PSYCHO-PASS サイコパス 2

PSYCHO-PASS サイコパス 2

テレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 2』のコミカライズ作品で、斎夏生の『PSYCHO-PASS サイコパス 監視官 狡噛慎也』の続編。発達した科学によって人の心すら「色相」として可視化されている社会で、難事件に立ち向かう監視官、常守朱の姿を描いたSFサスペンス。マッグガーデン「月刊コミックガーデン」2014年12月号から2017年3月号にかけて掲載された。

正式名称
PSYCHO-PASS サイコパス 2
ふりがな
さいこぱす つー
原作者
サイコパス製作委員会
漫画
ジャンル
サスペンス
関連商品
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あらすじ

第1巻

「填島の事件」によって幾人もの欠員を出した刑事課は、常守朱を中心に新しいメンバーも加えて組織を一新していた。しかし新メンバーの着任早々に、市街地で爆発事件が起きる。犯行声明によって、犯人は解体作業員の喜汰沢旭だと突き止めた一行は、彼の職場である解体請負業者の倉庫に向かうものの、そこに待ち受けていた数々の罠によって、刑事課は思わぬ手傷を負ってしまう。用意周到な犯人に疑問を抱く一行だったが、常守の決死の説得によって、喜汰沢を殺さずに確保する事に成功する。しかし事件の裏では暗躍する者がおり、常守達とは別行動をしていた刑事課二係の面々は、正体不明の「透明人間」に襲われ、抵抗できないまま一人が死亡。二係の監視官、酒々井水絵もさらわれ、消息不明となってしまう。後日、事態に気づいて現場に駆け付けた一行は「WC?」と言う謎のメッセージを見つける。誰かが二係を襲ったはずなのに誰もいない現場、存在するはずなのに存在しない喜汰沢の共犯者、さらには常森以外誰も入っていはいはずなのに、常森の私室に残された「WC?」のメッセージ。これらから常森は、この事件には存在しないはずの「透明人間」がかかわっている事を確信する。

第2巻

誰にも書く事ができない「WC?」のメッセージの謎を追って、常守朱雑賀譲二のもとを訪れる。雑賀との話から「WC?」が「What Color?(何色か?)」を意味するのではないかとの結論を出した常守は、メッセージの真意を突き止めるべく、「透明人間」の存在を明かそうと決意する。喜汰沢旭の証言から「透明人間」の名が「カムイ」である事を知った常守は、刑事課の面々と協力して「カムイ」の存在を追う。一方で刑事課二係の青柳璃彩のもとに、失踪した酒々井水絵からメッセージが届く。メッセージに導かれるまま「メンタルケア施設」を訪れた青柳であったが、そこで一人の男による立てこもり事件に出くわしてしまう。「カムイ」の名を出しながら施設の人間を人質に取った犯人は、残虐に振る舞う事で人質の色相を濁らせて行く。そして上層部の命令によって、色相が濁った人質ごと犯人は撃たれ、現場は血の赤一色で染まる事となった。青柳も三係による攻撃の巻き添えによって死亡し、現場に到着した常守が目にしたのは、青柳の遺品と「WC?」のメッセージであった。

第3巻

「カムイ」が「軍事用ドローンの実験場」に潜伏していると言う情報をつかんだ常守朱は、刑事課の一係と三係を引き連れて実験場に向かう。元は貿易港であった実験場には隠された区画があり、そこを発見した常森は「カムイ」の痕跡と「WC?」のメッセージを見つける。一方、配信されたゲームを通じて、実験場のドローンが突如として暴走を始める。ゲームだと思ってドローンを操作する無関係の一般市民。そしてその兵器に襲われる一係と三係は、実験場を舞台に生死を賭けた戦いを繰り広げる。敵の目的が死んだ執行官からドミネーターを回収する事であると看破した常守は、遂に「透明人間」である「カムイ」の姿を目にする。そして捜査を続ける刑事課は、事件の共通点が「地獄の季節」と呼ばれる過去の事件にあるのに気づき、「カムイ」の正体が事件の唯一の生存者である鹿矛囲桐斗である事実にたどり着く。

