を投資してほしいと持ちかける。自身のペーパー会社「城北エンタープライズ」から渦上三郎の新党渦潮に50億円を貸し出した。のちに、稲川と関係が復活し、自分とのスキャンダルが暴かれて窮地に立たたされた渦上を見捨てるなど、ドライな一面がある。ちなみに、隆介には50億円の融資はしていない。

朝生 昌良 (あそう まさよし)

鳩村尚三総理大臣の第一秘書を務める男性。加治元春と加治春彦殺害の実行犯と判明した下薗とのつながりが暴かれ、愛人宅で自殺未遂を図った。鳩村の金庫番で、これまでかなりの金額を着服している。元春殺害の計画を自身が企てたと自白するが、加治隆介はほかの誰かが教唆した疑いが強いという見解に至る。のちに、拘置所で自殺する。

来栖 乙彦 (くるす おとひこ)

防衛庁の政務次官に選ばれた男性。日本平和党のハト派と呼ばれるグループで、かつては安全保障条約を否定した人物。防衛庁長官となった加治隆介とのバランスを考え、小沢倫太郎が選んだ人材だが、何かあれば反対するぞという意思がにじみ出ている。のちに、対アメリカとのバランス感覚について、隆介から思い込みが強すぎると不見識を注意される。

八町 健吉 (はっちょう けんきち)

山口県豊浦郡S町の漁船「八幸丸」の船長を務めている男性。北朝鮮の工作員を密入国させる手伝いをしている。その見返りとして、北朝鮮の領域まで入って操業する権利を得ている。北朝鮮への経済制裁がほぼ確定すると、北朝鮮へ連行され拿捕された。解放された記者会見の席では、経済制裁を止めなかった政府に対しての意見を聞かれ、北朝鮮の運び屋だったので自業自得だと涙の謝罪を行う。

東野 耕司

大日新聞社会部に所属する40代の男性。東大ラグビー部出身で、加治隆介の後輩にあたる。会社では先輩の大森洋二郎と懇意にしており、独特の筆跡から、社会平和党にアメリカ大統領からのテレックス情報を漏らした犯人だと気づかれる。総理官邸事務員の奥村貞子と不倫関係にあったため、寝物語で聞いたアメリカ大統領からのテレックスのコピーを手に入れた。社会平和党とのあいだに金銭の授受があった事から、検察に起訴される。事件が発覚した際、妻子とは別れており、罪を償ったあとに、奥村と結婚するつもりでいる。

淵のヌシ (ふちのぬし)

加治隆介が子供の頃から釣りをしていた淵に住む巨大魚。浪人している隆介が加治一明と釣りに訪れた際、久々の再会を果たすが、淵のヌシを逃している。選挙投票日、再度息子と訪れた隆介に釣り上げられる。6時間も戦った敬意を表して、隆介にリリースされたのち、当選を告げられた隆介を祝福するかのようにジャンプして見せた。

加治 由紀子 (かじ ゆきこ)

加治隆介の妻で、加治一明の母親。男なら大きな仕事をするべきという考えの持ち主で、隆介がいずれ父親の基盤を継いで政治家になると見込んで結婚した節がある。一明がラサール中学に入学し、鹿児島に戻ったというのは表向きの理由で、実質的な加治隆介後援会、薩摩おごじょ会の婦人部を作るべく既に活動を開始するなど、政治家の妻として女傑ぶりを発揮する。だが、生活は隆介とのすれ違いとなり、加治元春のスケジュールを探ろうとしていた下薗と不倫関係になる。のちに、それを知る事となった隆介とは和解。隆介がカンボジアで行方不明になった際には、隆介の代理として選挙活動に尽力し、見事当選を勝ち取った。

長池 修三 (ながいけ しゅうぞう)