第4巻

鹿矛囲桐斗の正体に大きく近づいた刑事課は、鹿矛囲からのメッセンジャーである枡嵜葉平と接触する事で、鹿矛囲の真実を知る事になる。鹿矛囲の目的が「地獄の季節」に関係する政治家と「シビュラシステム」への復讐だと気づいた刑事課は、その目的阻止のため動き始める。

その裏で刑事課一係に所属する霜月美佳は、常守朱への反発と東金朔夜への不信から独自の捜査を続けていた。しかし、その一環で「シビュラシステム」の重要な機密に触れた霜月は、シビュラシステムの真実、そして朔夜の正体を知り、鹿矛囲の事件の裏で暗躍する彼らに協力を余儀なくされてしまう。

第5巻

常守朱は、新たな鹿矛囲桐斗のメッセンジャーである桒島浩一から、祖母の常守葵が人質に取られた事を知らされる。ほどなくして葵の死体の発見の報を聞き、朱は精神的に深く追いつめられていく。

同時期、鹿矛囲は仲間達と共に地下鉄に立てこもっていた。「シビュラシステム」に牙を突き付ける準備を整えた鹿矛囲は、地下鉄と言う特異な空間に人質と立てこもる事で「シビュラシステム」の処理能力を飽和させ、システム的な脆弱性を突くつもりだったのだ。混沌とする事態に朱は迷い、挫折しそうになるものの、自分の手の中に残っている可能性を信じて再び立ち上がる。

登場人物・キャラクター

常守 朱 (つねもり あかね)

公安局刑事課一係所属の監視官の女性。年若いが優秀で、仲間達からは信頼されている。そのため、「填島の事件」によって多くの欠員が出て、刷新された刑事課の中心人物となっている。「シビュラシステム」の真実を知っているため、シビュラシステムやドミネーターを絶対視せず、自分なりの根拠で論理を組み上げ、それに基づいた捜査を行う。 その捜査が型破りなものであるため、新人である霜月美佳からは不審と反発の感情を持たれている。シビュラシステムからは、貴重なサンプルと言う事もあり、その行動は興味深い物として観察されている。喜汰沢旭の事件の違和感からいち早く「透明人間」の存在に気づいて捜査を開始した。事件を追う内にシビュラシステムの矛盾と鹿矛囲桐斗の存在もたどり着くが、事件に巻き込まれる形で祖母の常守葵が殺害されてしまう。 一時は暗い感情に飲み込まれそうになるが、狡嚙慎也への思いで心の安定を取り戻し、鹿矛囲とシビュラシステムに立ち向かう。「填島の事件」で失踪した狡嚙には特別な感情を抱いており、彼の愛用していた煙草の香りを嗅いでリラックスするのが癖となっている。

霜月 美佳 (しもつき みか)

公安局刑事課一係に新しく配属された監視官の女性。17歳で未成年だが、「填島の事件」で友人を殺された事をきっかけとして監視官に志願した。監視官としての適性はあり、仕事では一定の成果を上げていた。マニュアル人間な部分があり、型破りな言動の多い常守朱の言動には、つねに疑問を抱いている。お役所人間的な思考を持つ部分もあり、必要以上の仕事をしたがらなかったり、責任をほかに転嫁しようとする言動が目立つ。 また「シビュラシステム」を絶対視しており、自らの色相が濁るのを極端に恐れる部分がある。禾生壌宗は霜月美佳のこの部分を「理想的な市民」と評していた。東金朔夜と朱への不審から捜査方針から外れて、独自の調査を進め、まとめた捜査情報を利用して二人を排除しようとするも、その際に先天性免罪体質というシビュラシステムの重要な機密に触れてしまう。 東金と禾生に処分されそうになるものの、強制的にシビュラシステムの真実を明かされ、以降は恐怖のため考える事を放棄し、彼らの暗躍に手を貸してしまう。監視官の権限を使って常守葵の情報を東金にリークし、間接的に葵の殺害にも加担。 強い罪悪感と苦悩の果てに完全に自分の意志を捨て、シビュラシステムに忠誠を誓う。

東金 朔夜 (とうがね さくや)

公安局刑事課一係に新しく配属された執行官の男性。先入観に囚われない冷静沈着な人物で、「透明人間」の存在を口にした 常守朱に一番早く同意した。狡嚙慎也に似た雰囲気があり、朱は東金朔夜の言動を狡嚙と被らせてしまい、強く意識している。執行官になる前の経歴には謎が多く、執行官の仕事としては不審な部分が多いため、霜月美佳からは不穏な存在として警戒されている。 また禾生壌宗は朱に、朔夜が「観測史上最悪の犯罪係数の持ち主」であると語った。その正体は「東金財団」によって生み出された人工的な免罪体質者。実験の唯一の成功例とされていたが、母親である「東金美沙子」に強い執着心を持っており、のちに「東金美沙子」の殺害未遂事件を引き起こしてしまう。 「東金美沙子」がシビュラシステムに取り込まれて以降は、それを守る番犬としてシビュラシステムの邪魔者を始末していた。前に担当していた監視官の色相を黒く濁らせたあとに殺害しているのも故意のもので、シビュラシステムよりも色相のクリアな存在を許容できない偏執から来るものであった。朱の存在も、朔夜にとって許容できるものではなく、禾生と手を組んで色相を濁らせるため暗躍していた。 狡嚙に似た雰囲気を持っていたのも意図的なもので、助言をする振りをして彼女の思考を誘導し、常守葵も自らの手で殺害する事で、朱の存在を徹底的に追いつめる。だが最終的にはその企みをすべて朱に看破され、黒く染まりかけた状態から自力で立ち直った朱の存在に恐れを抱いて逃げ出した。 致命傷を負った状態で逃げ出したため、最期は逃亡中に絶望に包まれながら死亡した。

宜野座 伸元 (ぎのざ のぶちか)

公安局刑事課一係所属の執行官の男性。監視官だったが、「填島の事件」を追う内に色相が濁って執行官となってしまった。また同事件で父親と左腕を失っており、現在は父親と同じ義手を使って生活をしている。常守朱の先輩に当たるが、以上の経緯から仕事では部下として朱を支える。「シビュラシステム」を絶対視して色相を濁らせた経験から、マニュアルなどに頼っておらず、霜月美佳にも柔軟な思考を持つようにアドバイスしたが、執行官であるため聞き入れてもらえなかった。 二係の青柳璃彩とは同期の間柄で、いっしょに酒を飲むほど親しい友人だった。そのため、「メンタルケア施設」の立てこもり事件で青柳が須郷徹平に誤って殺された際には、彼に対して強い隔意を抱くようになった。 のちに鹿矛囲桐斗に洗脳された酒々井水絵と対峙した際に、須郷に助けられた事で隔意を捨て、和解を果たした。

六合塚 弥生 (くにづか やよい)

公安局刑事課一係所属の執行官の女性。人当たりがよく、優れた判断力を持つ人物。人間関係の緩衝材として、新人である霜月美佳にもやさしく接していた。同性愛者で、同じ公安局に務める唐之杜志恩とは肉体関係を持っている。霜月には表向きやさしく接していたため慕われていたが、内心では彼女の行動に失望を覚えており、唐之杜には、あくまで「仕事」上の付き合いだと、冷めた言葉を告げていた。 仲間思いで視野も広いため、霜月の不審な行動にも気づいている素振りをする。

唐之杜 志恩 (からのもり しおん)

公安局所属の分析官の女性。退廃的な雰囲気を持つ美女で、医療や電子機器関連の知識に通じている。主に現場に出ている捜査官を後方からコンピューターでサポートしたり、事件の詳細を電子機器を使って分析するのが仕事となっている。バイセクシャルで、刑事課に所属する六合塚弥生とは肉体関係を結んでいるほか、雛河翔や雑賀譲二にも強い興味を抱いていた。

雛河 翔 (ひなかわ しょう)