自由と責任党に所属する男性議員。渦上三郎の側近。議員としては熟しているが、脇が甘く頼りない一面がたびたび露呈する。青杉幹二の総理大臣辞任後、加治隆介を総理大臣にしては長期政権になると危機感を覚えた海藤正俊が、総理に推薦した人物。だが身に覚えのない選挙違反が発覚し、議員辞職に追い込まれてしまう。のちに、海藤が仕組んだ罠だと判明。また、新党渦潮の代表幹事長だった時代に、証券会社、東亜証券に運用資金50億円を託し、それが一任勘定取引だった事から、不正株取引スキャンダルとして世間を賑わせてしまう。

下薗 (しもぞの)

民主政和党鹿児島県連の城山ブロックに所属している男性。加治春彦に疲労回復剤だと偽って睡眠導入剤「ハルビオン」を渡した人物。加治由紀子と不倫関係になり、加治元春のスケジュールをキャッチしていた。加治隆介陣営が周辺を嗅ぎまわっていると察知し、ワシントンに雲隠れする。鳩村尚三の私設秘書を経て、裏の仕事に回った節があり、鳩村が元春に放った刺客である事が判明。麻薬常習者だが、養護施設出身の自分を世話してくれた鳩村への忠誠心は厚い。

小沢 倫太郎 (おざわ りんたろう)

自由と責任党に所属する男性議員。幹事長代理を務め、明示会派のホープと呼ばれている。長池修三の選挙違反が内部で発覚したため、急きょ首班指名候補に推薦され、青杉幹二の辞任後の総理大臣となる。長老支配政治を嫌う骨のある人物で、加治隆介を外務大臣に推薦するが、海藤正俊に阻まれ、隆介は防衛庁長官となった。自らの事を、固いイメージばかりが先行して華がなく、総理大臣としては魅力がないと認識している。証券会社、東亜証券の郡山専務が自殺未遂を図った件では、彼の証言が党のダメージになる事を恐れ、回復治療をしないよう頼んでみる方法もあると発言し、隆介と激しく対立した。

二木 清彦

西田丸の大学時代の友人の男性。韓国に在住している日本人。加治隆介といっしょに韓国を訪れた西を夜の街へ案内した。下ぶくれ顔のおっとりした人物。大学を中退して、すぐ韓国に行ったので、西とは10年振りの再会。日本人への嫌がらせは日常的に経験しており、黙ってやり過ごす術を身につけている。

イアン・ペリチェフ

ロシアの大統領を務める男性。重大な対外債務と財政赤字が重くのしかかり、援助要請すべく日本を訪れ、日ロ首脳会談を行った。接待には焼き鳥とゲイシャを要求し、踊り手の女性と今晩過ごしたいと我儘を言うが、狸寝入りをして成り行きを見ていた策士。その際、きっぱり正論を唱えた加治隆介と本音の会談に臨むが、融資のバーター取引として、石炭の安定供給という条件を飲まされる事になる。

ホーメン

アメリカの国防長官を務める男性。頭の回転が速く行動力があり、合理主義者だが人情味のある人物。親日家に見えるが、内心はアジア人全般を信用していないところがある。集団的自衛権に関しては、日本の目の前に危機が迫れば国民も変わると高を括っている。

平原 和正 (ひらはら かずまさ)

自由と責任党に所属する男性議員。小沢倫太郎の次の内閣総理大臣となった。小沢内閣では大蔵大臣を務め、当選15回でこれまで総理大臣になる機会を何度も逃した人物で、短命内閣とわかってお鉢が回って来た事を理解している。総理大臣になって半年経ち、命をかけて仕事をしているのにもかかわらず、無能者の烙印を押されて精神的に疲弊したうえ、狭心症と診断され、このままでは心筋梗塞になるとドクターストップがかかり、辞任を決意。加治隆介にその旨告げ、今後を託した。

松尾

鹿児島の暴力団、神弘組の若い組員の男性。ノリが軽く、加治隆介が神弘組の事務所に来た時の様子を、隆介の選挙区でのライバル、谷崎健吾の事務所でペラペラしゃべり、知らずに録音されてしまう。その事がバレてしまい、神弘の命令で海に沈められる。