公安局刑事課一係に新しく配属された執行官の男性。目が隠れるほどに前髪を伸ばした内気な少年で、つねにおどおどした態度で周囲の人と接する。重度のうつ病にかかった経験から薬剤に関する知識に精髄しており、その知識を活用してドラッグディーラーの仕事をしていた。調合した薬の不具合で客を過失死させて、色相を濁らせてしまった過去を持つ。 自らの能力を認めてくれる常守朱の事を強く信頼しており、彼女を姉のような存在として慕っている。薬学以外にもホロ(立体映像)の技術にも造詣が深く、薬学とホロの知識を駆使して鹿矛囲桐斗の正体解明に大きく寄与した。内気な性格をしているため、新人監察官である霜月美佳とは相性が悪く、彼女には怯えにも似た感情を向けている。

雑賀 譲二 (さいが じょうじ)

臨床心理学を専攻する元大学教授の男性。多角的な視野と高い見識を持つ人物で、かつては公安局捜査官のための特別講義を担当していた。しかし犯罪を深く分析するのが裏目に出て、講義の生徒の色相を著しく悪化させたため、「色相を黒く染める」人物として恐れられている。「填島の事件」で狡嚙慎也の逃亡に手を貸したため自発的に隔離施設に収容されていたが、「WC?」の謎を追う常守朱の要請に応じて鹿矛囲桐人の事件に捜査協力した。 正式に刑事課に協力してからは取調べに同席し、鋭い切り口から犯人達の目的を分析・推理した。朱は自分と話していても色相が濁らない稀有な存在として気に入っていたが、それが「依存」にも近しい感情だと気づき、事件解決後は自らの意思で収容所に戻った。

狡噛 慎也 (こうがみ しんや)

公安局刑事課一係に所属していた執行官の男性。常守朱にとっては頼れる先輩で、宜野座伸元や青柳璃彩の同期にあたる。「填島の事件」以降、姿をくらませており、現在は生死不明の行方不明状態となっている。しかし常守は狡噛慎也の存在を心の支えとしており、彼の愛用していた煙草を吸わずに嗅ぐ事で、心をリラックスさせている。 また常守が考えを整理する際には、幻影と言う形で狡嚙と対話して心の安寧を守っており、彼女の中で狡嚙は重要な存在となっている。

禾生 壌宗 (かせい じょうしゅう)

公安局の局長を務める女性。怜悧な風貌を持つ理知的な女性だが、その実、禾生壌宗という個人は存在せず、シビュラシステムの外部端末ともいうべき存在である。脳以外のすべてが人間を模して造られた機械で、シビュラシステムに取り込まれた者達の脳が持ち回りで「禾生壌宗」という人物を演じ、公安局を管理している。「禾生壌宗」は言わばシビュラシステム内の役職のようなもので、このため同じ見た目でも、中身の脳は別人の場合が存在する。 この事実を知っているのは公安局でも一部の人間であり、ほとんどの人間は禾生が普通の人間と思って接している。鹿矛囲桐人の事件では、鹿矛囲を生み出した責任を問われてシビュラシステムに取り込まれていた「東金美沙子」が、「禾生壌宗」として捜査の方針を指示していた。 東金朔夜は「東金美沙子」の実の息子であり、息子と共謀して鹿矛囲の存在を闇に葬り、常守朱の色相を黒く濁らせようとする。しかし結果的にそれでも濁らなかった常守の働きによって「集合的サイコパス」が成立し、「東金美沙子」自身がシビュラシステムに裁かれた。「東金美沙子」死亡後は、新たな担当者による別の「禾生壌宗」が現れ、事件の事後処理を行った。

青柳 璃彩 (あおやなぎ りさ)

公安局刑事課二係所属の監視官の女性。宜野座伸元とは同期の関係で、酒を飲み交わしながら過去を語れる仲となっている。さまざまな事件を経験した事で不安と迷いの感情を抱いており、監視官を続ける事に不安を感じているが、今の自分にはそれしかないとしがみつく決心を固めている。「透明人間」の事件では、行方不明になった酒々井水絵からメッセージをもらい、「メンタルケア施設」に赴くが、そこで立てこもり事件に遭遇してしまう。 立てこもり犯による残虐な犯行で色相を濁らせてしまい、強い殺意を抱いてしまったため須郷徹平に犯人と間違われて強襲型ドミネーターで撃たれて死亡した。

須郷 徹平 (すごう てっぺい)

公安局刑事課二係所属の執行官の男性。「透明人間」の事件では酒々井水絵の失踪を皮切りに、次々と同僚が死亡。さらには「メンタルケア施設」の立てこもり事件で、色相が濁った青柳璃彩を犯人と誤って撃ち殺してしまい、強い責任感に苛まれて宜野座伸元にも隔意をもたれてしまう。青柳の死亡で二係がほぼ壊滅してしまったため、立てこもり事件以降は一係に異動となった。 「軍事用ドローンの実験場」で働いていた経験があり、鹿矛囲桐斗による軍事用ドローン暴走の際には、かつての知識で一係を助けた。その際に負傷して一時的に前線を退いたが、鹿矛囲に洗脳された酒々井水絵と一係が対峙した際には応援に駆けつけ、宜野座達を助けた。

酒々井 水絵 (しすい みずえ)

公安局刑事課二係所属の監視官の女性。喜汰沢旭の事件で人質の姿をしたホロ(立体映像)を追いかけ、「透明人間」である鹿矛囲桐斗に遭遇し、そのまま囚われの身になってしまう。ドミネーターとそれを扱うための「監視官の目」を欲した鹿矛囲に、目を摘出されてしまう。その後、監視官と言う立場から来るストレスにより自身の色相が濁る事に恐怖を抱いているのを、鹿矛囲に理解され、癒やしてもらった事で色相を限りなくクリアなものにされた。 それは最早、洗脳に近いもので、鹿矛囲に対して信仰にも似た忠誠を抱くようになり、進んで彼の犯行に協力するようになった。「PSYCHO-PASS」を絶対視する「シビュラシステム」は、数値上クリアな酒々井水絵の権限を停止する事ができないため、彼女の存在は鹿矛囲の計画を大きく加速させる事となる。 鹿矛囲が地下鉄に立てこもった際には、刑事課の面々を鹿矛囲のもとに行かせないように一人で時間稼ぎを行ったが、応援に来た須郷徹平によって撃たれて確保された。事件後は鹿矛囲への思いを消し去るのは難しいとされ、更正施設に収容された。

常守 葵 (つねもり あおい)

常守朱の祖母。高齢であるため身動きが取れず、介護施設で暮らしている。朱に命の大切さを説き、彼女にエールを送っていた。「WC?」のメッセージが朱の私室より発見されて以降、朱の親族は保護の対象となったため、その所在は公安によって守られていた。しかし「シビュラシステム」に取り込まれた霜月美佳が、半ば脅迫される形で監視者権限を使って常守葵の所在を調べ、情報をリークしたため、桒島浩一によって囚われの身になってしまう。 人質になった後、助けに来たと思った東金朔夜によって襲われ、末期まで朱の名前を呼びながら殺された。

喜汰沢 旭 (きたざわ あきら)

連続爆破事件を引き起こした犯人。ビル解体現場の監督員を務めていたため、爆弾の扱いに精通していた。学生時代は優秀だったにもかかわらず、職業適性でエリートの道を閉ざされた。そのため、決められた道しか歩めない「シビュラシステム」による支配に強い不満を抱いており、犯行声明でも現代社会の歪みを訴えた。爆発事件を引き起こしたが、事件による死傷者はなく、通りすがりの母子が事件に巻き込まれそうになった時は躊躇するなど、良心は残していた。 そのため常守朱は彼の執行を思いとどまり、説得して色相を下げる賭けに出た。喜汰沢旭の事件にはさまざまな不可解な点があったため、これがきっかけとなって刑事課は「透明人間」の事件を追う事となった。 逮捕されたあとは、「透明人間」のお陰で急激に色相がクリアになったため、医療施設に移送される事が決定されたが、移送中に脱走した。脱走中にあらかじめ準備していた爆弾を使い、新たな爆破事件を引き起こす。しかし、遂に犠牲者を出してしまったため色相が強く濁り、青柳璃彩により刑を執行されて死亡した。