山本 剣吉

鹿児島県警で警部補を務める男性。山本トミ子の夫で、小学3年生の俊幸の父親。加治隆介の後援会会長の山本真喜雄の息子。カンボジアに国連の選挙監視委員として派遣され、日本人初の文民警察官となるが、現地でパルパト派の兵士に襲われ、銃殺される。

郡山

証券会社、東亜証券の専務を務める男性。西北大学のジャーナリズム研究会で長池修三の後輩だった人物。長池から政治資金50億円もの運用を頼まれ、政治家の持ち込んだ株は儲けさせなければいけない、という株の世界での常識により、独断でつけ替えや借名口座即転などを繰り返した。検察に追求されたら噓をつき通す自信がなく、思い悩んで首吊り自殺を図るが死にきれず、脳死一歩手前の状態にまでなってしまう。

奥村 貞子

総務庁から青杉幹二総理大臣の総理秘書室に移って来た美人秘書。年齢は35歳。総務庁に勤めていた時に、永田クラブの記者室で大日新聞の東野耕司と知り合い、2年後に男女の仲となる。仕事一筋で生きて来たため、東野が初めての男性で、女として恋愛できる最後のチャンスだと焦りを感じていた。そんな中、寝物語りでアメリカ大統領からのテレックスの話をした際、そのコピーを東野から要求される。別れをチラつかされた事もあり、結局はコピーを東野に手渡してしまう。

三樹 佑二郎 (みき ゆうじろう)

巡視船「ありあけ」の乗組員の男性。海上保安庁の一等海上保安正で、年齢は38歳。この任務に就くまでは警視庁の第四機動隊に所属していた。ソウル五輪ではピストル競技で銅メダルを獲得した。自衛隊の特殊部隊訓練にも参加した運動神経抜群の猛者。テロリスト対策として、加治隆介からプルトニウムを運ぶ「ひので丸」の警備にあたるよう要請を受けた。北朝鮮のテロリストにシージャックされた際には、孤軍奮闘の大活躍を見せ、人質を救った。だが、社会平和党の土肥垣亘委員長から重大なる刑法上の問題があると指摘され、国会で参考人として喚問されるものの、野党に対して危機に直面した際の意識の低さと姑息な態度を一喝した。

山本 真喜雄 (やまもと まきお)

加治元春の後援会会長を務めていた男性。元春亡きあと、加治隆介の後援会会長となった。鹿児島県在住。鹿児島県警の警部補、山本剣吉の父親。頭頂部が禿げており、眉毛が太く鼻が赤い。元春が生前自分に宛てた手紙に、自分の跡は隆介に継がせたいと書かれていたと隆介に告げ、隆介が政治家になる後押しをした人物。隆介の子供を身ごもった一ノ関鮎美]と隆介が揉めているのを目撃しており、彼女に隆介から手を引くよう頼むなど、隆介が政治家として成功する事に心を砕いている。

熱田 建二郎 (あつた けんじろう)

民主政和党に所属する男性議員。若手議員のあいだで絶大な支持を集めている。年齢は49歳で当選3回。プリンストン大学出身で経済学の博士号をとり、ニューヨークの証券会社で副社長を務めた経歴の持ち主。かなりの野心家で、虎視眈々と総理の椅子を狙っている。民主政和党の次期総裁と見られていたが、早くから保々連合を頭の中で描いており、防衛庁長官時代の加治隆介に手を組もうと持ち掛けていた経緯がある。新党渦潮の不正株取引スキャンダルで、青杉幹二を動かし、日本平和党と自由と責任党を決裂させた張本人。その際にはクーデターを起こして民主政和党から離脱し、自身が総理大臣になる事を条件に、隆介に自由と責任党への合流を持ち掛けた。だが、隆介に足元を見られ、総理の椅子を回す事はできないと突っぱねられている。結局は自由と責任党に合流するしかなくなったが、その後は、首班指名候補選で不満分子の説得にあたり、平原和正総理大臣誕生に大きく貢献。平原総理辞任後の総裁選では、隆介と一騎打ちの戦いが注目される事になる。

斉木 健二郎 (さいき けんじろう)