枡嵜 葉平 (ますざき ようへい)

「地獄の季節」の犠牲者である鹿矛囲桐斗を担当した執刀医。5年前、さまざまな機密に触れ、医者の職業への重責から色相を強く濁らせ、心身を強く疲弊させて浮浪者同然の生活をしていたところを、鹿矛囲に救われた。それ以降、医者として彼の手助けをしていた。刑事課が尋ねて来た際には彼らを受け入れ、鹿矛囲からのメッセンジャーとして彼の正体と目的を伝える。 「東金美沙子」とも知り合いで、機密に深くかかわっていたため、東金朔夜に口封じとしてドミネーターで殺された。

桒島 浩一 (くわしま こういち)

国土交通省の役人。23歳ながらやり手で、省内一の若手ホープと見なされている。実は鹿矛囲桐人の協力者で、「軍事用ドローンの実験場」の株主になって、そこをアジトとして提供したりして、彼の犯行をさまざまな形でサポートした。幼少期に鹿矛囲達が遭遇した「地獄の季節」の事故直前に転校したため、一人だけ事故に遭遇するのを免れた。 それが深い罪悪感の原因となっている。鹿矛囲と再開した際に、罪滅ぼしのため彼に協力するのを約束した。鹿矛囲の邪魔をさせないため、独断で常守葵を人質に取って常守朱を脅した。

鹿矛囲 桐斗 (かむい きりと)

常守朱ら刑事課が追う数々の怪事件の裏に潜む「透明人間」。そこに確かに存在しながら、現在社会の監視を受け持つシビュラシステムには認識されないという「透明人間」のような特異性を持つため、捜査一家の面々も当初はその存在には懐疑的だった。並外れた薬学と心理学に関する知識を持ち、喜汰沢旭達の濁った色相を浄化する事で、彼らから神のような存在として崇められていた。 色相を浄化した人々を使って、数々の事件を引き起こし、シビュラシステムの弱点を一つずつ確認していた。その正体は「地獄の季節」で犠牲になった鹿矛囲桐人に、同事故の184名の犠牲者の臓器や脳を多体移植手術した存在。脳すら複数の人間のものを移植しているため、鹿矛囲という個人は存在せず、集団で個の存在を形成するに至っている。 生体情報を読み取るシビュラシステムにとって、複数の臓器や脳を持つ鹿矛囲は、「複数の死体を継ぎ接ぎした死体」と同種の認識であり、また脳を並列CPUとして使う自分と同種の部分が存在するそのため、シビュラシステムは、「全能者のパラドックス」を引き起こし、ドミネーターによる執行ができなくなっている。

集団・組織

刑事課 (けいじか)

公安局に存在する刑事事件を追う部署。人の心の色相を数値化し、管理するシビュラシステムに従い、犯罪係数が規定値を超えた者を「潜在犯」として取り締まるのを主な仕事としている。高い適正が求められる仕事で、監視官と執行官で構成され、現在は一係から三係までの3つの班と、現場をサポートする後方の分析室が存在する。 「犯罪係数」と言う確かな判断基準があるため、現場の判断で、裁判などの諸々の手続きを省略して刑を執行する権限が存在し、監視官と執行官はドミネーターで対象の犯罪係数を計測し、刑を執行する。一方でどんな犯罪を犯しても「犯罪係数」が低ければ裁けないという矛盾が存在し、「透明人間」の事件では、喜汰沢旭は事件後、色相がクリアになった事で刑事課の管轄から外れてしまった。 その後、ドミネーターを欲する鹿矛囲桐斗に狙われ、二係と三係は壊滅的な被害を受けてしまう。

その他キーワード

PSYCHO-PASS (さいこぱす)