通産政務次官を務める男性。日本が開催国であるAPECでは、通産・外務の政務次官が大阪で要人を迎える役を担う事になり、加治隆介と共に大阪に下見に行く。大阪に下宿していた大学時代、タダで酒を飲ませてくれた女主人の居酒屋に、今でも顔を出す人間味のある人物。

北朝鮮の兵士 (きたちょうせんのへいし)

北朝鮮の兵士の男性。板門店を訪れた加治隆介の存在に気づき、上層部へ報告し、隆介を尾行していた。西田丸に近づいた姜香織から、隆介の泊まるホテルのキーを受け取り、拉致を実行した人物。人質に取った隆介を、日本との交渉の際に外交カードとして使う算段の上層部より、隆介を北朝鮮へ連行して監禁しろとの命を受けている。

曽根 みどり (そね みどり)

元官邸事務員の女性。奥村貞子の前に総理秘書室に勤めていた。年齢は52歳。首相官邸には20年近く勤めており、歴代9人の総理に仕えた超ベテラン。国家機密を扱っているために交際相手を制限してしまうからか、一流の男性を見過ぎたからか、現在も独身。病床を見舞いに来た加治隆介に恋心を抱き、死の間際に自身が耳にした鳩村尚三と私設秘書の海部雅治との会話を隆介に打ち明ける。

クミール

カンボジアのパルパト派の少年兵士。拘束された加治隆介の見張り役を任されていた。年齢は17歳で、父親はパルパト政権時代の政府高官だったため、英語を話す事ができるインテリ。パルパト同志は理想的な共産主義社会を作ろうとしており、資本主義は悪だという教育を受けていた。当初は資本主義の豊かさを説く隆介と対立するが、隆介からカンボジアの現状を聞き、次第に彼の言葉を信じるようになる。隆介を逃がし、いっしょに逃げる道中、底なし沼にはまって死亡する。

鹿児島医大に勤める医師の男性。ラサール高校で加治隆介の5年後輩だった。加治春彦の集中治療室での分析結果を見て、春彦の尿から少量のアルコールと、通常なら入手不可能な睡眠導入剤「ハルビオン」が検出された事に疑問を抱き、隆介に報告した人物。父親の加治元春の運転手だった春彦が、アルコールと併用すると突然意識を失う事もある睡眠導入剤を使用するとは思えない、という見解を持つ。

金 秀海 (きむ すへ)

朝鮮総評議会の副幹事を務める男性。加治隆介に在日コリアンと名乗り、直接電話をかけた人物。日本でカラオケボックスを経営しており、そこで隆介に、このままでは我が祖国は日本との戦争に突入し、同胞である自分達にも無差別な危害が加えられるとして、戦争を止めてくれと直訴した。その際、山口県の漁船「八幸丸」船長の八町健吉が工作員の運び屋だと密告。しかし、盗聴器が仕掛けられていた事から、自殺に見せかけられて何者かにビルの屋上から突き落とされる。

染谷

フリーカメラマンの男性。カンボジアで出会った加治隆介に一ノ関鮎美のボランティア事務所を案内した。そこで、パルパト派が地雷を埋めている場面を目撃し、シャッターチャンスにこだわったため、隆介を巻き沿えにしてゲリラに拘束されてしまう。ゲリラに訊問された際には、自己保身のため、隆介に命令されて写真を撮ったと言い張ったが、処刑されてしまう。

伊島 元介 (いじま もとすけ)

プルトニウムを運搬する「ひので丸」の船長を務める男性。北朝鮮のテロリストに拘束されるが、隠れていた三樹佑二郎と秘密裏にコンタクトを取り、プルトニウム奪還に尽力する。北朝鮮テロリストに銃を向けられ際には、こういう行動をあなたに命令した人間を恨むと語り、難を逃れた。顔見知りとなった若い兵士が自決する際には、最期にタバコを吸わせるなど、情が深い人物。

加治 一明

加治隆介と加治由紀子の息子。父親と離れて母親と鹿児島で暮らしていたので、基本的に父親との交流は希薄だった。ラサール中学時代は父親が選挙でトマトをぶつけられている姿を見て涙し、父親を尊敬するようになる。父親に暴力団との交際が報道された時には、学校で嫌がらせを受けていた。ラサール高校時代は医者になるべく、東京大学を目指して猛勉強していた。浪人の身となって父親には反抗的な態度を見せるが、いっしょに釣りに行って心を開くようになる。実は父親の仕事を誇りに思っており、淵のヌシを釣り損ねた父親を見て、もう一度政治の世界にチャレンジしろと背中を押した。一浪して東京大学に合格し、次第に政治家の仕事に興味を持つようになる。

リンダ・シモンズ

ワシントンジャーナルに勤める新人女性記者。以前はニューヨークシティテレビでバラエティー番組番組の制作をしていた。加治隆介へのアメリカ密着取材を申し込むが、初日に思わず力が入ってしまい、隆介を怒らせてしまう。次第に、骨のある隆介に魅かれていき、のちにワシントンを訪れた隆介と一夜を共にする。ロビイストの自殺現場に居合わせた新聞記者のジャッキー・ハイマンと親密になり、結婚する運びとなる。

熊田 徳夫 (くまだ のりお)

民主政和党に所属する男性議員。熱田建二郎の側近で、知恵袋的な存在。熱田の指示のもと、東亜証券が新党渦潮との不正株取引の情報を青杉幹二に持ち込んだ人物。日本平和党が民主政和党と手を組めば、もう一度総理になれると青杉にけしかけた。口達者で抜け目がない性格。のちに熱田と共に自由と責任党に合流。

加治 春彦

父親である加治元春の秘書を務める男性。元官僚で、加治隆介の兄。鹿児島で自身の運転する車が県道脇の山林に転落し、父親はほぼ即死。自身も重傷を負い、しばらくして病院で死亡した。父親の元春は光田工業事件で賄賂を受け取っていないと断言するが、金の流れに関しては口をつぐんだまま逝く事となった。のちに事故当日、下薗に疲労回復剤と偽り、睡眠導入剤「ハルビオン」を飲まされていた事実が発覚する。

稲川 欽蔵 (いながわ きんぞう)

最後の相場師といわれた高齢の男性。現在は熱海で悠々自適の隠居生活を送っている。顔と鼻の下が長く、耳が大きい。20年前に田名綱敬子と2年間暮らした過去がある。今度は株でなく人間に100億円投資しないか、と敬子に持ち掛けられ、手放しで絶賛する加治隆介に興味を抱く。推定資産800億円。のちに隆介のために、新党渦潮が融資された50億円の返済方法の調査に一肌脱ぐ。

神弘 (かみひろ)

鹿児島の暴力団、神弘組の組長を務める初老の男性。細身だが威圧感がある。APECが開催される日に、大阪のロイヤルプラザホテルに大人数で予約を入れていた人物。宿泊ホテルの変更を直談判しに訪れた加治隆介の心意気を気に入り、隆介の要求を受け入れる。メンツを潰される事を嫌い、選挙の際、自身の組と隆介に黒い交際があるとのビラを撒かせた谷崎健吾に対しては、組を挙げて徹底的に報復した。

土方 俊太郎 (ひじかた しゅんたろう)

海上自衛隊に所属する護衛艦「ちくご」艦長を務める男性。階級は二佐。佐世保に在住。男気のある骨太な人物。北朝鮮に物資を運ぼうとする船の海上阻止行動に参加中、韓国籍のフェリーからのSOSを受け、発砲している北朝鮮艇に砲撃して撃沈させた。しかし、この行動が行き過ぎだと物議を醸しだし、事件の責任を取らされて辞表を提出。妻の実家で弁当の仕出しを手伝う事になった。そんな中、自身への謝罪にわざわざ休日に足を運んで来た加治隆介のファンになる。2年後、隆介の説得で自由と責任党から衆議院議員選に立候補し、当選。隆介が内閣総理大臣になった際には、防衛庁長官に就任した。