サイマティックスキャンによって計測された生体情報をシビュラシステムが分析し、数値化したもの。この数値を追求する事で人間は最大の幸福を享受できるとされ、職業適性にもこの数値が大きく反映されており、社会の根底を成す重要な要素となっている。PSYCHO-PASSによって人の心を色相と言う形で可視化する事ができるため、シビュラシステムに管理された社会では、この色相を見て、犯罪者を裁く制度を導入している。 また色相が濁った場合、犯罪を犯していなかったとしても、「潜在犯」として逮捕されて収容される可能性があるため、PSYCHO-PASS社会では自分の色相をきれいに保つのが何よりの命題となっている。ただし行き過ぎたメンタルケアが、逆に「ユーストレス欠乏症」などの弊害を引き起こしているため、一種の社会問題となっている。

色相 (しきそう)

サイマティックスキャンによって計測された生体情報をシビュラシステムが分析し、「色」として可視化したもの。色相がクリアであればあるほど健やかな精神状態であるとされ、逆に濁っている場合は犯罪係数が上昇し、危険な状態とされている。PSYCHO-PASS社会ではこの色相をクリアに保つ事が重要とされ、色相が濁った場合、犯罪を犯していなくても潜在犯として収容所送りになってしまう。 特に危険な仕事に従事する職業はこの危険性が高く、監視官は自らの色相が濁る恐怖とつねに戦わなければいけない。ただし極々一部に色相がまったく濁らない先天的免罪体質と呼ばれる存在もいる。

犯罪係数 (はんざいけいすう)

PSYCHO-PASSによって計測される数値の一種。犯罪にかかわる数値で、基本的にこの数値が高ければ高いほど危険思想が強く、犯罪を起こしやすいとされる。犯罪の準備を行っただけで犯罪係数は上がるため、規定値を超えると潜在犯として捕まってしまう。刑事課が犯罪者を裁く際の目安ともされ、数値が100を超えた場合はドミネーターによる執行の対象となり、300を超えた場合は凶悪犯として即射殺の対象となってしまう。

監視官 (かんしかん)

公安局刑事課で執行官の監視と指揮を行い、捜査活動を行うエリート職。10年以上監視官として働けば、厚生省のポストが約束されて出世の近道となる。凶悪犯罪や犯罪者に直接かかわる過酷な仕事という事もあり、高い適正が必要となる。年齢制限はないため、適正があれば未成年でも志望すれば成る事はできるが、過酷な職場であるため色相を濁らせる者も珍しくない。 「潜在犯」となった監視官は権限を剥奪され、収容されるか執行官として働く事を余儀なくされる。逆にいえば色相さえクリアに保っていれば、シビュラシステム自体でも監視者の権限を一方的に剥奪する事はできない。監視者はドミネーターの使用許可など多くの権限を持っており、鹿矛囲桐人は酒々井水絵を拉致し、彼女の権限を奪うため右目を奪い、半ば洗脳に近い形で彼女の色相をクリアに保った。

執行官 (しっこうかん)

公安局刑事課で捜査を行う刑事。高い犯罪係数をたたき出して、収容所に送られた「潜在犯」の中でも、適正の高い者で構成されており、一定の自由と引き換えに捜査へ協力している。基本的に現場では監視者の指揮に入り、手足になって働く事が義務付けられている。場合によっては監視者の盾にならなければいけないなど、非常に過酷な職場となっている。 このため脱走や犯罪を企てる者も珍しくなく、監視者の仕事の中にはそんな執行官を監視し、事を起こした際には裁く事も入っている。監視官としての仕事を務めている内に色相が濁って執行官になるケースも珍しくなく、宜野座伸元も元は監視官だったが、「填島の事件」を経て執行官になってしまった。

地獄の季節 (じごくのきせつ)

経済省主導で行われた、交通と銀行を管制する国民支援システム「パノプティコン」の試験運用期間。これにより航空及び交通事故が例年の数十倍にまで跳ね上がったため、パノプティコンの採用は見送られる事となった。この時の多大な犠牲から、のちにこの期間が「地獄の季節」と呼ばれるようになった。この事件の裏では、政治家が私服を肥やすための予算の奪い合いや、人材の操作や流出があり、鹿矛囲桐人をはじめとする事実を知る被害者や被害者遺族から恨まれている。

ユーストレス欠乏症 (ゆーすとれすけつぼうしょう)