ジャッキー・ハイマン

「USレインボープレス」紙の新聞記者を務める白人の男性。加治隆介とリンダ・シモンズが早朝、ロビイストの自殺を見つけた際に、偶然居合わせた人物。インスタントカメラで事件の様子を撮影し、隆介達の写真を撮っていた。記者会見で、お人好しで正義感が強いアメリカ人があふれていた時代が懐かしいと語った隆介に共感した事もあり、帰国する隆介にネガと写真を返した。のちに、リンダと交際して結婚する事になる。

崔 基珠 (ちえ ぎじゅ)

韓国の大統領外交秘書官を務める男性。加治隆介とは大学時代の友人。浪人の身となり、韓国を訪問した加治隆介のガイドを務めた。ソウル大学を卒業し、2年間東京大学に留学していた秀才。

西 田丸 (にし でんまる)

加治隆介の第一秘書を務める男性。隆介を尊敬する、隆介の片腕的な存在。忠誠心が厚く、光田工業事件での加治元春の汚名返上に尽力し、事件の真相解明に多大な貢献を果たす。その際には、自らの危険も顧みず、鳩村尚三に加治元春殺人を示唆した海部雅治に真実を吐かせようと、暴力団まがいの事務所にまで乗り込んでいく男気を見せる。一方で、韓国では北朝鮮工作員とは知らず、姜香織と恋に落ち、結果的に隆介を危険に晒してしまう。

ワタナベ

鹿児島で印刷業を営む男性。衆議院議員選挙の際、谷崎健吾から頼まれ、暴力団、神弘組が加治隆介と結託して、有権者を買収しているとのチラシをまいた人物。メンツをつぶされた神弘組長の命令で、「谷崎に頼まれて中傷ビラをまいた私を許して下さい」というビラを同じところに配らされた。

柳田 昇吉 (やなぎた しょうきち)

防衛庁の統合幕僚会議議長を務める男性。制服組(ユニフォーム)のトップに位置している。細身で目力が強い。危機管理に対して意識の低い官房長官に、凛としてモノを言う気骨のある人物。柔軟な発想の持ち主で、防衛庁長官となった加治隆介とは相性がいい。

集団・組織

桜嵐会 (おうらんかい)

『加治隆介の議』に登場する政治団体。一年生議員となった加治隆介が、徳島1区の細井義文、同期議員の山梨2区の秋山吉正らと派閥を横断する形で結成した、民主政和党(民政党)を中心とした超党派政策集団。「親分子分のしがらみから離れた真剣に政治を考える集団」であろうとした。隆介は桜嵐会の結成を一ノ関鮎美へ留守番電話で報告した。

桜新党 (さくらしんとう)

『加治隆介の議』に登場する政治団体。加治隆介と浅海恒太郎が中心となっていた桜嵐会が母体となって結成された政党。結成時点で、桜嵐会代表の隆介が日本を離れていたため、党代表は浅海が務めることになった。政権交代の鍵を握る政党になる。

自由と責任党 (じゆうとせきにんとう)

渦上三郎が党首を務める新党渦潮と、加治隆介が所属する桜新党、ほか少数党が大連合した政治団体。党首は渦上で、議員数は155人と当時の最大の政党となった。隆介のみそぎ選挙となった解散総選挙で議席を181人に増やし、のちに保守二党の連合を見据えて民主政和党を離脱した熱田建二郎グループが合流。二大政党による初の総選挙では233人と議席を増やした。加治隆介は発足当初、官房長官を務めるなど、内閣での要職を歴任するようになる。総理大臣には渦上、小沢倫太郎、平原和正を輩出。平原総理大臣辞任後の党首選では、隆介と熱田建二郎の一騎打ちが繰り広げられた。

民主政和党 (みんしゅせいわとう)

加治隆介が初当選時に所属していた政治団体。議員数395人の与党。当時の党首は鳩村尚三。鈴鹿派、桂木派、鳩村派、横谷派、井原派の5派閥に別れており、初当選した隆介は井原派に所属する事になった。鳩村が総理大臣を辞任後、党首は井原七郎となる。その後、渦上三郎が離党して新党渦潮を結成したのを機に、浅海恒太郎が桜嵐会を率いて離党したため議員数は230人となり、野党となる。以降は鈴鹿宏が党首となる。隆介のみそぎ選挙となった解散総選挙では、議席は151人から145人となった。のちに、日本平和党と合流し、国民福祉党を結成した。

新党渦潮 (しんとううずしお)

渦上三郎が民主政和党に見切りをつけて結成した政治団体。議員数は47人。党首は渦上で、当時愛人だった田名綱敬子からの50億円の融資をもとに全国に事務所を構えた。発足当時、隆介はカンボジアで行方不明となっていた。ちなみにその資金源は最後の相場師と呼ばれた稲川欽蔵。この時の50億円返済のため、長池修三と証券会社、東亜証券の不正株取引が行われ、のちに大スキャンダルとなった。反民主政和党の連立政権を牽引し、浅海恒太郎総理大臣の殉職後、日本平和党との連立政権で、渦上総理大臣が誕生。その後、隆介の所属する桜新党ほか、少数派と大連合し自由と責任党を発足した。

日本平和党 (にほんへいわとう)

青杉幹二が右派41人を引き連れ、社会平和党から離党して結成した政治団体。ほどなく、海藤正俊率いる民主政和党の改革派70人と合流して拡大。党首は青杉だが実質的な主導権は海藤が握り、自由と責任党との連立政権を確立。渦上三郎総理大臣の愛人スキャンダルが発覚すると、自党と民主政和党との連合を仄めかし、渦上を辞任に追い込んで、青杉を総理大臣に押し上げた。だが、加治隆介のみそぎ選挙となった解散総選挙で議席を138人から108人に減らし、青杉は辞任。海藤が老獪な戦略で自由と責任党を攪乱するが、海藤の死後、青杉の政権奪回への執着が強くなる。青杉は熱田建二郎の策に乗せられて、自由と責任党との連立政権から離脱し、民主政和党と合流して国民福祉党を結成した。

国民福祉党 (こくみんふくしとう)

日本平和党が民主政和党と合流して結成した政治団体。党首は鈴鹿宏。再度、総理の椅子を狙う青杉幹二が、数年間野党に甘んじていた鈴鹿に声を掛けての合流となった。日本国民の生活向上のため政権を狙うと公言しており、結成当初は217人。二大政党による初の総選挙では208人に終わり、自由と責任党に惨敗した。また、この選挙で青杉が落選している。

社会平和党 (しゃかいへいわとう)

社会主義を標榜する政治団体。土肥垣亘が委員長を務めている。当初の議員数は82人で、浅海恒太郎総理大臣の連立政権では与党第一党となった。その後、青杉幹二が右派41人を引き連れて離党。のちに、首班指名候補の際、国民福祉党に寝返って連立への野心を見せるが、無定見な野合への不満分子の票が加治隆介所属の自由と責任党に流れた事で、失敗に終わる。

イベント・出来事

光田工業事件

加治元春が光田工業から賄賂を受け取ったという疑惑。かつて、仕手筋で悪名の高かった「ヤマネコ」がベアリング会社、光田工業の株式を大量に買い占めた事があった。光田工業は株を買い戻そうと交渉を始めたが、ヤマネコはM&A(会社乗っ取り)の行使を主張。光田工業が鳩村尚三総理大臣に調停を依頼し、友人である元春に白羽の矢が立った。元春により調停はうまくいき、ヤマネコが集めた株式を新たな会社に移転し、その会社をヤマネコと光田工業が共同経営するという事で一件落着。その後、光田工業から鳩村側に謝礼として5000万円が支払われた。だが、ヤマネコに脱税による査察が入った際、あおりを受けて光田工業にも検察の捜査が入り、5000万円の使途不明金が明るみに出た。この時、光田工業の社長が、使途不明金となっていた5000万円は元春に渡ったと証言した事から、元春が「灰色大臣」とマスコミに叩かれ、光田工業事件と呼ばれる事となった。なお元春の死後、鳩村は会見で、自分は5000万円を受け取っていないと証言している。

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