PSYCHO-PASS社会で自分の色相を気にするあまり、誤ったメンタルケアを行った者が発症する病気。薬の副作用や強迫真理によって自律神経が侵されてしまい、あらゆる刺激が消えて無感覚状態になるといった症状が表れる。「シビュラシステム」の存在を揺るがす病気であるため、その存在は公表されておらず、半ば都市伝説のような扱いを受けているが、この病気の存在は確かに存在しており、今もなお犠牲者達を苦しめている。 鹿矛囲桐斗の賛同者の幾人かは、間違ったメンタルケアによってこの病気を発症した者達で、鹿矛囲の治療によって立ち直って以降は、自分達を黙殺したシビュラシステムへの復讐として、医療機関である「メンタルケア施設」を襲っている。

シビュラシステム

厚生省が提供するシステムの総称。PSYCHO-PASSによって対象の色相を数値化したあと、その対象が幸福実現を達成できるように支援を行う。現代社会の根底をなす重要なシステムで、誰もが利用している。生活の身近な場所にあるシビュラシステムだが、その詳細は機密の塊であり、公安局に務める者でもその詳細を知っている者はほとんどいない。 その正体は、脳を生体コンピューターとした集合体であり、システム自体が意思を持って社会を管理・支配している。常守朱はこの真実を知っているためシビュラシステムを過信せず、自らの判断で行動している。禾生壌宗はシビュラシステムに脳を取り込まれた者達が扱う義体であり、真実を知る者達に対しては、禾生の体を使ってシビュラシステムの代弁者として振る舞う。 「全能者のパラドックス」から鹿矛囲桐斗の存在を判別する事はできなかったが、朱の提案によって「集合的サイコパス」が成立し、鹿矛囲の認識に成功した。「集合的サイコパス」の成立によって「組織」の色相も管理できるようになったが、実現にはいくつかのハードルがあり、社会全体に浸透させるには時間がかかるとされている。

先天的免罪体質 (せんてんてきめんざいたいしつ)

シビュラシステムによる色相の判定でもいっさい濁らない特異体質者を指す言葉。シビュラシステムによって管理されたPSYCHO-PASS社会の存在意義を大きく揺るがす存在であるため、先天的免罪体質の情報は重要な機密に指定されている。「先天的免罪体質(Apriori Acquitted)」の頭文字を取って「AA」の名称でも呼ばれるが、この「AA」は、許可なく機密を暴こうとする、「オープンドアデータ」と呼ばれる者を判別するための一種の罠となっている。

ドミネーター

公安局刑事課に配備されている特殊な装備。見た目は銃型の機械で、正式名称は「携帯型心理診断鎮圧執行システム・ドミネーター」。シビュラシステムとリンクする事で対象の犯罪係数をリアルタイムで計測し、刑の執行を行う事ができる装置である。対象の犯罪係数が100未満だった場合、セーフティが発動して使用する事ができないが、100を超えるとロックが解除される。 基本モードは対象を麻痺させる「パラライズ」で、300以上の高い犯罪係数を対象とする場合は、殺処分の「エリミネーター」のモードになる。また対象が無機物のドローンや兵器の場合は、対象を分子分解する「デコンポーザー」のモードを使う事ができる。このほかに使用のログも存在し、執行者が監視者にドミネーターを向けた場合、それは反逆の証拠としてログに残り、本部に自動的に報告される。 犯罪係数をリアルタイムで計測すると言う仕様上、シビュラシステムとのつながりが強く、鹿矛囲桐斗はシビュラシステムの正確な場所を割り出すためにドミネーターの確保を行った。

クレジット

原作

サイコパス製作委員会

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テレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のコミカライズ作品。魂を数値化するシステムで治安維持をしている近未来を舞台に、新人の監視官として着任した慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフの活躍する... 関連ページ:PSYCHO-PASS サイコパス 3

学園さいこぱす (がくえんさいこぱす)

テレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』のスピンオフ作品。さいこばす学園を舞台に、デフォルメされたキャラクター達が織り成すギャグ漫画。マッグガーデン「コミックブレイド」および「MAGCOMI... 関連ページ:学園さいこぱす

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